問題児達と神殺しの簒奪者が異世界から来るそうですよ? 作:更新亀さん
1話
手紙の中身を読んだ瞬間、俺は地面から遥か上空に居た。
辺りを見回すと、右方向20メートルほど先に金髪に何かを頭につけている少年。お嬢様って雰囲気の少女。猫を連れた少女が居り、一緒に落ちていた。
(4000メートルぐらいか?俺は大丈夫だが、コイツらは大丈夫なんだろうか?)
俺はそんな事を思っていると大きな湖に近づいて来た。
「
俺は飛行魔法を使い地面に降りた。
(湖に近づいた時薄い膜の様なものがあったから大丈夫だとは思うが)
辺りを見渡すとさっきまで一緒に落ちていた少年少女達が湖から岸に上がっており、文句を言っていた。
「し、信じられないわ! まさか問答無用で引きずり込んだ挙句、空に放り出すなんて!」
「右に同じだクソッタレ。場合によっちゃその場でゲームオーバーだぜコレ。石の中の方がまだ親切だ」
(石の中か、中から割れるから確かに親切か)
「石の中に呼び出されては動けないでしょう?」
「俺は問題ない」
「そう。身勝手ね」
(そうか、普通の人じゃ石の中だと動けないな。)
「それにしても此処…‥何処だろう?」
猫を抱えた少女が言う。
「さあな。世界の果てっぽいものが見えたし、どこぞの大亀の背中じゃねぇか?」
等々、良く分からない事も言っていたが俺は、とりあえず話しかける
「服以外は大丈夫そうだな」
俺が三人にそう言うとお嬢様って雰囲気の少女から不満が飛んでくる。
「貴方、飛べるんなら私達も助けて欲しかったわ」
「ごめん、ごめん」
俺はとりあえず謝っておいた。
「まぁ良いわ」
許して貰えた様だ。
「まず間違いないだろうけど、一応確認しとくぞ。お前達にも変な手紙が?」
「そうだけど、まずは"お前"って呼び方訂正して。ーーーー私は久遠飛鳥よ。以後気を付けて。それでそこの猫を抱き抱えている貴女は?」
「………春日部耀。以下同文」
「そう。よろしく、春日部さん。それでそっちの一人だけ湖に落ちなかった貴方は?」
「俺はカイ。よろしく」
「ええ、よろしくカイ君。最後に野蛮で狂暴そうなそこの貴方は?」
「見たまんま野蛮で狂暴な逆廻十六夜です。粗野で、凶悪で、快楽主義と三拍子そろった駄目人間なので用法と用量を守った上、適切な態度で接してくれ」
「取扱説明書をくれたら考えてあげるわ十六夜君」
「俺にもくれよ」
「ヤハハ!マジか!今度作っとくから覚悟しとけ、お嬢様、カイ」
ケラケラ笑う十六夜
傲慢そうに顔を背ける飛鳥
我間せず無関心を装う耀
三人を見て楽しそうに笑うカイ
そんな彼らを茂みに隠れて見ていた黒ウサギは、
(うわぁ……なんか問題児ばっかりみたいですねぇ
……)
自慢の耳で密かに聞いていた自己紹介やその態度から早速彼らの第一印象を決めていた。
「で、呼び出されたはいいけどなんで誰もいねえんだよ。この状況だと、招待状に書かれていた箱庭とかいうものの説明をする人間が現れるもんじゃねえのか?」
「そうね。なんの説明もないままでは動きようがないもの」
「……。この状況に対して落ち着き過ぎているのもどうかと思うけど」
「春日部だって十分に落ち着いてると思うぞ?」
呼び出した黒ウサギとしては、もっとこう騒然とするのだろうと思っていたため完璧に出るタイミングを失っていた。
そんな時、ふと十六夜が呟いた。
「──仕方がねえな。こうなったらそこにいる奴にでも話を聞くか?」
「あら、貴方も気づいていたの?」
「当然。かくれんぼなら負け無しだぜ?そっちのニ人も気づいていたんだろ」
「風上に立たれたら嫌でもわかる」
「さっき飛んでいる時に見えたな」
「……へえ?面白いなお前ら」
全員が茂みに視線を向けるとそこからミニスカートにガーダーソックスを履き、うさ耳を生やした15~16歳位の少女が現れた。
「や、やだなぁ皆々様。そんな狼みたいな顔で睨まれると黒ウサギは死んでしまいます? ええ、ええ、古来より孤独と狼はウサギの天敵にございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは一つ穏便に御話を聞いていただけたら嬉しいでございますヨ?」
「断る」
「却下」
「お断りします」
「流れで断る」
「あっは、取り付く島もないですね♪って流れでって何ですか!」
両手を上げて降参のポーズを取るがその目は四人を冷静に品定めしているように見える。
「(肝っ玉は及第点。この状況でNOと言える勝ち気は買いです。まぁ、扱いにくいのは難点ですけども。そして一番謎なのは湖に落ちなかったあの御方。黒ウサギが呼んだのは三人の筈。あの御方は一体?)」
「まぁ、話聞くのは良いんだけど、月のうさぎが寂しさはまだしも狼が天敵はないな」
「最後の方ありがとうございます…ってえ!?どうして黒ウサギが月のうさぎだと知って?いやそもそも何故月のうさぎのことを!?」
「月の力を感じたからな」
「つ、月の力ですか。まさか感知出来る方がいるとは」
黒ウサギが驚いていると耀が近づいて
「えいっ」
「フギャ!」
黒ウサギの耳を力一杯引っ張った。
「ちょ、ちょっとお待ちを! 触るまでなら黙って受け入れますが、まさか初対面で遠慮無用に黒ウサギの素敵な耳を引き抜きに掛かるとは、どういう了見ですか!?」
「好奇心の為せる業」
「自由すぎるにも程があります!」
「へぇ? このウサ耳って本物なのか?」
今度は十六夜が右耳を引っ張る。
「あら。なら私も」
それに便乗して飛鳥も引っ張り始める。
「ちょっ、見てないで助けてください!」
三人から揉みく者にされて大変なことになっている黒うさぎは、カイに救援要請を送る。
(このままだと話が進まないし助けるか)
カイは《時の神クロノス》を殺して奪った〈時を操る権能〉を使い時を止めた。そのまま黒ウサギのところに行き黒ウサギをこちらまで連れて来て時間停止を解除する。
『ッッッ!!!』
「大丈夫か?黒ウサギ?」
「は、はい。ありがとうございます」
「どういたしまして」
「カイ、お前今何をした?」
「ただ時を止めて黒ウサギを連れてきただけだ」
「じ、時間停止のギフト!?」
「黒ウサギ、ギフトって何だ?」
十六夜が皆の疑問を代表して聞いた
「それを話す前にこの世界について話しますね」
そうして黒ウサギは一呼吸置くと
「それではいいですか、定例文で言いますよ? 言いますよ? さあ、言います! ようこそ、"箱庭の世界"へ! 我々は皆様をギフトを与えられた者達だけが参加できる〈ギフトゲーム〉への参加資格をプレゼンさせていただこうかと召喚しました!」
「ギフトゲーム?」
耀が聞き返す。
「そうです。既に気付いていらっしゃるでしょうが皆様は、普通の人間ではございません! その特異な力は様々な修羅神仏から、悪魔から、精霊から星から与えられた恩恵でございます。〈ギフトゲーム〉はその"恩恵"を用いて競い合うためのゲーム。そしてこの箱庭の世界は強大な力を持つギフト保持者がオモシロオカシク生活できる為に作られたステージなのでございますよ!」
(俺のこの簒奪の力も恩恵なのか。)
「なるほどな」
「まず初歩的な質問をいいかしら。貴女の言う“我々”とは貴女を含めた誰かなの?」
「YES! 異世界から召喚されたギフト保持者は箱庭で生活するにあたって、数多となる"コミュニティ"に必ず属していただきます」
「嫌だね」
「属していただきます! そして〈ギフトゲーム〉の勝者はゲームの"主催者ホスト"が提示した商品を手に入るシンプルな構造になっています」
「……"主催者ホスト"って?」
「様々ですね。暇を持て余した修羅神仏が試練と称した〈ギフトゲーム〉を主催している場合やコミュニティが力の誇示のために展開している〈ギフトゲーム〉などがあります。前者の場合は凶悪な難題で命を落とす危険もあります。その分見返りは大きく新たな恩恵ギフトを手に入れることも夢ではありません。
後者は参加のためにチップを用意する必要があります。参加者が敗退すればすべて"主催者"のコミュニティに寄贈されるシステムです」
「チップって具体的には何を用意すればいいんだ?」
「それも様々ですね。金品・土地・利権・名誉・人間…そしてギフトを賭けあうことも可能です。新たな才能を他人から奪えばより高度なギフトゲームに挑む事も可能でしょう。ただし、ギフトを賭けた戦いに負ければ当然、ご自身の才能も失われるのであしからず」
「…つまりギフトゲームとはこの世界の法そのもの、と考えてもいいのかしら?」
黒ウサギが少し驚いた様な表情をする。
「中々鋭いですね。しかしそれは八割正解二割間違いです。我々の世界でも強盗や窃盗は禁止ですし、金品による物々交換も存在します。ギフトを用いた犯罪などもってのほか! そんな不逞の輩は悉く処罰します。しかし!先ほどそちらの方がおっしゃった様に、〈ギフトゲーム〉の本質は勝者が得をするもの!例えば店頭に置かれている商品も、店側が提示したゲームをクリアすればただで入手することも可能だと言うことですね」
「そう。中々野蛮ね」
「ごもっとも。しかし"主催者"は全て自己責任でゲームを開催しております。つまり奪われるのが嫌な腰抜けは初めからゲームに参加しなければいいだけの話でございます」
確かにな、失いたくないなら参加しなければいい。だが、それではつまらん。
「さて、まだ聞きたいことはあると思うのですがここでの質疑応答は一回終了して、続きは我々のコミュニティで説明しようと思うのですがどうでしょう?何時までも野外という訳にも行きませんし」
「それもそうね」
「待てよ。まだ俺が質問してないぜ」
十六夜が不満そうにしかしその裏では期待を込めたような眼差しで黒ウサギを見つめている。
「……どういった質問でしょう?ルールですか?それともゲームそのものですか?」
「そんなのはどうでもいい。俺が聞きたいのは…たった一つ」
少し置いて十六夜は言う。
「この世界は……面白いか?」
『家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨てて箱庭に来い』
全てを捨ててでも来た価値がこの世界にはあるのか。
それだけが十六夜は知りたかった。
十六夜の質問に黒ウサギはニッコリ笑いながら宣言する。
「YES。〈ギフトゲーム〉は人を超えたものたちだけが参加できる神魔の遊戯。箱庭の世界は外界より格段に面白いと、黒ウサギは保証いたします♪」
四人全員が顔を綻ばせる。
(此処には"魔王アノス"より強い者が居るか分からんが、あぁ本当に面白そうだ。)
こうして問題児達の箱庭生活が始まった。