ゲーム出身の一般アークスが、オラリオでダンジョンアタックするのは無理がある 作:柳沢紀雪
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これでもっと頑張れる!!!!
「なんか、エルティナの方が主人公っぽかったね」
「理解不能です」
「かっこよかったよってこと」
「そうですか」
エルティナからは照れ隠しの片鱗さえも感じられなかったが、自分のサポパがカッコイイのはマスターとして喜ばしいことだということだけは分かってもらいたい者です。
「終わったか?」
ハシャーナさんが爆風から目を守るように掲げた腕を大剣に戻しつつ、未だに警戒を解かずに周辺を素早く確認する。
「今のところ増援の気配はございません」
エルティナは素早くそれに答え、一旦は脅威は去ったことを伝えた。
「ふぅ……すごい爆発だったわね」
パルヴァさんはようやく緊張を解くように肩の力をぬいて目を閉じつつ頭上へと面を上げた。
イル・フォイエが炸裂した爆心地に改めて目をやると、所々焼けただれた木々の群れと異様にえぐれた地面がまず映り込んだ。
「派手にやったね」
さすがにこの威力は想定外だったので、私も純粋に驚いている。あの詠唱はフォトンによるテクニックに魔力を上乗せして威力をブーストさせる要素として働いたのだろうか。よくアークスの戦闘システムがそれを容認したものだと感心するばかりだ。
『システムの冷却に相応の時間が必要となります』
『えっ? ちょっと見せて!』
エルティナからの通信に聞き捨てならない言葉が飛び出して、私は慌ててエルティナの管理モニターをHUDに表示させて、いろいろ頭を抱えたくなった。
『うわぁ……フォトンの出力系に結構な負荷がかかってる。確かに、お休みしないとだめだね。念のためスリープ状態に移行しておく?』
幸い駆動系には問題はないようだから、通常行動には支障はなさそうだけど一度再起動してセルフメンテをして貰った方が良さそうではある。
『いえ、それは拠点に戻ってからでも問題はありません』
確かに、一応ここは戦場と言えるから、行動不能になるのだけは避けるべきか。
「無茶させてごめんね、エルティナ」
「いえ。必要なことでした」
一旦通信は終了して、HUDの管理モニターも閉じた。念のため視界の端の方にエルティナのコンディションの【CAUTION】という黄色の表示だけさせておく。エルティナの状態が正常に戻れば表示自体が消えるようになっているから、とにかく待つことしか出来ない。船団とのリンクがあれば、すぐに本船に戻ってフルメンテして貰うところだけど、こればかりはしかたが無い。
「お体は大丈夫ですか?
アミッドさんがエルティナに駆け寄って声をかけてくれた。
「しばらくの戦闘行動は不可能と判断しました」
「そうですか。そうですね、あれほどの魔法ですと、マインドダウンしなかっただけマシと言ったところでしょう」
そういえば、こっちでは魔法を使い過ぎると精神力切れで気を失うこともよくあるんだっけ? いつぞやのアイズさんみたいに。
「そのようです」
「分かりました」
「よろしくお願いします」
どうやら二人の会話は終了したようだ。私が言うことでもないと思うけど、もうちょっと和気藹々と出来ないものかね?
帰ったらアミッドさんとエルティナとで女子会でも開こうかな……いや、私だけしゃべって終わるか。
私はHUDの周辺マップにエネミーの存在を示すマーカーがもう存在しないことに安堵して巨剣を腰の繋止部分にマウントし直して、軽く身体をほぐすように肩を回してからもう片方の手でぐいぐいと引っ張った。
ちょっとした気の緩みは、その後突如として発生したフロア全体を震わせるほどの振動にもう一度緊張を強いられることになる。
「地震? これって大丈夫なの?」
感覚的に震度四ぐらいだろうか? 何か起こってはいけないので、私はもう一度巨剣を装備し直したまま足を開いて少し重心を落とすことでバランスを取る。
しかし、一分ほどもたたないうちにそれは止み、後に残ったのは不気味な森の静けさだけだった。
「今のは何だったのでしょうか?」
アミッドさんも心配そうにあたりを見回す。前世の日本なら「ちょっと大きかったね」程度ですむ話しだが、ここでは地震がどの程度ポピュラーなものかはよくわからないし、ダンジョン内で発生したときの対処法もギルドからは教えてもらっていない。
アミッドさんの困惑した様子から、これはダンジョンにおいてはめったにないことなのだろうと推測できる。
「アミッドさんは大丈夫でしたか?」
HUDにも、エルティナ関係の警告以外何も表示されていないようだったので一旦警戒を解いて巨剣を腰のマンウント部に繋止し直した。
「……はい、私はなにも問題ありません……何も、出来ませんでした」
最後のつぶやきを私は聞こえないフリをした。あんな状況でまともに詠唱が出来ないのことには無理はない。本来ならそうならないように私が立ち回らないと行けなかったのだから、むしろこれは私の失態だろう。
「ごめんなさい、アミッドさん。私、アミッドさんをちゃんと守れませんでした。もう一度だけチャンスを貰えませんか? 次こそは必ず!」
「それは……はい、よろしくお願いいたします。私も次こそは――」
◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇
「結局
「残念だけど仕方ないわよ。そろそろ時間切れでしょ?」
「戻るか……」
「ハシャーナさん、すみません。さっきの魔法のせいでエルティナはしばらくは戦闘に参加出来ないみたいです」
「だろうな。まあ、ゆっくり休んでくれ。なんなら、俺がおぶってもいいが、どうする?」
「いえ、戦闘行動以外に支障はございませんので」
「あれほどの魔法をつかってマインドダウンしないのはたいしたもんだ。ウチの魔導士どもにも見習わせたいぜ」
「シャクティにチクるわよ」
「勘弁してくれ」
うーん。ハシャーナさんとパルディさんってひょっとして恋人同士なのかな? あうんの呼吸というか、視線だけで会話するみたいな。
あとで、アミッドさんとそれをネタにおしゃべりしてみよう。
さて、いよいよ帰路の道中に付いた訳だけど、エルティナはしばらくは戦闘行為を行えないのが若干の不安ポイントだ。
「ねえ、エルティナ、直るまでどれぐらいかかりそう?」
「少なくとも一晩は必要です」
「そうだね。分かった」
あの詠唱入りの
本当にどうにもならないとき以外には頼るべきじゃないな。
「ねえ、エルティナ。確認だけど、あの詠唱はなんだったの?」
エルティナの詠唱には、原初の闇との最終決戦に参加した人達とシャオぐらいしか知り得ない情報が多く込められていたような感覚が残っている。
「申し訳ありませんマスター。あの瞬間についてのメモリーがなぜか消失しております。現在、当時の詠唱を再現することが不可能となっております」
そう、感覚しか私には残っていない。エルティナはその部分の記録が消去されてしまっているということだ。確かにエルティナが何か核心に触れるような言葉を紡いでいたはずだが、その詳細については思い出そうとしても記憶にモヤがかかってしまっている。
「オーバーロードの弊害――って感じでもないね? 意図的な改ざんが外部からされた?」
システムの過負荷が原因なら、影響はもう少し広範囲になりそうだが、その部分だけが消えているということは何かしら、作為的なものを感じざるを得ないのだ。
「それも不明です」
改ざんの記録すらも消しちゃうほどか。およそ人類には不可能なことをやってのけてる。
「なるほどね。分かった。ゴメンね、変なこと聞いて」
「いいえ、当然の疑問です」
だけど、大体分かった。今から10年と少し前、アークスシップをダークファルスが襲撃するという事件が起き、二代目クラリスクレイスが消失するという事件が勃発するもそれに関する記録や記憶が全て閉ざされてしまい、誰もそれを参照することが出来ない状態が発生した。それは、シオンの介入によってなされたということを聞いたことがあるが、おそらく今回の記録改ざんもそれと同じことが起こっているのだろう。しかし、この宇宙にはすでにシオンは存在しない。今回はシオンに近しい存在がエルティナに何かしらの干渉を行ったと考えるのが自然だろう。それは誰かと言えば……まあ、神様なんだろうなぁ。この世界はある意味で何でもありだ。
私の記憶からも、エルティナが放った魔法とその詠唱に関する記憶がさらに消えていっている。システムによる保護が働いている私ですらこんな状態なのだから、おそらくハシャーナさん達の記憶にはもうすでにおぼろげにしか残っていないのではないかと思う。
せいぜい、エルティナがなにかすごい魔法を使って敵を掃討したという、曖昧なことしか思い出せないじゃないかな? あえて確認することもしないけどね。
もしかすると、今回のことは
とにかく、一人の犠牲も出すことなく帰還できたことを今は喜ぶべきだね。