第1話
人の悪意、負の心から産まれる呪霊と呼ばれる異形達。
それを狩る人間達を呪術師と呼ぶ。
呪術師達はその力量によっていくつかの階級に振り分けられ、その最上位…呪術師の枠組みを超えた存在に与えられる階級を特級と呼ぶ。
そして、その枠組みを超えた埓外が
「うん、術式を使ってきたから期待していたが…やはり1級以上の呪霊は旨味が段違いだ!
悟もひと口食べるかい?」
「傑…ケンカ売ってんの?俺は呪霊喰えねーって何度言えばわかんだよ」
一見して、二人共…かなり
特級呪術師五条悟と同じく特級呪術師夏油傑である。
「アンタら朝っぱらからよくそんな食べれるわね…
見てるだけで気持ち悪くなってくんだけど」
机の上に山積みされたこぶし大の黒い球体をひょいひょいと飲むように食べる夏油とそれを羨ましそうに見ながらこれまた机の上に山積みされた日本各地から取り寄せた銘菓を頬張る五条。
現在時刻は朝の8時半…朝のホームルームさえ始まらぬそんな時刻からドカ食いを
この三人こそが今現在の呪術界で最も価値のある三人と言っていい現代の異能達である。
「ふふ…いやだなぁ硝子、私が食べてるのは呪霊だよ?
人の負の心から産まれたスピリチュアルな存在…そんなものにカロリーが有ると思うかい?
つまり…呪霊はこんなに美味しいのにゼロカロリーの完璧な食材なんだよ」
「じゃあこの腹回りはなんの冗談なワケ?」
分厚い学ランの上からでも易易と掴める腹肉を鷲掴みながら問う家入に夏油はやれやれと肩を竦めた。
「あのさ硝子、俺は
アタマってのは人間の身体の中で一番エネルギー使うんだぜ?
だからこうやって糖分摂ってんの」
「この顎見る限りエネルギー使えてないと思うけど?」
ごちゃごちゃぬかす五条の顎と喉の肉を鷲掴みながらタプタプと揺らす家入に五条はわかってねぇなぁとため息をつく。
「ホームルームを始めるぞ、悟と傑はもう食うのやめろ
あと硝子、お前も二人の肉を揺らしてないで席に戻れ」
扉を開けて入って来たイカつい剃り込みにこれまた強烈な顔面の一目でカタギでは無いと断言出来る容姿の担任、夜蛾正道は三人にキビキビと指示をしていく。
はーい、と間延びした返事と共に席に戻る家入…しかし、夏油と五条は我関せずと呪霊玉や喜久福を頬張り続ける。
「………おいお前ら、食うのをやめろ」
「夜蛾先生、私のコレは食事ではなくあくまでも呪霊退治ですよ
呪術師としての責務を果たしているだけです」
「そ〜そ~、俺のも常にベストコンディションを保つ為に必要なんで」
食べる手を休めずに宣う二人。
「屁理屈をこねるな馬鹿共!」
「ぐっ!」「ごっ!?」
そんな二人に夜蛾の拳骨が落ちたのは言うまでもない。
「
「そうやってすぐ暴力に訴える…やれやれ、これだから心が貧困な人間は」
二人の反応に夜蛾は渾身のため息を吐き出しながら頭を抱える。
「実は…お前達二人に指名が入っている」
「俺ら二人に?特級二人も要るなんてどんな任務だよ」
「私達二人で同じ任務にあたるんですか?
正直言って過剰戦力では?」
「いや……正直言って
「は?」
「それは私達二人だからですか?それとも──特級二人でも…ですか?」
「………後者、この任務は天元様直々の依頼だ
内容は2つ、〝星漿体〟天元様との適合者
その少女の護衛と───抹消だ」
「でもさー呪詛師達が狙うのはわかるけど盤星教の方はなんでガキんちょ殺したいわけ?」
スタスタ…というよりドスドスが似合う五条は自販機で躊躇なく飲めば逆に喉が渇きそうな程に甘い缶コーヒーを選び購入する。
「崇拝しているのは純粋な天元様だ
星漿体…つまり不純物が混ざるのが許せないのさ、悟だってスイパラでケーキの隣にゼリーを置かれたら生地が水分吸ってそうで嫌だろ?」
夏油は五条から激アマ缶コーヒーを躊躇なく受け取ると一息飲みほして語る。
「なーる…まぁ大丈夫でしょ、俺達最強だし」
飲み終わった缶を呪力で米粒大に圧縮し、もう一本買おうと財布に手を掛ける五条。
「………悟、前から言おうと思っていたんだが
一人称『俺』はやめた方がいい、誰しもが私達のように富める者じゃないからね
痩せ細った連中は心も貧しいから揚げ足とりに使われるよ」
夏油の言葉に五条が嫌そうに舌を出した瞬間、件の少女が待ち合わせに指定したビルから爆発音が響いた。
「これでガキんちょ死んでたら俺らのせい?」
その五条の呟きを聞いた訳でも無いだろうに、炎上し煙を上げるビルの1室から落下する点のように小さい影。
「恨むなら天元を恨みな」
呪詛師団体『Q』の構成員は落下する星漿体、天内理子を見ながら呟く。
ドスドスドスドスドスドスドスドスドスドス
「ナイスキャッチ、でも目立つのは勘弁して欲しいんだがね」
それは、異様な光景だった。
ビルを…地面に垂直に建つビルを、肉達磨が
そして落下する星漿体を抱き留めるとこちらへ向かって歩を進めている。
一瞬にして呆けていた脳味噌は急速回転し思考が纏められていく。
(術式…っ!重力を操る術式か?それとも引力や磁力を操る類の可能性も───いや、無いわ……普通に足刺さっとるわ…)
ドスドスとビルの壁面に足を突き刺しては引き抜くを繰り返し、純度百パーセントの力技にて壁歩きを成立させる夏油。
驚くべきはその速度、夏油は壁に足を突き刺しては引き抜きを繰り返しながらも陸上の短距離メダリストすら霞む速度で動いていた。
「そ、その制服…高専の生徒だな!?止まれ!」
「全く…欠食児童はこれだから困るな
もっと大きな声で言ってくれ、そんなか細い声では私の鼓膜は揺れないよ」
顔や腹の肉をぶるんぶるんと震わせるながら迫る夏油に恐怖やらなにやらよくわからない感情を抱く構成員であった。
「ああ、別に謝らなくてもいいよ?
私は君達のように痩せ細った人間の味方さ…なにせ私も中学まではそうだった
この術式に目覚めて呪霊食に行き着かなければ私も今頃君達のように見るも無惨に痩せ細り貧困な心を持った人間のままだったろうからね」
顔面が陥没する程に殴られたQの構成員に腰掛けながら話す夏油。
彼の尻の下からはか細いうめき声が響く。
「そうだ!君もコレを食べてみないかい?
丁度いいのがあるんだ…3級の呪霊なんだが見た目が甲殻類系だったしきっと蟹のような味がする筈だよ!
……………まぁ、悟はコレを食べて一週間程死にかけたけど」
「んーー!!んーーーー!!!」
夏油は座布団と化した構成員の口に尋常ならざる腕力で呪霊玉をねじ込んでいく。
構成員の涙ながらの抵抗も、天内やその世話係の黒井のドン引きも夏油の手を止める事は出来ない。
「ん…?」
8割方呪霊玉が構成員の口に捩じ込まれた所で夏油の携帯にメールが届く。
「…コレ、君の上司?」
自身の所属する団体の最高戦力が自身と同じく巨漢の座布団と化している写真に男は言葉もなくただ力無く頷いた。
呪詛師団体『Q』─壊滅
本編が続くとしたら何が読みたいですか?
-
虎杖編(少年院〜幼魚と逆罰)
-
伏黒編(京都姉妹校交流会──殲滅戦)
-
九相図編(起首雷同〜宵祭り)
-
人外魔境新宿決戦