ラスボスが増えてるブルーアーカイブ   作:シフィ

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セイアのゲヘナ旅行 その2

 

 ゲヘナ学園 風紀委員会 廊下

 

 

 フウカちゃんを攫った美食研究会の情報を得るため、セナちゃんと別れた後は風紀委員会へ向かった。

 

 相変わらず忙しそうに風紀委員が廊下を走り回っている。

 入場ゲートを万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)の生徒証で通り抜け、委員長室へ足を進めると丁度よく風紀委員会の行政官様が扉の先から現れた。

 

 私の顔を見るなり、げんなりとした顔でこれ見よがしにため息を吐く。

 好かれるような事をやってないとはいえ、私の繊細なハートに傷が入っちゃいそうだ。損害賠償としてヒナちゃんを請求したいね。

 

 

「風紀委員会をうろつくことには、もう文句を言う気力も湧きませんけど……いったい何の用です? 

 好き放題遊び呆けているあなたと違って私たちは忙しいのですが。

 それに何ですかその格好は、頭痛の種を一度に何個も見せないでください」

 

 

 横乳丸出しで首輪と手枷つけた女に格好の指摘をされたくないんだけど……

 うちの横乳見せてるお姫様はいつもの服じゃないので、この場で乳を出してるのはアコちゃんだけだ。

 

 万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)の黒いコートをばさっと広げ、中に着たティーパーティーの白い制服を見せびらかすように決めポーズ。

 ……片手でピザ箱持ってるからイマイチ決まらないな。

 

 

「カッコよくない? 光と闇が備わり最強に見える〜って感じで。」

 

「いえ、頭がおかしいようにしか見えませんけど……」

 

「ひどい。」

 

 

 セイアちゃんもアコちゃんも馬鹿を見る目を私に向けてくる。

 

 万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)とティーパーティーの融和という高尚な目的を持ったこの服装を批判されるとは。

 よっ、エデン条約の体現者! とか私にしかできない格好! とか褒めてくれても良いのに。

 

 ナギサちゃんなら褒めてくれそうだし、あとで写真送っとこ。

 承認欲求なんて満たせる時に満たしとかないとね。

 

 

……私はカッコいいと思うんだけどな、まあいいや、ヒナちゃんに用事あるから横通るね。」

 

「あっ、待ちなさ」

 

 

 返答を待たずに押し通る。

 セイアちゃんを先に室内に押し込み、その後を滑り込むように入室。

 

 委員長室内には目論見通りヒナちゃんがいた。

 

 他の風紀委員に指示してて忙しそうだけど、アコちゃん相手じゃ話が進まないし。

 

 

「いぇーい、ヒナちゃんお昼ご飯食べたー?」

 

「……ウルト? ……少しだけ待ってて」

 

 

 指示を受けた子たちが慌ただしく立ち去り、私とセイアちゃん、ヒナちゃんと後を追いかけてきたアコちゃんの4人になる。

 

 室内には数えるのも嫌になりそうなほどの書類と空のマグカップ。食べ物の匂いは手元のピッツァ以外に漂っていない。

 となるとご飯は食べてなさそう。

 

 中央のテーブルの書類を退けてマコトちゃんからパクってきたピザ箱を置く。

 蓋には赤い背景に王冠が描かれており、ピザクラウンと私の傘下でやってる店の名前が刻まれている。

 

 

「ピザ?」

 

「うん、マコトちゃんが風紀委員会の領収書でピザ頼んでたからパクってきた。あと14枚あるから別口で届けさせるね。」

 

「つまり、私たちが忙しく働いているうちにあのタヌキは風紀委員会の経費でピザパーティーを開こうとしていた。ということですか。

 いつもの事ながらしょうもない嫌がらせばかり……他にやることはないんですか?」

 

「私に聞かれても困る。今日は万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)寄ってないから知らないよ。」

 

 

 セイアちゃんを観光に連れて行くという何よりも大事な仕事がある以上、他のことは後回しだ。

 せっかくゲヘナに来たんだからここがどんな場所なのか体験しておかないと勿体無い。

 温泉郷に籠ってゲーム三昧とか健康によくないし。

 

 

「あまり時間は取れないけれど、昼食くらいなら問題ない。要件はそれだけ?」

 

「風紀委員のお手伝いをしようかと思ってね。食べながらでいいし、開けちゃおうか。」

 

 

 ピザ箱を開け、湯気が立ち上り食欲をそそる香りがあたりに広がる。

 4人分の皿を振り分けて、各々が手をつけ始める。

 

 ……2()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 神秘の強いヒナちゃんなら気づくかもしれないと思ってたけど、そんなこともなかった。

 一緒にピザ食べてるのに気付けないってクラウンの謎の認識阻害はどれだけ強力なのやら。

 

 電子的に強力なのは知っていた。宇宙開発事業とかいうミレニアムが黙ってなさそうな事業の最先端を突っ走ってる上、大量の人工衛星やら宇宙戦艦も作っているのに誰にもバレていない。

 ヴェリタスの部長、天才美少女ハッカーである明星ヒマリでさえ、クラウンの宇宙開発について全く知らないから。

 私からヒマちゃんに尋ねてやっと()()()()()()()()()()()()くらいだ。

 

 尋常の技術ではない。

 セイアちゃんの予知夢や、私の星呼びのようにキヴォトスには科学で説明のつかない現象が数多く存在する。

 

 クラウンが私の未来の姿である以上、私にもできることなのかもしれないが、微塵たりとも理解できない。

 私はクラウンに教えられたこと以外、何をやっているのか全く知らないのだ。

 

 わからないというのは怖い。だけどあいつは私だ。

 未来の自分が何を考えているかなんてわからないけど、きっと今の私に恥じないように生きていると信じるしかない。

 

 同じ食卓を囲んでいるのに1人だけが孤独。

 トリニティでたまに見る意図的な無視でもなく、ただ気にされない。

 

 

「カスミくんで実験してわかっていたことではあるが。こうも気にされないというのは恐ろしいね、まるで自分が誰の目にも止まらず忘れられてしまう石ころにでもなったかのようだ。

 先程、アコ行政官と手をぶつけてしまい謝られたが、それでも私が▫️▫️▫️▫️▫️▫️(百合園セイア)だと気づくことも、共に食事をしている相手が誰であるかを気にすることもなかった」

 

「何ちょっと不安そうな顔してるの。口の横にソースついてるよ? それとも▫️▫️▫️(セイア)ちゃんは甘えん坊さんだから私に拭って欲しいのかな?」

 

 

 ぐいぐいとナプキンで頬を拭う。その行為に安心したかのように、不安そうだった顔が和らぐ。

 

 こうやって自分から正体をバラすような発言をしても、ヒナちゃんとアコちゃんは気にも留めない。

 食後にコーヒーでも淹れましょうか? と尋ねる声が私たちにかけられるが、その3人目が誰であるかも気にしない。

 最初から最後まで一緒にいたのに、まるで背景であるかのように扱っているその状況に恐怖すら感じる。

 

 こんな真冬にホラーなんて要らないんだけど、せめて夏にしてほしい。セイアちゃんが風邪ひいちゃう。

 

 

「ヒナちゃんにバラしちゃおっか。言いふらしたりしないだろうし、教えなくても私の素振りを見て気づいちゃいそうな子だから。」

 

「随分と空崎ヒナのことを信頼しているんだね?」

 

「不安の次は嫉妬? そんなこと気にしなくても1番はセイアちゃんだよ。」

 

「……それはただの自意識過剰だ。

 私が気にしているのはトリニティの内情を明かすことに対しての心配。

 空崎ヒナの人となりは何度か夢で見たから知っている。彼女の苦心や苦悩、力あるものの義務とでも言うかのように苦労を重ねる姿は痛ましくさえあった。

 

 しかし、彼女は部外者だ。私の生存はごく一部のものにしか知らされていない極秘事項、これが外に漏れてしまえばアリウスに関するこれまでの努力は全て水の泡だ。そのリスクを背負ってまで教える価値があるとは思えない」

 

 

 理屈から考えればセイアちゃんの言う通りだ。教えたからといってアリウスの事態が好転するわけではない。

 アリウス関連の予知夢について伝えて、協力を仰ぐとしても、セイアちゃんの生存を伝える必要はない。

 

 しかしだ。大事なのはそれ(アリウス)じゃあねえのさ。大事なのは過程。

 その過程でセイアちゃんが何を経験し、どれだけ楽しめるか。

 救ったことに責任があるとは思わない。しかし、好きな子に隠れ潜むだけのつまらない生活をさせるつもりもない。

 

 

「そんなに気にしなくても大丈夫だよ。ゲヘナ生の中で1番エデン条約に協力的な子だし、なんなら手を貸してくれるかもしれないよ? 

 それに折角の観光なんだから、私以外とも話せた方が楽しいじゃん。ゲヘナの有名人といえばヒナちゃんなんだし、喋れるチャンスを逃す手はない。

 アリウスにバレたらバレたで何とかするよ。」

 

「君ね……反論する気もないが、言い出したら他の意見を聞かない上、感情論ばかり優先する悪癖は改めた方がいい」

 

 

 よっしゃ論破した。

 

 私以外にも話せる子がいた方が健全だし、私だけじゃ不安は払拭できない。

 そう考えると事情を知ってる他の子を連れてきた方がよかったかな。

 反ゲヘナのミカちゃんは論外として、クラウンの力についても知ってるティエちゃんはありだったかも。

 

 モモトークでヒナちゃんを認識阻害の対象外にできるかクラウンに確認したところ、屋外に出てれば可能との返答があった。

 私が隕石落とす時に衛星写真みたいな視点で俯瞰できるのと同じように、こいつも宇宙からの視点持ってるんだろうな……私じゃ人の判別どころか自治区の判別すら難しいのに。

 

 教えるとなるとアコちゃんが邪魔だな。

 言いふらしはしないだろうけど、弱みを握ったらつけ込んできそうな子だし。

 

 まっずい珈琲を仏頂面で飲んでいるヒナちゃんとそれを淹れた張本人に、美食研究会の居場所を知らないか、と声をかける。

 

 

「何故それを私たちに? 直接尋ねればいいじゃないですか」

 

「私が給食食べ損ねちゃったのってフウカちゃんが美食研に攫われたからでしょ? 報復だよ、報復。食べ物の恨みは怖いの。

 これから喧嘩を売るっていうのに騙し討ちをするような真似はしたくないからね。

 あの子達の友人じゃあなく、敵、風紀委員の一員として立ち塞がってやろうってこと。」

 

「それが最初に言っていたお手伝い、ね。面倒な仕事が減るなら大歓迎よ」

 

「やったあ。」

 

 

 そういう事で私はティーパーティー兼万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)からゲヘナの風紀委員にジョブチェンジした。

 

 

 





なんか3話で収まんなかったです。

もうちょっとだけ続きます。

書こうかと思ってる間話について 原作開始時点まで話を飛ばすので気になるものがあれば感想かアンケートをポチってください

  • アズサ入学準備(ウルトミカアズサでデート
  • セイアのゲヘナ旅行
  • セミナーにぶち込まれるコユキ
  • 留年回避するトキ
  • 特異現象捜査部編
  • ユズとクソゲーを作るセイア
  • わくわく温泉大作戦(ヒナイベ、後日譚)
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