肥満児二人。ただし最強。   作:悲しいなぁ@silvie

11 / 20
なんとXにて支援絵を戴きました
気になる方はトップページに置いてあるので……見よう!


玉響

死滅回遊──西東京コロニー

 

 

羂索により過去の術師達と強制的に覚醒させられた術師達が入り乱れるその戦場にて、優雅に舞う影があった。

 

「貴方達が何者かは知りませんが、悠仁(おとうと)がポイントが欲しいと強請ってきまして…

できれば大人しく降参してくださると助かるのですがね!」

 

蝕爛腐術─極ノ番 翅王

生得術式の極致、呪術の最終段階とも呼べる超高等技術をまるで息をするかのように繰り出す。

空中にて静止する血液が美しき蝶の翅を思わせる緻密な模様を描き出し…その全てが、対峙する術師に牙を剥く。

150年もの間、自身の術式と向き合い続けた壊相だからこそ可能な数十本もの同時操作。

その血液に触れることは──死を意味する。

 

「婆ちゃん、下がって!」

 

呪詛を唱える老婆を背に庇い、青年がその身に翅王の牙を受ける。

 

(老婆を庇ったか…翅王は直接攻撃能力自体は低いですからね)

 

青年が苦痛にあえぐも、その傷自体は死に繋がるものではない。

焼け爛れ、激痛を伴おうとも翅王の牙にそれ自体で死に至る威力はない。

しかし、翅王には──蝕爛腐術には、その先がある。

 

「蝕爛腐術『朽』」

 

青年の全身に、毒々しい紋様が浮かび上がる。

蝕爛腐術、その真髄は──対象の分解。

 

「壊相!殺しちゃダメだからな!!」

 

「はぁ…わかってるさ悠仁

殺さずとも、翅王と朽の痛みで直に気絶する」

 

遠方からの虎杖(おとうと)の声に肩をすくめる壊相。

やれやれと口では言いながらも、弟から頼られた事で露骨に機嫌が良くなっている事が読み取れる。

 

「しかし…その異様とも言える庇いよう、長期戦はリスキーですね」

 

弛んでいた口角が引き締められ、鋭い眼光が相手を射貫く。

身を挺して…というには流石に行き過ぎている青年の献身といまだに止まぬ老婆の呪詛。

産まれ堕ちて日の浅い壊相ですら、この状況の異様さは理解できる。

 

しかし、壊相はまだ知らない。

人の悪意を──呪いのなんたるかを。

 

「……時間を掛け過ぎたな、来るぞ」

 

虎杖達から少し離れた位置にて頬杖をついていた宿儺が立ち上がる。

呪いの王、両面宿儺が立ち上がらなければならない事態だと判断した。

 

「もうええぞ」

 

老婆の──オガミ婆の呪詛が、終わった。

その声に反応した青年は、朽により体内から分解される苦痛に文字通り血反吐を吐きながら小さなカプセルを口に含んだ。

 

「させるかっ!」

 

再び、翅王の牙が迫る。

そして、それよりも早く──オガミ婆が呟いた。

 

「禪院甚爾」

 

瞬間、翅王が誇る数十もの血の牙が──爆ぜた。

 

「………降霊術か、貴様ら…死体を弄んだ(つかった)な」

 

後方から、周囲の空間が揺らぐ程の…熱を伴った感情が──両面宿儺の憤怒が壊相を打った。

自身に向けられていないと知った上でなお、全身の細胞全てが生存を諦める程の怒気。

壊相は粘性をもった汗を垂れ流しながらゆっくりと道を開ける。

 

呪いの王、両面宿儺に対峙するは呪いから解き放たれた男。

天与の暴君、禪院甚爾。

 

「宿儺!どうし……伏黒、先生……?」

 

宿儺から放たれる膨大な呪力にすぐさま駆け寄ってきた虎杖は自身の目を疑った。

そこに立っている筈のない人物、死んだ筈の親友の父親の姿に。

 

「小僧、()()はあのちゃらんぽらんではない

降霊術…死者を顎で愚弄する(つかう)、呪いだ」

 

宿儺が…四腕二面の鬼神が構える。

 

「俺が夏油と五条達と戦っていなければ…死なずにすんだろう

………死んだ貴様に詫びはせん、ただ──俺の渾身で()いてやろう」

 

「孫、術師は全員──殺せ!」

 

オガミ婆の怒声に、首をバキバキと鳴らす甚爾。

 

「孫…?何を─」

 

「術師は全員ね……テメェも術師だろ」

 

甚爾の裏拳がオガミ婆を吹き飛ばした。

 

「…………ありえん、降霊術で降ろされた死者が術師に逆らうなぞ」

 

構えを解きもせず、呆然と呟く宿儺に甚爾は得心いったと手を打つ。

 

「降霊術……?ああ…そういう」

 

困惑する宿儺と虎杖達を後目に甚爾は殴り飛ばしたオガミ婆の懐を漁り携帯電話を奪い取る。

 

(11月3日……俺が死んでから4日経ってんのか)

 

甚爾は自身の身に起きた出来事の全てを、自由意思で身体が動くならば問題無しと断じ現状の把握へと思考を切り替える。

自身よりも優先すべきものがあるから。

甚爾は虎杖達に恵と津美紀の安否を確認しようと声を掛け──る、前に手に持っていたオガミ婆の携帯へ着信が入る。

電子音が鳴る中、甚爾は()()()()()()番号に目を見開くと携帯を耳へとあてがった。

 

「もしもし…?」

 

『その声、どうやら上手くいったみたいだな

これで…1つ貸しだな、禪院』

 

なぜこの状況を把握しているのか、なぜ伏黒甚爾が降霊術を無効化しうると知っているのか…無数の疑問にも、甚爾は何も言わずに笑う。

情報で飯を食っている男だ、それだけ有能なのだろう。

 

「何回も言ってんだろ、もう禪院じゃねぇ」

 

オガミ婆の降霊術は彼女の死後も継続した。

しかし、永遠ではない…器である孫の呪力が尽きた時点で降霊も終わる───ハズだった。

はじめから禪院甚爾の肉体に上書きされた孫の魂に呪力はなく、その上その肉体は呪力を消費しない。術式は終了する契機を失った。

重なったイレギュラーによる術式の暴走。

肉体の情報しか降霊されていない甚爾は、器が壊れるまで本能のまま戦い続ける───ハズだった。

 

恵をお願いね

 

魂さえ上書きする天与の肉体─暴走した術式さえ彼の前では

 

「今は、伏黒だ」

 

伏黒甚爾───完全復活

 

天与の暴君、その牙は常に愛する家族の敵へと向かう

本編が続くとしたら何が読みたいですか?

  • 虎杖編(少年院〜幼魚と逆罰)
  • 伏黒編(京都姉妹校交流会──殲滅戦)
  • 九相図編(起首雷同〜宵祭り)
  • 人外魔境新宿決戦

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。