ハスミちゃんの目から逃れ、ティーパーティーの本部に到着した。
入り口では正義実現委員会のおかっぱちゃんが門番をしていたが、頭をごっつんこさせて寝かせておいた。
ツルギちゃんとの戦闘で銃を捨ててしまったので、おかっぱちゃんのブルパップのアサルトライフル、EM-2を頂戴した。
ブルパップの銃はグリップが奥にあるし、ストック側の方が長いせいで撃ちながら拳で殴りにくい。
私の力ならどんな銃も片手で乱射できるのでストック側が短い方が好みだ。
走りながらマガジンを確認。全弾入ってそうな感じ。弾の種類は尖ってるしAP弾*1っぽい。
ミカちゃん相手だとHP弾*2とかストッピングパワー強めの弾が良かったけど仕方ない。
それと、色んな子の銃を使ってはポイ捨てしているが、誰の銃で、どんな銃だったか記憶しているし、古書館からつれてきた光学迷彩付き静音お掃除ロボット*3に捨てた銃は回収させている。
修理して持ち主に返すので許してほしいなって。
「止まりなさい!」
角から飛び出してきたティーパーティーの役員ちゃんが発砲。
痛くなさそうなので無視して突っ込み、壁に向かって蹴り飛ばす。
蹴るだけじゃ起き上がってくるだろうし、落とした銃を拾いコッキング。走り去りながら頭に2発撃っておく。
ティーパーティーの子って基本ひ弱だし、あのくらいでも起き上がってこれないだろう。
思っていたより道中の数が少ないが、先の方で多くの気配を感じる。
ティーパーティの重役がよく居るテラス席かな。
外から見える場所だと狙撃されそうで嫌だけど、行くしかない。
煙幕は持ってるけど、どう使おうか。
テラス席前の扉に着いた。
扉とか全員が照準合わせてるだろうし、ちょっとだけ違う入り方をしようか。
扉に向かって時限信管の手榴弾をポイポイ。
近くの壁にも爆薬をセットし、ついでに煙幕も張って突入時に注視しているであろう扉の周りをぐちゃぐちゃにする。
廊下の壁を駆け上がり、無駄に高い天井付近の壁を蹴り破った。同時に扉が爆発で吹き飛ぶ。
この位置なら外からの狙撃はできないだろうし、下と上で撹乱できたはずだ。
蹴り飛ばした瓦礫の間から敵を確認。……数は40ちょっと、高価なテーブルや椅子をバリケードにしている。
中にはミカちゃんとナギサちゃんもいるね。
天井まで駆け上がった以上、地面に降りるまでが極めて無防備だ。
私の姿は瓦礫や煙で多少は欺瞞できているだろうが、ほぼ丸見え。
壁を蹴り破った後、三角跳びの要領でテラスの天井を蹴る。
大きな亀裂を天井に刻みつけて目標地点に向けてぶっ飛んだ。
銃弾が何発か掠めるが対して痛くない。
ミカちゃんは撃ってきていないみたいだね。
着地地点にいた役員ちゃんを足蹴にして、私は敵陣のど真ん中に降臨した。
……なんかこの状況で紅茶飲んでる人いるんですけど。
「わー、ナギちゃんの言ってた通り。思ってたより派手な登場だったけど、ほんとに来たね!」
「当たって欲しくない予想というのは、良く当たってしまうものですね……」
ナギサちゃんが手を挙げ、銃声が一斉に鳴り止む。
……紅茶を持ったまま。
あんまり話したことなかったけど、ここまでの紅茶狂いだったの? やべー女だ。
「一つ問いたいことがあります。……なぜこのようなことを? 事の次第によっては貴女の退学処分もあり得ます」
退学処分? ……なんだか面白そうだぞ。
トリニティ以外にも他の学校を見てまわりたいと思っていたが、現在の立場、そして私の財力に群がる蛆共のせいで転校はできなかった。
しかし、退学処分となれば上記の問題は解決する。
それにセイアちゃんを守るだけなら外からでもできるし、クラウンの監視も学校を辞めた方がやりやすい。
こんな事をしでかした理由については、暇だったから、クラウンの裏をかきたかったから、そして……
襲撃がなくなっちゃうとアズサちゃんに会えなくなるのがちょっと残念だけど、セイアちゃんの安全には替えれない。
どう言い訳するかについては、「セイアちゃんの予知夢の関係で。」と答えてしまえばうまく収まる可能性もあるが、納得してもらえなかった時はセイアちゃんに襲撃の責任が降りかかるだろう。
と、なるとやはり。
「私の
暇だったから。というのは付けないでおいた。
こーんな良さげな決め台詞シーンでふざけるのは勿体無い。
踏んだままになっていた役員ちゃんから足を退けると這うようにしてバリケードの後ろに逃げていった。
そしてナギサちゃんが口を開こうとする前にミカちゃんの声が響く。
「あははっ!だってさ、ナギちゃん。どうするの?」
「……野蛮な行為は好きではないで」
「でもでも、すっごいよね〜たった1人でティーパーティーを襲おうなんて。そんなおバカさんな事思いついた人っていないんじゃない?」
ミカちゃんがすごい喋る。セリフを被せられたナギサちゃんのティーカップがぶるりと揺れた。
……おっと?
「話さないというのであれ」
「私だってセイアちゃんや、ナギちゃんの事うるさいなあって思った事はあっても、ティーパーティーに喧嘩を売ろうなんて思いつかなかったよ!」
「……ミカさん」
「あれ? そういえばウルトちゃんって成績すごい良かったよね?
頭の良い人って変な人が多い、っていうけど。やっぱりそうなのかな?
セイアちゃんもちょっと変だし」
「…………」
「うーん。おバカな私にはよくわかんないけど、もしかしてすっごい壮大な理由があったり?
でもウルトちゃんって適当だし、変なことばっかしてるし、暇だったとか?
流石にないよね〜もしも暇だからティーパーティを襲う。
なんて
「………………。(ぷるぷる)」
「あ、でもそういう事やっちゃうからゲヘナなのかな?
いつもいつも私たちに迷惑をかけてくるし、この前だって」
ガチャン!
ナギサちゃんの持っていたティーカップがテーブルに叩きつけられた。
周りにいたティーパーティー役員や、正義実現委員会の子達の肩、ミカちゃんがびくりと跳ねる。
「ああもう五月蝿いですね!?」
「ひぇっ……」
「私の台詞を遮って、さっきからぐちぐちぐちぐちと……! ここは社交会ではないのですよ!?」
「いや、
「黙りなさい!」
ひぇっ。
「でないとその小さな口に……」
「「「…………」」」
それはちょっと美味しそう。
私は心の中で涎を垂らしていたが、辺りはもう戦う空気ではなくなっていた。
……誰一人として、声を発さない。沈黙が痛くなってくる。
なんというか、目を逸らしたくなったのでテラスの外側に目を向ける。
向かいの校舎には
カメラを回している生徒がいるし、唖然としている生徒や、爆笑している生徒もいる。
もしかして、と思いナギサちゃんを見てみると。
喉元に
この様子だとティーパーティーだけじゃなく、他の生徒たちもこのロールケーキ云々のやりとりを聞いていたっぽい。
……醜聞では?
もう全部ぶっ飛ばして終わらせるしかない。
「あー! じゃあ! 戦おっか!!」
無理やり大きな声を出して弛緩し切った空気を追い払う。
銃のコッキングレバーを引き、薬莢が落ちる音を響かせる。
「あ、うん? そうだね?」
空気の移り変わりについてこれていないのか、周りの生徒は照準を合わせることもせず緩くトリガーに指をかけたまま固まっている。
ナギサちゃんは少し顔を赤くして紅茶に口をつけているし、ミカちゃんなんて銃を下ろしたままだ。
もう一声いるな。
「よーし! 行くぞぉ! 覚悟しろティーパーティー!!」
床に全力で足を叩きつける。
建物全体が揺れたかと思うほどの衝撃が辺りに伝わり、日和っていた生徒たちの目を覚ます。
ナギサちゃんが口をつけていたティーカップが空を舞って、紅茶で虹がかかる。
「おりゃー!!」
掛け声と共に適当に弾をばら撒く。
「わわっ!?」
「あっ、皆さん! 撃ってください! 戦闘開始! 」
私たちの戦いはこれからだ!
あの後はティーパーティーの役員たちを千切っては投げ、余っていた爆弾を投げを繰り返し、
ミカちゃんと私の流星対決でナギサちゃんが吹き飛んだり、殴り合いで校舎が半壊するなんてことがあった。
ミカちゃんと途中で合流したツルギちゃんのタッグアタックには流石の私も勝利を諦めそうになったけど、
生まれながらの主人公はやはり
単純な物理であれば、私には効かないし、視界不良なんかも関係ないので逃げてきた。
ティーパーティー本部は倒壊したため、ティーパーティー襲撃は完了したということで問題ないだろう。
残った目的はセイアちゃんを誘拐することだ。
ツルギちゃんとミカちゃんを肉盾にしていたとはいえ弾をくらいすぎてボロボロだし、
なんかもうすんごい疲れたので早く帰ってお風呂に入りたいけど、自分のやり出したことはやり切らなくては。
救護騎士団の人たちが校舎に向かうのを尻目にセイアちゃんの元へ向かう。
……ヤバい。同級生のセリナちゃんと目が合ってしまった。
あの子、私がツルギちゃんと遊んでる時にもよく来るけど、かなり強引なんだよね。見つかったら絶対に治療されるっていうか。
ミネちゃんなんて、治療から逃げようとすると銃撃してくるし、救護騎士団の人たちは怖い。
壊して治すって何。壊さないでほしい。
「あの、大丈夫ですか? かなり酷い怪我に見えますし、早くこちらに……」
「ふふっ、大丈夫だよ、セリナちゃん。これは、名誉の勲章。ってやつだからね。」
「何を言っているんですか! 傷口は放っておくと痕が残ってしまったり、酷い時には腐ってしまうこともあるんですよ!」
「わっ。」
あ、待って、引っ張らないで、左肩もげそうなの。
その後、セリナちゃんにベッドに連れ込まれ、白い布で両腕を拘束された後、嫌がる私に無理やりあんなことやこんなことをした……
その後解放されたのは日が暮れてからで、全身が包帯と添え木にギプス塗れの私はミイラのようになりながら自宅に帰った。
セイアちゃんの位置を確認したが、もう学園内には残っておらず。私の自宅にいるようだ。
保健室に連れ込まれた後、セリナちゃんには「な、何でこんな状態で歩けているんですか!? 全身の骨がボロボロじゃないですか!? このままではヘイローに関わる可能性も……1週間は入院してもらいますからね!」なんて言われたが、なんとか頼み込んで返してもらった。
ヘイロー云々を聞いた時は、マジかよ、普通の人って脆いんだな。と思ったけど、
一緒に保健室送りになっていたツルギちゃんや、ミカちゃんは私より全然軽傷だったらしく、10分足らずで帰っていった。
盾にしてたから私と同じくらい攻撃くらってると思うのに2人とも軽傷っぽかった。
ツルギちゃんなんて、あのミカちゃんの弾当たりまくってるのにピンピンしてるからすごい。
私もカルシウム摂ったから骨が超速で治りはじめたので何とか解放してもらうことができたが、
添木とギプスは明日、自宅までやってきたセリナちゃんが良しというまで外してはいけないらしい。
すんごい邪魔。お風呂入りにくいし、多分外すわ。
ミイラみたいな格好でうちの温泉ホテルに入ったためスタッフの方に心配されたが、適当に話を合わせつつエレベーターに乗る。
……自宅、ホテルの最上階に向かうエレベーターの扉が開き、なんとセイアちゃんが出迎えてくれた。
私のお姫様の顔を見ると疲れが軽くなる。
にへっとしながらセイアちゃんにもたれ掛かったが避けられた。悲しい。
「……」
「やほー、セイアちゃんがうちに来てくれるなんて珍しいね? もしかして自分から誘拐されにきたとか?」
わかり切っていた事だが、セイアちゃんは怒っている。ぷりぷりセイアちゃんのジト目の切れ味がすごい。
エレベーターの扉が閉まりそうになったので、外に出る。
立っていると身長差のせいで話しづらいが、添木とギプスだらけなせいでまともに屈むこともできない。
「……確か、百鬼夜行には正座。という座り方があるそうだね。目上の人物の話を聞く際や、謝罪をする際に使われる座り方だそうだ。成程、敬意を示すにはマナーや立ち振る舞いからだとするのであれば、正座もわかりやすい敬意の示し方の一つであるのだろう。ウルトはどう思うんだい?」
暗に正座しろって言ってる?
右膝の添木が正座をするには邪魔だが、へし折れば座れそうだ。
よいしょっと膝を曲げ、添木をへし折る。
木片が床に飛び散り、セイアちゃんの狐耳が不愉快そうに萎む。
ジト目の温度が下がった。
言われた通り正座したら不機嫌になったんですけど。女の子って難しい。
「……幼稚な君の発想だ、
「かなり良くない? 思ってたよりお祭り感出ちゃって、今後のティーパーティーの防衛なんかには活かされそうにないけど」
最初はもっと、正義実現委員会がどばーっと来て、ティーパーティーが避難して〜とか想像してたんだけど、結果は違った。
私の始めたことが起因になって、そこら中で生徒同士の大乱闘が始まるわ、正義実現委員会は乱闘の対応に追われて全然来ないわ、ティーパーティーは私のこと待ち構えてるわ……
夜中に仕掛けた方が良かった気がしてきた。
でも楽しかったしなあ……
「私がそれを望むとでも思ったのかい」
ポムっと私の頭にセイアちゃんの萌え袖が被せられ、おでこに小さな手が当たる。
多分怒られるだろうな、とは思っていたけど。それもこれも暇なのが悪い。
「君の行為は既にキヴォトス中に広まっている。ああ、そうだクロノススクールの記事の見出しを教えてあげよう。
ポムポムと頭の上で萌え袖をぶつけられながら怒られている。
がっつりカメラ回してる生徒だっていたし、そりゃ広まるよね。
……あれ? 結構まずい?
「醜聞だよ、トリニティの長い歴史の中でも類を見ない、ね」
「歴史に名を刻んじゃった?」
「……まだ巫山戯ているのか、この空っぽの頭は良く音が響くね、この、この!」
頭の上での萌え袖ポムポムが激しくなる。これもしかして叩かれてた?
ひ弱〜……可愛すぎる。
ポムポムの勢いで制服に着いた柔軟剤の花のような香りが広がる。
怒られているのに至福の時間だ。毎日萌え袖ポムポムしてほしい。
シマエナガくんはいつもこの萌え袖の匂い嗅いでるの? ズルい。私も萌え袖に住ませてくれ。
萌え袖ポムポムが数十回続き、不意に途切れる。
「……ふぅ、少しは反省してほしいね」
「うん! 反省した!」
「…………」
私はセイアちゃんパワーで全快した。
フルパワーの今ならツルギ、ミカコンビにも負けない気がする。
目をキラキラとさせて待っていたが一向に萌え袖ポムポムが帰ってこない。寂しい。
「……ウルトに自らを顧みる、なんて事を要求した私が愚かだったよ。君の嫌がる行為……モモトークのブロックの件だが一つ約束をするなら解除してもいい」
「えっ、ほんと?」
以前にセイアちゃんのモモトークにスタ爆*4してからブロックされ続けている。
寂しいし、大したことのない内容をセイアちゃんに送りつけて反応を見るのが私の日課なので生活に支障をきたしているのだ。
「簡単な内容だよ。
「あ、昨日発売したパケモン*5やった? ブロックされちゃってたせいで聞けなかったんだけど、最初のパケモン何にした?」
「モキュロー*6だが、その話は後にしよう。今は君の罪状が優先事項だ」
セイアちゃんってひこうタイプ好きだよね。チルタリル*7をエースにしてるし、可愛い系またはひこうタイプ統一パしか使ってないし。
「君は放っておくと奇想天外な事ばかりする。以前にもトリニティ対ゲヘナの料理対決などと称し、勝手にゲヘナ生を招き入れたことがあったね。
昔から妙な事する前にまず私に連絡を、と言っていたのだが、聞いていないようだからここで明確に約束を結んでおきたい」
「あったねえ。」
ゲヘナの子、イズミちゃんが紅茶部の用意した紅茶にミントソースを入れたせいで銃撃戦になったけど、そこそこ楽しかった。
まともに評論してたの美食研究会*8の会長であるハルナちゃんと部員のアカリちゃんくらいだったのは残念だけど。
それと約束か、前からセイアちゃんには「妙な事をしでかす前に連絡したまえ」って言われているのだ。
あまり変わらないし、ブロック解除されるだけお得まである。
今回の件は衝動的にやってしまったが……
「わかった。連絡する。」
「君のネジが刺さっていない頭のことだから、もう一度言っておくが、必ずだ。わかったね?」
こんな語気強いセイアちゃん初めてだよ。
束縛系彼女みたいになってきた。
「じゃあさ、私からもお願いあるんだけど」
「どうせくだらない事だろうが、聞くだけ聞いてあげよう。なんだい?」
「手、使えないからお風呂いれて?」
「嫌だ」
「なんでー!!」
包帯塗れの腕を振り回して駄々をこねる。
「いっつもセイアちゃんが寝込んだ時は私が色々してあげてるんだから、こんな時くらいいいじゃん!」
「それには感謝しているが……君の怪我、もう治っているのだろう? 何かにつけて誰かしらを風呂に連れ込んでいるが、1人で入ればいいだろうに」
「1人だと暇だし……」
長い髪洗ってる時なんて、スマホ持ち込まないとやってられないくらい
トリートメント浸透するの待ってる時とか、やる事無さすぎるし。
「君ね……はあ、私は帰ることにするよ。お風呂には別の人に介護を頼みたまえ」
エレベーターのボタンを押し、帰ろうとするセイアちゃんのスカートを掴む。
「……」
「セイアちゃんがいい。」
「…………仕方がない」
やれやれ、と萌え袖を垂らしセイアちゃんが戻ってきてくれた。
ちょろいぜ。
その後は一緒にお風呂に入り、駄々をこね続け、何とか一緒に寝た。
一緒に寝た、といっても「暑苦しいから退きたまえ」って端の方に追いやられたけど。
もう冬に差し掛かるところなんだし、くっついてもいいのにね。