では、本編をどうぞ!
日が半分ほどの大きさになり、第一高校の廊下は綺麗な橙色に染まっていた
授業が終わってから少し時間が空いたせいもあって、廊下には3人の人影を除き、人はいなかった
そのうちの1人、司波深雪は笑顔だった。それもそのはず、生徒会の面々に兄の実力が評価され、今から正式に風紀委員に任命されるであろうからだ
そのうちの1人、司波達也は凛とした表情をしていた。今日の昼休み、生徒会長、七草真由美に誘われ食事をするハメになったはいいが、そこで風紀委員に指名されたのだ
風紀委員とは校内でのCAD着用を許可され、校則を違反した者を武力をもって制し、律するのが仕事である
そんな風紀委員の仕事を、二科生である達也に出来るわけがない
風紀委員長である渡辺摩利にそう進言したが、はぐらかされたままである
だから達也は心に決めていた
放課後に絶対に断ってやると
その2人の後ろをヤル気のなさそうについて行ってるのは、この物語の主人公こと百鬼夜一である
夜一は、昨日摩利に風紀員室に来いと言われた
理由はおそらく、風紀委員に誘うためだろう
風紀委員は、CAD着用の許可や権力が与えられる代わりに、時間や労力といったものを費やさなければいけない
ちなみに、深雪から摩利が生徒会室にいるという情報を得て、今は達也、深雪、夜一の3人で生徒会室に向かいっている最中である
「お兄様、今日の晩ご飯は何にいたしましょう?」
「深雪の作るものならなんでも嬉しいよ」
「まあ、お兄様ったら」
夜一の前では兄妹とは思えないピンク色の空気が流れている
「イチャついてるとこ悪いが、もう生徒会室だぞ」
夜一はヤル気のなさそうに言った
「夜一さん、イチャついてなどおりませんよ、私たちは兄妹なのですから」
深雪が訂正してくるが、どの口がそう言うのやら
「まあ、どっちでもいい。とにかく入ろうぜ」
夜一は呆れながらも生徒会室のドアをノックした
「「「失礼します」」」
3人が礼をし、顔を上げると、そこには生徒会のメンバーと思える人達と摩利がいた
「おお、よく来たな」
摩利が声をあげると、自然と視線が夜一たちに集まる
「とりあえず、夜一君もいることだし自己紹介しましょうか」
真由美の提案に、生徒会の面々が作業をやめこちらを向いた
「まず、そこにいるのは市原鈴音、あだ名はリンちゃんです」
「そう呼ぶのは会長だけですよ」
真由美の説明に鈴音は呆れながらも答える。鈴音は、髪を長く伸ばし、大人の雰囲気を出している。真由美とはまた違ったタイプだが美人である
「次に、そこにいるのが中条あずさ。通称あーちゃんよ」
「会長!後輩の前であーちゃんはやめてください!私にも威厳と言うものがあり「次に!」っ」
あずさは真由美の説明に反論したが、無理やりスルーされてしまう
あずさは身長が小さく、幼そうといった印象である
「次にこっちにいるのが、服部君です」
「服部半蔵です。話は聞いてます。よろしくお願いします、司波さん、百鬼くん」
服部はプライドの高そうな印象そのままだった。深雪と夜一にしか挨拶をしない所を見ると、一科生と二科生をずいぶん区別してるように見てる
「「よろしくお願いします」」
深雪と夜一は礼をしたが、深雪は怒っているのが丸わかりだった。
おそらく、達也に礼をしなかったのが気に入らなかったのだろう
「以上が生徒会のメンバーよ」
「1-A百鬼夜一です。よろしくお願いします」
「1-A司波深雪です。よろしくお願いします」
「1-E司波達也です。よろしくお願いします」
「よし!じゃあ風紀委員本部に行こうか」
一通り自己紹介が終わったのを確認し、摩利が言った
「摩利姉!」
「ん?どうした?夜一」
「僕が呼び出された理由をまだ聞いてません」
夜一は、呼び出された理由は大方想像はついていたが、一応確認はしなければならない
「ああ、まだ言ってなかったか。私が風紀委員に推薦したからだ」
想像通りだった。問題はここからだ。どうやって断るかだ。
夜一はいろんなバターンを脳内シミュレーションしていた。問題は切り札の使い所である。
「ああ、そう言えば言い忘れたことがあったな」
夜一は、油断していた。切り札を持っているのが自分だけだと過信していたのだ
「風紀委員に入ったらコレをやろう」
「なっ!!!」
摩利はそう言って、夜一に写真を見せて来た。そこには紅い髪の色の美少女こと、エリカが水着姿で写っていた
しかも笑ってカメラに向かってピースをしているというオマケつきである
「ふふっ、お前の性格など把握済みだ。どうだ?コレが欲しくないのか?ほれ、ほれほれ」
摩利が勝ち誇った顔で写真を夜一の目の前で揺らしてくる
クソ!やられた!欲しい!めちゃくちゃ欲しいぞ!というかエリカ胸大きくなったな…
夜一は仕方なく、ここで切り札を使うことにする
「摩利姉」
「ん、どうした?風紀委員に入るならやってもいいぞ」
摩利は勝ち誇った顔をしていた。
「この写真と交換しませんか?」
「なっ!!!!」
今度は摩利が驚く番だった。
そこには摩利の恋人、千葉修次が写っていた。しかも寝顔である。
普段はいつ何が起きても大丈夫なように、常に隙を見せない修次がこんな隙だらけのところは珍しい
欲しい!欲しいではないか!クッ、図ったな夜一め!
自分のことは棚にあげてそう思う摩利であった。
「ま、まあ、そうだな、とりあえず交換と言うことで手を打とう」
摩利と夜一は渋々交換したようだが、写真を受け取った時は表情を緩めていた
宝物にしよう!
そう心に決める、摩利と夜一であった
近くからそのやり取りを見ていた鈴音は、交渉材料に使われた千葉兄妹に同情していた
一方、2人がそんなやり取りをしている間に、いつのまにか達也と服部が模擬戦をすると言う話になっていた
「そうだ!摩利姉!僕が風紀委員に入るかは模擬戦で決めませんか?」
「ふっ、お前と模擬戦をするのは1年ぶりか。いいだろう!その勝負受けて立つ!」
かくして達也対服部、摩利対夜一の勝負となった。
魔法科高校にはそれぞれ模擬戦を行える施設が設けてある
そこに、達也と服部は向かい合って睨み合っていた
服部は模擬戦を申し込まれたが、負けることなど微塵も考えてなかった
なぜなら魔法師においての模擬戦はいかに先に魔法を当てるかで勝負が決まる
そして、一科生が二科生に対し、魔法の発動速度が負けることはない
つまり、この勝負は始まる前からもう結果がわかっているのだ
さらに付け加えると服部は高校に入ってから一度も模擬戦で負けたことがなかった
服部はこの第一高校でも屈指の実力者であった
それに対し達也は二科生のなかでも特に実技が苦手である
服部も生徒会のメンバーも誰も達也が勝つことは想定してなかった、達也の実力を知る深雪と夜一以外。
「では、ルールを説明する!」
達也と服部が5mほど離れた位置で摩利がルール説明を始める。
「相手を死にいたらしめる術式、並びに回復不能な障害を負わせる術式は禁止。素手による攻撃は許可する。勝敗は、一方が負けを認めるか、審判が続行不能と判断した場合に決する。ルール違反は私が力ずくで処理する。以上だ!」
ルール説明が終わり、摩利が手を上げる
「では、はじめ!」
試合開始の合図として摩利が勢い良く手を振り下ろした
服部は開始してすぐに、CADを操作する。術式は基礎単一系。服部がCADの操作を一秒もたたないうちに操作し終えると、達也に向かって魔法を発動しようとする。
そのとき、達也の姿が消えた
服部は驚いて左右を見渡す。突然の事態に服部は混乱した。
そのとき、服部は突然の気持ち悪さにおそわれ、意識を投げ出してしまう
その場にいた者の大半が、状況を受け入れられず、唖然としていた
数秒がたち、ようやく摩利は正気に戻り宣言した
「勝者、司波達也!」
達也はCADをケースに入れ直していたが、まだ大半の人が何が起こったのか理解出来てないようだ
「ちょっと待って達也君、今のは何をしたの?」
真由美が全員の気持ちを代表して達也に聞く
「やったことは簡単です。相手の背後に回り込み、振動系の基礎単一系魔法を打っただけですよ」
「と言うことは、あらかじめ自己加速術式を展開していたのか?」
摩利の質問は当然とも思える疑問であった。達也の速さはあまりに一般人離れしていたからだ
「いいえ、あれは正真正銘身体的な技術ですよ」
摩利と真由美はそれでも納得のいかないという顔をしていた
「兄は忍術使い、九重八雲先生の指導を受けておられるのですよ」
「なっ、あの九重八雲か」
深雪が補足すると、摩利と真由美は納得したようにうなづいていた
九重八雲は性格は緩いが、実力は本物である。忍術使い、九重八雲と言えば知らぬ者がいないと言えるほどに名を馳せている
「でも振動系の基礎単一系魔法だと、服部君が倒れた意味がわからないわ」
「簡単です、酔ったんですよ」
達也は答えたが、それでも真由美はわからなかったようなので、補足をする
「魔法師は予期せぬ想子に当てられると自分の体が揺さぶられたように錯覚するんです」
「でもそんな強い波、一体どうやって?」
「波の合成ですね」
先ほどまで服部の様子を見ていた鈴音が答える
「振動数の違う波を三つ作り出し、ちょうど服部君のいる位置で合成したんですね」
「お見事です、市原先輩」
先ほどの勝負の内容を全員が理解出来たようで、みんな満足気な雰囲気だった
「摩利姉、勝負しないなら帰っていい?」
夜一は難しい話は好きではないので、達也達の話に飽き飽きしていた
「おっと、すまなかったな。では5分後にはじめようか」
「りょーか〜い」
摩利の提案に夜一は眠たそうに答えると、二人とも準備運動をし始めた
「そう言えば会長、百鬼家とは見たところナンバーズのようですが、どのような魔法を使うのですか?」
市原は真由美に気になっていたことを聞いてみる
現在の日本には、七草を始めとした十氏族、苗字に数字が入っている家の者をナンバーズと言い、魔法師の実力を把握する一つの目安となる
よってナンバーズは自然と有名になり、その家の得意魔法などは自然と広まる
それなのに百鬼家とは聞いたこともなかった。
「それがね〜、私もよくわからないのよ」
「会長の情報網でもですか?」
十氏族はそれぞれ、かなりの情報網を持っている。それでもわからないとは余程のことである
「私も気になって調べて見たんだけどね、わかったことは、剣術の名前と噂のようなもの程度だったわ」
達也は少し驚いていた。七草、つまり十氏族の情報網を持ってしてもわからないとは異常である
百鬼家か、今度九重先生にでも調べてもらうか
達也は横から聞こえてくる会話に、百鬼家への警戒心を強めた
「それにしても、噂とはどんなものなのですか?」
「百鬼家の子孫には鬼の力が宿る、ですって。笑っちゃうわよね。ねっ、達也君」
突然話題を振られた達也は少し慌てながらも答える
「鬼の力ですか、それはぜひ見てみたいですね」
達也はそう言いながら苦笑した
「よし!では始めるか!」
「ええ、もう準備万端です」
摩利と夜一は5mほど離れて向かい合った
「ルールは先ほどとほとんど同じだ」
「違うことがあるとすれば、この勝負、お前が勝てば風紀委員入りを見逃してやる。だが、勝てなかった場合は風紀委員に入ってもらうからな!」
「いいでしょう、望むところです」
夜一そう言うと、自分の腕の長さよりも短い木刀を両手に一本ずつ構える
ボタンがあるところを見ると武装一体型CADのようだ
夜一が構えたことを確認し、摩利も武器を構える
摩利の武器は竹刀だったが、手首にはもちろん凡用型CADを着けている
「では、はじめ!」
真由美の合図で二人とも一瞬で距離を詰めた
摩利は刀のリーチを生かして、竹刀を振ってくる。夜一は、跳びながら体を捻り、踊っているように刀をよける
刀を振ったあとの隙が出来ているところを狙って夜一は摩利に切りかかろうとする。
そのとき、夜一は視界の端から迫ってくるものを感じ、バク転をして摩利から離れる
すると先ほどまで夜一がいた所を、摩利は空振りする。
摩利はワザと隙を作り、そこを狙ってきた夜一を刀の頭で攻撃しようとしたのだ。
相手が夜一でなければ、勝負はもう決まっていただろう
「なっ、なんて速さなの!」
あずさは2人の剣士により行われた一瞬の出来事に驚愕していた
明らかに勝負の次元が違う。しかも、二人ともまだ魔法を使っていなかった。
「腕は落ちていないようですね」
「当たり前だ。お前も鈍ってはいないようだな」
「ふふっ、ではそろそろ本気で行きますよ」
夜一は、じぶんに自己加速術式をかけた。対する摩利も同じく自己加速術式をかけているようだった。
両者は一瞬睨み合った後、姿が消えた
正確に言うと、速すぎて消えたように錯覚してしまうのだ
それほどまでに2人は速かった
生徒会に選ばれただけあって、常人には到底見えないような戦いも、ここにいるメンバーにはかろうじて見えているようだった(あずさを除いて)
摩利が嵐のような攻めを夜一は踊りを踊っているように優雅で見るものを魅せるように全て避けるか受け流すかしている
「すごい、これが演舞剣術」
真由美が驚愕の表情と共にそう呟いた
「会長、演舞剣術とは?」
市原ははじめて聞く言葉に首を傾げた
「百鬼家に代々伝わる剣術の別名よ、蝶のように優雅で、超低反発枕のように全ての攻撃を受け流し、まるで踊っているかのように戦う。見る者は目を奪われ、魅せられ、圧倒させられる。名を演舞剣術」
今、カッコいい説明の中に変なワードが入らなかったか?なんか超低反発枕とか聞こえた気がしたんだが…
鈴音は自分の耳を疑った
「それにしても、この文の原文、雲のように攻撃を受け流しって書いてあったのよ?センスどうかしてるわよね〜。私が超低反発枕に訂正しておかなかったらどうなってたことやら…」
どうなってたことやら…、じゃねーよ。あんたなにしてくれてんだよ。なんでここで超低反発枕いれちゃってんだよ。シリアスな雰囲気ぶち壊しだよ!
鈴音は心の中で真由美に大いにつっこんだ
そんな鈴音の葛藤も知らずか、摩利と夜一の戦いはさらにヒートアップしていた
摩利は攻めては引く、攻めては引くを繰り返していたが、どんな攻撃をしても全て夜一の舞で受け流されてしまう
摩利は決断をした
摩利が夜一と距離を詰めると、防御を捨て、全ての力を攻撃に注いだ
思い切った作戦だが、夜一を前にそれ以外手はなかった
夜一も初めは悠々と避けていたが、時間が経つたびに余裕がなくなっていった。
そんな焦りのせいか、夜一は少し隙を見せてしまう
そこを摩利が見逃すはずがなく、摩利は夜一の胴を斬った
夜一は、数メートル吹き飛ばされた
「ふぅ〜、今のはまともにくらってたら危なかったな」
夜一は、斬られる直前に後ろに跳び、勢いを殺したのであまりダメージは負わずに済んだのだ
「今のを避けられるとは、こっちとしては捨て身だったんだがな」
摩利は最大のチャンスを生かし切れなかったことに、精神的にダメージを負う
「ここからは百鬼流剣術のもう一段階上を見てもらいますよ」
「笑えないな」
夜一の言った言葉に摩利は苦笑する
摩利と夜一は数秒の間睨み合い、2人が距離を詰めようとしたそのとき
「二人ともストップよ!」
突然、真由美が勝負を止めた。摩利と夜一は唖然として真由美を見つめる
「2人とも時間を見て見て」
夜一は、何の話かと思いつつ時計を見る。すると摩利が思い出したように言った
「コレは、最終下校時間まであと五分だとっ」
「そう、あと5分で門が閉まっちゃう。早く出ないと行けないわ」
最終下校時間、予想外のものに勝負の横槍を入れられ、仕方なく、引き分けという結果で終わった。
「ふう〜、なんとか間に合ったわね」
「なかなかあぶなかったですね」
真由美と鈴音が安堵の息を吐いていた
「摩利姉、勝負は引き分けだけど、風紀委員の件どうするの?」
「なに?お前は約束を忘れたのか?」
夜一の質問に、摩利は呆れた顔をしてくる
「言っただろう、お前が勝ったら風紀委員に入るのを見逃す。勝てなかった場合は、風紀委員にはいってもらうと。
つまり今回は引き分けで私に勝てなかったから、お前は晴れて明日から風紀委員だ。期待してるぞ」
「なっ、ずるいぞ摩利姉ーー!」
日が沈み、薄暗くなった校門の前で、悲痛な少年の声が響いた
ようやく4話終了です!
ちょっと戦闘長くて疲れました笑
今回は文字数が多いので、誤字、脱字などあるかもしれないです(^^;;
とりあえずは次回をお楽しみに!