問題児達と神殺しの簒奪者が異世界から来るそうですよ? 作:更新亀さん
「な、なんであの短時間に〝フォレス・ガロ〟のリーダーと接触してしかも喧嘩を売る状況になったのですか!?」
「しかもゲームの日取りは明日!?」
「それも敵のテリトリー内で戦うなんて!」
「準備している時間もお金もありません!」
「一体どういう心算があってのことです!」聞いているのですか三人とも!!」
黒ウサギが早口で問い詰める
『ムシャクシャしてやった。今は反省しています』
「黙らっしゃい!!!」
黒ウサギのツッコミが炸裂する。
「別にいいじゃねえか。見境がなく選んで喧嘩を売ったわけじゃないんだから許してやれよ」
「十六夜さんは面白ければいいと思っているかも知れませんが、このギフトゲームで得られるものは自己満足だけなんですよ?この"契約書類"を見てください」
"契約書類"とは"主催者権限"を持っていない者たちが、"主催者"となってギフトゲームを開催するのに必要なギフトである。
そこにゲーム内容、チップ、賞品が書かれていて"主催者"のコミュニティのリーダーが署名することで成立する。
「確かにこのギフトゲームは勝っても得しないな。
自己満足の為に無駄な事をするのはあまり好きでは無いな」
「まぁそう言うなカイ。
参加者プレイヤー〟が勝利した場合、〝主催者ホスト〟は参加者の言及する全ての罪を認め、箱庭の法の下で正しい裁きを受けた後、コミュニティを解散する。
まあ、確かに自己満足だ。時間をかければ立証できるものを、わざわざ取り逃がすリスクを背負ってまで短縮させるんだからな」
「でも時間さえかければ、彼らの罪は必ず暴かれます。だって肝心の子供達は...その」
黒ウサギが言い淀む。
(慣れていないんだな)
黒ウサギを見てカイはそんな事を思った。
「どちらにしろガルドをそのままにしておくわけには行かないのよ。ノーネームは子供が多い、つまり次の標的は私たちになるかもなのよ」
「ん、黙ってはいられない」
「はぁ、仕方がありませんね。まぁ、いいです。 フォレス・ガロ相手なら十六夜さんとカイさんがいれば楽勝でしょうし」
「何言ってんだ。俺は参加しねえよ」
「格下には勝ってもらわなきゃ困る」
「あら、分かってるじゃない」
黒ウサギが慌てふためく。
「だ、駄目ですよ!皆さんはコミュニティの仲間なんですからちゃんと協力しないと」
「そういうことじゃ無いぞ、黒ウサギ」
「これはなコイツらが売ってヤツらが買った喧嘩だ、なのに俺とカイが手を出すのは無粋だぜ?」
「当然だな。獲物を横取りされる事程、面白く無い物はない」
「ということで俺とカイはこのゲームに関しては手を出さねぇから、頑張ってくれお嬢様方」
「頑張れよ飛鳥、春日部さん」
「ええ」
「うん、負けない。それと私の事は耀でいい。十六夜も」
「了解した」
「そうするぜ」
「……ああもう、好きにしてください!」
黒ウサギは振り回されて疲弊したのか肩を下ろした。
「そろそろ行きましょうか。本当は皆さんを歓迎するために素敵なお店を予約して色々とセッティングしていたのですけれど、不慮の事故続きで、今日は流れとなってしまいました。また後日……」
「いいわよ、無理しなくて。私達のコミュニティって崖っぷちなんでしょう?」
「分かってたのか、飛鳥?」
「いいえ、さっき聞いただけよ」
驚いた黒ウサギはジンの方を見た。彼の申し訳なさそうな表情を見てすべてを悟った。
「も、申し訳ございません。皆さんを騙すのは気が引けたのですが……黒ウサギ達も必死だったのです」
「もういいわ。私は組織の水準なんてどうでもよかったもの。春日部さんは?」
「私も怒ってない。そもそもコミュニティがどうの、というのはどうでも……あ、けど」
「どうぞ、気兼ねなく聞いて下さい。僕らに出来ることなら最低限は用意します」
「そんな大それたものじゃないよ。ただ私は……毎日3食お風呂付きの寝床があれば、と思っただけだから」
ジンの表情が固まる。
この箱庭で水を買うか数kmも離れた大河から汲んでくるしかない。しかし
「それなら、十六夜がゲームに勝って水樹を蛇から貰ってきたから心配無い」
「ん、なら安心」
俺はどちらでも良いんだが、女の子は気にするのか。
「あはは………それじゃあ今日はコミュニティに帰る?」
「あ、ジン坊ちゃんは先にお帰り下さい。ギフトゲームが明日なら"サウザンドアイズ"にギフト鑑定をお願いしないと」
「"サウンドアイズ"?コミニティの名前か?」
「YES。サウザンドアイズは特殊"瞳のギフトを持つ者達の群体コミュニティで、箱庭の東西南北・上層下層の全てに精通する超巨大商業コミュニティです。幸いこの近くに支店がありますし」
「ギフト鑑定というのは?」
「勿論、ギフトの秘めた力や起源などを鑑定することデス。
自分の力の正しい形を把握していた方が、引き出せる力はより大きくなります。皆さんも自分の力の出処は気になるでしょう?」
同意を求める黒ウサギだが、三人は複雑な表情で返す。
思う事はそれぞれあるのだろう。
カイは力の出処に興味が無いのか無表情である。
そうしてサウザンドアイズに向かう。
向かっている途中の景色には桜の花が咲いている。
「桜の木……ではないわよね?花弁の形が違うし、真夏になっても咲き続けるはずがないもの」
「いや、まだ初夏になったばかりだぞ。気合いの入った桜が残っていてもおかしくないだろ」
「……?今は秋だったと思うけど」
ん?と会話の噛み合わないカイを除いた三人は、顔を見合わせて首をかしげると、黒ウサギが笑って説明をしてくれた。
「皆さんはそれぞれ違う世界から召喚されているのデス。元いた時間軸以外にも歴史や文化、生態系など所々違う箇所があるはずですよ」
「へぇ?パラレルワールドってやつか?」
「正しくは立体交差並行世界論というものですけど、説明はまたの機会に。1日や2日では説明しきれないので」
「四季か、そう言えばいつだったか」
カイのそんな言葉を皆疑問に思う。
「なぁカイ。今のはどう言う意味だ?」
「後で説明するよ」
カイの返事を聞くと共にサウザンドアイズの支店に着く。
今まさに店員が暖簾をおろすところだ。
「まっ」
「待ったなしですお客様。うちは時間外営業はやっていません」
「なんて、商売っ気のない店なのかしら」
「全くです!閉店時間の五分前に客を締め出すなんて!」
「何だ、もう閉店なのか。黒ウサギ今日は諦めて後日で良く無いか?」
「文句があるなら他所の店へどうぞ。あなた方は今後一切出入りを禁じます。出禁です」
む、俺は文句言ってないのだがな。
「出禁!?これだけで出禁とか御客様舐めすぎでございますよ!?」
キャーキャーと騒ぐ黒ウサギ。
「なるほど、"箱庭の貴族"であるウサギの御客様を無下にするのは失礼ですね。入店許可を伺いますので、コミュニティの名前を聞かせてもらってもよろしいでしょうか?」
「……う」
一転して言葉に詰まる黒ウサギ。しかし十六夜は何の躊躇いもなく名乗る。
「俺達は"ノーネーム"様ってコミュニティなんだが」
「ほほう。ではどこの"ノーネーム"様でしょう 。良かったら旗印を確認させていただいてもよろしいでしょうか?」
ぐっ、と黙り込む一同。黒ウサギが言っていた"名"と"旗印"がない コミュニティのリスクとはまさにこういう状況の事だろう。
「黒ウサギ、そんな性悪店員の相手は時間の無駄だ」
カイの物良いに店員が言い返そうとした時
「いぃぃぃやっほおぉぉぉ!久しぶりだな黒ウサギィィィ!」
店の中から着物を着た真っ白の髪の幼女が飛び出て来て、黒ウサギにボディーアタックして転がりながら、街道の浅い水路に着水した。
「おい、店員。この店にはドッキリサービスがあるのか?俺も別バージョンで是非」
「ありません」
「なんなら有料でも」
「やりません」
「十六夜、馬鹿な事は辞めろ」
カイが呆れながら十六夜に言う。
そんな事をやっている時、黒ウサギに飛びついた白髪幼女は、黒ウサギの胸に顔を埋めてなすり付けてる。
「し、白夜叉様!?どうしてこんな下層に!?」
「黒ウサギが来る予感がしたからに決まっとるだろうに!
フフ、フホホフホホ!やっぱり黒ウサギは触り心地が違うの!
ほれ、ここが良いかここが良いか!」
「ち、ちょっと、離れてください!」
白夜叉を無理やり引きはがし、頭を掴み投げ飛ばす。
投げ飛ばした先に十六夜がおり、白夜叉を足で受け止めたかに見えた。
しかし、
「カイ、パス!」
十六夜はこっちの方に蹴り飛ばして来た。
「要らないのだが」
そう言いながら一様白夜叉を受け止める。
「ゴバァ!お、おんし、飛んできた美少女を足で受け止め、蹴り飛ばすとは何様だ!」
「十六夜様だぜ。以後よろしくな和装ロリ」
「はぁ、それで優しく受け止めてくれたおんしは?」
「俺はカイ。よろしくな白夜叉」
「うむ」
「貴女はこの店の人?」
「おお、そうだとも。この"サウザンドアイズ"の幹部で白夜叉様だ。
仕事の依頼ならおんしの年齢の割に発育がいい胸をワンタッチ生揉みで引き受けるぞ」
「オーナー。それでは売り上げが伸びません。ボスが怒りますよ」
どこまでも冷静な声で女性店員が釘を刺す。
「ふふ。お前達が黒ウサギの新しい同士か。
異世界の人間が私の元まで来たということは………遂に黒ウサギが私のペットに!」
「なりません!どういう起承転結があったんですか!」
「まあいい。話があるなら店内で聞こう」
「よろしいのですか?彼らは旗も持たない"ノーネーム"のはず。規定では」
「"ノーネーム"だと分かっていながら名を尋ねる、性悪店員に対する詫びだ。
身元は私が保証するし、ボスに睨まれても私が責任取る。いいから入れ」
女性店員は少しムッとするがその間に黒ウサギ一行は暖簾をくぐる。
案内されるうちに和風の部屋に入る。
「改めて。私は、四桁の門、三三四五外門に本拠を構える"サウザンドアイズ"の幹部白夜叉だ。
黒ウサギとは少々縁があってな。コミュニティが崩壊してからもちょくちょく手を貸してやっている、器の大きな美少女と認識しておいてくれ」
「はいはい、お世話になっております本当に」
投げやりだが認める黒ウサギ。その隣で耀が小首を傾げて問う。
「その外門って何?」
「箱庭の階層を示す外壁にある門ですよ。数字が若いほど都市の中心に近く、同時に強力な力を持つ者達が住んでいるのです」
此処、箱庭の都市は上層から下層まで七つの支配層に分かれており、それに伴ってそれぞれを区切る門には数字が与えられている。
外壁から数えて七桁の外門、六桁外門、と内側に行くほど数字は若くなり、同時に強大な力を持つ。
四桁の外門ともなれば、名のある修羅神仏が割拠する完全な人外魔境だ。黒ウサギが描いた図を見た四人は
「玉ねぎ?」
「いえ、超巨大バームクーヘンでは無いかしら」
「そうだな。何方かと言えばバームクーヘンだな」
「魔法陣?中々に奇怪な形をしているな」
カイ以外が食べ物で喩える様子をみて黒ウサギは肩をがっくしと落とす。
「ふふ、うまいこと例える。その例えなら今いる七桁の外門はバームクーヘンの一番皮の薄い部分にあたるな。
更に説明するなら、東西南北の四つの区切りの東側にあたり、外門のすぐ外は"世界の果て"と向かい合う場所になる。
あそこはコミュニティに属してはいないものの、強力なギフトを持ったもの達が住んでおるぞ」
「へぇ。じゃああの蛇神も強い方なのか?」
「あれで強力なのか?」
「ん?どういうことじゃ?」
黒ウサギは蛇神を十六夜とカイが倒したこと。
その報酬として水樹を貰った事を説明する。
白夜叉は驚いた。
「なんと!?クリアではなく直接的に倒したとな!?ではその小僧達は神格の持ち主か?」
「いえ、見た限り十六夜さんもカイさんも神格保持者ではありません」
(ん?俺は殺した神から神格を奪っている筈。箱庭では奪った神格は感知されないのか?)
「そうか。(金髪の小僧は持っていないが、銀髪の小僧は神格を持っている。黒ウサギの目を騙し通すか)」
「ところで、白夜叉。あんたの口振りからしてその蛇と知り合いみたいだが、知り合いなのか?」
「知ってるもなにも、あれに神格を与えたのは私だぞ。もう何百年にもなる話だがの」
小さな胸を張り、豪快に笑う白夜叉。
だがそれを聞いた十六夜は物騒に瞳を光らせて問いただす。
「へぇ?じゃあお前はあの蛇より強いわけだな」
「当然だ。私は東側の"階層支配者"だぞ。この東側の四桁以下では並ぶものはいない、最強の主催者だぞ」
"最強の主催者"ーーーーその言葉に、カイを含めた四人は一斉に目を輝かせる。
「そう……。ではつまり、貴女のゲームをクリア出来れば、私達のコミュニティは東側で最強のコミュニティという事になるのかしら?」
「無論、そうなるのう」
「そりゃ景気のいい話だ。探す手間が省けたぜ」
(番神程度の力しか持ってない、いや。その程度に抑えている状態でさえ東側四桁以下最強か。本当の強者は三桁以上にしか居ないのか。
まぁこの状況も面白いがな。)
カイはこの状況をとても楽しんでいた。
「抜け目が無い童たちだ。依頼しておきながら私にギフトゲームを挑むと?」
「え?ちょ、ちょっと皆様!?」
「よいよい黒ウサギ。私も遊び相手に飢えておる」
「良いわね。そう言うの好きよ」
「ふふそうか。しかしゲームの前に確認しておくことがある」
白夜叉は着物の裾から"サウザンドアイズ"の旗印の紋が入ったカードを取り出だし、壮絶な笑みで言う
「おんしらが望むのは"挑戦"かもしくは、"決闘"か?」
その瞬間、白夜叉の部屋が崩壊し別のところに投げ出させる。
投げ出されたのは白い雪原と凍る湖畔そして水平に太陽が廻る世界。
「今一度名乗り直し、問うかのう。
私は"白き夜の魔王"―――太陽と白夜の星霊白夜叉。
おんしらが望むのは試練への"挑戦"か?それとも対等な"決闘"か?」
カイは笑みを浮かべた。