最悪の出会い
「…ごめんね…彩葉のこと普通に産んであげられなくて」
夕陽が射し込む病室で女性が辛そうな顔をしながら荒い息を飲み飲んで言葉をこぼす。
「…おかーさん?」
不思議そうな顔をしながら女の子はベッドの上に寝る女性に近づく。
女性は女の子の頬を優しく撫で、頭にリボンをあしらった髪飾りをつける。
「彩葉ならきっと------
???「………」
ベッドで目が覚める。カーテンの隙間からは朝の陽射しが暗い部屋へと射し込む。
???「学校…いかなきゃ…」
ベッドから起き上がるとカーテンを開け、陽の光を全身で浴びる。
???「…学校…嫌だな」
「彩葉ちゃんや、朝ごはんできてるよ」
???「あっごめんね、おばあちゃん今行く!」
私の名前は天野彩葉 小学二年生。
「学校はどう?楽しいかい?」
少し…いや凄く学校は……楽しくない。
彩葉「うん、楽しいよ…」
「良かったわぁ 私達夫婦は彩葉ちゃんの味方だからね」
でも……おばあちゃんやおじいちゃんに心配はかけられない。
彩葉「…うん、ありがとうおばあちゃん…学校…行ってきます」
リボンの髪飾りで後ろ髪を結び、家を出る。
ーーーーーーーーーーー
ガヤガヤと騒がしい教室の前にたどり着き、教室へと入る
彩葉「……おは…よう」
ぴたりと先程まで騒いでいた教室が静まりかえる。
代わりにヒソヒソとこちらを見ながら話し始める。
彩葉「…っ」
席へと駆け足で向かうと途中で足をかけられ、転んでしまう。
「ごめんね!わざとじゃないよ!偶然偶然!」
そう言ってこちらを見てヘラヘラと笑う女の子。
それを見てくすくすと笑う他の生徒。
彩葉「……」
何回もやってる癖に…そんな言葉を飲み込んで大丈夫、と一言告げて席へと座る。
彩葉「…」(早く家に帰りたいな…)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
彩葉「…」(授業…終わったし早く帰ろう)
そうして席を立とうとすると4人の生徒に囲まれる。
「これから皆で遊ぶんだけど天野も来るよな?」
彩葉「…あっえっと」
言い淀む私の手を別の子が掴み
「ほらっ行こ!」
そう言って手を引っ張る
「おっ?お前ら放課後遊ぶのか?暗くなる前に帰るんだぞ~」
先生が教室から出ると先程までの笑顔とは打って変わり
「お前みたいなのと遊んでやるって言ってんだから早く来いよ」
「そうだよ、早く来いって」
「感謝してよね」
と口々に周りにいる子供たちは面白いものを見るようなからかうようなそんな目で自分を見る。
彩葉「…う……うん」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
彩葉「みんな……どこ?」
公園に連れられた私は強引にかくれんぼに参加させられた。
太陽は傾き、陽射しはオレンジ色に変わり初める。
彩葉「……」(みんな見つけるまで帰っちゃダメって言われたんだから…ちゃんとさがさないと……でも…)
探している内にすっかりとあたりは夕陽に包まれる。
薄々と自分を置いて4人は帰ったんだろうという考えが頭の中に思い浮かぶ。
彩葉「私は…1人で居た方が…いいんだ…」
目頭が熱くなる…近くにあった木の影にしゃがみこみ感情を押し殺そうとする。
???「やぁ!1人でめそめそこんな木陰で泣いてどうしたの?」
声と同時にとんとん と優しく肩を叩かれる感触にふと我に返る。
彩葉「……だれ?」
顔をあげるとにこにことこちらに笑いかける男の子が視界に入る。
???「ぼく?ぼくの名前は黒姫零!」
片手に本を抱え、もう片方の手をビシッと上へ伸ばして名前を言う。
彩葉「くろきれい?」
黒姫零「そう!黒姫零!…君は?」
彩葉「わたしは…」
自分の名前を言おうとした時、ふと少し前のことを思い出す。
彩葉(この人もきっとクラスの人と同じで私をからかいに来たんだ)
黒姫零「わたしはー?」
彩葉「……っ」
きゅっと私はスカートの端を握り締め、地面を見る。
黒姫零「……あー!わかった!」
そう言って黒姫零という男の子は私の前に座り込む。
黒姫零「君人見知りなんでしょ? ごめんねゆっくりでいいよ」
彩葉「わざわざ目線を合わせる為に座ったの?」
黒姫零「そうだけど?初めましての人に上から見下ろされて緊張しちゃったのかなって思ったからさ」
彩葉(優しい…っいや…私になんて優しくしてくれる人なんていない…きっとこの人だって!)
黒姫零「ねぇねぇ!僕と一緒に遊ぼうよ!なにするー?」
彩葉「…!」
彩葉は前に座っていた男の子を突きとばした後、立ち上がり走り出そうとする。
彩葉「っ…」
しかし少し進んだ所で足に痛みがはしり思わず座り込む。
黒姫零「大丈夫!?あちゃー 靴擦れしちゃったんだ」
彩葉「……」
黒姫零「待ってて!」
こちらを見たと思うとどこかへ走っていく
彩葉「今のうちに帰ろう…痛っ」
黒姫零「あ〜動かないで!ちょっと染みるよ?」
彩葉「なにを」
するつもりと言う前に目の前の男の子は靴擦れを起こしている足に公園の自販機で買ったのだろう、冷たい水をかける。
彩葉「っ…」
黒姫零「ごめんね、じゃじゃーんばんそーこー」
ハンカチで軽く拭いた後に絆創膏を貼る。
彩葉「……ありがと」
黒姫零「あっやった~ やっと話してくれたね」
彩葉「優しいんですね…」
黒姫零「いやぁ~そんなことないよ~それじゃぁはい!」
そう言って目の前にしゃがみこむ
彩葉「なん…ですか?」
黒姫零「まだ痛いでしょ 近くまで送ってってあげる」
彩葉「わたし…ぼうりょくふるったのに」
黒姫零「怖かったんでしょー?しょーがないよ」
彩葉「ありがとう」
普段だったらきっと無理してでも帰ってた…今日はたまたま、誰かに寄りかかりたかっただけ……きっとそう。
彩葉「重くない?」(この人は…)
黒姫零「ぜんぜん?」
彩葉「ちからもちなんだね」(信用しても)
黒姫零「男の子だからねー」
彩葉「彩葉…」(良いのかな)
黒姫零「……いろは?にほへと?」
彩葉「天野彩葉がわたしのなまえです、黒姫さん」
黒姫零「彩葉ちゃんって言うんだ!良い名前だね!」
彩葉「……ありがと」(この人なら)
黒姫零「そういえば彩葉ちゃんって」
彩葉「なんですか?」(友達になれるかも)
黒姫零「目の色変わるんだねぇ~」
瞬間、全身から血の気の引く感覚が私を襲った。
気をつけてたのに、一体どこで? 見られた? 嫌われる?
そんな考えが次々に頭を巡る。
黒姫零「さっき手当してた時とか後今とか黄色っぽい目に…あれ?今は青っぽいね?」
彩葉「…あっ…これ……は」
黒姫零「今はぼくとお揃いだね~」
彩葉「えっ?」
思いがけない言葉に思わず声が裏返る。
黒姫零「あっでも僕みたいな暗い目と違って君の方が綺麗だった!」
彩葉「黒姫…くんは、」
そんなことある訳ない……きっと聞き間違い……思い違いだ…期待した私の痛々しい勘違い…
黒姫零「な~に?」
彩葉「この目が…気持ち悪くないの?」
受け入れられるわけ……
黒姫零「……全然?綺麗だと思うよ?」
彩葉「……う」
黒姫零「う?」
彩葉「うわぁぁぁぁん!」
黒姫零「えぇっ!?そんなにお揃いの目嫌だったの?!」
涙が止まらない…私のこの目を、私のことを初めて受けとめてくれた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
黒姫零「えっとこの家で大丈夫?」
彩葉「……うん」
黒姫零「ごめんね?そんなに嫌だった?」
彩葉「……」
どうしよう上手く言葉が出てこない
黒姫零「それじゃぁ僕も帰るねー?」
彩葉「あっ…まって!」
思わず立ち去ろうとする彼のフードを引っ張ってしまった。
黒姫零「ぐえっ」
彩葉「嫌なわけ…ない」
ちゃんと言葉にしないときっと後悔する。
黒姫零「?」
彩葉「嬉しかった」
黒姫零「ほんと?良かった~」
彩葉「黒姫さんがね」
黒姫零「うん」
彩葉「初めてだったんだよ?…私の目を見て何も言わなかったの…」
黒姫零「そうなの?綺麗だと思うけどなぁ」
彩葉「だから…その…」
言え!私!友達になって欲しいって…
黒姫零「ねぇねぇ!明日さ学校終わったらあの公園に来てよ!」
彩葉「…えっ…あっ…うん」
黒姫零「またね!」
彩葉「…またね」
結局…家まで送ってもらったし…言いたいこともちゃんと言えなかった…私のばか…
前を見ると少し離れた所で黒姫くんが振り返っている。
黒姫零「そうだ!ぼくたちって友達だよね!?」
彩葉「えっ………うん!」
黒姫零「やった!じゃあぼくのこと黒姫じゃなくて!零って呼んで!」
黒姫…零さん…まるで心でも読まれたみたいに私が残した不満さえ無くしてしまった。
彩葉「…零さん!また…明日……!」
黒姫零「うん!また明日~!あ~!そのピンクっぽい目もかわいいね!」
彩葉「もう!……ばか…」
ピンク…? ほんとうなら初めてなる色だ…でも…
今は彼の背中がこの夕陽で見えなくなるまで見送ろう。