モソ…メシャ…モニュ…ナポ…
ガシャガシャぐァつぐァつぐァつ
鰻屋で鰻を食べているとは到底思えない音で食事をする二人を未確認生物でも見るかのように観察する天内と黒井。
「ほら、全然食べてないじゃないか理子ちゃん…手と口動かしなさい」
「も、もう無理じゃあ!美味いには美味いが妾はフードファイターじゃない!!」
「フードファイター…?可笑しな事を言うね
私達の血肉になってくれてありがとう、命を奪ってごめんなさい…私個人の考えだがいただきますにはそういう意味も多分に含まれてると思っている」
「妾の…血肉に……」
天元との同化を運命づけられた星漿体、天内理子は夏油の言葉を噛み締めるとゆっくりと手元のひつまぶしを見る。
「ごめん…なさい……ありがとう──いただきます」
目に涙を溜めながらゆっくりとひつまぶしを食べる。
香り、温度、食感、味、咀嚼音。
全てを忘れないように、全てを戴く為に…ゆっくりと。
「……ご馳走さまでした!」
2時間後、鰻重にひつまぶし等の合計3膳を食べきった天内は疲れたような…それでいてとても嬉しそうな顔でそう言った。
「お粗末さまでした」
鰻重に蕎麦、更にはカレーまで含め4キロ弱の料理を胃袋に収めた夏油はまるで子の成長を見守る親のように笑った。
「じゃ、そろそろ飯行かね?傑」
こちらはメニュー全頼みの弊害によりダブりにダブった鰻重や鰻丼を中心にセットメニューまで含めた4.5キロ強の料理を胃袋に収めた五条がモッチモチの頬肉を揺らしながらのたまう。
「そうだね、
「………は?」
天内は目の前でぷるぷると震える肉塊共の耳を疑う会話に呆然と声を漏らす。
「さ!理子ちゃん…君にこの世で1番の美食──人の金で食う焼き肉を食べさせてあげよう!」
「ふ…ふざけるのも大概にしろ!この
「お前、ホントにマジビンタ……」
むっとした五条が口を開いた瞬間、その巨体が停止した。
「なんじゃ!!やる気かこの豚が!妾を殺る気ならまずは貴様から死んでみせよ!!」
「…………」
「……な、なんじゃ…?なぜ急に黙って突っ立っとるんじゃ…?」
あぁ…来た…
ガゴシャア!と崩れ落ちた五条を夏油はやれやれと担ぎ上げる。
「お、オアァァ!?ご、五条が死んだぁ!!!」
「ん?……あぁ!違う違う、コレは死んだんじゃなくて気絶しただけだよ
血糖値スパイクってヤツさ」
大量の
そして、護衛任務中にドカ食い気絶部を
護衛3日目(同化当日)
都立呪術高専、筵山麓
「結局、あれから一回も襲撃無しだもんな…気の張り損だ」
ズコー、とハンバーガーショップで購入したシェイク(言うまでもなく最大サイズ)を
「最悪じゃ……
そんな五条の後ろをふらふらと歩く天内とその天内を心配そうに見る黒井。
「まぁ、相手からすれば四六時中私達が理子ちゃんに張り付いてる訳だしね…当然と言えば当然さ」
更にその三人の後ろを呪霊玉を齧りながら歩く夏油。
本日の呪霊玉は夏油がへそくりとして食べずに置いていたとっておきである。
「美味いな…ゲテモノは美味と相場が決まってるだけはある!」
黒沐死──
特級の呪霊玉を瞬く間に完食した夏油は長い階段を登り終えると三人に向き直る。
「皆、お疲れ様…高専の結界内だ」
「これで一安心じゃな…」
「で、ですね…」
夏油の言葉に最早その程度ではテンションを上げる事すら出来ない程に乙女の
そして、同化についていまだ自身の心を整理しきれない黒井。
そんな二人の上の空な返答に夏油は曖昧な笑みを浮かべるとシェイクを
「悟も…本当にお疲れ」
「………二度とごめんだ、ガキのお守りは」
五条のセリフにお?とファイティングポーズをとる天内。
五条は2本目のシェイクを袋から取り出しつつ天内に
「素直じゃないね、この3日間気絶してる時以外は術式を解いてないだろ?それに睡眠もだ…」
ムッチムチの指を突き立てる五条に近寄ると耳打ちする夏油。
五条は鬱陶しそうに突き放すとゲー、と舌を出す。
「問題ねぇよ…健康診断前の断食やった時の方がしんどかったわ」
瞬間、五条の脇腹から刃物が突き出た。
「馬鹿な…ここは高専結界の内側だぞ!!」
「アンタ…どっかで会ったか?」
夏油の叫びが響く中、五条は背後の襲撃者を見る。
「気にすんな…俺に豚の知り合いなんて居ねぇよ」
襲撃者が腹部に刺した刀を上に斬り上げようと力を込める。
しかし、それより先に…五条悟の術式が発動した。
収束する負の無限級数、無限の収束は瞬時に男の体勢を崩す。
そして、その隙を見逃す程に夏油傑は甘くない。
夏油は瞬時に男の懐に潜り込むとその身体を蹴り飛ばす。
「悟!!」
男が石畳を削りながら神楽殿の一つに突っ込んだのを確認しながら夏油は五条の名を叫ぶ。
「問題ない、術式は間に合わなかったけど内臓までは届いてないし呪力で強化して刃をどこにも引かせなかった」
五条は本当に大丈夫だと立ち上がる。
「でかいクリームパン齧ったみたいなもんだよ、
五条は男が飛んでいった方向を睨むと夏油の方を見ずに話す。
「天内優先、アイツの相手は俺がする
傑達は先に天元様の所へ行ってくれ」
「………油断するなよ」
「誰に言ってんだよ」
夏油は親友の言葉に天内と黒井を連れ駆け出した。
高専最下層、薨星宮 参道
昇降機で地下深くまで降りてきた夏油は涙と共に別れの言葉を交わす天内と黒井をじっと見つめていた。
「ここが…」
「あぁ、天元様の膝元…国内主要結界の基底、薨星宮本殿
ここからあの大樹に向かって行けば天元様の元まですぐさ」
天内は何も言わず目を伏せる。
「………それか、引き返して黒井さんも連れてデブエットの続きをしよう」
「……………はぁ?」
9割9分9厘の何言ってんだこの豚がこめられた返答。
そして…1厘の期待が混じった、返答。
「君と会う前に悟との話し合いは済んでる
大丈夫、なんとかなるさ」
夏油はブ厚い胸を更に張って、誇らしげに言い切る。
「私達は、最強なんだ」
「理子ちゃんがどんな選択をしようと、君の未来は私達が保証する」
ムッチムチで、ブ厚く、
「何それ…訳わかんない
初対面で人に
「うん…ごめんね」
ポロポロと溢れるように出てくる天内の言葉を聴き逃さないようにゆっくりと聞く夏油。
「急に、説教臭いこと言ってくるし…でも、変に優しいし…なにより、二人共…私を私として接してくれた…
ボロボロと天内の目から涙が溢れる。
「私、私…っ!もっと皆と…一緒にいたい!!
もっと皆と…色んな所に行って色んな物を見て……
………もっと!!」
顔を涙でぐしゃぐしゃにするのは、夏油の前に立って居るのは
トクベツな一人だけの人間ではない。
何処にでも居て、此処にしか居ない
そんな、一人の
「帰ろう、理子ちゃん」
「……うん!!」
銃声が響き頭が弾かれたように動く。
「…………チッ、勝手に射線に入ってんじゃねぇよ
殺処分すんぞ…豚が」
「そっちこそ…勝手に入ってくるんじゃない
駆除するぞ…猿が」
襲撃者、伏黒甚爾は血塗れの夏油傑と対峙した。
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虎杖編(少年院〜幼魚と逆罰)
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伏黒編(京都姉妹校交流会──殲滅戦)
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九相図編(起首雷同〜宵祭り)
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人外魔境新宿決戦