肥満児二人。ただし最強。   作:悲しいなぁ@silvie

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アンケートで最下位だったので書きました
私は天邪鬼です


京都姉妹校交流会─殲滅戦─
1話


「ッッッッッッッッたく!!!人に何本ジュース買わせんのよあのバカ目隠し!!」

 

釘崎野薔薇はこめかみにバキバキの青筋をおっ立てて叫ぶ。

 

「てか夏場におしるこなんて飲んでんじゃないわよ!!!」

 

「釣りはとっとけって言われてホイホイ乗ったお前が悪い

いいから手ぇ動かせ釘崎、まだ二十本しか買えてねぇぞ」

 

激昂する釘崎の背後で両手一杯におしるこ缶を抱えた伏黒がため息をつきながら遠い目をしていた。

 

「だってフツー、万札渡されて釣りはとっとけって言われたら…乗るでしょ!?」

 

んがぁぁ!!詰まったぁ!!と喚きながらキレ散らかしている釘崎。

 

「………ん?」

 

そんな同級生の姿に、更に遠い目をする伏黒。

悲しい理由ではあるが遠くを見ていたからか、伏黒は釘崎よりも先に…その二人組に気付いた。

 

「あの…やっぱやめましょうって東堂さん

東京校の皆さんに普通に挨拶して普通に帰りましょて」

 

「フン、だから挨拶をしに来たんだろう

もっとも…少々我流だがな」

 

一人は燕尾服のような格好の男、そしてもう一人は…

パイナップル(ヘッド)の──狂人

 

「………なんだアンタら」

 

「あ…は、初めまして〜俺…やなかった、僕京都校の新田言います

今日は東京の皆さんに挨拶だけして帰ろ思てまして…」

 

「今年の交流会、乙骨が出ないって聞いてな…いや、別に不満がある訳じゃない

三年の二人は出るし──何より、お前も出るんだろ?Mr伏黒」

 

東堂はゆっくりと伏黒に歩み寄りながら着ていたシャツを引き裂く。

 

「呼ばれてるわよ伏黒、アンタの友達?」

 

「んな訳ねぇだろ…パイナップルの知り合いなんか居ねぇよ」

 

「そう謙遜するな、高専一年にして既に1級術師…そう多くは居らん

結構有名人だぞ、お前」

 

東堂は伏黒を値踏みするように上から下へ見ると底意地の悪い笑みと共に問う。

 

「さぁMr伏黒…どんな女がタイプだ」

 

「……なんで初対面のアンタと女の趣味を話さないといけないんですか」

 

「そうよ、ムッツリにはハードル高いわよ」

 

「ほ、ほらほら東堂さん!向こうさんもそう言ってはるんやし、もう帰りましょて!!」

 

新田が東堂の制服を掴み思い切り引っ張るが…悲しいかな、圧倒的な膂力の差により微動だにしない。

 

「気にするな…ただの品定めだ

これは持論だが、性癖にはソイツの全てが反映される…女の趣味がつまらん奴はソイツ自身もつまらん

最後の交流会なんだ、どうせなら最高の相手とやり合いたい…だからさっさと答えろ」

 

安心しておけ、お前がつまらんのなら秤を狙う。そう言いながら東堂は好戦的な笑みを絶やさない。

伏黒はそんな東堂を見ながら考える、自身にとってのゴール…目指すべき着地点を。

 

(釘崎は丸腰…この東堂(パイナップル)は論外として、連れの方は常識人っぽいな

なら、とりあえず適当に答えて帰ってもらうか…秤先輩には悪いけどこんなん相手に一々付き合ってられん)

 

「別に、好みとかありませんよ

その人に揺るがない人間性があれば…それ以上は何も求めません」

 

適当、と思いつつも口にしたそれは伏黒の本音であった。

その時、彼の脳裏に浮かんだ人物が誰かなど…言うまでもなく。

 

「………ふむ」

 

伏黒の答えに東堂は口元へ手をやりながら黙考し始める。

横で批評家面をしながら寸評する釘崎に意識を向けず、無言で佇む東堂を見る伏黒。

その脳内では、ようやくと言っていいほどに遅ればせながら東堂の名が一つの心当たりと繋がっていた。

 

「嘘は言っていない…魂からの性癖(答え)に違いはない──が、全てを語った訳でもない…違うか?」

 

東堂はゆっくりと伏黒に向かって歩き出す。

 

(東堂…あの東堂か!

去年起きた呪詛師羂索による未曾有の呪術テロ…京都に現れた一級呪霊13体特級呪霊2体を1人で祓ったっていう、あの東堂!!)

 

「1級術師ともあろう男の性癖がそんな程度の筈がない!

何故隠す!何を恥じる!?俺はお前のどんな性癖も笑わん!!

さぁ!答えてみろMr伏黒!!

因みに俺は、身長(タッパ)(ケツ)がデカイ女が好み(タイプ)です!!」

 

お互いに手を伸ばせば届く距離にまで詰め寄った東堂は唾液を飛び散らせながら叫ぶ。

まだ日も高い時間帯、ポリスメンは今日も職務怠慢の誹りを受ける。

 

「………色白で、黒髪ポニーテールのしっかり者だけどちょっとおっちょこちょいな自分よりも他人(まわり)を優先するような女…です」

 

相手を理解した伏黒には、この場を武力で収める選択が無くなった。

まず間違いなく釘崎に危害が及ぶ上に、あの連れでは東堂を止めるなど不可能だ。

だから…業腹だが伏黒は包み隠さず素直に答えた。

 

「…………成る程な」

 

数秒…もしかすると数分はあったかと錯覚する程の時間の後、東堂は得心いったと呟く。

 

「やはり、俺には語れんか…ならば!直接身体に聞く他あるまい!!」

 

東堂の身体から敵意と共に膨大な呪力が噴出する。

 

「ッ!逃げろ、釘崎!!」

 

伏黒の声と、東堂のラリアットは殆ど同時だった。

東堂のギロチンの如き…否、咄嗟に呪力で防がなければ事実首が刎ねられたであろう一撃に伏黒の身体が吹き飛ぶ。

 

「さぁ、死ぬ気で受けろよ!」

 

高専の敷地を抉りながら着地した伏黒の目に映ったのは、既にこちらへ拳を振り上げる東堂。

 

「クソ…ッ!やってやるよ!」

 

伏黒は瞬時に両腕を交差させると、拳を振り下ろす東堂へ突っ込んだ。

 

「何っ…!?」

 

力と速度が乗り切っていない東堂の拳を交差させた腕で滑らせるように上へ弾く。ソレは、空手などに見られる十字受けと呼ばれる…受けに特化した技術である。

 

伏黒は渾身の右拳を逸らされ、ガラ空きとなった東堂の腹に呪力で強化した膝を叩き込んだ。

しかし──

 

「クックックッ…やはり、良いな…!

さぁ!俺にもっと魅せてくれ、Mr.伏黒!!」

 

東堂は右拳を逸らされたと見るや、瞬時に腹部を全呪力で保護していた。

 

ダメージは、最小限に抑えられた──しかし、それは伏黒の攻撃が膝蹴りで終わっていた場合に限る。

伏黒は膝蹴りをあえて振り抜き体勢を低く屈めると、東堂のズボンの裾を持ち引いた。

ボッカ ジ カウサ、と呼ばれるカポエイラの技術…人体構造上、どれだけ力を込めて踏ん張ろうとも膝関節の可動域に逆らわず与えられた力が東堂の体勢を崩しそのまま仰向けに転倒させた。

 

「ぬっ!?」

 

そのまま、転倒した東堂の顔面へ一切の躊躇無くストンピングを敢行する伏黒に東堂は口角が釣り上がるのを止められなかった。

 

(コイツ…!細身の薄っぺらい身体(ガタイ)かと思えば…とんでもない!服の下はワイヤーを束ねたような極太の筋繊維で造られたワガママボディ!!恐らく、体重は俺とさして変わらんな…腕力(パワー)は俺の方が上、しかし敏捷性(アジリティ)技術(テクニクス)は向こうに分があると見た)

 

「これが…ギャップ萌え、という奴か」

 

顔面を踏み締められ、無数の擦過傷を創りながら…笑う。

 

パン

 

軽い拍手の音と共に、伏黒の足元から東堂が居なくなる。

 

「良い…!実に素晴らしいぞ!!

さぁ!俺にもっとお前を…剥き出しの伏黒恵を魅せてくれ!」

 

「言われなくても見せてやるよ…気持ち悪ぃ」

 

伏黒が総身に呪力を滾らせながら手印を結ぶ。十種影法術の式神達の召喚が──行われる、その正に寸前に新田新の声が響いた。

 

「握手会!間に合わんようになりますよ!!

その為に東京まで来たんやないんですか!?」

 

瞬間、東堂から一切の呪力が消失し伏黒に背を向ける。

 

「Mr伏黒!勝負は交流会まで預けておこう…俺にはこの命よりも大事な予定がある」

 

東堂はズボンのポケットから大量の紙束…握手会のチケットを取り出し、それを伏黒に見せつけながら爽やかな笑顔と共に言う。

 

「高ミナ乙女達の個握がな!!」

 

気付かなかった、伏黒は眼の前に居る東堂が起こした理解不能なアクションに困惑し周囲への警戒が切れていた。

気付かなかった、東堂はもうすぐ始まる個別握手会と想像以上だった伏黒との交流会での戦闘への高揚で周囲が見えていなかった。

故に、二人はその人物の接近に一切気付かなかった。

呪術高専東京校二年、伏黒津美紀の接近に。

 

「あら…?コレって美々子と奈々子の握手会チケットじゃない!

もしかして…恵のお友達?」

 

東堂がこれみよがしに持つチケットを見ると、津美紀は嬉しそうに笑った。

 

「津美紀…っ!?」

 

「ほう…美々子ちゃんと菜々子ちゃんの良さが理解(わか)るとは

中々良い趣味だ、お嬢さん」

 

「勿論!美々子と菜々子の良い所なら一杯知ってるわ!」

 

確信、これ以上津美紀を喋らせてはならないという嫌な予感が伏黒の全身を走る。

 

「待て!津美紀──」

「だって、私達は二人の──姉兄(きょうだい)だもの!」

 

瞬間、東堂の脳内に溢れ出した──()()()()()記憶

 

 

 


 

 

『行ったぞ、葵!』

 

『任せてくれ!義兄さん!!』

 

伏黒の声に合わせて、東堂の拍手の音が響く。

東堂の術式が二人の前に迫っていた呪霊と他の呪霊とを入れ替え、それを伏黒が瞬時に式神で祓う。

 

『流石は義兄さんだ!』

 

『ああ…だが、葵のサポートあってこそだ』

 

呪詛師羂索により引き起こされた百鬼夜行、京都の町並みを埋め尽くさんばかりに現れた呪霊達を東堂と伏黒は祓っていた。

 

『ふふ…相変わらずだな義兄さんは、行き過ぎた謙遜は時に嫌味だぞ?』

 

『…悪いな、気ぃ付けとく』

 

命を懸けた局面でありながら、二人は軽口を叩きながら呪霊を祓っていく。

それは、二人の実力が過剰だから…ではない。

確かに、東堂も伏黒も同じ1級ではあるが対する呪霊達も1級から準1級の強さを持っている…その上、奥で此方を伺う個体は恐らく特級に近い。

状況ははっきり言って絶望的だ。とてもではないが1級術師が切り抜けられる範疇を逸脱している。

冷静に状況を俯瞰する脳味噌が、冷静に告げる…だが、東堂のIQ53万の脳内CPUが導き出した答えは──

勝利(ビクトリー)

何故なら──俺は独りじゃないから!

 

『行くぞ義兄さん!早く帰らねば美々子ちゃんと菜々子ちゃんがへそを曲げてしまう!!』

 

『ああ…呪霊共より、そっちのがよっぽど面倒くさいしな

気張れよ葵!』

 

『応!!』

 

そして、二人は呪霊の海へと飛び込んで───

 

 

 


 

 

「あの後、拗ねた美々子ちゃんと菜々子ちゃんに京都名物を山程買いに行ったっけ……」

 

「……………………………は?」

 

突然固まったかと思えば、天を仰ぎながら顔面からよくわからない汁を分泌する東堂に伏黒はドン引きしていた。

 

「どうやら俺達は、義兄弟のようだな」

 

「…………アンタ、頭おかしいのか?」

 

その後、あの恵にお友達がこんなに…と涙を滲ませる津美紀の絶望的な勘違いをなんとか正しながら現場から遠ざけ

義兄さん!?なぜだ…俺だ!貴方の弟、東堂葵だ!!等とよくわからない言語を吐くパイナップルを連れに押し付けながらなんとか場を収めた。

 

伏黒恵、肥満児や天与の暴君とその貢ぎマゾ達に囲まれた

庵歌姫に次ぐ現代の───苦労人

 

 

 


 

 

隙間に肥満児

 

 

「あーあー…皆さんお待たせしました

それでは手短に」

 

宗教団体【盤星教 時の器の会】、その本部にて一人の男がマイクを片手に壇上へ上がる。

 

「今この瞬間からこの団体は私のモノです

名前も改め、東京都立呪術高等専門学校ドカ食い気絶部の出張支部となります

皆さんは今後、私に従って下さい」

 

反対多数

 

「困りましたね…そうだ!!

園田さん、よろしければ壇上へ…そう!アナタです!!」

 

ゴシャア!!と派手な音を立てながら園田と呼ばれた男が倒れる。

その口からは、パンパンに詰め込まれたビッグマックとフライドポテトが飛び出していた。

男は──夏油傑は、園田が血糖値スパイクによって気絶した際に頬に飛んで来たマックシェイク(バニラ)を親指で拭い取るとそれを舐めとりながら底冷えした表情で宣言する。

 

「私に従え、欠食児童(ガリ)共」

 

ドカ食いは素晴らしい、それが──私の選んだ本音

 

──記録 2007年 8月

■■都■■市

 

任務概要

  宗教団体の内情調査

 

・担当者(高専3年 夏油傑)派遣から5日後、旧【盤星教 時の器の会】の信徒2万5000名のBMIの急上昇が確認される

 

・現場に残された指紋と大量のマックの空袋により、夏油傑の犯行と断定

 

・しかし、肥満化した信徒全員からの強い要望と呪術総監部への多額の献金により夏油傑特級術師への処罰は見送られる

 

・しかし、今回の一件によりカバーストーリー【適度な肥満は健康的】の適用が発生した為、監督不行き届きとして夜蛾正道1級術師を4級術師へ降格処分とする

本編が続くとしたら何が読みたいですか?

  • 虎杖編(少年院〜幼魚と逆罰)
  • 伏黒編(京都姉妹校交流会──殲滅戦)
  • 九相図編(起首雷同〜宵祭り)
  • 人外魔境新宿決戦
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