問題児達と神殺しの簒奪者が異世界から来るそうですよ? 作:更新亀さん
「水平に周る太陽と………あぁ、なるほど。太陽と夜叉それがお前の本質であり正体。この世界はオマエを表現してるってことか?」
「如何にも。この白夜と湖畔と雪原。永遠に世界を薄明に照らす太陽こそ、私がもつゲーム盤の1つだ」
「これだけ莫大な土地が、ただのゲーム盤!?」
「如何にも。して、おんしらの返答は? 挑戦であるならであるならば、手慰み程度に遊んでやる。だがしかし"決闘"を望むのなら話は別。魔王として、命の誇りの限り闘おうではないか」
「……っ」
飛鳥に耀、そして自信家の十六夜までもが即答できずに返事を躊躇った。
実力差は一目瞭然。しかし、自分たちが売った喧嘩をこのような形で取り下げるにはプライドが邪魔をした。
しばしの静寂の後、十六夜が諦めたように挙手をし、
「参った。降参だ、白夜叉」
「ふむ?それは決闘ではなく試練を受けるということかの?」
「ああ、これだけのゲーム盤を用意できるんだからな。アンタにはその資格がある。ーーーーいいぜ。"試されてやるよ"魔王様」
苦笑と共に吐き捨てるような物言いをした十六夜を、白夜叉は堪え切れず高らかに笑い飛ばした。プライドが高い十六夜にしては最大の譲歩なのだろうが"試されてやる"とはかわいい意地の張り方だといって白夜叉は笑う。
「く、くく……して、他の童達も同じか?」
「……ええ、私も試されてあげてもいいわ」
「右に同じく」
「して、おんしはどうする?」
「決闘に決まっている」
『なっ!』
十六夜達が驚いている。
「おんし、本当に良いのか?」
「くどいぞ、白夜叉。それとも魔王様って呼んだ方が良いか?」
「おんしが良いのであれば私は構わん。先に試練をやっても構わんかの?」
「構わん」
その時何かの鳴き声が聞こえた。
「何、今の鳴き声。初めて聞いた」
「ふむ、あやつか。おんしら三人にはうってつけかもしれんの」
「グリフォン!?嘘っ・・・本物!?」
「如何にも。あやつこそ鳥の王にして獣の王 "力" "知恵" "勇気" の全てを備えた、ギフトゲームを代表する獣だ」
白夜叉がグリフォンを手招きするとグリフォンは白夜叉に近づき深く頭を下げた。
「さて、肝心の試練だがの。おんしら3人とこのグリフォンで"力" "知恵" "勇気"のいずれかを比べ合い、背にまたがって、湖畔を舞う事ができればクリア、という事にしよう」
そういって白夜叉は双女神の紋章が刻まれたカードを取り出す。
すると、虚空から一枚の輝く羊皮紙が現れた。
それに何か指で書くと、紙を十六夜たちに放った。
《ギフトゲーム名 "鷲獅子の手綱"
・プレイヤー一覧 逆廻 十六夜
久遠 飛鳥
春日部 耀
・クリア条件 グリフォンの背に跨がり、湖畔を舞う
・クリア方法 "力" "知恵" "勇気" の何れかでグリフォンに認められる
・敗北条件 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。 "サウザンドアイズ"印》
「私がやる」
読み終えると、ピシ!と指先まで綺麗に挙手したのは耀だった。
[お、お嬢・・・・大丈夫か?なんや獅子の旦那より遥かに怖そうやしデカイけど]
「自信があるようだがこれは結構な難物だぞ?失敗すれば大怪我ではすまんが」
「大丈夫、問題ない」
耀の目は真っ直ぐにグリフォンを見ている。
その目は探し続けた宝物が目の前にあるような子供の目である
「OK。先手は譲ってやる。失敗するなよ」
「気を付けてね、春日部さん」
「頑張れよ」
「うん。頑張る」
鷲と獅子。猛禽類の王と肉食獣の王。
数多の動物と心を通わせた彼女だが、それはあくまで地球上に生息している相手に限った話 。
"世界の果て"で黒ウサギ達が出会ったユニコーンや大蛇など生態系を逸脱した、幻獣と呼び称されるものと相対するのは、これが初めてなのだ。だから慎重に声をかけた
「えっと初めまして、春日部耀です」
[!?]
ビクンッ!!とグリフォンの四肢がはねた。その瞳から警戒心が薄れる
「ほう……あの娘、グリフォンと言葉を交わすか」
「私と誇りを賭けて勝負しませんか?」
[……何だと?]
グリフォンの声と瞳に闘志が宿る。
「貴方が飛んできたあの山脈。あそこを白夜の地平から時計回りに大きく迂回し、この湖畔を終着点と定めます。
その間に背に乗った私を振るい落せば貴方の勝ち、落とせなければ私の勝ち……どうかな?」
耀は小首をかしげる。
確かにその条件なら力と勇気の双方を試すことが出来る。
だがグリフォンは如何わしげに大きく鼻を鳴らして尊大に問い返す。
[娘よ。お前は私に"誇りをかけろ"と持ちかけた。確かに娘一人振るい落せないならば私の名誉は失墜するだろう。だが娘よ誇りの対価としてお前は何を賭す?]
「命を賭けます」
即答だった。余りに突飛な返答に黒ウサギと飛鳥から驚きの声が上がった
「だ、駄目です!」
「か、春日部さん!?本気なの!?」
「貴方は誇りを賭ける。私は命を賭ける。もし、転落して生きていても私は貴方の晩御飯になります。それじゃ駄目かな?」
[………ふむ]
(春日部耀、面白いじゃないか。)
カイは耀の覚悟に心を躍らせていた。
耀の提案に黒ウサギと飛鳥はますます慌てる。
それを白夜叉と十六夜が制す。
「双方、下がらんか。これはあの娘から切り出した試練だぞ」
「ああ。無粋なことはやめとけ」
「黒ウサギ、飛鳥、白けること言わないで」
「そういう問題ではございません!同士にこんな分の悪いゲームをさせるわけにはーーー」
「大丈夫だよ」
春日部が振り返り向きながら飛鳥と黒ウサギに頷く。
その瞳には何の気負いも無い。勝算ありと言う表情だ。
「耀、これを着ていけ」
カイは自身が羽織っていた羽織を渡した。
「ありがとう」
グリフォンはしばし考える仕草の後、頭を下げて背中に乗るように促した
[乗るがいい、若き勇者よ。鷲獅子の疾走に耐えれるか、その身で試して見せよ]
耀は、羽織を羽織りグリフォンに跨り手綱を握っていた。
「始める前に一言だけ・・・私、貴方の背中に跨るのが夢の一つだったんだ」
[ーーーそうか]
「決闘前なのに、楽しそう……」
グリフォンは決闘前に何を口走ってるのやらと苦笑する。
前傾姿勢を取り、大地を踏み抜くように薄明の空に飛び出した。
大地から離れて数十M。グリフォンの持つ鷹の翼は大きく広げたまま固定されている。
驚いたことに、グリフォンの翼は推進力にして飛んでいるのではなく、踏みしめているのだ
「凄い………!貴方は空を踏みしめて走ってる……!!」
[娘よ。もうすぐ山脈に差し掛かるが……本当に良いのか?この速度で向かえば]
そう、この速度で向かえば、氷点下の風がさらに冷たくなり、体感温度はマイナス数十度になるだろう。
グリフォンは速度を少し緩め、疾風の如く翔る。
白夜の地であるこの地は総じて気温が低い。
衝撃と温度差、人間が耐えれるものでは無い。
春日部は微かの笑顔と挑発で返す。
「大丈夫。それよりもこのままじゃ、私が勝つよ?貴方こそ本気で来ないと」
[……良いだろう。後悔するなよ娘!]
次の刹那、大気が揺らいだ。今度は翼を用いて旋風を操る。
遥か彼方にあったはずの山頂が瞬く間に近づく。
頂から急降下する際、グリフォンの速力は倍に近しいものに迫る。
グリフォンは必死に振り落とそうと旋回を繰り返す。地平ギリギリまで急降下して大地と水平になるように振り回す。
それが山場だった。山脈からの冷風も途絶え、残るは純粋な距離のみ、湖畔の中心まで疾走したグリフォン。
耀の勝利が決定したその瞬間ーーーーーー耀の手から手網が外れた。
[何!?]
「春日部さん!?」
安堵の声を漏らす暇も、賞賛をかける暇もない。
耀は慣性にのまま落ちていく。
助けに行こうとした黒ウサギを十六夜が掴む。
「は、離し――」
「待て!まだ終わってない!」
焦る黒ウサギと止める黒ウサギ、ふわっと、耀の体が翻る。
慣性を殺すような緩慢な動きはやがて落下速度を衰えさせ、遂には湖畔に触れることなく飛翔する
『は?』
「ほぉ?」
その場の全員が絶句する。
先程までそんな素振りを見せなかった、耀が湖畔の上で風を纏って浮いている。
「やっぱりな。お前のギフトって、他の生き物の特性を手に入れる類だったんだな」
十六夜の軽薄な笑みに、むっとしたような声音で耀が返す。
「……違う。これは友達になった証。けど、いつから知ってたの?」
「ただの推測。お前、黒ウサギと出会った時に“風上に立たれたら分かる”とか言ってたろ。そんな芸当は人間にはできない。だから春日部のギフトは他種とコミュニケーションをとるわけじゃなく、他種のギフトを何らかの形で手に入れたんじゃないか……と推察したんだが、それだけじゃなさそうだな。あの速度で耐えられる生物は地球上にいないだろうし?」
[見事。お前が得たギフトは、私に勝利した証として使って欲しい]
「うん。大事にする」
「いやはや大したものだ。このゲームはおんしの勝利だの。おんしの持つギフトについて知りたいが後にしようかの」
そういうと白夜叉は一枚の紙を取り出す。
《ギフトゲーム名 "太陽との再戦"
・プレイヤー一覧
・カイ
・白夜叉
・クリア条件
・相手プレイヤーと戦い、勝利する。
・クリア方法
・相手プレイヤーを戦闘不能にした場合
・相手プレイヤーが降参した場合
・敗北条件
・戦闘不能になった場合
・降伏した場合
・相手プレイヤーを死亡させた場合
宣誓:上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。"サウザンドアイズ"印》
「カイ、負けんなよ」
「勝って来なさい」
「頑張って」
「応援してますよ」
「分かっている」
「お主ら離れておれ」
白夜叉の言葉に従い十六夜達が離れて行く。
「さてと、始めるか」
「そうじゃの」
「先手は貰うぞ」
カイは〈時を操る権能〉を使い自身の時を早め白夜叉に接近し
「なっ、は、はやっ!グッ!」ドスッ
白夜叉を殴り飛ばす。
「その程度か?白夜叉!」
カイが叫ぶ
「なわけなかろう?お返しじゃ!」
「フンッ」
白夜叉の拳に自身の拳をぶつけ暫し殴り合い距離を取る。
「カイ、お主強いのう。わしが殴り飛ばされたのは久々だ」
「そりゃどうも。〈鳴神〉!」
カイが《雷神トール》を殺した際に簒奪した〈雷を操る権能〉を使い雷撃を放つ。
「甘いわ!」
白夜叉は太陽を放ち雷撃を掻き消す。太陽はこちらに迫って来ている
「〈雷帝よ・舞え〉」
カイの前に六本の雷で出来た剣が出現し、太陽を切り裂く。
「やるのぅ。じゃが、これならどうじゃ!」
白夜叉が放ったのは、さっきのとは比べ物にならない程の熱量と大きさの太陽。
「お主にコレを防げるかの?」
「白夜叉、コレで終わりだ。〈
カイが漆黒の太陽を射出する炎属性魔法に《炎の神カグツチ》を殺し簒奪した〈炎を操る権能〉の力を上乗せして放った。
カイの放った漆黒の太陽が白夜叉の太陽を食い破る。
「何じゃと!」ドカンッ
漆黒の太陽が爆破し、白夜叉は仰向けに倒れていた。
「俺の勝ちだな」
「そうじゃな、わしの負けじゃ」
こうしてカイと白夜叉の決闘は、カイの勝利で終わった。
「さて、十六夜達の所まで行くか」
「わしは動けんから、先に行っておいてくれ」
白夜叉は獄炎殲滅砲をまともに食らったため動けなかった。
「はぁ、仕方あるまい」
カイは虚空に手を入れ、新しい羽織を白夜叉に渡す。
白夜叉は不思議そうな顔をしていた為カイは指摘する。
「羽織ると良い。服が所々燃えて無くなっている。女の子は、そういうの気にするのだろう?」
顔を赤くしながら白夜叉は急いで羽織を羽織る。
「たっ、助かるのじゃ」
「気にするな、所でもう動けるか?」
「まだ無理じゃな。何じゃ、あの魔法はッて何をする!降ろすのじゃ!」
「暴れるな、動けんお前が悪い」
カイは顔の赤い白夜叉をお姫様抱っこして十六夜達の元へ向かった。