「ほれほれ!どうしたこんなものか!?」
「クソがっ!」
現在俺は十二鬼月である下弦の肆と交戦している。
奴の鬼血術も厄介なのだがこれ以上に問題なのが一つある。
「ほれ油断しておると!」
「やらせるかぁ!!」
俺は先輩の前に立ち、奴の攻撃を空斬で真正面から切り落とす。
そう、もう一つの問題は既に動けなくなっている先輩にも攻撃を仕向けてくることだ。
しかも俺は脇腹をやられていつもより動きも鈍い。
状況は見てのとおり圧倒的に不利なのである。
そして奴は防御も固い。
俺が奴に向かって空斬を放つも...
「甘いわぁ!!」
血鬼術、水膜壁!
水の膜によって斬撃が遮られてしまうのだ。
ならば接近戦を仕掛けようとしても...
「こっちも気にかけんといかんぞ?」
血鬼術、水玉!
「ッ!!危ねぇ!?」
周囲に浮いている水の玉が時折不意をついて俺に向かって水のレーザーを放ってくるのだ。
今のは体を捻って回避できたが傷のこともあるし止血はしているが長くは持ちそうにない...
その後奴の距離を詰めようとしたため先輩に攻撃をし再び俺との距離を離してくる。
先程からこれの無限ループとなってしまっている...
「早川ぁ...俺のことはいいから奴の首を切れ...!!」
「んなこと出来る訳ないでしょうが!!」
何かこの状況を打開する策を考えなければ...
現段階で得ている相手の情報は
①遠距離攻撃を主に使う
②周囲のもの(先輩を含む)は何でも使う狡猾さ
③そして初手の不意打ちから分かるように俺の全速力は奴の目では捉えられない
の3つだろうか。
しかし今の負傷した俺ではいつものように動けない...!
頭を悩ませていたその時俺は桑ジィとの会話をふと思い出した。
『瞬よ。お前は雷の呼吸の極意というものを知っておるか?』
『は?そんなの知るかよ俺は使ってないんだし』
『そういうことじゃない。どうすれば雷の呼吸の特性を十二分に発揮できるかと聞いておるんじゃ』
『それなら最初からそう言えよ...格好つけなくていいから...ってイデデデデ!頭をグリグリすんな!!』
『そういうのはいいんじゃ!それで?何だと思う?』
『え~~?より速く動くこととか?』
『ふむ、それだと40点じゃの』
『なんなんこのジジィ?』
『答えは『
『ほ~ん...でも俺は閃の呼吸を使うんだから関係なくね?』
『馬鹿もん!お前の呼吸も雷の呼吸の派生じゃろ!確かにそこまでしなくてもお前は十分なくらい動けるかもしれぬがいざというときのために覚えておけ!』
『...わぁったよ』
それ以降から定期的にどこからか持ってきた人体の解剖図を見せられた。おかげで足だけは大体頭に入ったが...
あぁジィサン。いざという時は今この瞬間なんだな...!!
今の俺がいつも通りに全速力を出すとおそらく反動でそのまま倒れてしまってもおかしくない。
だが足の細部にまで空気を巡らせる。このやり方ならいつもより負担を少なくして速力を出すことができる!
「もうよいじゃろ!諦めてくたばらんかい!!」
奴も油断してるせいか攻撃も単調になってきた。
レーザーの速度も中々のものではあるがあれ以上の速度を普段の俺なら出せるから見えてるんだよ!!
そして奴がとどめのレーザーを打ってきた。
だが貯め時間があったため先程よりもタイミングを読みやすい!チャンスはここだ!!!
「当たってやらねぇよ!」
「なに!?」
俺はその攻撃を斜め前に踏みこむことで頬を切り裂かれたが奴の不意をついて前進をする。
今までは空斬でギリギリで応戦してたから奴は俺にはレーザーが見切れてないと思っていたのだろう。
ほぉら、奴さんの顔がようやく変わりだした!
そして両足の筋肉と血管の細部にまで空気を巡らせて爆発させる!!
これにより普段の俺の全速力を負担を軽くして出すことができる!!
これにより俺は一瞬で奴の懐に潜り込んだ!
「なっ!?まだこんな余力を...!」
「もらったぁぁ!!!」
閃の呼吸壱の型 閃斬!!
だが想定よりも奴の首が固く、ドスの刃が半分より先には進むことがなかった。
だがドスでこれなら次は刀で確実に切れる!
そうして抜くことが難しいと判断し素早くドスを手放し背中の刀に手をかけた瞬間...
「貴様ぁぁぁ!!私の首によくも刃をぉぉ!!!」
首を切られかけたことに対して激昂した奴が両手を合わせだした。
「もうここまでだぁぁ!あの死に損ないもろとも流し去ってやるわぁぁ!!!」
「これはやべぇか...!?」
俺は急いで奴と距離を離す。
血鬼術、大海大津波!!
奴を中心に10mはあろう津波が出てきたのだ!
そしてその波は俺達に向かって襲い掛かってくる!!
しかも勢いがヤバすぎて流されたら確実に死ぬだろう...
「マジか...!先輩!!」
津波との距離を離しながら先輩の元へと駆け寄って担ぎ上げる。
「早川...俺のことはいいから早く逃げろ...!お前なら逃げ切れるだろうが!!」
「うっさい!もう黙っててください!!それに...」
確かに先輩の言うとおり人一人を担いだ状態だとあの津波からは逃げ切れるか怪しいだろう...だけどね!
「策はあるんですよ!!」
そう言うと俺は大きく跳躍して津波の上に着水しようとする。
「馬鹿め!この波に入って生きられる訳なかろう!!」
「確かに死ぬだろうな。
そして俺は波に着水...した瞬間に水を蹴りあげることによって沈むことを回避したのだ!
これによって俺は水の上を歩くことを可能にしたのだ!!
「何っ!?水の上を歩いているだと!!」
こんな大技を出したせいか津波が流れている間は奴は他の血鬼術を一切出すことができないようだ。
「...お前いつの間にこんなことを...」
「常中が出来るようになった時に試してみたらいけたんですよ!身体能力が大きく上がったみたいでしてね!」
しばらくすると波が引いて地面に着地することができた。
まだ何とか余力がある俺に対して奴は息がかなり切れている。
決めるのなら今しかないだろう...
「さてそろそろ終わりにしようか」
「ぐっ...図に乗るなぁぁ!!」
奴は最後の力を振り絞ってレーザーを放つが先程よりも明らかに威力が弱まっている!
「これなら直接でもどうにかなるなぁ!!」
俺は一直線に走りレーザーを真正面から切りながら直進していく。これによって自らの体を先輩の盾にして被害を防ぐことに成功する。
多分ドスが滅茶苦茶刃こぼれしていると思うがそれは後で謝ればいいだろう。既に一本駄目にしてますしね...
そうして再び奴の懐へと侵入した!
「くそ!来るなぁぁ!!」
血鬼術頼りだった奴はまさかの拳を振り上げて殴りかかってきた。鬼の腕力による拳なら喰らえばひとたまりもないだろうが...
「そんな拳俺に当たるか!!」
俺は一瞬で奴の背後に回り込み刀に手をかけた。
「これで終わりだ!!」
閃の呼吸伍の型 居合一閃!!
奴の首目掛けて渾身の居合切りを放つ!
先程の手応えからしてこれで切断することができるだろう。
しかし奴の首が宙に舞うことはなかった...
「...ハハ保険をかけておいて正解だったわい」
「...おい何で...」
何で首を切れねぇんだよ!!!
首の三分の二までは切れているがそれ以上は進まなかったのだ。
明らかに先程よりも硬くなっている!?
「私が何もせずにいたと思ったか?大津波の反動が解けた瞬間に首に薄い『水膜壁』を巻き付けていたのだよ」
よく見ると首周りに薄い膜が張られていた...
完全に嵌められてしまった...
「このまま頭をぶち抜くのは容易いが今回は貴様の頭蓋を砕いて息の根を止めるとしよう。たまにはこういうのも悪くはない」
奴が再び拳を振り上げる。
刀を抜こうにも変に食い込んでしまったようですぐに動くことができない!
刀を離せばいいのだが今の俺にそこまで考える余裕はなかった...
「さらばだ」
もうダメかと諦めたその時...
「早川ぁ!諦めるなぁ!!」
水の呼吸壱の型 水面斬り!!
倒れていた筈の先輩が残った右腕を使って斬撃俺の刀の峰の部分に叩き込んだのだ。
だがこれによって刃が動き出した!
「まだ生きておったかこの糞ガキがぁ!!」
「早川ぁぁ!!いくぞぉぉぉ!!!」
俺は先輩が加勢してくれるなんて考えてすら...いや、するわけがないと勝手に決めつけていたんだ。
本当に馬鹿な話だ。俺は先輩の覚悟を舐めていたのだ。
それならば今この瞬間、先輩の想いにも応えなければいけないだろうが!!
「...う゛あ゛あ゛ぁぁぁぁ!!!!!」
「なっ!?不味い!刃が...!」
だが奴に抵抗できる術は残されておらず、下弦の肆の首は無情にも切り落とされるのであった...
「...馬鹿な」ボトッ
「先輩!!何でこんなことを!マジで死にますよ!?」
「...うるせぇこのままお前のお荷物になるなら死んだ方がマシだと思っただけだ...!!」
「ってまた傷口開いてません!?早く止血しないと...!!」
無理に動いたせいかまた左腕から出血しだした。
ほら言わんこっちゃない...!
隠の人達が来るまで持たせなければ...
「くそぉぉぉぉ!!貴様らぁぁ!!ただでは死なんぞぉぉ!!」
「「!?!?」」
するといきなり崩壊の進んでいる奴の生首が叫び声をあげだした。
「貴様も道連れにしてやるぅぅ!!」
血鬼術、水陣爆発!!
そして首から上がなくなった奴の身体が急激に膨らみだす...
間違いない!奴は最後の力を使って自爆をするつもりだ!
「駄目だ...間に合わねぇ...」
完全に不意をつかれた...
今から先輩を連れてじゃ間に合わない...というか普通にもう限界だ...
「...先輩すみません...」
俺が先輩に謝罪の言葉を漏らしたが、その先輩は俺の前に後ろを向いて立っていた...
「なぁ早川...」
「先輩...そこ退い『まだこっちに来るなよ?』
その言葉を聞いた刹那、俺達は激しい爆発に巻き込まれて俺は意識を失った...
血鬼術、水玉
...遠隔操作のできる水の玉を出せる。そこから『圧水砲』を放つこともできるが威力はやや低めだが人間に致命傷を与えるには十分。
血鬼術、水膜壁
...水の膜を張ることである程度の攻撃は防ぐことが可能。首に纏わせたりの応用も効く。
血鬼術、大海大津波
...自身を中心に津波を発生させる。波の勢いが非常に強く、木や岩も薙ぎ倒すほどの威力。その分、使用中は他の血鬼術は使用できず使用後血鬼術は威力も弱まる。
血鬼術、水陣爆発
...血鬼術で発生させることのできる水を体内に限界まで貯めることで自爆をする。威力は説明するまでもないが使ったら最後、自身も絶命するため本当に奥の手である。
大正コソコソ噂話
①田中は水の呼吸の隊士
...瞬の先輩であるだけもあってどこぞのサラサラ髪の奴と違って水のエフェクトも他者から見える。
②水の上を歩くのは天元でも不可能
...瞬「沈む前に水面を蹴り続ければ理論上沈まんやろ」
天元「それができたら苦労しねぇんだよ!!」