私は考えた。どうすればセイアちゃんを安全に守りきれるか。
私という変数が存在する以上、セイアちゃんの予知夢が大きく外れ、セイアちゃんに予期せぬ危険が及ぶ可能性がある。
私は考えた。あの未来の自分であるクラウンの予想を裏切って裏をかけるか。
あいつの予想通りに物事が進み続け、私の人生なのに、既定路線を歩まされているようでムカついたので。
私は考えた。この
セイアちゃんがお薬を飲む様になってからお泊まりイベントもなかったし、図書委員会の仕事も自分でかなり減らしてしまったので。
そうして、私は思い至った。
思い立ったが吉日という事で、
私は今、ティーパーティの襲撃の作戦……練るのは面倒くさかったのでもうゴリ押しでやっちまおうとトリニティの放送室に向かっている。
トリニティの豪華絢爛な廊下を肩で風を切りつつ歩く。
流石に1人で正義実現委員会全員を相手にするのは無茶だとわかっているので、ウルトユートピア社*1の兵器宅配サービスを使い、大量の爆撃ドローン、武装タレットなどを手配した。かなり割高なサービスとなっているが、私の会社なので無料だ。
今持っている銃は、撃つくらいなら殴るか、石を投げた方がいいほどのゴミなので、武器は倒した子から拝借しようと思う。
ツルギちゃんとハスミちゃん、ティーパーティを襲撃するとなるとミカちゃんが特記戦力として挙げられるが、どう対処すべきかわからない。できる限り無視するようにはするが……
まあ、後は、成り行きでやっちまおう。
放送室に着いた。
お昼の放送中だが、ここは失礼してしまおう。
足音、気配を完全に消してから防音の重めの扉を開く。
中には3名の放送部員。
武器は棚の上に乱雑に放置されている。
アサルトライフルに、サブマシンガンが2つ。武器名は……飾り付けがすごいせいで武器の原型がよくわからない。
この調子だと予備弾倉も棚の上に転がっていそうだ。とりあえずサブマシンガンを二丁拝借する事にして、放送中の部員に近寄る。
ちょんちょん。
「えー続きまして、本日の紅茶占いのコーナーに〜」
ちょんちょん。
「〜〜となりますので、2月が誕生日の方は〜ちょっと、なに! 今放送中だから! 」
ちょん……ぎゅむ。
「痛っっっっった!?!?!?」
爆音の放送が流れた。
作業に集中していた放送部員たちは一斉に喋っていた部員の方を見る。
「やっほ。マイク借りていい?」
「は? えっ? 何? ウルト様?」
「えっ? 今日って何かゲスト呼んでたっけ?」
「いや、呼んでないよ! 畏れ多いし!?」
何だかわちゃわちゃしだしたので、そのままマイクを借り、放送の範囲を
音量は、こんなもんでいいか。
マイクに口を近づける。
冠ウルトによる。
ティーパーティ襲撃を開催いたします。
目標は百合園セイアの誘拐。
……よし。
これでもう後戻りはできない。
悪ふざけだと判断されたとしても、必ず正義実現委員会が飛んでくるだろう。
それをぶっ飛ばせば、応援が入り、さらにそれもぶっ飛ばせば応援が来る。
おかっぱ黒セーラー服ちゃんのわんこそばが完成しちまうなあ!?
「ちょっ!? ウルト様!? 何やって!?」
「こ、これはスクープよ! カメラ回して!!!」
「あわわわわわわ」
騒いでいる放送部の子達を無視して、パクったサブマシンガンを両手に、放送室の分厚い壁を蹴り飛ばす。
凄まじい轟音と共に壁が吹き飛び、壁の内側に仕舞われていた線なり何なりが瓦礫と一緒に吹き飛ぶ。
この蹴りに巻き込んじゃった子はいないみたいだね。
こんな事をやっておいて何だが、向かってくる気のない子はあまり傷つけたくはない。
もし、この件でセイアちゃんに責任を追及されたとしても、私が全責任を取れば何とかなるような範囲の被害に収めたい。
ま、多分巻き込むだろうし無意味なんだろうけど。
今、セイアちゃんはティーパーティ本部から少し離れた庭園にいる。
しかしセイアちゃんの元に直行しても面白くないし、ティーパーティ本部を襲撃してから向かうとしようか。
部室会館*2の壁を吹き飛ばし、トリニティ・スクエアの噴水*3へゆっくりと向かう。
痛そうな弾は弾いたり、避けたりしつつ、投げ込まれた手榴弾は戦車、クルセイダーの砲塔へ向かって全力でぶん投げる。
スコーン!と良い音を立てて戦車の中に投げ込んだ手榴弾が入った。
戦車の中に残っていた砲弾とともに連鎖爆発を引き起こし盛大な花火を上げる。
こいつは楽しくなってきたぜ。
攻撃してくる生徒は正義実現委員会ではなく、ティーパーティやシスターフッドでもない普通の生徒ばかりだ。
正義実現委員会のおかっぱちゃんは何をどうしたらいいのか迷っているようであわあわとしている。
「み、皆さん! 攻撃をやめてくださ、あ痛っ!」
「ぶっ飛ばせー!」
「やっちまえですわー!」
「わーわー!!」
おおよそ、お嬢様高校とは思えないお祭り騒ぎだ。
良いねえ、トリニティにはこういうのが足りないんだよ。政治だとか利権だとか細かい事はどうだって良いんだ。
ゲヘナの生徒も、トリニティの生徒も本質は変わらない。
何かに抑圧されているか、されていないかの違いだけだ。
同じキヴォトスの生徒だということに変わりはないのだから。
盛り上がってきた事だし、
ミカちゃんの呼ぶ隕石に比べて、威力は大した事ないが、私もミカちゃんと同じように
籠っている神秘の関係か、榴弾砲の斉射*4より威力が出ないが、この身一つで出せちゃうので結構便利だ。
「むんっ!」
ヘイローの架けられた青空が揺れる。
私の気合に応えて、寝ぼけていた宇宙がやる気を出した。
……大小様々な隕石がキヴォトスの、このトリニティ総合学園に到来する!
ちゅどーん!
「わー!?」
「きょ、今日も平和と安寧が……きゃー!?」
「な、何ですか。騒がしい……外の人達はまともに静かにもでき……い、いったい何が……うへあぁあ!? 」
何だか見覚えのある人影も纏めてぶっ飛ばしたが、この技は物理的な運動量が大きいだけで、大した威力はない。
いわゆるノックバック性能といったものはすごいが吹き飛んでいる生徒のほとんどが無傷だ。
吹き飛んだ後、地面に落っこちた時の方が痛いかもしれない。
そうやって歩いていると、トリニティ・スクエアの中央。
トリニティに詳しくない人も知っているであろう有名な噴水に辿り着いた。
……あそこに居る、ピンク髪の乳のデカい女は。
「私……、ずーっとここで待ってたんですよ? ウルトさんと一緒にご飯食べるの」
そうだった。今日はハナコちゃんと一緒にご飯食べる予定だった。
最近、あまりにも暇すぎて、理性がぷっつんしていたが失敗してしまった。
流れ弾がハナコちゃんに当たらないように危なそうな弾は手で受け止めておく。
銃声聞いてやる音ゲーみたいだ。
たまーに神秘のこもった痛い弾が飛んでくることがあるが、ほとんどは無視できるような弾ばかりだし、このままハナコちゃんと対話する。
「う、ごめん。つい……」
「ですから♡……わたしも参加していいですよね!」
発言と同時にハナコちゃんのアサルトライフルが火を吹き、大量の銃弾が私の腹部目掛けて飛んできた。
ハナコちゃんの銃弾は痛そうだし、受けたくはない。
横っ飛びで回避しつつ、そこら辺に寝てた人から銃、これはP90*5かな?を奪い、構える。
「ハナコちゃんと戦うのは初めてだね。」
「はい♡……ウルトさんが正義実現委員会のツルギさんと楽しそうに遊んでるのを見て、ちょっとだけ嫉妬していたんです。友だちと撃ち合うなんて初めてですし緊張しちゃいますね♡」
上空から飛んできた砲弾は最頂点に到達し、速度が0になったところを迎撃ドローンに撃ち落とさせる。
私が一人のときはいいけど、ハナコちゃんと遊んでいる時に横槍されたくない。
くるくると噴水の周りを走りながら、ハナコちゃんに銃を撃ち返す。
周りでは生徒同士の撃ち合いが始まっている。
既にそこらじゅうで気に食わない相手同士の乱闘が始まっており、派閥を超えた物理的な争いが起きている。
ちらりと見ると以前に虐めを受けたとかでシスターフッドに相談に来ていた子がいじめっ子に手榴弾を投げつけていた。騒ぎに乗じて日頃の恨みを晴らそうと生徒たちの暴走が始まっている。
部室会館を出た直後の方が私に向かってくる銃弾は多かったような気がする。もはやこの乱痴気騒ぎは誰にも止められない。
「……まさか、トリニティがこんな風になるなんて思ってもいませんでした」
「キヴォトスだもん。人の腹を覗き合うような息苦しいのは外に任せておけばいいさ。多分、トリニティくらいだよ。こんなにめんどくさいの」
「ふふっ♡そうかもしれませんね」
バンバンドカンドカンと周りの音がかなり騒がしい。
救護騎士団の人たちがぶっ倒れている生徒たちを引きずっては消えていく。
私が起こした騒ぎで一番迷惑かけてるの救護騎士団だよね、後でお詫びに行かないと。
……ふと、
右耳にジュっと焼けたような痛みが走る。
耳はもげなかったと思うけど、かなり痛かった。
この痛みはハスミちゃんか。
「……この騒ぎの中で避けますか」
「くひっきひひひ……あれは私がやる」
「……すみません。ツルギ」
正義実現委員会来ちゃった、そうとなればこの短期間で建物の屋上なんかに配備させたタレットを起動した方が良さそうだ。
全部ツルギちゃん狙いでいいだろう。私一人では正義実現委員会の二人相手に時間稼ぎが精一杯なのだから、使えるものは使ってしまう。今の乱闘なら勝機はあるはず。
タレットでハスミちゃんや後衛のおかっぱちゃんたちを狙ってもいいんだけど、ツルギちゃんを何とかしないとティーパーティーの本部には辿り着けないだろう。
「ごめんね、ハナコちゃん。勝負はお預けみたい。」
「それは構いません……が、お一人で正義実現委員会とやり合うつもりですか?」
「まあ、何とかならなかったら捕まるだけだし、深刻に考える事ないよ。」
心配そうな顔をしながら離れていくハナコちゃんを見送る。
……銃の残弾が心許ないので、近くにあったミニガンを拾った。大きいし接近戦には向かないけど、ツルギちゃん以外の正義実現委員会の子を牽制するのにもってこいだね。
そして、肝心のツルギちゃんとやり合う時は基本的に拳だ。
タイマンだと私の火力じゃ倒しきれないし、投げたり殴ったりでお茶を濁すしかなくなる。
でもまあ、この数のタレットを用意すれば戦闘不能には追い込める……と思いたい。
「ウルトさん。一体なぜこのような真似を? 貴女のせいでトリニティがまるで……っ」
「ゲヘナみたいでしょ。」
「きひゃははあっ!」
ツルギちゃんのショットガンを受けないように一息で近づき、銃口をかち上げる。散弾が花火のように舞い散り、もう一丁の銃口がこちらを向く前にミニガンのトリガーを引き、殴りつけるようにして斉射する。
ハスミちゃんや、他の子達の射撃はツルギちゃんを盾にするように動いて阻害するが、ハスミちゃんの狙撃だけは的確に身体を掠めていく。
ツルギちゃんは何発銃弾を喰らっても堪える様子がない。屋上に用意したタレットは12.7mm弾をばら撒くヤバいブツなのだが。
位置のバレてしまったタレットは既に幾つか壊されてしまっているし、早めに切り抜けないとマズい。
オーバーヒートを起こしたミニガンをツルギちゃんに投げつけ、そこら中に落ちていた手榴弾や閃光弾を一斉に放出。
追加で空に待機していた爆撃ドローンで絨毯爆撃を行う。
おらっ! 追加でメテオじゃ!
気合をグッと込めてあたり一体に小惑星やスペースデブリを降らせる。
私が宇宙から呼んだ物たちが大気に触れ上空を真っ赤に染めた。
視界が真っ白になる程の爆撃と流星の嵐の中、私はただ一人ツルギちゃんの懐に突っ込む。
「ひゃぁっっはあああ!!」
「おりゃー!」
ツルギちゃんのめたくそ痛い銃弾を肩で受けつつ、飛び込んだ勢いのまま拳を顔面にぶち込む。
女の子の顔面を殴るとかルール違反もいいところだが、そうでもしないと勝てそうにないので許してほしい。
顔面に拳をぶち込んだ瞬間に、もう一歩踏み込み、力を逃しようがない地面に向けて叩きつける。
爆撃や銃撃でほとんど剥げていた石畳が、衝撃で宙を舞う。
……3mは地面に叩き込んだ。
これなら流石のツルギちゃんでも数分は動けないだろう。
耐久力は凄まじいけど、私やミカちゃんほど怪力ではないし、辺りの惨状なんかも考えると掘り起こすのにも時間がかかるはずだ。
ゼロ距離射撃された左肩が痛い。
私は物理的な攻撃に極めて強い、というか影響を受けないが、神秘の乗っている攻撃には弱いのだ。
ツルギちゃんはかなり神秘が強い方だし、後10分くらいは左肩を労ってあげた方が良さそう。
爆撃による煙幕が途切れる前にティーパーティの本部へ急ぐ。
早くティーパーティの役員をぶっ飛ばして、セイアちゃんの元に行かねば。
《作中の強さランキング》
???≧クラウン(ウルト*テラー)>>>>>>>>>>(2周目生徒の壁)>>総力戦ボス等>各学園のトップ層(ホシノ、ヒナ、ツルギ、ネル、ミカ)≧ウルト(財力無双)>>ウルト(通常)
ウルトは性質上、神秘のない機械に対してめっぽう強いですが、神秘が強めの生徒にはとても弱いです。(超特殊装甲)
攻撃にも神秘が全然乗らないため、見た目の派手さに対して威力がありません。
ミカを超える怪力と背丈のデカさで、ボコボコにすれば良いのですが一方的に殴るのは女の子としてどうなのか、ということで避けています。