俺をほっといてくれ!! 作:やめてくれ
まさか、こんなに反響する事になるとは………
ゆっくりと俺の意識が戻ってくる。
俺の存在が世界にゆっくりと戻ってくる。
目を開くとそこは一年前に勇者達と戦った場所だった。だけど、そこは変わり果てていて前の面影は余りない。
体感的にはさっきの出来事なんだけどな………
俺はとりあえず今の世界の情報を知るために街に向かう事にした。
確かここからだと人間の街が一番近い筈だ。
「”転移"」
こういう時って本当に魔法は便利だよな。
ココからだと歩いて一時間ぐらい掛かりそうだし……
▼▼
人間の街《クラート》ここは比較的に人口の少ない街で、周りにも魔獣などが居ないことからも平和な街である。
「よお!そこの兄ちゃん。」
俺が呑気に街をブラブラ歩いていると、頭にタオルを巻いている活き活きとしたおっさんが話しかけてくる。因みに俺は魔法で角は隠してる。
「なんだ?」
「お前さんこの街に来るのは初めてだろ?」
俺はこの街に来るのが初めてなのを見抜かれて、少し警戒をする。
「どうしてそんな事が分かるんだ?」
「そんな身なりをしていて、街の何処に行けばいいのか分からずブラブラしてたら、誰だってそう思うだろ?」
俺は思わず「うっ……」っと声に出してしまう。
確かに俺はこの街に来るのは初めてで、何処に行って情報を集めたらいいのかよくわからなかった。
そもそも俺、魔族だったから人間の街に来る事自体初めてだし……
「まあ、どちらかというと不審者だったがな!ガッハハハハ!!」
また俺は思わず「うっ……」っと声を出してしまう。
俺そんな不審者みたいに見えた?
「まあ、
豪快におっさんが笑う。
元気だな……ってそれよりも聞き捨てならない事が耳に入った。
「……魔王が倒されたって……本当なのか?」
「あ、お前知らねーのか?結構有名だと思うがな……」
おっさんの話によると、どうやら魔王は勇者達との激しい戦いの末、敗れて死んでしまったらしい。
「…………」
……………美少女なのに勿体ないなと思っている訳ではないぞ。
ただし、勇者達の完全勝利という訳ではないようで、魔王も大概なチートを持っていて勇者達も魔王を倒した時は瀕死だったらしい。
俺はその他にも色々とおっさんから情報を教えて貰い、最後にはお礼を言って別れた。
結局何だったんだろうな、あのおっさん……
それにしてもあの俺をボコボコにした魔王が負けたのか……ハッキリ言って、俺からしたら勇者達も魔王も大概なチートだが、どちらも負ける所が想像出来ない。勇者と魔王に関しては俺が戦った時は三割も出してなかったと思うしな……
やっぱり、チートに対抗出来るのはチートだけってか?
チクショウ!!だったら俺にもチート寄越せ!!漫画みたいな俺TUEEE系になりたかったよ!!
あれ、おかしいな?目に水が………
…………なんか考えてたら、『俺の強くなる為の努力とは?』と考えてしまい、悲しくなったのでもう宿で寝る事にする。
今日はベッドの枕を涙を流して濡らす事になりそうだ………
▼▼
朝、小鳥達が木の枝に止まりチュンチュンと鳴いていた頃、俺は非常に不味い状況だった。
「……………」
俺は落ち着かない様子で周りを見渡し、ゆっくりと自分の隣で寝ている奴を見る。
「……………」
俺はもう一度、見間違いではないかを確認する為に、ゆっくりと自分の隣に寝ている奴を見る。
そいつは美しい黒髪を長く伸ばしており、身長も150cmぐらいで、出る所は出て、引っ込む所は引っ込んでいる、正にパーフェクトボディーの持ち主だった。顔も百人に聞いたら百人が美少女と答える程の顔立ちで、街を歩いたら誰もが目を奪われる程の美少女だった。
もしこんな美少女が俺の隣で寝ていたら、俺は三秒と持たず理性が飛んでいただろう。
………だけど俺は冷静に理性を保てていた。(冷静ではないけど)
「……………」
言ったよ?確かに俺は言ったよ?チートを寄越せってな?でもさぁ……でもさぁ……
「………うにゅ?」
俺が内心で滅茶苦茶焦っていると、俺の隣から可愛らしい声が聞こえた。(存在自体は可愛いとは言っていない。)
「あ、えと、……おはようございます?久しぶりです?魔王……様?」
目を擦った後に魔王は寝ぼけた顔から真剣な顔に変わる。服装はパジャマだが………
「うむ、久しぶりだな。私の愛しき奴隷よ」
うん……俺なんで普通に魔王と会話してるんだろ?
というか魔王様?前まで「私の愛しき幹部」って俺の事言ってましたよね?なんか幹部から奴隷に退化してませんかね?
「あの〜魔王……様?奴隷と言うのは……?」
俺が気になった事を魔王に質問すると魔王はゆっくりと口を開く。
「まずお前が疑問に思っている、私が勇者に倒されたって筈なのに、何故この場所に居るのかを説明する」
……質問を普通にスルーしやがった。明らかに話題を逸らしやがったぞ。
「あの、だから奴隷というのは……」
「そもそも私が目覚めたのはつい昨日……お前が丁度眠りに落ちた時だ」
あっ、この人このまま強行突破する気だ。
「もし私が勇者に敗れた時の為に、お前に私の魂の一部と魔力を預けて置いたんだ。そうすれば私が勇者に敗れても、また復活出来るからな」
「でも何故今になって復活したんですか?」
「………それは、お前の存在を消す魔法によって私も存在を一緒に消されてしまい、今こうしてお前が魔法から解放され、やっと今、私も復活出来るようになったんだ」
魔王の話をまとめる。
俺に魂の一部と魔力を預けて置いた。
一緒に“虚無"の魔法で存在が消されていた。
“虚無"の魔法が解かれ今、復活した。
「あの魔王様、”虚無"の魔法は俺自身にしか掛けられないのに何故魔王様にも掛かっているんでしょうか?」
そう、この”虚無"という魔法は俺専用の魔法であり、俺自身にしか掛けられないのである。
「ん?それなら簡単だ。私の魂とお前の魂を同化させていたから一緒に魔法に掛かったんだろうな」
おお?いきなりぶっ込んだ内容が飛んで来たな……
「失礼ですが魔王様………」
「なんだ?」
「いつ俺の魂なんかと魔王様の魂を同化なんてさせたんですか?」
「……………」
魔王の顔が急に真顔になる。
「あの〜質問の答e……?!」
俺は魔王に追求しようとするが、突如、後頭部に衝撃が走り俺は地面に倒れる。俺は覚束ない目で魔王を見ると、魔王は口をゆっくりと開きニッコリと笑う。
美少女がニッコリと笑うのはいいかもしれないが、コイツは美少女でも魔王だ。そのニッコリな笑顔でも凄まじい圧を感じる。…………チビッチャイソウ。
「それ以上踏み込むな。……分かったな?」
「分かり……ました」
▼▼
「相変わらずだな……お前は……」
魔王……リリスは床で気絶をしてしまった愛しい、愛しい、私の救世主を見つめる。
「あの日の事を覚えているか?───」
〜数年前〜
先代魔王がまだ魔界を指揮していた頃、先代魔王の娘だった私はまだ幼い娘だった。力もなければ戦闘をした事なんて持っての他、その時の私はまだ普通の女の子だったのである。
そんな私を狙ってか、先代魔王の座を狙う上位魔族が、魔王候補の私を殺す事を目的として数々の手先を裏で放った。
大抵の時は護衛など魔王の側近が居たので平気だったが、ある時私は先代魔王が居ない時を狙って攫われてしまう。
その時の私はまだ力も持っていない、ただの女の子………そんな私はただ涙を流すことしか出来なかった。
上級魔族は私を交渉材料とし、従わなければ私を殺すと先代魔王を脅していた。
私はここで死ぬんだ……とさえ思ってしまいそうになった絶望の中、突如私に一つの希望が落ちてきた。
「”爆撃"」
一人の少年が屋根を魔法で突き破り、私と上級魔族の前に降り立った。
「正義のヒーロー参上っと」
私と同い年位の男の子が、上級魔族が呆然としている間に私の拘束を解いてくれて解放してくれる。
「こ、このクソガキぃ!!」
だがすぐに上級魔族は意識を彼に向ける。自分の邪魔をした彼を殺す為に……
「”光爆"」
だが、彼は一瞬の隙を突いて、凄まじい光を魔法で放つ。
「目、目がァァー!!!!」
上級魔族は突然の出来事だったので、直で光を見てしまい両目を押さえて悶絶する。
「よし、今の内に逃げるぞ!」
そんな隙に彼はそう言って私の手を引っ張る。
「外には魔王の兵隊達が包囲してあるから、そこに行って保護してもらえ」
彼がある程度、上級魔族から距離を取ったら突然そんな事を言い出す。
「貴方は……貴方はどうするの?!」
「俺はこのまま上級魔族を、ちょっとおちょっくってから逃げるよ」
私はその言葉を聞き、彼を必死に止めようとする。
「駄目よ!!貴方も一緒に逃げましょ!!」
だけど、彼はそんな私に笑い、私の手を振り解く。
「悪いけどそれは無理だ」
「……どう……して?」
「俺は強くなりたいんだ。だからその為にも俺よりも強い奴に挑みたいんだ」
彼のその顔を見て私は思わず見惚れてしまう、何故かすごくカッコよく見えたから……
「……じゃあな」
そう言って彼は走り出してしまう。
「待って!!」
そんな私の叫びは虚しく、彼の背中はどんどん小さくなっていくのだった。
▼▼
……それからの私はというと、魔法の鍛錬や武術の鍛錬や剣術の鍛錬、色々な物に打ち込むようになった。
何故だか分からないけど、彼の強くなりたいという言葉に惹かれて、一緒に並んで戦えたらなと思ったからだ。それに彼の事を考えると、あの時の顔が浮かんできて胸がドキドキとする。
きっと……これが恋なんだなと思った。
そして私はここの数年で力をつけて、魔界の為に頑張っていた父の後を継ぎ魔王となった。魔王となった事で私には色々な情報が入ってくるようになった。その中には彼の情報もあり、今の強くなった私を見せたくなり、私は彼に会いに行くことにした。
私が彼に会いに行って、最初に彼が浮かべた顔は困惑だった。どうやら私の事を完全に忘れているらしく、「なんでここに魔王様が?」と困惑していた。
私は忘れられている事に少しイラッとしたけど、そんな彼もここ数年で成長をしていて、身体も前見た時よりもガッシリしていて、背も高くなっていた。
私はまた見惚れそうになるが、魔王としての威厳を失わない為にしっかりとケジメをつける。
「お前が最近噂になっている者だな?」
「多分そうだと思いますが………あの魔王様が何故ここに?」
彼にそう聞かれ思わず私はハッ!とする。
………何も考えずに来てしまった。
だがこれでも私は魔王だ。即座にいい考えが頭に浮かぶ。
「私はお前を魔王軍の幹部にスカウトに来た」
フッ……我ながら天才だな。こうして魔王の威厳も守られて、彼も魔王軍の幹部となり私と一緒に居られる。正に一石二鳥とはこの事だな。彼が魔王軍に入ったら、一緒にあんな事やこんな事を……
「すいませんがお断りさせて頂きます」
…………は?
「そ、それは何故だ?」
私が必死に冷静になりながら聞くと……
「私は魔王軍の幹部が務まる程の器も強さもないと思ったからです」(嘘である、本当は死にたくないからと、面倒くさいからである。)
「………そうか」
だがしかし、ここで諦める私ではない。私は彼をどうしても魔王軍に入れたいので、強行手段に出る事にした。
「…………ならばこれはどうだ?私と勝負して勝ったら地位や名誉を好きなだけやろう。(あわよくば、私の身体も好きにしていいぞ♡)………もちろん負けた場合はお前が幹部になるんだがな?」
彼が顔を赤くしてる気がするが、私は気にせず質問の答えを待つ。
「で、どうする?」
「…分かりました。その提案に乗ります」
こうして私は彼と勝負する事になり、私を忘れていた苛つきもそこで発散させる事にした。
勝負は無事に勝った。
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彼を幹部にしてから三年が経った。
彼に幹部にする為の儀式をすると嘘を付き、私の魂の一部と魔力を預けてマーキングなどをしたり、何処かに行く時は必ず彼を一緒について来させたり、私は少し幸せな生活を送る事が出来た。
いつか魔界が豊かに平和に暮らせるようになったら、私は彼と………
「ん…ん!!……今は魔界に住む民達の為に集中しないとな」
私が心を切り替えて集中しようとしたら、突然扉が勢いよく開かれる。
「大変です!!魔王様!!」
「どうした?」
急いで扉を開けて来た、魔王城の兵士の唯らなぬ様子に私は眉を顰める。
「さ、最後の四天王が勇者によって討たれました!!」
「は……?」
……その時、私の心の何かが壊れた気がした。
補足
(あわよくば、私の身体も好きにしていいぞ♡)
この魔王の心の声は全てダダ漏れをしています。
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