トリニティ総合学園 議事堂
セイア襲撃事件から翌日
「……では、貴方がセイアさんの部屋に着いた頃には下手人は姿を消しており、犯人を推測するための情報も何も見つからなかったと」
「そうだね。私が着いた頃にはもう……」
あの後、予定通りにアリウスの子達は作戦が成功したと思い込んで退却し、私はセイアちゃんを連れたフリをして病院に急行した。
当の本人はゲヘナ大温泉郷でカスミちゃんと一緒に温泉に浸かっているだろう。
クラウンに護衛は任せたし、多分大丈夫でしょ。
あいつの使う謎の認識阻害能力はキヴォトスにおけるトップハッカー集団であるヴェリタスでさえ太刀打ちができないから、誰にもバレずにゲヘナに辿り着くことは容易だ。認識するには脳に瞳が宿ってないとダメらしい。ブラボかな?
「ねえ? 嘘だよね? なんで、そんな顔して、そんな事言うの? 全然面白くない。だって、私はそんなこと……どうして?」
「私のせいだ、お姉ちゃんがいれば大丈夫だって、思い込んだ、私の、ユメさんの時みたいに変えれたはずなのに、私のせいだ、私が動かなかったせいだ、なんで私は」
ミカちゃんの表情がヤバいし、私の妹のティエちゃんは*1真っ青な顔でずっと独り言を言ってるし、空気が恐ろしく重い。
議事堂にはティーパーティの面々、救護騎士団に正義実現委員会、シスターフッドとトリニティの主流派閥が集まっているが、揃いも揃って沈痛な顔で見ていて不快だ。
一番先に駆けつけてきた救護騎士団長のミネちゃんには、セイアちゃんを病院に連れて行くから死んだことにしておいてって伝えたから……
他の子たちはセイアちゃんが死んだと思い込んでいる。
どこからアリウスに情報が漏れるかわからないし、ひとまず死んだことにしておきたい。
でも一部の、セイアちゃんと仲が良くて、心に深い傷を負ってしまう子には生きてるって知っておくべきだ。
私の嘘はセイアちゃんを守るため、アリウスを救うための嘘で傷つけるためのものじゃない。
発言が疑われるのも困るが、私の全キヴォトスが涙する名演ぶりにも困る。
負担の大きいティーパーティの2人と私の
「……何故、間に合わなかった。などとは言いません。貴方とセイアさんの仲は知っていますし……それが一番辛いのは貴方自身でしょうから……」
ナギサちゃんの優しさが辛い。
敵を騙すならまず味方からでした〜、ごめんね〜とか許される空気じゃないよ。
でも、もうやるしかない。
人を殺す方法を学ぶために学校がある。なんて言ってしまう子がいる現状を変えるためには。
アリウスを潰すのではなく、アリウスがああなってしまった原因を潰さなくては。
嘘まみれの事情聴取は終わった。
やり切った達成感と、嘘で皆を傷つけた。という罪悪感が私を苛む。
悲しい嘘は苦手だ。すごくつまらないから。
……それもこれもアリウスのマダムとかいう黒幕が全部悪い。この私に嘘をつかせた代償は大きいからマジで覚悟しとけ。
まだ見ぬ黒幕に義憤を燃やし、体調不良で中座したティエちゃんの元へ急ぐ。
精神的に脆い子だってことはわかってたけど、倒れるのは想定外だった。
途中でヒナタちゃんに連れられて出て行ったけど、お姉ちゃんとして、たった1人の肉親としてとてもとても心配だ。
議事堂すぐそばの医務室……いた。今にも死にそうな顔色してるけど、起きてるね。
医務室に常駐していた救護騎士団の子と会釈を交わしてすれ違い、大事な私の家族に優しく声をかける。
「や、うちの子大丈夫そう?」
「あっ、ウルトさん!ええっと、その、救護騎士団の方は身体に異常はない、と仰っていたんですが……」
「……ヒナタ、大丈夫、……心配かけてごめんなさい。少し、立ちくらみしただけで、……なんでだろ、朝ご飯食べなかったせいかな……」
誰の目にも明らかな空元気。
その身長に見合った小さな手は平時と比べ、とても冷たい。
ここに来るまでに自販機で買ったホットチョコレートを押し付けて、金色の髪にそっと触れて、撫でる。
症状を見るにストレス起因の迷走神経反射で倒れちゃったんだろう。
寒気がしてお腹も痛くなるし、暖かくて甘いものを飲んでゆっくり休んでほしい。
「悪い子だね、私がゲヘナ行ってる間ちゃんと食べてた?」
「……食べてる。今日くらいだよ、食べなかったのは。……お姉ちゃんが悪いんだよ?あんなことがあったのに、帰ってこないから」
「後始末が大変だったからね。
ヒナタちゃん、妹のこと助けてくれてありがとね。……これから秘密の家族会議があるから少し外して貰える?すぐ終わるから。」
「……ああっ、ごめんなさい!気が利かずに!えっと、それでは神のご加護がありますように……な、何かあればいつでも呼んでくださいねっ!」
わたわたと荷物をまとめ、慌しく出て行った。
悪い事しちゃったな。……でもセイアちゃんの実情を知っている人は少ければ少ないほどいいから。
ヒナタちゃんを見送ってから、まだボーッとしているティエちゃんを抱きしめる。
外に聞こえないようにするにはこれが一番だ。
「……ごめんなさい、心配かけて、辛いのはお姉ちゃんなのに……」
「別に良いよ、お姉ちゃんだし。それと、大声出すの禁止、復唱するの禁止ね。」
「えっ?」
「……セイアちゃんは温泉旅行中。*2」
「……なんて?」
「声出さないで、もう一度しか言わないよ。セイアちゃんはゲヘナでパジャマパーティしてる。」
「……???」
よし、伝えるべき事は済んだし、次はミカちゃんとナギサちゃんだ。
秘密を共有するとなんと気が楽になることか。
肩が軽い。翼は生えてないけど空だって飛べそうだ。
面倒ごとはさっさと終わらせてゲヘナに帰ろう。
でも、帰る前にハナコちゃんと会っておきたいな。心配してそうだし。セイアちゃんのことは説明しなくても察するだろうけど、念の為ね。
「じゃ、私は出かけるから。他の子には秘密にしといてね。」
「まって、待って、ほんとに待って。温泉……パジャマ?……えっ?」
「独り言も禁止、あと、ヒナタちゃんにしっかりお礼言っておくんだよ。」
「ええ…………?」
セイアちゃんが単身でゲヘナに行ってカスミちゃんと温泉に浸かる創作はここくらいしかないと思われる。
健やかに育ってくれ……
書こうかと思ってる間話について 原作開始時点まで話を飛ばすので気になるものがあれば感想かアンケートをポチってください
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