問題児達と神殺しの簒奪者が異世界から来るそうですよ?   作:更新亀さん

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9話

 

「そ…それよりレティシア様はどのようなご用件で?」

 

慌てて話題を戻す。レティシアは他人に所有される身分。

 

その彼女が主の命も無く来たということは、相応のリスクを背負って来たということだ。

 

ならばただ会いに来ただけのはずが無い。それならジンにも顔を見せていただろう。

 

ジンに聞かれてはまずい話をしに来たと推測するのが、レティシアが苦笑して首を振る。

 

「用件って程じゃない。新生コミュニティがどの程度の力を持っているのか、それを見に来たんだ。ジンに会いたくないというのは、合わせる顔がないからだよ。お前達の仲間を傷つける結果になってしまったからな」

 

「吸血鬼?なるほど、だから美人設定なのか」

 

(吸血鬼か、俺の世界には居なかったな。欲しいなコイツ)

 

「は?」

 

「え?」

 

「いや、いいから続けてくれ」

 

十六夜はヒラヒラと手を振る。

 

「実は黒ウサギ達が "ノーネーム"としてコミュニティの再建を掲げたと聞いた時、なんと愚かな真似を……と憤っていた。それがどれだけ茨の道か、お前がわかっていないと思えなかったからな」

 

「……」

 

「コミュニティを解散するように説得するため、ようやくお前達と接触するチャンスを得た時……看過できない話を耳にした。神格級のギフト保持者が、黒ウサギの同士としてコミュニティに参加したとな」

 

黒ウサギの視線が十六夜とカイの方に移る。

 

「大方白夜叉に聞いたか?」

 

レティシアは頷く。

 

「成程。白夜叉がこの階層まで来ていた訳はレティシアを秘密裏にここまで連れてくる為か」

 

レティシアは驚いた顔でカイを見る。

 

「レティシアの目的は俺たちの力を確かめる事。このコミュニティを救えるに足る人物かどうかをな。当たっているか?」

 

レティシアは再び頷く。

 

「結果は?」

 

黒ウサギが真剣な双眸で問う。レティシアは苦笑しながら首を振る。

 

「生憎、ガルドでは当て馬にもならなかったよ。ゲームに参加した彼女達はまだまだ青い果実で判断に困る。……こうして足を運んだはいいが、さて。私はお前達に何と言葉をかければいいのか」

 

自分でも理解出来ない胸の内にまた苦笑する。

 

十六夜は呆れたようにレティシアを笑う。

 

「違うね。アンタは言葉を掛けたくて古巣に足を運んだじゃない。古巣のな仲間が今後、自立した組織としてやっていける姿を見て、安心したかっただけだろ?」

 

十六夜の言葉に首肯するレティシア。しかし目的は果たされずに終わった、二人は飛鳥と耀は人間の中ではずば抜けた才能の持ち主だ。

 

だがいかんせん原石。仲間の将来を安心して託すには至らない。だが解散するように説得するには遅すぎた、それはもう手遅れだ。

 

危険を冒してまでレティシアの目的中途半端で進行しているのだ。

 

自嘲が拭えないレティシアにカイが提案する。

 

「その不安をぬぐえる簡単な方法がある」

 

「なに?」

 

「簡単な話だ。レティシアは "ノーネーム"が魔王を相手に戦えるかが不安なのなら、その身で力を試せばいい。どうだ元•魔王様?」

 

カイの意図を理解したレティシアは一瞬唖然とした。十六夜は、

 

「カイに先を越されちまったな」

 

レティシアは弾けるような笑い声をあげて、涙目になりながら立ち上がる。

 

「ふふ……なるほど。それは思いつかなかった。実にわかりやすい。初めからそうしていればよかったなあ」

 

「ちょ、ちょっと御三人様?」

 

「ゲームのルールはどうする?」

 

「どうせ力試しだ。手間暇かける必要は無い。双方が共に一撃ずつ撃ち合い、それを受け合う」

 

「地に足を着けて立っていたものの勝ち。いいね、シンプルイズベストって奴?」

 

「それでどちらが相手をするのかな?」

 

「十六夜、お前がやれ」

(今のレティシアから感じる力は、白夜叉の足元にも及ばない。俺の予測が合っていれば恐らく)

 

「良いのかカイ?」

 

「俺は既に白夜叉を隷属させた。なら十六夜がやった方が良い」

 

「ふむ。それもそうだな」

 

「折角譲って貰えたんだ。楽しませてくれよな」

 

「そのセリフそっくり返そう」

 

笑を交わし、十六夜とレティシアは窓から中庭に同時に飛び出た。

 

開け開かれていた窓は二人を遮ることなく通す。

 

窓から十間ほど離れて中庭で向かい合う二人は天と地に位置していた。

 

「へえ、箱庭の吸血鬼は翼が生えてるのか?」

 

「ああ、翼で飛んでいるわけではないが・・・・制空権を支配されるのは不満か?」

 

「ルールにはそんなのなかったしな」

 

飄々と肩を竦める十六夜。自らの不利を別段口にすることなく構える十六夜。レティシアはまずその態度を評価した。

 

ギフトゲームにおいて対戦者は全てが未知数であると考えるのが基本であり、その未知に対して自らの持つギフトでいかに対抗するか、それこそがギフトゲームの真髄にして醍醐味なのだ。

 

(なるほど。気構えは十分。あとは実力が伴うか否か……!)

 

満月を背負うレティシアは微笑と共に黒い翼を広げ、己のギフトカードを取り出した。

 

金と紅と黒のコントラストで彩られたギフトカードを見た黒ウサギは蒼白になって叫ぶ。

 

「レティシア様!?そのカードは」

 

「下がれ黒ウサギ。力試しとはいえ、これが決闘であることには変わりがない」

 

ギフトカードが輝き、封印されていたギフトが顕現する。

 

光の粒子が収束して外殻を作り、突然爆ぜたように長い柄の武具が現れた。

 

「互いにランスを1回投擲する。受けては止められねば敗北。悪いが先手は譲ってもらうぞ」

 

「好きにしな」

 

レティシアは呼吸を整え、翼を広げる。

 

全身を撓らせた反動で打ち出すと、その衝撃で空気中に視認できるほど巨大な波紋が広がった。

 

「ハァァ!!!」

 

怒号と共に放たれた槍は瞬く間に摩擦で熱を帯び、一直線に十六夜に落下していく。

 

流星の如く大気を揺らして舞い落ちるランスの先端を前に、十六夜は牙を剥いて笑い、

 

「ハッ………しゃらくせぇ!」

 

ランスを殴りつけた。

 

『は・・・・!??』

 

素っ頓狂な声を上げるレティシアと黒ウサギ。

 

しかしこれまた比喩ではない。他に表現の仕様もない。

 

鋭利に研ぎ澄まされ、大気の壁を易々突破で振り落とされたランスは、鋭い尖端も巧緻に細工された柄も、たった一撃で拉げて只の鉄塊と化し、さながら散弾銃のように無数の凶器となってレティシアに向けられたのだった。

 

(ま、まずい………!)

 

なんと馬鹿馬鹿しい破壊力。これは受けられない。なら避けなければ。

 

しかし思考に体が追いつかない。否、追いついても意味がない。

 

鬼種の純血である彼女なら、たかが銃弾如きなら振り払う事も出来ただろう。しかし第三宇宙速度に匹敵する馬鹿馬鹿しい速度で迫る凶弾を退ける事など、今の彼女には不可能だった。

 

(こ………これほどとは………!)

 

着弾する間際、苦笑が漏れた。尋常外の才能を目の当たりににしたレティシアは自分の目標の甘さを恥じ入る。しかし同時に安堵した。

 

(これほどの才能ならばあるいは……)

 

そう思って目を瞑り、くるであろう痛みの耐えようとする。

 

しかしいつまで経っても痛みが来ない。目を開けてみると

 

「十六夜、危ねぇだろ」

 

カイが目の前におり、彼の目の前でランスの破片が破壊される。

 

(な、何が起こっているんだ!?)

 

レティシアは目の前で起きている光景を理解できていなかった。

 

「ヤハハ!スマねぇな」

 

「はぁ。大丈夫かレティシア?」

 

「あ…ああ」

 

困惑しながら答えるレティシア。

 

その隙をついて黒ウサギがレティシアのギフトカードを掠め取る。

 

「く、黒ウサギ!何を!」

 

黒ウサギは抗議に乗らずレティシアのギフトカードを見つめ震える声で向き直る。

 

「ギフトネーム  "純潔の吸血鬼(ロード•オブ•ヴァンパイア)"……やっぱり、ギフトネームが変わっている。鬼種は残っているものの、神格が残っていない」

 

「っ………!」

 

さっと目を背けるレティシア。

 

歩み寄った十六夜は白けたような呆れた表情で肩を竦ませた。

 

「レティシアにはは吸血鬼のギフトしか残ってないんだろ」

 

「……はい。武具は多少残してありますが、自身に宿るギフトは……」

 

十六夜は隠すことなく盛大に舌打ちをし、込み上げる苛立ちを押さえ込む。

 

「どうりで歯ごたえがないわけだ、他人に所有されたらギフトも奪われるのかよ」

 

「いいえ・・・魔王がコミュニティから奪ったのは人材であってギフトではありません。武具などの顕現しているギフトとは違い”恩恵”は様々な神仏、精霊などから受けた奇跡であり云わば魂の一部・・・隷属させた相手から同意なしにギフトを奪うことなど」

 

つまり、レティシアは自分からギフトを差し出したということだ。

 

「レティシア様は鬼種の純血と神格の両方を備えていた為"魔王"と自称するほどの力を持っていたはずです、今の貴女はかつての10分の1にも満ちません。どうして・・・・」

 

「・・・それは」

 

レティシアは返事に躓く。十六夜もそれを見かねたのか

 

「まあ、話があるなら屋敷に戻ってからにしようぜ」

 

と言う、このまま立ち話もあれだと十六夜の配慮だ。

 

「……そう、ですね」

 

「……うむ」

 

「そうだな」

 

そうして屋敷に向かおうとした時、褐色の光が三人に射し込み、レティシアはハッとして叫ぶ。

 

「あの光……ゴーゴンの威光!? まずい、見つかった!」

 

焦燥の混じった声と共に、レティシアは光から庇うように二人の前に立つ。

 

光の正体を知る黒ウサギは悲痛の叫びを上げて遠方を睨んだ。

 

「ゴーゴンの首を掲げた旗印……!?避けてください!レティシア様!」

 

そうして黒ウサギの叫び虚しく、褐色の光がレティシアを飲み込もうとした時、

 

「退け、レティシア。〈滅〉」

 

カイはレティシアの前にでて、《破壊神シヴァ》の〈破滅の権能〉を使い褐色の光を消滅させる。

 

「「なっ!?」」

 

「ヤハハ!カイ、お前どんだけ手札あるんだよ!」

 

レティシアと黒ウサギは驚き、十六夜は興味津々と悟を見ている。

 

光が差し込んだ方角から、翼の生えた空駆ける靴を装着した騎士風の男達が大挙して押し寄せてきている。

 

「なっ、石化していないだと!?」

 

「構わん、すぐに確保しろ!」

 

「例の"ノーネーム"もいるようだがどうする!?」

 

「邪魔するようなら構わん、斬り捨てろ!」

 

「早く商品を確保しないと頭領に怒られるぞ!」 

 

空を駆ける騎士たちの言葉に、十六夜は不機嫌そうに、尚且つ獰猛に笑って呟く。

 

「まいったな。生まれて初めてのおまけ扱いだぜ。手をたたいて喜べばいいか、怒りに任せて握りつぶせばいいか、お前らはどっちだと思う?」

 

「そんな事を言っている場合か!」

 

「そ、そうですよ!取り敢えず本拠に逃げて下さッ!?」

 

カイから殺気が放たれた。

 

その場にいる全員が固まる。本能が逃げろと叫んでいる。

 

「悪いな黒ウサギ。俺は今無性に腹が立っている」

 

カイは怒っていた。仲間を斬り捨てろと言われた事。

 

自身が気に入り、欲しいと思ったレティシアを物扱いされた事。

 

「おいおい、マジかよ」

 

「こ、これがカイさんの殺気」

 

「こ…これほどの殺気を出せるとは」

 

カイは襲撃者の方に向き、

 

「お前らが黒ウサギや十六夜を斬り捨てる?この俺が気に入ったレティシアを商品として確保するだと?

地獄を見る覚悟は出来てるか?」

 

そういうとカイはある魔法を使う。

 

「〈永劫死殺闇棺(ベヘリウス)〉」

 

カイの目の前に五つの闇の棺が出現すると、カイは襲撃者達に一瞬で接近し、棺の中に殴り飛ばす。

 

『なっ!?、ガハッ!』

 

闇の粒子が十字を描き、棺の蓋が閉められた。

 

「永劫の死の中で反省すると良い」

 

カイはそう言い、混沌の倉庫に棺をしまう。

 

復活した黒ウサギはカイに詰め寄る。

 

「カイさん!今のは一体?」

 

「それは後だ」

 

「ペルセウス、この俺を怒らせたんだ。生きていられると思うなよ。白夜叉にペルセウスの本拠地を聞きに行く」

 

その時襲撃に気付いた飛鳥、耀、ジンの三人がこちらに向かって来た。

 

そして白夜叉の居るサウザンドアイズの支店に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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