ラスボスが増えてるブルーアーカイブ   作:シフィ

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エデン条約 前日譚
百合園セイア襲撃!(防衛側)


 

 スマホに映る名前(クラウン)を見つめ、近くの空き部屋へ入る。

 

 こいつからの連絡とか、初めてだし厄介ごとの匂いがプンプンする。

 トリニティ側での色んな監視を頼んでるし、その関連だと思うんだけど……

 

 

《もしもし?》

 

《あ、繋がった。宴会中にごめんね、セイアちゃんの件で連絡。》

 

 

 セイアちゃんが着けてるウェアラブル端末で体調については常に把握してるし、倒れたとか、怪我をしたという報告ではないことは確実。

 となると……。

 

 

《アリウスの件?》

 

《うん。》

 

 

 タイミングとしてはあり得ると思ってたけど、セイアちゃんの予言とクラウンの話より随分と早い。

 セイアちゃんの盾であるこの私が動けないことが確定している今なら倒せると思って動いたんだろう。

 

 万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)襲撃中にセイアちゃんを襲われるのが一番やりにくかったが、今なら問題ない。

 

 

《良かったね? 夜中で。襲撃配信中に動くか迷ってたみたいだけど、隠れることを優先しちゃったみたい。》

 

《そうだね。……時間の余裕はどのくらい?》

 

《1時間、いや、あの辺りは温泉開発でカタコンベが壊れてるから2時間は余裕があるし、ゆっくりおいでよ。》

 

 

 カタコンベって、トリニティの地下を巡ってる迷路みたいな墓地だよね。

 カスミちゃんが「下水道を掘り当てたかと思えば……なんだここは? ……ほう? カタコンベ? 懐古主義のトリニティによく似合う陰気臭い場所じゃあないか。温泉は極楽とも言うし、死人も浸かりに蘇ってしまうかもな? ハーッハッハッハッハ!!」って笑いながら爆破してた記憶がある。

 

 それでアリウスの妨害できるとか……やっぱ温泉って最高だわ。

 っていうか1時間とか2時間って、セイアちゃんの周りを監視してるんじゃなくてアリウス自体を監視してないとわからなさそう。

 

 あと5分って言われても問題ない移動手段を用意してたけど、杞憂だったか。

 

 

《わかった。教えてくれてありがと。》

 

《私もセイアちゃんには元気でいてほしいから。お礼なんて言わなくても良いよ。

 あなたのやりたい事は、私のやりたいことでもあるんだから。》

 

 

 まあ、私だもんな、クラウンって。

 宇宙開発したり、連邦生徒会長の秘書やったり、カイザーグループ虐めたり何やってんのかよくわからないけど。

 

 

《それじゃ、アズサちゃんの事よろしくね。》

 

《りょーかい。》

 

 

 電話が切れる。

 

 まずはセイアちゃんの護衛につけてるグルメヘルメット団に連絡を取って、移動手段は……ヘリは飽きたし、せっかくだから事前に用意していた手段で行こうか。

 ここら辺の建物で一番高いところは……

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 カスミちゃんや、他のゲヘナの子への挨拶を済ませ、温泉郷の開発に使ったタワークレーンを駆け上る。

 

 ゲヘナ学園の目と鼻の先だというのに温泉開発部の破壊の影響で温泉郷以外の文明の光がない。

 瓦礫に、倒壊したビル。車だったとしかわからない残骸。

 災害に巻き込まれたとしか思えない光景。

 

 直すのに何百億かかるのやら。

 中学生の頃なら無理だったけど今の私なら余裕で出せちゃうし、良いけどね。

 

 

 ……衛星軌道上に待機させた10mくらいの隕石を、ゲヘナ大温泉郷とセイアちゃんの家を結ぶ直線上に気合いを入れて動かす。

 かなり大きいし、キヴォトスに落としちゃうと大変だ。大気圏で光って目立たないように重めの物で作ってるからそこら辺のミサイルより威力が出る。

 

 後片付けが大変だし、他の生徒が当たってしまえば骨が折れちゃうかもしれない。

 

 夜空を見上げて方角を確かめる。冬の澄んだ空気は星明かりを遮らず、道筋を照らす。

 ……方角ヨシ! 隕石ヨシ! 足腰ヨシ!

 

 ゲヘナの天辺から背後に振り返り、見送りに来てくれた子たちに挨拶をして出発だ。

 

 

「それじゃ、ちょっと行ってくるね。帰りには多分お姫様連れ帰ってくるから、お出迎えの準備しといて。」

 

「無論だとも! 出資者の主人ともなれば温泉開発部の総力をあげて歓迎しなくてはな!」

 

「……未だに理解できていないのですが、出掛けるのになぜクレーンに登る必要が? 委員長の居場所*1もはぐらかされたままですし……」

 

「アコちゃん、私は室内に戻っても良い? さっきまで温泉に入ってたから湯冷めしちゃう」

 

「何を貴方は満喫しているんですか! 私だって寒いんです! まだ温泉にも入れていないのに……!」

 

 

 しゃがみ込み、クレーンをへし折る勢いで跳び上がる。

 

 月と同じ視点に立ったような錯覚を覚え、待機させておいた隕石を自分に向けて全力で引っ張る。

 ……遠くに隕石を落とす時は宇宙からボールを投げるような感覚で命中率も低いが、手元に引っ張ってくるだけなら確実に命中する。

 雷鳴に似た音が聞こえたと同時に衝撃。

 

 隕石が私に着弾した。

 

 吹っ飛ばされないようにしがみつき、そのまま隕石の側面をよじ登って、上に座る。

 ドンドコボールの桃白白みたいに棒状の隕石に加工して上に立ちたかったけど、滑って危ないので大人しく座るのが一番だね。

 

 

「なーっはっはっはっは! 流れ星ちゃんがセイアちゃんを迎えに今行くぞー!」

 

 

 ……着くまで暇だなあ。スマホとかお菓子は壊れちゃうから持ってこれなかったんだよね。

 

 

 

 

 


 

 

 

「……あれは」

 

 

 何かが空で輝いた。

 ナイトビジョン(暗視装置)をつけて空を見渡したけれど、何も見えない。

 

 ……流れ星? 

 

「どうした、アズサ。……ドローンか?」

 

「ううん、多分違う。光の線のような物が見えた気がしたけど……隠れることができそうな背の高い建物も辺りにはないし、もっと遠い気がした」

 

「な、なんでしょうね……。や、やっぱりドローンなんじゃないですか? 

 動画で見た化け物みたいな女(ウルト)が百合園セイアの護衛なんですよね……? 

 私でも知ってるくらい大企業の社長さんですし、何やってても不思議じゃないっていうか。前に雑誌でも見ましたけどキラキラしてて…… な、なんで私たちの人生とこんなに違うんでしょうね……」

 

「……この作戦における最大の脅威はゲヘナで足止めをくらっている。インフラは爆破テロにより破壊され、百合園セイアの盾(ウルト)は宴の真っ最中だそうだ」

 

「笑えるね、見捨てられたのか。冠ウルトが愚かなだけなのか」

 

「どちらでも構わない。結局のところ、すべては虚しいものだ、どれだけ満ち足りていたとしても最後には全てを失う」

 

「……」

 

「で、でも良いんですかね……」

 

 

 ……ヒヨリ?

 

 

「い、いつも週末に届く謎の物資はウルトクラウン*2の商品だって噂もありますし、何だか裏切ってるみたいで……

 それにあの中にあるぶどうジャムパンが美味しいんですよね、お腹いっぱいになるまで食べれますし、も、もしもそれが食べれなくなると思ったら……!

 うわぁん!想像するだけで涙が出てきます!あれがなくなったら辛いだけの人生の最後の彩りがなくなってしまいます!」

 

 

 半年ほど前から届くようになったあの物資を心の拠り所にしているアリウス生は多くいる。

 

 この件をマダムに報告した生徒、そして配給に関与したと疑われた生徒は餓死寸前にまで追い込まれるという重い処罰を受けた。

 しかし、その後も物資はマダムの監視を逃れて、各部隊ごとに配給され続け……今では公然の秘密となっている。

 

 

「……アレの差出人は不明だ。……無駄話をしている時間はない。行くぞ」

 

 

 あれを神の慈悲だとするのなら、例え全てが虚しいのだとしても足掻く理由にはなる。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「……ゲヘナからどうやってここまで来たのかは、理解し難いが……置いておくとして。何故窓から現れる必要があったんだい?」

 

「クリスマス近いし、せっかくだからね。セイアちゃんの家って煙突ないから窓になっちゃったけど。」

 

「何時も通り、ノリと勢いというわけだ。全く、内心慣れ始めている自分が嫌になりそうだよ。

 その浅慮で野蛮な選択肢を取る悪癖は一体幾つになれば治るのだろうね?」

 

「慣れたって言う割には紅茶こぼしてるし、下半身とかびしょ濡れじゃん。シミが残っちゃうし早く脱いで。これからお客さんも来るし。」

 

 

 溜め息をつきながらパジャマを脱ぐセイアちゃんを尻目に、部屋のワードローブを開き、トルソーから制服を外す。

 背中が丸出しなせいでハンガーにかけれないのだ。

 畳むと折り目がつくし、服が特殊すぎて保管がめんどくさいのが欠点すぎる。

 

 ヒナちゃんに、セイアちゃんと今日はお着替えをよく手伝う日だ。

 ……っていうかお風呂入りたいな。隕石に乗ってきたせいで、身体に鉄の焼けた匂いと埃がついてる。

 

 

「お風呂はどうする?私は入るけど。」

 

「……お風呂に入るのなら、ここで脱ぐ必要はなかったね……」

 

 

 素っ裸で黄昏てるの笑える。

 

 

 

 

 


 

 

 

 お風呂上がり、セイアちゃんとパケモンで遊んでいるとその時はやってきた。

 

 侵入者を通知するアラート。()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ここに来るまでに正義実現委員会に絡まれてないか心配だったけど杞憂だったね。

 

 

「……来たね。セイアちゃん、この勝負は一旦お預けね。引き分けって事で。」

 

「前向きなのは美徳だが、事実を歪曲して解釈する癖は改めた方がいい。

 3対1でフェアリー、ドラゴンの対面。

 私の勝利はどれ程の不確定要素が噛み合ったとしても確実だ。8連敗もしているのだから編成を見直すべきだと私は思うけどね」

 

「セイアちゃんの戦法が陰湿すぎるんだよね。クレッフィ禁止にしない? 

 じゃなくて、後3分くらいでアリウスの子達がやってくるから準備して。アズサちゃん以外はこっちで間引いておくから。」

 

 

 絶望的な戦況を映すDSの画面をパタンと閉じる。負けてないから引き分けだ。

 私のプライドは守られた。

 

 

「まるで緊張感のない……これでも命のかかった状況なんだが」

 

「ステロ撒きながらニヤニヤしてたくせに、緊張感がないのは2人ともじゃん。

 第一印象は3秒で決まるって言うから早く準備して。アズサちゃんを出迎える時にパケモンでニヤニヤしてたらもう最悪だよ。しかも陰キャ戦法で。」

 

 

 食べかけのスコーンを口に放り込み、紅茶で流し込む。

 食器を片付けてシリアスなムードを壊さないように場をきれいに整えていく。

 

 配電盤壊されてるし常夜灯に切り替えとこうか。

 スマホとDSの充電器も端に隠しておかないと。

 

 

「……ニヤニヤしていたかな。こほん。これからの展開を鑑みるに白洲アズサとの対面はとても重要な分岐点だ。

 アリウスを救うためにも……そうだね、ウルトは隠れておいてくれ。君がいると会話が成り立たないからね」

 

「まぁ、私がいないこと前提で作戦進めてるだろうからね。危なそうだったらすぐ介入できる位置にいるから、頑張ってね。」

 

「少なくとも君よりは策を弄するのには長けているつもりだ。特等席で見守っておいてくれ」

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

「……百合園セイア?」

 

「ああ、そうだよ。君を待っていたいんだ。アリウス分校所属、白洲アズサ」

 

 

 おおー、始まった。

 いやあ、自分の仕事が恐ろしいね、良い感じにアズサちゃん以外を足止めできた。私が雇ってるヘルメット団の子と自律兵器だけで良い具合に遅滞できてる。

 

 他のアリウスの子は脱出ルートの確保に勤しんでるし、アズサちゃんとの距離もかなり遠い。孤立しちゃってるけど、元々その想定だったのかな?

 もし交渉が上手くいかなかったとしてもセイアちゃんを連れて逃げるくらいは余裕だし、温存している戦力+私がいれば全員とっ捕まえることだってできそうだ。

 

 

「待ってた? ……私を?」

 

「うん。夢でもこのシーンを見ていたからね。何と説明するのが良いかな……まあ予知夢のようなものだと思ってくれると良い。」

 

「……つまり、これから私が何をするのかも分かってる、と?」

 

「ああ、私のヘイローを壊しに来たんだろう?」

 

「……それなら、どうしてここに冠ウルトがいないんだ? 彼女がいれば私たちがここに侵入する事はできなかった」

 

 

 上で天井にくっついてます。いえい⭐︎

 表情が見れないのが残念だ。

 セイアちゃんが笑ったら台無しなので表情筋には頑張ってほしい。

 

 常夜灯にしておいて正解だった。暗ければ表情も見えにくいだろうし。

 

 

「ティーパーティーを襲撃した頃から分かっていたはずさ。

 あれが、本当に私の言う事を聞くような従順な駒に見えたのかな? 

 君たち、アリウスがここに辿り着くことができた事こそがその証左。どう足掻いてもこの結末は変わらなかったのだろうね。」

 

「……」

 

「全ては虚しいものである。……アリウスが大好きな言葉だったね。

 同じことだ。未来が見える私にとって足掻くことは無意味。

 死という概念がキヴォトスにおいて見えにくい概念であることは確かだ。それでもやはり私たちは生きているのだし、ともすれば死が隣り合わせでないなんてことはありえない」

 

 

 このセリフ言ってるセイアちゃんの顔見たいな。動いて良いかな? バレるかな……ダメかな……

 

 

「ヘイローを壊す。……つまり誰かが、私の死を願っている。

 そして君は、この部屋に数多くの防衛設備を乗り越え侵入してきた。ここまでのことが出来てしまうのだから、やはり足掻いても無駄さ……

 私はウルトのように武力に長けているわけではないからね。

 君の立場からだってそう思わないかい、白洲アズサ? 

 まあ、それ以外にも理由がないわけではないが……ところで、君は以前にもヘイローを壊したことが?」

 

「いや、無い。でも()()()()()()()

 肉体に取り返しのつかない、致命的なダメージを与える……与え続ける。

 普通は5.56mm弾を何発打ったところでほとんど致命傷にはならないはず」

 

 

 隕石直撃してもたんこぶできるくらいで済んじゃうからね、キヴォトス人って。

 神秘の籠った強力な火器なら1発でもひ弱な子だと危うかったりするらしいけど。

 

 ……にしても、()()()()()()()、ねえ。

 ヘイローが壊れれば死んでしまうことは誰もが知っていることだけど、そのヘイローが壊れるまでの肉体の許容限界。

 それは私たちが生きる上で触れる必要のない知識だ。

 

 私はセイアちゃんの事もあり、医療知識を学んだから知っているが、()()()()()()()っていうのは気に食わない。

 

 

「でも、ダメージがないわけじゃない。尋常じゃない量の弾薬、そしてダメージを与え続ける圧倒的な優位性と時間。

 それらを異常なほど叩き込み続ければ銃火器だけでヘイローを壊すことも不可能じゃない。

 銃以外にも幾らでも方法はある。病気、餓死、窒息、出血、凍死……死に至らせる方法は幾らでもあるはずだ」

 

「……しかし、君たちにはあまり時間の猶予はないだろう?」

 

「……そうだ。だからこの特殊な爆弾を使用する。これで()()()()()()()()()

 

 

 そう言って、アズサちゃんが取り出したのはC4に似た何の変哲もない爆弾。

 ……よくよく見るとなんか気色悪いな。あれがクラウンから聞いたヤバい爆弾か。

 

 危ないからアズサちゃんから取り上げておいてっていう。

 ()()()()()()()()()()()()し、危なくなったら他の子を庇うようにも言ってたな。

 

 

「つまりそれは、()()()()()()()()()()()ということかい? 聞いたこともない技術だが……

 なるほど、アリウスはそういう研究をしていると。ヘイローを破壊する方法。すなわち()()()()方法を」

 

「……ああ、そしてそういうことを習った。()()とはそういうことを()()場所なんだろう?」

 

「全然違う。学校はみんなで遊んでご飯を食べて温泉に入るところだよ!」

 

「なっ……!?」

 

 

 アズサちゃんの発言にムカついたので天井から飛び降りる。

 

 それに驚きながらも、すぐさま銃を構えるが、先手はこっちだ。

 私から先制を取るならいたずらごころかはやてのつばさは必須特性だ。優先度+は神特性。

 

 足を引っ掛け銃を奪い、ヘイロー破壊爆弾、無線機を丁寧に剥ぎ取る。

 

 

「あぁああ!!」

 

「大声はダメだよ。バレちゃう。」

 

 

 起き上がりながらハンドガンを抜こうとする手を押さえ、もう一方の腕も手錠をかけて押さえ込む。

 声が出ないように頭を胸で塞ぎ武装を解除しながら拘束。

 

 判断も早いし、戦闘慣れしてて動きも機敏だけど、膂力が足りない。私と競り合うならミカちゃんくらいの力がないと無理だ。

 

 

「……君の最大の欠点は待てができないことだね。犬でももう少し利口に振る舞うというのに……」

 

「一番の問題だったヘイロー破壊爆弾も確保したし、別に良いじゃん。結果オーライだよ。

 あと、アズサちゃん、静かにしてね? 防音加工した部屋だとはいえ大声出しちゃうとバレるかもだし。」

 

 

 アズサちゃんの顔に押し付けたおっぱいをゆっくりと剥がす。

 うん、静かにしてる。

 

 セイアちゃんとお喋りしてた時と比べてめちゃめちゃ緊張してる。

 頭撫でればいいかな……いや、髪のお手入れあまりしてなさそう。せっかく近くにいるんだしやっておこうかな。

 

 膝に乗せ直し、髪に櫛を入れる。

 

 

「な、何をしているんだ……!?」

 

「…………よくあることだから、気にしない方がいい。白洲アズサ、話を続けよう」

 

「こ、この状況で? 待って、まだ理解が追いついてないんだ」

 

「じゃあ、説明すると。セイアちゃんの予知夢でアリウスの襲撃はバレバレ、アリウスが侵入できたのは私が見逃したから。侵入経路的に他のトリニティ生が噛んでそうだけど、こっちの確認は後でいいかな。」

 

 

 セイアちゃんの家に侵入するとなると、正義実現委員会の警備ルートや、

 私が用意してる警備ロボや護衛のヘルメット団の関係で、見つからずに侵入となると相当に難しい。

 

 警備に穴を開けさせた()()がいない限りほぼ不可能だ。

 

 それに、他のトリニティ生が噛んでそうって言った瞬間に、アズサちゃんが反応した。

 

 犯人については……もう分かってる。

 

 

「侵入がバレたのは分かってる。だけど、なんで私は膝の上に乗せられているんだ……?」

 

「……趣味? あとは膝の上なら何かやろうとしてもすぐにわかるし、隠し武器があっても気づけるからね。合理的でしょ」

 

「確かに、腕も後ろ手に縛られてるし、足も押さえ込まれて全く動けない……初めて見る無力化だ」

 

 

 趣味99%だけど納得してくれた。チョロいなこの子。

 

 話を引き戻すように、セイアちゃんの小さな咳払いが響く。

 

 

「……時間に余裕はない。これはアリウスによる襲撃ではなく、アリウスとトリニティの交渉の席だと思ってくれた方がわかりやすいかな。

 不条理で不合理の極まった彼女のせいで論点を見失ってしまったが……話を進めてもいいかい?」

 

「本当にこのまま進めるのか……?」

 

「いいともー!」

 

「黙っておきたまえ……白洲アズサ、一つ聞かせてほしい。すでに前提は覆ってしまったとはいえ……君は()()()になってしまっても大丈夫なのかい?」

 

「…………」

 

 

 本当に進めるんだ。交渉の席を派手にぶっ壊した私が言うことじゃないけど、セイアちゃん、やるな。

 黙っておけって言われたし、静かにアズサちゃんのお手入れでもしておこう。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 その後、セイアちゃんはアズサちゃんの心情を聞き出し……

 私たちはアリウスの現状を変えるためにどう行動すべきかを話した。

 

 

「結論としては、この襲撃は成功したことにする。次に騒動の原因になったミカちゃんに連絡をとって、こっち側に引き込むってことでいい?」

 

「現状の対応としてはそうなるね。夢にできうる限り沿った状態で進めて……予測のつかない事態にならないようにする。

 しかし……よくミカが原因だと気づいたね?」

 

「やり口が短慮だし、壊した配電盤がミカちゃんとかナギサちゃんくらいにしか教えてないやつだからね。他のグループに漏らしてる情報と一致しないから。」

 

 

 セイアちゃんの防衛に関する情報は私以外真実を知らないからね。セイアちゃんにも教えてないし。

 

 

「爆破したらアズサちゃんは戻って。すごい早さで正義実現委員会がやってくるだろうから注意してね。捕まったら台無しだよ。」

 

「……わかった。最後に一つ聞いてもいいか? 

 なぜ、私たちを見逃すんだ。こんな面倒なことをしなくても全員捕まえてしまえば解決するだろう?」

 

「セイアちゃんの夢に沿って進めたいのと、アズサちゃんの言ってたマダムっていうのが一番の黒幕なんでしょ? 

 それを潰すために泳がせてるって認識でいいよ。そいつがいるとセイアちゃんが安心して眠れないからね。」

 

「……理解した」

 

 

 アズサちゃんにヘイロー破壊爆弾以外の荷物を返して、こちらで用意した普通の爆弾の起爆準備を進める。

 

 今後の流れとしては、爆破して、セイアちゃんは私の病院に連れて行ったことにしてゲヘナ大温泉郷に拉致る。

 セイアちゃんは対外的には死亡したことにしておく。葬式までやられちゃうと困るから諦めきれずに治療を続けてるってことにしておこうか。

 これならアリウスもティーパーティも救護騎士団も動きにくいだろう。

 

 ゲヘナに連れて行く理由は、トリニティ……ティーパーティの目は色んな学園に届いているけど、ゲヘナ相手だとそれほど深く入り込めていない。ここに来る直前にクラウンに頼んどいたから防諜対策もバッチリだ。

 アリウスもまさかゲヘナに逃げ込むとは思うまい。

 

 その後はどうしようかな、私の所属の問題が残ってるんだけど……ゲヘナには喧嘩を売るために入学したってことになってるし、このまま居続けるわけにはいかない。

 トリニティに帰るのも動きづらくなるし面倒だ。サンクトゥス分派*3の舵取りとかやるの嫌だよ。

 

 ミレニアムか、アビドスか、山海経、百鬼夜行、オデュッセイアにハイランダーとレッドウィンター、仲が良い学校ってだけでも結構な選択肢がある。

 D.Uの学校は……クラウンの連邦生徒会長秘書のコネで入ったみたいで嫌だしな……

 

 

「発破よーい、3、2、1……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
ウルトに寝かしつけられてぐっすり。携帯は取り上げられている。

*2
ウルトクラウン キヴォトス中の食品業、配送業を牛耳る恐ろしい企業。トリニティ内での市場シェア率は98% 別名義でIT、医療、工業、宇宙にも手を出している。 なおウルトクラウン社以外は全てクラウン(ウルト*テラー)が起業した。

*3
サンクトゥス分派 ティーパーティを構成する3つの分派のうちの1つ。セイアとウルトはここの所属。ウルトは中学時代、サンクトゥス分派の生徒会長をやっていた。




久々の投稿になってしまい、申し訳ございません。

感想や評価があれば書く原動力になりますので、よければお願いします。(復帰したのも感想のおかげ)
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