ゲーム出身の一般アークスが、オラリオでダンジョンアタックするのは無理がある 作:柳沢紀雪
グランドエンドを迎えて
その日、オラクル船団のすべてをかけた作戦が終わった。
『皆さん、本当にお疲れ様でした。そして、お帰りなさい、
その通信を聞いて、心の底から安堵し、無限の達成感とともに去来したのは、「これからどうしよう」という、わずかな不安だった。
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私は、オラクル船団8番艦所属のアークス。名前はベルディナ。第三世代型と言われるアークスで、種族はデューマンで性別は女性。
二十歳をこえても未だ子供と間違われるほど低い背丈は、社会生活に若干の不具合を残しながらもアークスとしての活動にはさほど支障は無かったのが幸いだ。
少し赤みの強い濃いめのピンク髪(地毛)は、遠目に見ても特徴的で、足下まで届くほどの長いツインテール(Nナイトメアヘアー)に、この矮躯と会わせれば十中八九私だと認識されるぐらいにはなった。
ちなみに、クラスはファントムでロッドを主体に戦っている。なぜなら、私は近接戦闘をするには胆力が足りない――つまりは、臆病者だということだ。
今ではましにはなったが、アークスになった当時は本当にひどかった。全距離適正のある第三世代であるなら、打射法すべてがオールマイティにこなせてしかるべきだったが、接近戦で相手と斬り合うとどうしてもおびえてしまって、まるで役に立たなかった。
かといって射撃も中の下程度の実力しか発揮できない(トリガーを引く瞬間に若干ひるんでガク引きしてしまうのが原因と言われた)などなど、消去法的にテクニック主体の戦闘にならざるを得なかったのだ。
まあ、こんな私でもアークスとして数年間活動できていると言うことは、オラクルの支援は手厚く、仲間がいることはすばらしいと言うことだ。
そう、仲間。
何を隠そう、先ほどアナウンスにもあり、今まさに終の女神によって汚染されたマザーシップから帰還し、皆の祝福を持って凱旋している二人の英雄。二人の
大衆の中に私の姿を見つけて、まばゆいばかりの優しい笑みを浮かべて、「ベルディナー!」とわざわざ名前を叫びながら手を振る白銀の彼女(マトイ)に、「恥ずかしいからヤメテ」とも言い返せずに、赤面して小さくなる私は、何を隠そう、宇宙救済の大英雄の二人の仲間であり友人という立場なのだ。
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「つかれた……みんな、どんだけ宴会好きなのよ」
終の艦隊戦が終結し、終の女神シバが消滅して、機能を停止しながらも残存した敵艦隊の掃討をあらかた終わらせて、それ以降は戦争終結宣言や式典、
「クーナちゃんの特別衣装、かわいかったなぁ。しかも、披露されたのってゲームでも実装されてなかった新曲でしょう? スゴかった(小並感)」
祝賀会が終わっても、二次会三次会四次会五次会と無限ループに陥りそうだったので、途中でこっそりと抜け出してきたのだ。全部参加するのがほとんど義務化していた
「そもそも、お酒の文化が未熟なのよね。地球から入ってきたとたん爆発的に広がっちゃった訳だし。そのうち規制されそう」
元々、オラクルはダーカーとの戦争を目的に造られた種族であるので、娯楽に関しての発展が遅れていた。
アークスの娯楽と言えば、歌うこと、踊ること、着飾ることぐらいで、本を読む文化はあるが、それが娯楽と言うほど発展しているとはいえないし、映画はアークスの記録映像を大衆化したプロパガンダに近いものが大半だ。
それに比べて地球の娯楽の広さ、奥深さにはオラクル船団もカルチャーショックを受けて、今では日に日に地球の娯楽で船団が汚染されている状況だ。
特にアイドル文化についてはクーナちゃんが「地球で売れる自信が持てませんね」と、真顔で危機感を憶えるほどのようで(私は、地球でもビッグになれると思うけどなぁ)、飲酒の文化もその時に流入してから爆発的に広まったのだ。
「お酒とアークスの相性が良すぎたのが悪い。任務が終わったらとりあえず飲みに行こうとか、会社員かよって。まあ、どんだけ飲んでも生命維持装置のお蔭で一瞬で分解することもできるけどね。泥酔しても、『その気になれば体内に埋め込んだ化学プラントで、血液中のアルコールを数十秒で分解してシラフに戻れる』ってやつよ、フォトン様々ね」
近未来でサイボーグ化した某少佐の台詞を引用していい気になる私だが、数十年ぶりにアルコールを飲めてご満悦でもある。
といっても、某少佐と違って私達アークスは体内に装置を埋め込む必要は無く、だいたいのことはフォトンがやってくれる訳だけどね。
サイボーグは機械の身体を手に入れて人間をやめるわけだが、私達アークスはフォトンの力を身に纏って人間をやめるのだ。
「後は、アニメとマンガが入ってきてるのがうれしいよね。まだまだ量は少ないけど、日本語のやつなら未翻訳でも読めるし……あとは、ゲームか。PSO2以外のゲームって何かあるのかな?」
ダーカーとの戦いが一段落したので、休日にはこうしてベッドに寝そべりながら娯楽をあさる余裕さえ生まれた。
「あ、新作のアウター出てた。うーん、手持ちと合わせるのは難しいかなぁ」
そろそろお昼も近いから、そろそろ着替えようかと考えていると、視界(HUD)の端に通信ありの表示が出たので、いったん上体を起こしてベッドに腰掛ける形で、一応服に乱れがないかを確認してから通信に出た。オラクルでの通信は基本ビデオ通話なので、服装に気をつけないと恥をかくから注意しよう。
「って、シャオくんか。なんだろう」
『やあ、ベルディナ。今、時間いいかな?』
「ダラダラしてただけだから大丈夫だよ」
『今から艦橋に来られる?』
「今から? そろそろ昼食を取ろうかなって思ってたんだけど」
『そうか、そんな時間か。じゃあ、ついでに食事も出してもらおうかな』
「それなら行く」
『それじゃ、よろしく。急がなくてもいいから』
ということで、タダメシの当てができたので通信終了後、すぐに外出着に着替えて寝室を出た。
「お出かけですか?」
と、玄関口のある中央ルームに出たところで、サポートパートナーのエルティナが話しかけてきた。
「うん、シャオくんに呼ばれて艦橋にいくんだ。エルティナも一緒も一緒に行く?」
「承知しました。では、同行いたします」
そう言ってエルティナは、待機スペースとなっているパートナーソファから立ち上がり、私の隣に歩み寄った。
「それじゃ行こうか」
私は一応、部屋の保安装置が、しっかりと「オート」となっていることを確認し部屋を出る。
出ると行ってもすぐにテレポーターにつながっていて、隔壁が横にスライドしたところはすぐにゲートエリアとなっている。
「こっちに来たときは驚いたけどね。もう慣れっこだ」
そのまま広間の両脇にある階段を上って、まだまだ祝勝の熱が冷め切らないアークス達の雑踏を見下ろしながら、まだ残務処理があるのか、通路の端でコンソールを忙しそうに操作しているクラリスクレイス(イリス)に軽く手を振って、艦橋に直通するテレポーターに足を踏み入れた。
惑星探査編以降で、各章の時短編(あらすじ)は必要ですか?
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いらない
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すでにある分も含めていらない
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どちらでもいい