問題児達と神殺しの簒奪者が異世界から来るそうですよ? 作:更新亀さん
二人募集したいと思います。
飛鳥、耀、ジン、そして黒ウサギと十六夜とカイと三毛猫はフォレス・ガロのコミュニティの居住区を訪れる道中、六本傷の旗が掲げられたカフェテラスで声をかけられた。
「あー!昨日のお客さん!もしかして今から決闘ですか!?」
[おう昨日の嬢ちゃんか。そうやで今からお嬢達が決闘するんや]
「ボスからもエールをたのまれました!私達のコミュニティも連中の悪行にはアッタマ来てた頃です!二度と不義理な真似が出来ないようにしてやってください!」
ブンブンと両手を振り回しながら応援する鉤尻尾の猫娘。しかし声を潜めてヒソヒソと呟く。
「実はみなさんにお話があります。フォレス・ガロの連中、領地の舞台区画では無く、居住区画でゲームを行うらしいですよ」
「居住区画で、ですか?」
首を傾げる黒ウサギ。初めて聞く言葉に飛鳥は尋ねる。
「その舞台区画とは何かしら?」
「舞を披露する場か?」
「カイさん、違いますよ。各コミュニティが保有するギフトゲームを行うための土地のことです。白夜叉様の様に別次元にゲーム盤を用意出来る方々は極めて少数派なのでございます。」
「しかも!傘下に置いているコミュニティや同士を全員ほっぽり出してですよ!」
「………それは確かにおかしな話ね」
「でしょ!?なんのゲームかはわかりませんが、とにかく気おつけてください!」
熱烈なエールを受け、一同はフォレス・ガロの居住区画へと歩を進める。
「あ、皆さん!見えてきました……けど」
黒ウサギは一瞬目を疑った。他のメンバーも同様だ。
それは居住区がジャンルの様に豹変していたのだから。
ツタの絡むもんより、鬱蒼と生い茂る木々を見て耀は呟く。
「………。ジャングル?」
「虎の住むコミュニティだしな、おかしくはないだろ」
「ありえない話じゃないけど、少し様子が変じゃない?」
「おかしいです。フォレス・ガロのコミュニティの本拠は普通の居住区だったはず……それにこの木々まさか」
ジンはそっと木々に手を伸ばす。
「やっぱり……鬼化してる?いや、まさか」
「ジン君。ここに契約書類が貼ってあるわよ」
《ギフトゲーム名:"ハンティング"
プレイヤー一覧:久遠 飛鳥
春日部 耀
ジン=ラッセル
・クリア条件 ホストの本拠地に潜むガルド=ガスパーの討伐。
・クリア方法 ホスト側が用意した特定の武具でのみ討伐可能。
指定武具以外は"契約"によってガルド=ガスパーを傷つけ ることは不可能
・敗北条件 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。
・指定武具 ゲームテリトリーにて配置。
先生 上記を尊重し、誇りと御旗の下、“ノーネーム”はギフトゲームに参加します。
"フォレス・ガロ"印》
「ガルドの身をクリア条件に……指定武具で打倒!?」
「こ、これはまずいです!」
「このゲームはそんなに危険なの?」
「ゲーム自体は単純です。ですか、このルールに問題があります。これでは、飛鳥さんのギフトで操ることも耀さんのギフトで傷つける事も出来ない事になります……!」
「どういう事?」
「"恩恵ギフト"ではなく"契約ギアス"によってその身を守っているのです。これでは神格でも手が出せません!彼は自分の命をクリア条件に組み込む事で、御二人の力を克服したのです!」
「すいません、僕の落ち度でした。初めに契約書類を作った時にルールをその場で決めておけばよかったのに……!」
ルールを決めるのが "主催者" である以上、白紙のゲーム受諾は自殺行為に等しいものだ。
ギフトゲームに参加した経験が無いジンは、ルールが白紙のゲームに参加する愚かさがいかに恐ろしいか分かっていなかった。
「敵は命がけで出来レースを五分に持ち込んだのか……観客にしてみれば面白くていいけどな」
「呑気だな、十六夜。こちらからすれば面倒くなったのだが?」
「カイ君の言う通りね。条件はかなり厳しいわよ。指定武具が何も書かれていないし、このまま戦えば厳しいかもしれない」
「恐らく指定武具はガルドのすぐ近くにあるだろう。」
「何で指定武具がガルドの近くにあると思うの?」
「向こうはチップに自分の命を釣り上げてきたとはいえ、死にたくは無いはず。一番安全で取りやすい対策が指定武具を近くに置く事だ」
「確かにそうね」
「所詮は予測だが、頭に入れて置くと良い。負けるなよ?」
「ええ」
その頃陰では十六夜とジンが話していた。
「この勝負に勝てないと俺とカイの作戦は成り立たない。負ければ俺達はコミュニティを去る。予定に変更はない、いいな御チビ」
「………分かっています。絶対に負けません」
「ま、取り敢えず行ってこい」
参加者三人は門を開けて突入した。
「大方昨日の作戦変更は無い、とでも言ったか?」
「よく分かってんじゃんぇか」
「アイツらがどう勝つのか、見ものだな」
そうしてカイ達は移動した。
しばらく雑談していた、十六夜、黒ウサギ、カイの元に咆哮が聞こえる。
「ーーーーーー………GEEEEEYAAAAAAaaa!!!」
「今の咆哮は」
「ああ、間違いない。虎のギフトを使った春日部だ」
「あ、なるほど。ってそんなわけないでしょ!?幾らなんでも今のは失礼でございます!」
ウサ耳を立てて怒り十六夜の頭めがけ黒ウサギはハリセンでツッコミを入れる
「十六夜、考えてみろ。ジンかもしれん」
「カイさんまでボケないで下さい!」
カイにも怒りのハリセンが飛んでくる…が難なく回避する。
「にしても暇だなぁこの舞台といい、前評判よりは面白いゲームになってるじゃねえか。なぁ、俺達見に行ったらまずいのか?"審判権限ジャッジマスター"とそのお付ってことで」
「無理でございます。お金を取って観客を招くギフトゲームも存在しておりますが、最初に取り決めがない限りはダメです。ウサギの素敵耳はココからでも大まかな状況が分かってしまいますし状況が把握できないような隔絶空間でもない限り侵入禁止です」
黒ウサギの言葉にため息交じりに言葉を吐き出す十六夜。
「・・・・貴種のウサギさん、マジ使えねぇ」
「言ってやるな、十六夜」
「せめて聞こえないように言ってください!本気で凹みますから!」
状況がわかる黒ウサギは内心ハラハラする。
だが中に入れない以上、十六夜とカイは状況を知ることが出来ない。
ただ仲間の勝利を信じるだけだった。しばらく時間が経つと、何かが燃える煙が見え、ゲームが終了したのはそれから間もなくであった。
ゲーム終了と共に木々は一斉に霧散する。
樹によって支えられていた廃屋は倒壊していく音が聞こえて、黒ウサギは一目散に走り出し、十六夜とカイは後を追う。
「そんなに急ぐ必要はねぇだろ?」
「大ありです!黒ウサギの聞き間違いで無ければ耀さんはかなりの重症です……!」
「黒ウサギ!早くこっちに!耀さんが危険だ!」
風より早く走る3人は瞬く間にジン達の元に駆けつけた。
廃屋に隠れていたジンは三人を呼び止める為に叫ぶ。
黒ウサギは耀の容体を見て思わず息を飲んだ。
「すぐにコミュニティの工房に運びます。あそこなら治療器がそろって……」
「いや、此処で治そう。耀は人間だ、コレ程の出血は命に関わる」
雰囲気の変わったカイが言う。
「カイさんのギフトには治療系が無かったはずです!?いったい何で治すのですか!」
黒ウサギは焦りからか声を張り上げる。
「〈
カイは耀に手をかざし治癒魔法を唱えた。
一瞬の内に耀の傷が治る
「なっ、傷が」
「ヤハハ、カイは本当になんでも出来るな。今のは《医神アクスレピオス》の権能を使ったのか?」
「使っていない。神や魔王からの攻撃ではないからな。血は減ったままだからな、運動なんかは控えた方が良いぞ。耀に言っておけ」
"フォレス・ガロ"の解散令が出たのはそのすぐ後の事だった。
#
「今より”フォレス・ガロ”に奪われた誇りを、ジン=ラッセルが返還する!」
一斉に衆人環視の的になるが、気になんてしないでらしくなさすぎる尊大な物言いでもう一度衆人に向かって叫ぶ十六夜。
「聞こえなかったのか?お前たちが奪われた誇りである"名"と"旗印"をガルドを倒したこのジン=ラッセルが返還すると言ってるんだ!」
「ま、まさか」
「俺たちの旗印が帰ってくるのか・・・・!?」
観衆は身内同士で顔を見合わせながら、ジンの前に一斉に雪崩れ込む。
ジンを押しつぶしてしまいそうな人の群れを、十六夜は一喝で押し返す。
「列を作れ戯けっ! 統率の取れぬ人の群れは獣畜生にも劣るぞっ!」
十六夜は歳不相応な威圧感と口ぶりで衆人に列を作らせる。
十六夜は”階層支配者”から預かったリストをジンに手渡して後は任せたとばかりに少し距離をとる。
「流れは作った。手渡す時に、しっかりと自己主張するんだぜ?」
「わ、分かりました」
ジンと十六夜は"フォレス・ガロ"の傘下のコミュニティに名と旗印を返還していく。
「"ルル・リエー"のコミュニティ―――そしてこれが旗印です」
「もう"ルル・リエー"とは二度と………二度と、名乗れないと………掲げられないと思っていたのに………!」
返還された旗印を抱きしめた代表者の男は、その場で泣き崩れる。
次々と返還されていく名と旗印。ある者は狂喜して踊り回り、ある者は旗を掲げて走り回り、ある者は失った仲間の名前を叫びながら泣き崩れていた。
最後のコミュニティに旗印を返還し、ジンと十六夜は全員の前に立つ。
「知っているだろうが、俺達のコミュニティは"ノーネーム"だ。魔王に奪われた名と旗印、それを自らの力で奪い返すため今後も魔王とその傘下と戦う事もあるだろう。しかし組織として周囲に認められないと、コミュニティは存続出来ない。だから覚えていてほしい。俺達は"ジン=ラッセル率いるノーネーム"だと。そして名と旗印を取り戻すその日まで、彼を応援してほしい」
「随分と饒舌ね」
「あんな演説も出来るのですね」
笑いをかみ殺しながら、小声でカイに話しかける飛鳥と黒ウサギ。
普段の十六夜を知っているならこの演説はむずがゆいだろう。
複雑な表情で立っていたジンも、十六夜に背中をたたかれてハッとする。
「ジン=ラッセルです。今日を境に聞くことも多くなると思いますが、よろしくお願いします」
(初動は成功だな)
衆人から歓声と激励の言葉が贈られるのを聞き、十六夜達の作戦は一先ず成功を収めるのだった。
こうしてフォレス•ガロとの戦いは終わった。
#
十六夜と黒ウサギ、カイの三名は耀の部屋に行った。
耀の容態を見て置くためだ。
傷は塞いだが出血が激しかった為2、3日は運動等を控える様にとカイは耀に言った。
「耀は大丈夫っぽいな。さすがカイだな」
「ええ。通常でしたら、輸血か増血が必要でした。増血は問題ないのですが、輸血になると専用のコミュニティに依頼しないといけませんから」
「まあ何も無かったんだ、それならそっちの方が良いだろ。それで、例のゲームはどうなった?」
十六夜が言っている例のゲームとは、以前ジンが言っていた、ノーネームの昔の仲間にして、元•魔王が景品となっているゲームの事だ。
十六夜と黒ウサギは本拠の三階にある談話室で、そのことを話をしていた、カイは口を挟んでいないも耳に内容を挟んでいる。
申請から戻った黒ウサギは十六夜にその事を問われると、一転して泣きそうになる。
「何?」
「ゲームが延期?」
「はい………申請に行った先で知りました。このまま中止の線もあるそうです」
黒ウサギは口惜しそうに顔を歪め落ち込んでいる。
十六夜は肩透かしを食らったようにソファーに寝そべった。
「なんてつまらない事をしてくれるんだ。白夜叉に言ってもどうにかならないのか?」
「どうにもならないでしょう。どうやら巨額の買い手がついてしまったそうです」
十六夜の表情は目に見えて、不快感を露にする。
1度はゲームの商品として出したものを、金を積まれたっという理由で取り下げるのはホストとしていい事ではない。十六夜は盛大に舌打ちをする。
「チッ。所詮は売買組織かってことかよ。サウザンドアイズは巨大なコミュニティじゃなかったのか?プライドは無いのかよ」
「仕方ないですよ。サウザンドアイズは群体のコミュニティです。白夜叉様のような直轄の幹部が半数、傘下のコミュニティが半数です。今回の主催はサウザンドアイズの傘下のコミュニティ "ペルセウス" 。双女神の看板に傷が付くことも気にならないほどのお金やギフトを得ることが出来れば、ゲームの撤回ぐらいやるでしょう」
「優先すべきはゲームではなく利益か」
達観したような物言いの黒ウサギだが、悔しさで言えば、十六夜の何倍も感じているはず、だが冷静で入れたのは、箱庭においてギフトゲームは絶対の法律だからだ。
勝利者は得ることが出来、敗者は奪われ、所有されてしまう。その仲間を集めるのは容易じゃない。
カイとしても面白く無い。サウザンドアイズから白夜叉を引き抜くと脅して、無理やり開催させてやろうかと考える。
その時カイは窓の方に気配を感じる。
(誰だ?)
十六夜と黒ウサギは気配に気づいていない。
「まあ、次回を期待するか。ところでその仲間ってのはどんなやつなんだ?元・魔王にして"箱庭の騎士"って事は前に御チビから聞いて知ってるが」
「そうですね……一言で言えば、スーパープラチナブロンドの超美人さんです。指を通すと絹糸みたいに肌触りが良くて、湯浴みの時に濡れた髪が星の光でキラキラするのです!」
「へぇ?よくわからんが見応えはありそうだな」
「それはもう!加えて思慮深く、黒ウサギより先輩でとても可愛がってくれました。近くに居るのならせめて一度お話ししたかったのですけど……」
「おや、嬉しい事を言ってくれるじゃないか」
二人ははっとして窓の外を見た。
コンコンと叩くガラスの向こうで、にこやかに笑う金髪の少女が浮いていたのだ。
跳び上がって驚いた黒ウサギは急いで窓に駆け寄る。
カイは壁にもたれかかったまま動かない。
「レ、レティシア様!?」
「様はよせ。今の私は他人に所有される身分だ。"箱庭の貴族"ともあろうのが、モノに敬意を払っていては笑われるぞ」
黒ウサギが錠を開けると、レティシアと呼ばれた金髪の少女は苦笑しながら談話室に入る。
美麗な金の髪を特注のリボンで結び、紅いレザージャケットに拘束具を彷彿とさせるロングスカートを着た彼女は、黒ウサギの先輩と呼ぶには随分と幼く見えた。
「こんな場所からの入室で済まない。ジンに見つからずに黒ウサギと会いたかったんだ」
「そ、そうでしたか。あ、すぐにお茶を淹れるので少々お待ち下さい!」
久しぶりに会えた仲間と会えたことが嬉しいかったのか、黒ウサギは小躍りするように茶室へ向かう。
「カイ、お前気づいてただろ?お前が気づかない訳がない。いつからだ?」
「黒ウサギが『ゲームの撤回くらいやるでしょう』って言ったところ位からだな」
「やはり気づいていたのか。こっちを見て笑っていたしな」
「君がカイか。白夜叉から自分を隷属させた者が居ると聞いた時は驚きを隠せなかったよ。しかもそれがノーネームにいると言う事じゃないか」
「そんな凄い事でもあるまい。今の白夜叉に勝てる奴など、俺が居た世界には結構いたぞ。」
「冗談だろ?」
十六夜はカイの言葉に口元が引き攣る。しかしその目はレティシアを見ている。
十六夜の視線に気がついたレティシアは、彼の奇妙な視線に小首を傾げる。
「どうした?私の顔に何かついているか?」
「別に前評判通りの美少女だと思って、目の保養に観賞してた」
十六夜の真剣な回答だったのだが、レティシアは心底楽しそうな哄笑で返す。
口元を押さえながら笑いを噛み殺し、なるべく上品に装って席についた。
「なるほど、君が十六夜か。白夜叉の話通りに歯に衣着せぬ男だな。しかし観賞するなら黒ウサギも負けてないと思うのだが。あれは私と違う方向性の可愛さがあるぞ」
「あれは、愛玩動物なんだから、弄ってナンボだろ」
「ふむ、否定しない」
「否定出来る要素が無いな」
「否定してください!」
紅茶のティーセットを持ってきた黒ウサギ口を尖らせ怒る。
温められたカップに紅茶を注ぐ際も不機嫌だ
「レティシア様に比べれば世の女性の殆どが鑑賞価値のない女性でございます。黒ウサギだけが見劣る訳ではありません」
「いや、黒ウサギは負けてねぇよ。レティシアも超絶美少女だが、お前が美人なのも事実だ」
「あ、ありがとうございます」
「ありがとう」
不意打ちの言葉に思わず耳まで紅くなる黒ウサギ。
賛辞や愛の言葉は星の数受けてきたが、十六夜の言葉は不自然なほどまで耳に残った。