ゲーム出身の一般アークスが、オラリオでダンジョンアタックするのは無理がある   作:柳沢紀雪

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100話達成とかマジで?






追加の任務があるらしい

 

 お昼を終えたところでガネーシャファミリアの本体が出発となり、いよいよ遠征の開始と相成ったわけだ。

 

 私は前衛部隊と聞いていたけど、それはあくまで深層に入ったときのことのようで、それまでは後方のサポート部隊に組み込まれているようだった。

 

「おい、猫又(ツインテールキャット)。なんか、美味そうなもん喰ってたらしいじゃねぇか。なんで、俺も呼ばねぇえんだよ」

 

 早速スィデロさんに絡まれてちょっと困った。だって、スィデロさん達は地底人(リヴィラ人)と打ち合わせみたいなのに行ってて不在だったじゃん。

 

「だったら、私達の側にいて貰わないとどうにもなりませんよ」

 

「じゃあ、28階層で期待していいんだよな?」

 

「さすがに下層では無理です。帰ってきたときはちゃんと呼びますから」

 

「なんでも、ドワーフの火酒とも相性抜群かもしれねぇって聞いてるぜ? 期待するしかねぇよなぁ?」

 

 ドワーフの人達ってお酒さえ飲めれば後はどうでもいいってイメージがあったから、食事はあんまり重視してないのかと思ったら、その通りだったよ。結局お酒のお供なんですね、分かります。

 

「そういえば、スィデロさん。ドワーフの火酒ってよく聞きますけど、結局なんなんですか?」

 

 イメージ的にはウィスキーと言うよりはジンとかウォッカのイメージだけど。

 ドワーフが砂漠出身ならテキーラもワンチャンあると思う。

 

「あん? そりゃあ……火酒は火酒だよ」

 

 答えになってないな。さては、中身を気にしない人だなスィデロさんは。

 

「ひょっとして門外不出ってやつですか?」

 

「あー、まあ、そういうやつだ。残念だったな」

 

 一応、そういうことにしておいてあげよう。火酒ってぐらいだから、火を付ければ燃えるぐらいアルコール度数は高いんだろうね。下手したらスピリタスぐらいはあるのか? むしろ、消毒液にした方がよかないかい? だけど、娯楽と実用の両方を兼ね添えるのだから効率はいいのか。

 

 ちなみに、私は強いお酒は飲めない。口の中がビリビリして喉が焼ける感触がどうも好きになれないのだ。ハイボールは好きだけどね。あと、ジントニックとかよく飲んでた。

 

「そういえば、スィデロさんは何階層ぐらいまで行ったことありますか?」

 

「俺か? 俺は……姐さんに24階層まで引きずられたことがあるぐらいだな」

 

 あーなるほど。椿さんはなかなかの女傑で姐さん気質だから鍛錬ついでに弟子(?)を連れ回すなんて当たり前か。

 

「椿さんって、面倒見がいいんですね」

 

「お前なぁ。違うだろうそれは」

 

「そうですか? 師匠としては弟子を早く一人前になってほしいものだって思いますけど。ランクアップしないと上級になれないんですよね?」

 

「それを言われちまうとなぁ」

 

「ランクアップ、出来るといいですね」

 

「そうだな。俺も、いい加減覚悟を決めるか」

 

 スィデロさんはそう言って背中のハンマー(ディオクレスディガー)を取り出してに三回ブンブンと振り回した。

 

「不思議だな。こいつを持つと不思議と力が湧いてくる気がする」

 

 私がテクターをしていた頃に使っていて、使わなくなってからエルティナにあげたそれは、当時の支給品としては上等な部類だったが、すぐにファーレンシリーズのデータ取りの協力やレイシリーズの開発が始まってしまったため、短い付き合いになってしまったやつだ。

 

 エルティナはレイシリーズがサポートパートナーにも支給されるようになるまでは使っていたので、むしろエルティナの方が長く使ってたんじゃないかな。

 

「心強いですね」

 

「お二人とも、そろそろ次の階層に入ります」

 

「分かったよエルティナ。ちょっと気を引き締めましょうか、スィデロさん」

 

「そうだな。んじゃ、俺は向こうに戻る」

 

 エルティナの声に私達は返事をして、私語を若干慎む。スィデロさんは仲間の鍛冶師のもとへと戻っていき得意げにハンマーを振り回してみせる。

 

 大森林は私達みたいなマップと位置測定装置がないとあっという間に迷ってしまうようなところだから、気を引き締めないとね。私なんて、地図アプリがあっても時々迷子になる程度には方向音痴なのでエルティナの指示は絶対だ。

 

 と言っても今回は基本的にガネーシャファミリアについていけばいいから気楽に行こう。

 

 

◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇

 

 

 さて、私達はガネーシャファミリアに追従して50階層を目指しているわけだが、ただ一心に脇目も振らずに50階層を目指していると言えばどうもそうではないらしい。

 

 今となっては私達のホームグラウンドになりつつある24階層だが、下層に進出する前に比較的開けた場所でキャンプが張られ、次の日は一日ここに滞在するということが言われた。

 

「ここで休憩ですか? 28階層まで降りた方が落ち着きません?」

 

 私はわざわざ自ら説明しに来てくれたシャクティさんに挙手で聞いてみた。

 

「24階層では様々な資源が採取できることは知っているな?」

 

「そうですね。私も結構お世話になってますよ」

 

 この間はここでとれた採掘品をアミッドさんに買い取って貰ったおかげで、いろいろな食材を補充することが出来て、お菓子まで買うことが出来たぐらいだ。24階層には足を向けて眠れないね。足を向けて起きてはいるけどさ。

 

「今回の遠征にはかなりの支出があるのでな。こういうところで様々な依頼をこなして少しでもたしにする必要があると言うことだ」

 

 なるほど。お金の問題は零細も上級も変わらないということか。むしろ、支出額については上級のファミリアの方が桁がリアルに三つか四つ違うから、その分得なければならない収入も桁違いだ。

 

 私とエルティナ二人だけの稼ぎ+主神様のバイト代だけで成り立っている我がファミリアとは大違いだね。その分、意思決定とかのフットワークは空気よりも軽いけどね。

 

「なんか、世知辛いですね」

 

 ダンジョンには名誉も夢もあるが、先立つものがないと何にもならないということだ。世知辛いとしか言い様がないだろう。

 

「そこで、戦場の聖女(デア・セイント)一般小人族(リトル・ノーマル)猫又(ツインテールキャット)には頼みがある」

 

「私達にですか?」

 

 ふむ、アミッドさんも寝耳に水のようだ。先ほどまで、一日暇があるのなら素材集めにでも行こうかと独りごちていたのを聞いたので、せっかくなら護衛として付いていこうかなとエルティナと話していたところだった。

 

「ああ。この階層には宝石樹というものがあることは知っているか?」

 

 ほうせきじゅ? 宝石で出来た木ということか? ファンタジーというか、メルヘンチックな感じがする。

 

『エルティナ知ってる?』

 

『用語だけなら記録にあります』

 

 通信機でこっそりとエルティナに聞いてみたら、言葉だけは知っているようだった。映像なり画像が出てこないということは、まだ私達は見たことがないということだろう。

 

「宝石樹ですか。確かにそれを手に入れられればかなりの収入にはなると思いますが、少しリスクが大きいのではありませんか? 守っているグリーンドラゴンはそれなりに手強いと聞きます」

 

 アミッドさんが代わりに答えてくれたので、私はその隣で神妙そうな表情でコクコクと頷いた(知ったかぶり)。

 

「その通りだ。しかし、お前達が一緒ならそのリスクも大きく減るだろう。頼まれてはくれないか?」

 

「つまり、私達は宝石樹を取りに行く部隊に付いていって回復支援を主にすればいいってことですか?」

 

 私は挙手をしてシャクティさんに確認した。私は背が低いせいか、手を上げないと時々注意を向けて貰えないことがあるのだ。子供っぽい行動とは思うけど、そうするにはそれなりの理由があると思ってほしい。

 

猫又(ツインテールキャット)の言うとおりだ。もちろん、これは強制ではない依頼だ。参加して貰えれば、別途報酬を考えている」

 

『どうする、エルティナ? 私は受けてもいいって思うけど』

 

 強敵と戦えるうえにレアドロップまで期待できるなら、アークス魂がうずくってもんだ。

 

『マスターの意志に従います』

 

 もちろん、アークスのサポートパートナーであるエルティナもそういうアークスの習性をよく理解しているので、すぐに賛成してくれた。

 

『分かった、ありがとう』

 

 エルティナにも了承を貰ったので、この件は喜んで受けさせて貰おう。

 

「私達はご一緒させて貰います。ちなみに、グリーンドラゴンって強いんですか?」

 

 報酬の宝石樹も大切だが、アークスとしてはそれを守っているエネミーの方がより重要な意味を持つのだ。

 

「実質的には24階層の階層主といってもいいだろう」

 

 シャクティさんは実に分かりやすく説明してくれた。上層の実質的な階層主のインファントドラゴンと同様に、この24階層の実質的な階層主はそのグリーンドラゴンであるということだろう。

 

「そのグリーンドラゴンが強化種になる可能性はありますか?」

 

 私のランクアップはそのインファントドラゴンの強化種によって成し遂げられた。じゃあ、その実質階層主のグリーンドラゴンが強化種になったのなら、それは私のランクアップの礎になってくれるということなんじゃないかなと思うんだ。

 

「可能性はゼロではない、しかし、おそらくあり得ないだろう」

 

 甘いね。起こりうることはいつか必ず起こるという言葉もあるんだ。それが、今かもしれないって思うでしょう?

 

「分かりました。楽しみですね」

 

「………………正気か………………?」

 

 シャクティさんが何かつぶやいたようだが、私にはよく聞こえなかった。私はどこぞの主人公よろしく都合の良い難聴を煩うことがあるのだ(そんなものはない)。

 

世界最速小人族(あなた)も参加するのですか?」

 

 私がワクワクしているところで、アミッドさんがエルティナにそう訪ねていた。

 

「お嬢様が参加されるのであれば私が参加しないという選択肢はあり得ません」

 

「そうですか。分かりました」

 

 アミッドさんはしばらく瞑目して何度かうなずき、目を開いて肩に力を入れて拳を握りしめた。

 

「私も参加します」

 

「そうか、感謝する。戦場の聖女(デア・セイント)

 

 シャクティさんはそう言って(こうべ)を垂れた。

 

「それで……すぐに出発しますか?」

 

 私はすでに準備は出来ている。巨剣は腰のマウント部に繋止していていつでも戦闘態勢に移行できるし、エルティナはすぐにでも魔法(テクニック)を起動してあらゆる支援を行うことが出来る。

 

「今すぐ捜索部隊を招集する。少しここで待っていてほしい」

 

 シャクティさんはそう言ってガネーシャファミリアの本隊に戻っていき、しばらくして十名程度の団員のパーティーがやってきた。

 

「今回、宝石樹捜索隊の隊長を務めることになったハシャーナ・ドルリアだ。二つ名は【剛拳闘士】だ。よろしく頼む」

 

 どうやら、シャクティさんはこれには参加しないようだ。

 

「よろしくお願いします、ハシャーナさん」

 

 私はそう言ってにっこりと笑い、私の二倍ぐらいありそうな巨漢のハシャーナさんに手を伸ばして握手を求めた。

 

「お、おう。よろしくな、猫又(ツインテールキャット)

 

「よろしくお願いいたします、【剛拳闘士】様」

 

 エルティナはさらに低いところからさらに頭を下げてハシャーナさんに挨拶する。

 

「いや……様呼びなんていらねぇぜ。よろしくな、世界最速小人族(レコードホルダー)

 

「私も、よろしくお願いいたします」

 

 続いてアミッドさんもお辞儀をすることで一応顔合わせは完了したことだろう。

 

「頼りにしている、戦場の聖女(デア・セイント)

 

 と言うことで、私達は宝石樹の獲得とグリーンドラゴン討伐のための部隊としてようやく出発することになったのだ。

 

 

 









頑張れハシャーナさん。未来をつかみ取るんだ!



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