問題児達と神殺しの簒奪者が異世界から来るそうですよ? 作:更新亀さん
館を出たカイと十六夜は、コミュニティの子供達が眠る別館の前で立っていた。
「おーい……そろそろ決めてくれねぇと、俺達が風呂に入れねえだろうが」
そう言って、十六夜は面倒くさそうな顔をしながら話す。
「ここを襲うのか?襲わねえのか?やるならいい加減に覚悟決めてかかってこいよ」
そう言って、十六夜は石を幾つか拾い、木陰に向かって投擲する。
「よっ!」
ズガァン!と爆発音が辺りの木々を吹き飛ばし、同時に現れた人影を空中高く蹴散らせる。
「十六夜、余り地形を破壊するな。黒ウサギに怒られるだろ」
カイは呆れながらも顔は笑っている。
すると別館からジンが出てきて十六夜に問う。
「ど、どうしたんですか!?」
「侵入者だ。例の"フォレス・ガロ"の連中じゃないか?」
空中からドサドサと落ちてくる黒い人影がこちらを見つめる。
「な、なんというデタラメな力………!蛇神を倒したというのは本当だったのか」
「ああ!……これならガルド奴とのゲームに勝てるかもしれない………!」
そんなことを侵入者達は言う。
その視線には敵意らしきものは感じられない。それに気づいた十六夜とカイは侵入者に近づく。
「おお?なんだお前ら、人間じゃねえのか?」
「突然変異した魔族か?」
侵入者の姿はそれぞれの一部が人ではなかった。
それらをカイと十六夜は興味深く見つめる。
「我々は人をベースにさまざまな“獣”のギフトを持つ者。しかしギフトの格が低いため、このような半端な変幻しかできないのだ」
「それで、あんたらはは何か話をしたくて襲わなかったんだろ?だったら、早く話してくれないか?」
十六夜がそう言うと侵入者は意を決するように頭を下げ、
「恥を忍んで頼む!我々の………いや、魔王の傘下であるコミュニティ"フォレス・ガロ"を、完膚なきまでに叩きつぶしてはいただけないでしょうか!!」
「嫌だね」
「面倒」
カイ達がそう言うと、侵入者は絶句してしまう。
「どうせお前らもガルドって奴に人質を取られている連中だろ?命令されてガキを拉致しに来たってところか?」
「は、はい。まさかそこまで御見通しだとは露知らず失礼な真似を………我々も人質を取られている身分、ガルドには逆らうこともできず」
「ああ、その人質な。もうこの世にいねえから。はい、この話題終了」
『………なっ!?』
侵入者達は心底驚いた様な反応をする。
「十六夜さん!!」
ジンが慌てて割って入る。それに対して十六夜は、
「隠す必要あるのかよ。お前らが明日のギフトゲームに勝ったら全部知れ渡る事だろ?」
「そ、それにしたって言い方というものがあるでしょう!!」
「甘ちゃんだな」
「ハッ、気を使えってことか?冗談きついぞ御チビ様。よく考えてみろよ。殺された人質を攫ってきたのは誰だ?他でもないコイツらだろうが」
そう言う十六夜とカイにジンは唇を噛む。
「悪党狩りってのはカッコいいけどな。同じ穴のムジナに頼まれてまでやらねえよ、俺は。カイもそんな感じだろ?」
「当然だろ?つまらん」
「そ、それでは、本当に人質は」
「………はい。ガルドは人質を攫ったその日に殺していたそうです」
「そんな………!」
侵入者は全員その場でうなだれる。
そして十六夜はクルリと振り返り、まるで新しい悪戯を思いついた子供のような笑顔で侵入者の肩を叩く。
「お前達、"フォレス・ガロ"とガルドが憎いか?叩きつぶされて欲しいか?」
「あ、当たり前だ!俺達がアイツのせいでどんな目にあってきたか………!」
「そうかそうか。でもお前達にはそれをするだけの力はないと?」
ぐっと唇を噛みしめる男達。
(………なるほど。逆廻十六夜、やはり面白い。)
カイは十六夜が何をしようとしているのかだいたいわかった。
「ア、アイツはあれでも魔王の配下。ギフトの格も遥かに上だ。俺達がゲームを挑んでも勝てるはずがない!いや、万が一勝てても魔王に目を付けられたら」
「その"魔王"を倒す為のコミュニティがあるとしたら?」
え?と十六夜とカイ以外の全員が顔をあげる。
十六夜はジンの肩を抱き寄せると、
「このジン坊ちゃんが、魔王を倒すためのコミュニティを作ると言っているんだ」
「なっ!?」
侵入者とジンが驚愕した。
十六夜の話を聞いて侵入者は困惑した表情を浮べる。
「魔王を倒すためのコミュニティ………?そ、それはいったい」
「言葉の通りさ。俺達は魔王のコミュニティ、その傘下も含め全てのコミュニティを魔王の脅威から守る。そして守られるコミュニティは口を揃えてこう言ってくれ。"押し売り・勧誘・魔王関係御断り。まずはジン=ラッセルの元に問い合わせください"」
「じょ」
「余計な事を言おうとするな」
冗談でしょう!?と言いかけたジンの口をカイが塞ぐ。
カイがジンの口をふさいでいると十六夜は立ち上がって腕を広げる。
「人質の事は残念だった。だが安心していい。明日ジン=ラッセル率いるメンバーがお前達の仇を取ってくれる!その後の心配もしなくていいぞ!なぜなら俺達のジン=ラッセルが"魔王"を倒すために立ち上がったのだから!」
『おお………!』
大仰な口調で語る十六夜を見る侵入者一同。
ジンはカイの腕の中で必死にもがくが、抜け出せない。
当然だ、戦う力のない少年がたった一人で神を殺せるカイから逃げられる道理はない。
「さあ、コミュニティに帰るんだ!そして仲間のコミュニティに言いふらせ!俺達のジン=ラッセルが"魔王'.を倒してくれると!」
「わ、わかった!明日は頑張ってくれジン坊ちゃん!」
「ま………待っ………!」
そう言って、あっという間に走り去る侵入者。
腕を解かれたジンは茫然自失になって膝を折るのだった。
#
「どういうつもりですか!?」
「"打倒魔王"が"打倒全ての魔王とその関係者"になっただけだろ。"魔王にお困りの方、ジン=ラッセルまでご連絡ください"―――キャッチフレーズはこんなところか?」
「それぐらい有ればとりあえずは良いと思うぞ」
「全然笑えませんし笑い事じゃありません!魔王の力はこのコミュニティの入口を見て理解できたでしょう!?」
「勿論。あんな面白そうな力を持った奴とゲームで戦えるなんて最高じゃねえか」
「弱体化している白夜叉以上には楽しめそうだしな。」
大広間に備え付けられた長いすに座った十六夜は、背もたれに踏ん反りかえるように。カイは壁に背を預ける様に立っている。
「お、面白そう?楽しめそう?では十六夜さんとカイさんは自分の趣味の為にコミュニティを滅亡に追いやるつもりですか?」
「違うなジン。これはコミュニティの発展に必要な事だ」
カイがそう言うと、ジンがカイの方を見る。
十六夜はカイの言葉に頷き、普段通りの軽薄な笑みを浮かべながらカイの言葉を肯定する。
「ああ、カイのいう通りだ。先に確認したいんだがな。御チビは俺達を呼び出して、どうやって魔王と戦うつもりだったんだ?あの廃墟を作った奴や、白夜叉みたいな力を持つのが"魔王"なんだろ?」
そう言われジンは黙りこむ。
「まず……水源を確保するつもりでした。新しい人材と作戦を的確に組めば、水神クラスは無理でも水を確保する方法はありましたから。
けどそれに関しては、カイさんと十六夜さんが想像以上の成果を上げてくれたので素直に感謝しています」
「おう、感謝しつくせ」
ケラケラと笑う十六夜を無視してジンは続ける。
「ギフトゲームを堅実にクリアしていけばコミュニティは必ず強くなります。たとえ力のない同士が呼び出されたとしても、力を合わせればコミュニティは大きくできます。
ましてやこれだけ才有る方々が揃えば………どんなギフトゲームにも対抗できたはず」
「期待一杯、胸一杯だったわけか」
「運も絡むがそれなりには考えてた訳か」
「それなのに……それなのに、十六夜さんとカイさんは自分の娯楽の為だけにコミュニティを危機に晒し陥れるような真似をした!!
魔王を倒すためのコミュニティなんて馬鹿げた宣誓が流布されたら最後、魔王とのゲームは不可避になるんですよ!?
そのことを本当に貴方は分かっているのですか!?」
そう叫ぶと同時に壁を強く叩く。
それを見るカイと十六夜は侮蔑するような目を向ける。
「呆れた奴だ。そんな机上の空論で再建がどうの、誇りがどうのと言っていたのかよ。失望したぜ御チビ」
「やはり所詮は子供か。呆れを通り越して憐れみさえ覚えるぞ」
「なっ」
「ギフトゲームに参加して力を付ける?そんなもんは大前提だ。俺が聞いているのは魔王にどうやって勝つかだ」
「だ、だからギフトゲームに参加して力を付けて」
「では聞くが。魔王に負ける前のコミュニティは、ギフトゲームに参加して力をつけていなかったのか?」
「そ………それは」
「俺も聞くが、前のコミュニティが大きくなったのはギフトゲームだけだったのか?」
「………、いえ」
「俺達には名前も旗印も無い。コミュニティを象徴出来る物が何一つないわけだ。これじゃコミュニティの存在は口コミでも広まりようがない。だからこそ俺達を呼んだんだろ?」
「…………」
「今のままじゃ物を売買するときに、無記名でサインするのと大して変わらねえ。"サウザンドアイズ"が"ノーネーム"を客として扱わなかったのは当然だろうよ。"ノーネーム"ってのは所詮、名前の無いその他大勢でしかない。だから信用すると危険なんだ。そのハンディキャップを背負ったまま、お前は先代のコミュニティを超えなきゃいけないんだぞ?」
「先代を……超える………!?」
「先代が魔王に負けた。ならば、先代を越えねばその魔王には勝てん」
言い返す事が出来ないジンに、呆れたように十六夜は言う。
「その様子だと、ホントに何も考えてなかったんだなオマエ」
「……………っ」
ジンは顔を上げない。十六夜はジンの肩を力強く握りしめ、悪戯っぽく笑い、
「名も旗もないとなると―――他にはもう、リーダーの名前を売り込むしかないよな?」
ハッとジンは顔を上げる。ジンはようやく十六夜の意図が分かった。
「僕を担ぎあげて………コミュニティの存在をアピールするということですか?」
「ああ、悪くない手だろ?」
「た、確かに………それは有効な手段です。リーダーがコミュニティの顔役になってコミュニティの存在をアピールすれば………名と旗に匹敵する信用を得られるかも」
「けどそれだけじゃ足りねえ。噂を大きく広めるにはインパクトが足りない。だからジン=ラッセルという少年が"打倒魔王"を掲げ、一味に一度でも勝利したという事実があれば―――それは必ず波紋になって広がるはず。そしてそれに反応するのは魔王だけじゃない」
「そ、それは誰に?」
「同じく"打倒魔王"を胸に秘めた奴らだろ?十六夜」
カイが言った言葉に十六夜は頷く。
ジンは想像もしていなかった作戦に、胸を高鳴らせていた。
「僕の名前でコミュニティの存在を広める………」
「そう。今回の一件はチャンスだ。相手は魔王の傘下、しかも勝てるゲーム。被害者は数多のコミュニティ。ここでしっかり御チビの名前を売れば」
「多少広がる、今はそれで十分だ」
「まあ、御チビが懸念するように他の魔王を引き寄せる可能性は大きい。でも魔王を倒した前例もある。そうだろ?」
黒ウサギはこう説明していた。"魔王を倒せば魔王を隷属させられる"と。つまり、過去に魔王を倒した者がいて、同時に強力な駒を組織に入れられるチャンスということだ。
(俺も白夜叉、隷属させてるしな。)
「今のコミュニティに足りないのはまず人材だ。カイ並みはまず居ないとして。俺並とは贅沢言わない、俺の足元並みは欲しい。けど伸るか反るかは御チビ次第。他にカッコいい作戦があるなら、協力は惜しまんぜ?」
そう言って十六夜はニヤニヤと笑い、ジンはそれを見つめ直す。
「一つだけ条件があります。今度開かれる“サウザンドアイズ”のギフトゲームに、十六夜さんとカイさん、二人で参加してもらってもいいですか?」
「何故だ?俺らの力を見せろってことか?」
「それもあります。ですが理由はもう一つあります。このゲームには僕らが取り戻さなければならない、もう一つの大事な物が出品される」
「何だ、それは」
「昔の仲間で元•魔王にして"箱庭の騎士"です。」
十六夜とカイの瞳が光る。軽薄な笑みに凄みが増し、危険な香りのする雰囲気を漂わせ始めた。
「へぇ?元・魔王が昔の仲間か。コレの意味する事は多いぜ?」
「先代のコミュニティは魔王に勝てる位には強かった訳か。」
「はい。お察しの通り、先代のコミュニティは魔王と戦って勝利した経験があります」
「そして魔王を隷属させたコミュニティさえ滅ぼせる―――仮称・超魔王とも呼べる素敵ネーミングな奴も存在していると」
「そ、そんなネーミングで呼ばれてはいません。魔王にも力関係はありますし、十人十色です。白夜叉様も"主催者権限ホストマスター"を持っていますが、今はもう魔王とは呼ばれていません。魔王とはあくまで"主催者権限"を悪用する者達の事ですから」
話を聞きながらカイはふと思った。
(そういえばジンには白夜叉を隷属させたこと言ってないな。黒ウサギが勝手に言うかと思っていたのだが、この話の後で良いか。)
「ゲームの主催はその"サウザンドアイズ"の幹部の一人です。僕らを倒した魔王と何らかの取引をして仲間の所有権を手に入れたのでしょう。相手は商業コミュニティですし、金品で手を打てればよかったのですが………」
「貧乏は辛いってことか。とにかく俺とカイはその元・魔王様の仲間を取り戻せばいいんだな?」
ジンは頷いて返す。
「はい。それが出来れば対魔王の準備も可能になりますし、僕も十六夜さんとカイさんの作戦を支持します」
十六夜が席を立ち、自室に戻る時、ふと閃いたようにジンに声をかける。
「明日のゲーム、負けるなよ」
「はい。ありがとうございます」
「負けたら俺、コミュニティ。抜けるから」
「あ、俺も」
「はい。………え?」
そう言って、さっさと行ってしまう。
十六夜とカイの突然の言葉に呆然とするジンにカイは声をかけた。
「黒ウサギから聞いてると思うが、今日白夜叉と決闘して勝った」
「あ、それは聞きました。白夜叉様に勝つなんて凄いですよ!カイさん!」
「だから、白夜叉を隷属させたから」
「はい!?」
黒ウサギからそこまでは聞かされてなかったのかジンは、とても驚ろき、聞き返そうとするがカイは返事を聞く前に部屋から出て行った。
出て行く直前に、
「負ける事は許さんぞ」
「はい!!」
そんな言葉を残して。