肥満児二人。ただし最強。   作:悲しいなぁ@silvie

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夏油VS宿儺!至高のギョーザ勝負!!

東京都立呪術高等専門学校──調理室

日本に蔓延る呪いを祓う為、日夜日本各地を飛び回る者達の胃袋を支えるその調理場にて二人の益荒男が対峙していた。

方や、史上最強と呼ばれる呪いの王。

四腕二面の鬼神、両面宿儺。

方や、呪術界のトトロと呼ばれる男。

都立呪術高専ドカ食い気絶部が誇る名誉部長、夏油傑。

 

二人は互いに包丁を手に睨み合っていた。

 

「これより!料理バトル一本勝負を始める!!

ルールは簡単、二人には冷蔵庫にある食材だけを使って一皿仕上げてもらう!

それを俺を含む三人の審査員が食べて、勝者を決める!

待った無し…開始ィ!!」

 

夜の9時過ぎとは思えない声量で叫ぶ白髪の美男子、五条悟は校内から適当に攫って連れて来た残りの審査員の肩をバシバシと叩きながら笑う。

 

「………任務終わりにいきなり拉致られたと思ったら料理バトルだぁ?

…………酒に合うの頼むわ」

 

日下部は三人の最強相手に抵抗は無意味と早々に諦めた。

 

「………んぅ……」

 

そして、こっくりこっくりと船を漕ぐ鹿紫雲。

見た目は中性的な美丈夫だが、中身はちゃんとおじいちゃんである鹿紫雲は既に就寝していたところを五条に連れて来られていた。

 

そんな審査員側の温度感とは違い、二人は燃え盛るような闘争心を剥き出しに冷蔵庫を開く。

しかし…

 

「……なんだコレは、碌な食材が入っておらんぞ」

 

「ビールと調味料に……あっ、挽き肉はあるね」

 

冷蔵庫の中身を見た二人はそのあまりにも質素な内容に思わず固まる。

 

「いやぁ〜、食堂のおばちゃんに冷蔵庫の中身使っていいかって聞いたら怒られちゃってさぁ

しゃあねぇから歌姫ん家の冷蔵庫パクって来たってワケ!」

 

悪びれもせずにケタケタと笑う五条。

バカ目隠しのあだ名は伊達ではない。

 

そんな五条の話を聞き流しながら、二人は限られた食材からいくつかを選ぶと自身の調理台へ向かう。

 

「これは…二人共同じ……か?」

 

日下部が呟く。

二人の調理台には、ほとんど同じ食材が並べられていた。

 

宿儺 玉ねぎ、キャベツ、れんこん水煮、挽き肉、餃子の皮

夏油 玉ねぎ、白菜、干し椎茸、挽き肉、餃子の皮

 

「おや、奇しくも同じ構え……という訳じゃなさそうだね」

 

「クックックッ、心配せずとも他の料理で逃げるなど狡い真似はせん

構えろ、火力(ギョーザ)勝負といこう」

 

「餃子…!二人のメニューは同じ餃子か

……まぁ、酒にも合うし言うことなしってカンジだな」

 

「……ぅー…ねみぃ……」

 

歌姫の冷蔵庫から缶ビールを取り出しながら席に腰掛ける日下部と、眠気を必死に堪えながら目を擦る鹿紫雲。

完全に観戦モードである。

 

「ニラとかネギが無くて玉ねぎってトコがマジで歌姫ってカンジでウケんだけど」

 

鼻で笑いながら鹿紫雲の肩を揺する五条。

ちなみに、後日歌姫に泣きつかれた硝子からアッパーカットを喰らうことになる。

 

調理を開始した宿儺は、しっかりと四本の手を洗うと玉ねぎを手に取り…上に投げた。

 

「『解』!」

 

空中の玉ねぎが瞬時に微塵に切られると下に置いてあった金属ボウルに入っていく。

 

「………チッ、起き抜けになんつーもん見せやがる」

 

鹿紫雲は犬歯を剥きながら笑う。

悪態をつきながらも、心底嬉しそうに。

 

「呪力の刃が玉ねぎの細胞一つ一つの隙間を縫うように通されてる

恐らくだが、切られた玉ねぎ自身すら切られた事を自覚してねぇだろうな」

 

「なるほど…野菜類は切断面から水分と一緒に旨味が流れ出るが、それは細胞壁を傷つけちまうからだ

極論、一切細胞壁を傷つけずに切れるなら水分も旨味も流れ出る事はない……

宿儺は食材から旨味を極限まで逃さずに調理する気か」

 

突然連れて来られたにも関わらずすぐさま解説を始める二人。

だからデブ目隠バカ目隠しに狙われるのである。

 

宿儺は残りの具材を術式で微塵にしながら夏油の調理風景へ目を向ける。

 

(ケヒッ、下処理は万全…万に一つも俺の負けはありえんな

さて、夏油傑…お前はどう魅せる?)

 

薄ら笑いを浮かべる宿儺の視線の先では───

 

「フンッッッ!!」

 

一頭の夏油(ゴリラ)が白菜と玉ねぎを握り潰していた。

 

「おいおいおい!何やってんだ、頼むぜ夏油!?」

 

「……あんな乱雑に潰してちゃ焼き上げでベチャついた餃子になる

何考えてんだ…?」

 

「まさか宿儺のを見て勝負投げてんじゃねぇだろうな…?」

 

「んなわけねぇだろ…黙って見てな」

 

自分が拉致しておいてとんでもない言い草である。

 

(………何を考えている?

味では勝てぬとパフォーマンス重視に切り替えたか?

フン、どちらにせよ…夏油、お前はこの一手で──詰みだ)

 

「裏梅!!」

 

宿儺が腕を挙げ叫ぶ。

 

「此処に」

 

その声に応える影が一つ、天井の点検口から降ってきた。

恭しく頭を下げながら宿儺の三歩後ろにて控えるは、宿儺の忠臣裏梅。

宿儺に来いと言われて迷いなく羂索を裏切った生粋の狂信者である。

 

宿儺は裏梅を見ると何も言わず腕を挙げ続ける。

 

「氷凝呪法『霜凪』」

 

裏梅の吐息が極寒の吹雪となって宿儺の腕を瞬時に凍結させた。

 

「なにを…?」

 

「宿儺め、そこまでやるか……ッ!」

 

日下部の驚愕に、鹿紫雲は一拍おいて理解する。

その光景に、理解させられる。

 

「熱か…!宿儺は手を凍らせる事で、餡を捏ねる際に手の熱が入るのを防ぎやがった!!」

 

ハンバーグなどにも言える事だが、挽き肉を使う料理では熱が天敵とされる。

何故か?挽き肉、ミンチとは他の加工肉や精肉方法と比べ表面積が大きくなる。

結果、酸化や劣化も早く【傷む】のも早くなる。

そこへ熱が加わればその速度は更に加速する…その上、脂を多く含むミンチは手の温度ですら脂が溶け出し食感や食味に影響するから。

故に、挽き肉を捏ねる際には手を氷水で冷やしたりタネを入れたボウルを冷やしながら捏ねる等のテクニックが要求される。

宿儺は、それを完全にクリアしていた。

 

「宿儺はもう焼きの段階…流石の手際だな」

 

「だが、この焼きで全てが決まると言っていい

ここでミスれば夏油にも勝ち目が出るんだがな…」

 

餃子を包み終えると、宿儺はフライパンに餃子を並べ──構えた。

 

「『■』『(フーガ)』」

 

並べられた餃子のすぐ上を劫火の矢が通り、五条へ向かう。

 

「審査員へのお触りはご遠慮くださーい」

 

五条の眼の前で停まった矢は五条の呪力で掻き消される。

フライパンの上には、芸術と言える美しい焼き目のついた餃子が並んでいた。

 

「火入れも最速、最小限…勝負ついたな」

 

フライパンに皿をあてがい盛り付けると宿儺は三人の前に歩み出る。

 

「夏油はまだのようだな…まずは俺の方から寸評願おうか」

 

手早く小皿に3つに分けると箸と共に渡す宿儺。

 

「ん……?おい、醤油なり酢なりはねぇのか?」

 

「…………要らねぇってこったろ」

 

三人は同時に餃子を口に運ぶ。

 

「こっ、これは──っ!!」

 

「なるほどな…」

 

「美味い…」

 

沈黙、あれだけ雄弁であった三人が黙る。

その手は砂漠を歩く者が水を求めるかのように自然と、本能的に餃子へと伸びる。

 

大皿に盛られた餃子が、僅か数分で空になる。

誰が語らずとも、証明された。

宿儺の一皿は──美味い。

 

「おや、もう食べ終わったんだね

私の方もそろそろ焼き上がるから少し待ってくれるかい?」

 

「ふっ、ようやく焼きの段階とはな…随分と悠長なことだ」

 

夏油、と言おうとした宿儺が固まる。

その視線の先、今まさに焼きの行程に入ろうとする夏油の手にあるのは──凍った餃子だった。

 

瞬時に振り返る宿儺、その前には滝のような冷や汗と共に地に額を擦る裏梅。

 

「申し訳ありません…!宿儺様、如何様にも罰を!!」

 

「いけないなぁ、宿儺…君も手を借りた以上、裏梅は今回の戦いに於いて調理器具と同じだよ

当然、私にだって手を借りる権利がある」

 

凄まじい覇気を放つ宿儺に夏油は軽く言いながら餃子を焼き始める。

 

(なんだ…なにが狙いだ…?あくまでもパフォーマンス…?

…………まさかっ!!)

 

呪いの王、両面宿儺が一つの()()()に気付いたのと夏油の餃子が焼き上がったのは奇しくも同時であった。

 

「何もかけずとも食べられるけど、お好みで酢醤油をかけてもイケるよ」

 

三人の前に夏油の一皿が饗される。

三人の箸が餃子に伸び──

 

「あっ、ごめんごめん…言い忘れてた

この餃子には食べ方があってね…食べる時は決して前歯で噛んじゃあいけないんだ

一口めを口の奥でね…奥歯で噛んで食べてくれるかい」

 

夏油の説明に首を傾げながらも、三人は一口に餃子を頬張る。

そして…

 

「なっ、なんだこりゃあ!!?」

 

「まさか…っ!」

 

大声で叫ぶ日下部を後目に、鹿紫雲は餃子をもう一つ手に取るや否や半分程で…噛みちぎった。

 

瞬間、辺りに──()()()()()()()()が撒き散らされた。

 

「やれやれ…だから奥歯でって言ったのに」

 

「やはりな…この餃子、まるで小籠包のように中にスープを抱え込んでやがる

だが、どうやって……?」

 

仕方ないなぁ、とボヤきながら飛び散った液を拭く夏油と考え込む日下部、鹿紫雲。

 

「クックックッ…なんだ、わかったの俺だけか」

 

邪悪な笑みと共に五条は餃子を食べる。

 

「傑が材料握り潰してたのも、焼き上げ前に凍らせてたのもちゃんと意味があんのさ

宿儺が素材本来の旨味を極限まで逃さないように作る『至高の餃子』だとするなら──傑のはその対極、素材の旨味全てをスープに変えた『飲む餃子』ってコト!」

 

「飲む餃子……なるほどな」

 

「確かに宿儺とは対極だな…まさか、玉ねぎや白菜の細胞壁をわざとブッ壊して旨味を絞り出すとは」

 

「それだけではないな…この旨味と香り、干し椎茸か」

 

いつの間にか夏油の餃子を食べながら宿儺が問い掛ける。

 

「流石だね、干し椎茸のもどし汁をゼラチンで固めて餡に入れてあるんだ」

 

夏油の答えに宿儺は天井を仰ぎ見る。

 

(俺の調理に落ち度は無かった

完璧な下処理、火入れも調味も盛り付けも…俺の持ち得る全力だった)

 

「ふざけるな!!飲む餃子だと?そんな奇をてらっただけの一皿に負ける訳が無い!!

負けてない!負ける訳が無いッ!宿儺様が負ける訳が無い!!」

 

怒涛の剣幕と共に夏油に掴みかかる裏梅。

その裏梅の肩に、手が置かれる。

 

「やめろ裏梅、これ以上…俺に恥をかかせる気か」

 

裏梅の顔がくしゃくしゃに歪み声もなく泣き崩れる。

 

(わかっていた…あの挽き肉は、少し()()()()()

臭いが出ていた…黒胡椒を使ったが、マスキング*1を考えるならば生姜やニラを使うべきだった

ニラは無く、生姜はすり下ろしチューブのみ…他の具材との調味の兼ね合いと完成形のコンセプトから使う選択肢は無かった

もし、あと少しでも食材の質が高ければ…勝っていたのは俺だった

だが、具材の目利きとそれに合った調理法の選択──)

 

宿儺はゆっくりと夏油に視線を合わせる。

 

「俺の──負け、か」

 

最強が、決定した。

 

「よし、じゃあ宿儺…もっと美味しい餃子を食べたくないかい?」

 

しかし、夏油は手を洗い直すと宿儺の手を引き調理場へ戻る。

 

「は…っ?離せ!!世迷い言を抜かすな!

俺の調理法と貴様の調理法…そのどちらもが至上だった!アレ以上の餃子など、食材を変えねば不可能だ!!」

 

「うーん……調理法だとか、食材だとか……

宿儺、料理とは──『食』とは、そんなにも窮屈かい?」

 

「は………?何を…」

 

呆ける宿儺の背中を夏油の大きな手が叩く。

 

「来なよ、そして早く作ろう…これから忙しくなるよ」

 

夏油が大きく腕まくりをしたのと、ソレは同時だった。

 

「疲れたぁー…てか腹減ったぁ〜」「虎杖、制服脱ぎ捨てんな…跡残んぞ」「あ゛ー!!誰でもいいから早く化粧水持ってきなさいダッシュで!乙女の柔肌が刻一刻とダメージ受けてんのよ!!」「映画観に行くって言うから着いていったのに…騙された……」

 

「小僧……?」

 

「わっ!ナニソレ夏油センセ!?それ…俺らも食べていい?」

 

「勿論さ、早く手洗いうがいして来なさい」

 

任務終わりで疲れ切った一年生達が帰ってくる。

土汚れが顔にまでついた虎杖はニコッと大きく笑うとはーい!と大きな声で洗面所に向かう。

 

「また何か作ってるん゙ですね……

…………もし、その…良かったら……親父の分も作ってくれませんか…?

確か、もうすぐ任務終わって帰ってくるんで」

 

「心配しなくとも皆の分を作るつもりだよ、恵も早く手を洗って来なさい」

 

すんません、と頭を下げながら洗面所に向かう伏黒。

 

「餃子……夏油先生、ニンニクとニラは……!」

 

「ふふっ、勿論入れてないよ

野薔薇のはスープ餃子で用意も出来るけど…どうする?」

 

野薔薇はパチンと指を鳴らしながらやりぃ!と笑う。

流石わかってるわね〜と上機嫌に洗面所に向かって行った。

 

「僕の分も有るんですか…?僕、今日は五条先生に騙されて着いていっただけで……全然手伝いも出来なかったのに…」

 

「順平、君も含めてみんなまだ術師の雛鳥だよ

雛の内に、いくらでも失敗しなさい…その失敗の次を保証するのが私達教師の仕事だ

疲れたろう?今日はしっかり食べて寝るといい」

 

はい…!と曲がり気味だった背をピンと張って吉野は洗面所に駆けて行った。

 

「ほらほら、手を止めちゃダメだよ宿儺

あと二、三十分もしたら二年達と甚爾が帰ってくるし、その次は直哉と三年達も帰ってくるよ!」

 

「……………何故俺が小僧共の分まで作らねばならん」

 

「おや?食べたくないのかい、美味しい餃子」

 

宿儺はガシガシと頭を掻くと舌打ち一つ、調理場へ向かう。

 

「さて…忙しくなるね!」

 

 

 


 

「うんっっっっっま!!!

夏油先生って滅茶苦茶料理上手じゃん!!」

 

「食いながら喋んな…美味いです、夏油先生」

 

「どこぞのバカ目隠しと違って話がわかるわよね〜

寝る前のスープは身体も温まるし美容の味方よ」

 

「すご…!母さんの餃子より、なんていうか…その……本格的って感じだ…」

 

「海老天!」

 

「傑…いつも言ってるけど、俺は綿なんか食わん……」

 

「やめとけパンダ、昔それで笹持ってこられてたろ

てか美味ぇなほんと…」

 

「夕飯って軽くでいいんだけど…食べ過ぎちゃうかも」

 

「うん、ほんと凄いね…両面宿儺の作った餃子なんて……」

 

「おい五条、俺のビール何処だ?」

 

「はい甚爾君!!良かったらビール注ごか?

………あと乙骨君、ちょーっと近ないか…?あとで、僕とお話ししよか」

 

「美味しいけど……なんか女子力負けてるみたいでやだ…」

 

「ん〜、良いな…二人の熱を感じるぜ!」

 

ガヤガヤと、食堂が瞬く間に埋め尽くされる。

 

「悪いね裏梅、君の負担が一番多くなってしまったかな」

 

「イヤミか貴様ッッ!!!」

 

「もう…普通に労ってるだけだよ」 

 

裏梅が騒ぐ中、宿儺は淡々と調理し続ける。

 

「よし、こっちは一段落ついたし…宿儺、君も食べてきなよ」

 

パチン、と手を打って夏油が笑う。

 

「なに……?……どういう意味だ、結局材料を買い足しただけでほとんど変わらん餃子だろうが」

 

怪訝な表情の宿儺の背をまぁまぁと押しながら無理矢理席につかせる夏油。

 

「おっ!宿儺、お前滅茶苦茶料理上手かったんだな!!」

 

「フン…貴様らの為に作った訳では無い

それに、食味ならば夏油の方が上だ」

 

座るや否や声を掛けてきた虎杖に鬱陶しそうに吐き捨てると宿儺は忌々し気に夏油が作った餃子を箸で摘まむ。

 

「んー…夏油先生の餃子もスゲー美味いけど……

俺は、宿儺の餃子の方が好きだけどな」

 

「……なに…?」

 

「良くぞ言ったぞ器ァ!!そうだ!!宿儺様が負ける訳が無いのだ!!!!」

 

宿儺が振り向いた先には裏梅にガクンガクンと揺さぶられる虎杖が居た。

 

「おっ、おっ、おう……?てか…こんだけ美味いんなら、後は好みなんじゃねぇ……?」

 

「…………そんな訳があるか…優劣はついた

……まぁ、小僧の貧相な舌では感じ取れぬだろうがな」

 

小さく呟きながら、ゆっくりと箸を口に運ぶ。

 

「なぁ宿儺、またなんか作ってくれよ!

俺、丼物とか麺系が良い!!」

 

「貴様ァ!!事もあろうに宿儺様を賄番にしようというかぁ!!?」

 

再びガクンガクンと揺さぶられる虎杖。

 

「や、やめ、やめろ…やめろって!これ以上馬鹿んなったらどうすんだよ!!」

 

騒がしく…何より、笑顔に溢れた空間。

その中心には料理が並び、周りにはそれを食べて笑いながら楽しそうに過ごす人々。

 

二度目の生を受けた両面宿儺をして、初めてみる光景であった。

 

「…………美味いな」

 

自然、手が伸びる。

こんなにも美味かったろうか?

調理は一流でも、素材は三流もいいところだったはずだ。

 

「…………そうかこれが……そうか」

 

いつかの言葉

絶対的な強者!それ故の孤独!

あなたは独りじゃない

 

裏梅は宿儺に心酔し、崇拝している。

共に卓を囲む事など、ありはしない。

 

万は宿儺を愛し、全てを受け入れた。

全てを愛する事は、全てを嫌う事と同義である。

 

 

憧れは理解から最も遠く、愛は理解と呼ぶには独善的だ。

 

 

呪いの王、両面宿儺は理解を求めない。

群れねば生きられぬ有象無象と違い、宿儺には力があったから。

 

最強、夏油傑の周りには人で溢れている。

大切な仲間を守り抜くだけの力が夏油にはあったから。

 

宿儺の頬をナニカが伝った。

 

「クックックッ…ハッハッハ!!」

 

(そうか…こんな気持ちか

負ければ死んだも同然…死に、感情など伴う筈もなし

だが……違った)

 

「完敗だ……言葉もない!」

 

両面宿儺、千年越しの敗北

しかし──その顔は清々しい笑顔であった。

 

 

 


 

オマケ 万劇場

 

「すっ、宿儺の…て、て、て…手料理!!!?」

 

「あぁ…喰いたければ勝手にしろ」

 

(喰いたければ勝手に…手料理……つまり…………!!)

 

「新婚生活!?そうなの?そうなのね!そうなのよ!!」

 

「やめとけよ万、どうせまた家入の世話になるんだから…」

 

「離しなさい血塗!!宿儺が……宿儺が私に食べて♡って!!」

 

「いえ、そんなことは一言も言ってませんでしたが…」

 

「……でもいいのよ…」

 

「……は?」

 

「罠でもいい……罠でもいいのよッッ!!!」

 

 

この後しっかりキンッされて硝子の仕事が増えた。

 

*1
香辛料、香味野菜等で肉や魚の嫌な匂いをやわらげること

本編が続くとしたら何が読みたいですか?

  • 虎杖編(少年院〜幼魚と逆罰)
  • 伏黒編(京都姉妹校交流会──殲滅戦)
  • 九相図編(起首雷同〜宵祭り)
  • 人外魔境新宿決戦

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