ゲーム出身の一般アークスが、オラリオでダンジョンアタックするのは無理がある   作:柳沢紀雪

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忙しすぎて白髪が増えました。
今月はもう一話ぐらい更新できたらいいなと思う。







骨(と)肉の争いってやつだ

 

 

 深層最初の階層に階層主がいるということは、少なくとも深層というのはそれ(ウダイオス)を倒せないパーティーでは到底生き残れない場所ということなのだろう。

 

「そう考えると、ダンジョンも結構親切なのかもね。ちゃんと門番というか、足切り役のボスを用意してくれてるって事だし」

 

 36階層から37階層へ降りる長い階段を前の人に続いて降りる間に私はそんなことを考えていた。

 

「その発想はなかったな」

 

 隣を歩いてくれているハシャーナさんは少し感心するように私の話に耳を傾けてくれている。ハシャーナさんはこれまでの深層の探索にも何度か参加したことがあるようで、深層に入るからと言って特に緊張している様子はなかった。

 

「よろしければ、37階層の階層主(ウダイオス)について教えていただけませんか?」

 

 私の反対隣を歩くエルティナはさらに向こう側にいるパルヴァさんからいろいろ聞き出そうとしているようだ。私も、遠征が始まる前にギルドの担当者から深層についていろいろ聞こうとしたのだけど、結局詳しいことは聞くことができなかった。なんでも、一定以上の功績のあるファミリアでない限りは深層に関する情報は許可なく伝えることは厳禁ということらしい。

 

 私達のファミリアはまだ設立からそろそろ一年がたとうかという程度で、レベル2の団員が2名しかいない生産系ファミリアなので、到底その段階には達していないということなのだろう。決まり(ルール)なら仕方ないけどさ、ちょっとモヤッとするね。

 深層はレベル4になれば自由に立ち入ってもいいという決まりらしいので、ランクアップが待ち遠しいよ。

 

「ウダイオスは……簡単に言えばでっかい骨の巨人ってところかしら。腰より下が地面に埋まってるから動けないのだけどね」

 

 ジャイアント・スケルトンってやつか。アークスにとってはちょっと珍しい類いの相手だね。オメガ世界にいたぐらいか?

 

「動けないんだったら、大人数で取り囲んでたこ殴りですか?」

 

「言うには易し――ということだな」

 

「でしょうね」

 

 ハシャーナさんのつぶやきに私はうなずき返した。その程度で済むのなら階層主と呼ばれていないだろう。未知なる敵を前にして、しかもそれが珍しい類いの敵であって、しかもバカほどでかくてアホほど硬いとなれば、アークスとしての戦闘本能が刺激されまくって身体がブルブル震えてしまいそうだ。

 

「震えているな。大丈夫だ、俺たちは何度もあれとやり合って勝っている。心配はない」

 

「そうですね。ありがとうございます」

 

 いい感じに誤解して貰えたようで何よりだ。

 

「そろそろ階段を抜けるようです」

 

「うん、いよいよだね。エルティナ」

 

 暗い階段の終わりに白濁した光が差し込んできて私は一瞬だけ目を細めた。

 

 

◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇

 

 

 白濁した光はそのまま洞窟の壁面の姿へと変わっていき、各人が持ち合わせるマジックランタンの光がその全容を映し出した。

 

「広いね。まるで巨人の世界に迷い込んだみたいだ」

 

 私はHUDの表示を暗視モードに切り替えて、地上の昼間程度の視界を確保した。これは、視覚情報を光ではなくフォトンから得る方式に変換するものなので、光が全く存在しない完璧なる闇の中にあっても視界が保たれるという優れものだ。

 

「こう見ると広いだけで中身は普通の洞窟なんだね。深層なんだから、もっとこう……なんだろう? 派手な感じかと思ってた」

 

「それでも油断は禁物です、お嬢様」

 

「分かってるよ。命は大切に。初めてのところだから慎重に行こう」

 

 そうして私は、背後の壁面に発生したひび割れから早速現れた、羊っぽい骨のモンスターを振り向きざまに巨剣を打ち当てて、突進攻撃をキャンセルしつつ遠くに弾き飛ばした。

 

 見た目骨だから防御力は低いかと思ったけど、目立ったダメージを負っていない様子から、下層の連中とは比べものにならない程度の防御力は持ち合わせているようだ。

 

「なるほど、一筋縄ではいかないってことか。いいね!」

 

 見ると外套みたいな皮(?)に身を包むことで視認性をかなり悪くしているうえに、動きも静かなものだから、普通なら急に目の前に現れたような錯覚を引き起こさせたのだろうけど、私とエルティナのフォトンレーダーとエネミーセンサーをごまかしたければ、空間転移(ワープ)ぐらい出来るようになってから来いと言いたいところだ。

 

「おい、大丈夫か」

 

 吹き飛ばされても再度こちらに突撃してきた羊っぽい骨のモンスターだったが、間に入ってくれたハシャーナさんによって今度こそ脳天を砕かれて灰になってしまったようだ。流石は私の巨剣を持ち上げられるだけあるね。(偉そう)

 

「大丈夫です。ありがとうございました。けど、追加も来ますよ」

 

 近いところで大量に出現したのか、私のHUDには敵性を顕す赤い光点がどんどん増えていき、ついには両の手では数え切れないほどのものになってしまった。ざっと20ぐらいかな? そこそこの宴が開催されそうだ。

 

 私達の周りの壁面にも次々と不吉なひび割れが発生しているから、飽きさせる気はないようだね。

 

「支援の魔法(テクニック)を展開します――シフタ、デバンド」

 

 エルティナが続けざまに支援のテクニックを展開し、私達の攻撃力と防御力が相当に高まっていく。

 

「敵襲だ! 全員戦闘準備!!」

 

 誰かの号令に応じて皆が「応!!!」と奮起して、あらゆるところから抜刀と剣撃の音が鳴り響いた。深層に入ったばかりで浮き足立っていた集団がここに来てようやく一つのまとまって動き出したということだ。

 

「私達はみんなのサポートをしようか」

 

 私は巨剣を右手に握ったまま、左手でエルティナを側に引き寄せると、戦闘集団の中央付近に移動を開始した。フォトンレーダーで周辺の味方の位置関係と敵の展開具合は確認できるのでわざわざ周辺を見回す必要はない。

 

「奇襲を受けたはずなのに、流石はガネーシャファミリアだね。連携がスゴイや」

 

 寸前まで比較的ばらけて戦っていた味方の光点が、今となってはある程度の単位を形成してそれらが明らかな連携を思わせる動きをし始めている。思考停止状態に陥るような突発事象でもすぐに対応できるほど普段から連携を身体にたたき込んでいるのだろう。

 

「支援が大変行いやすいと言えます」

 

 エルティナはサミットムーン(リバレイトウォンド)から針忍冬(リバレイトタリス)に持ち替えて支援や回復が必要そうな集団に向かって氷のように蒼く輝くクナイを投げて遠隔でテクニックを発動させた。

 

「その武器便利ね。どこに行けば買えるの?」

 

 側で魔法を打ち終わった魔法使いのお姉さんがエルティナの針忍冬(リバレイトタリス)を見て歓声を上げた。

 

「戦闘中です」

 

「そうね。後で教えてね」

 

 エルティナの短い返答に魔法使いのお姉さんも改めて背筋を伸ばし、魔法の詠唱に入った。

 

「おっと、危ない」

 

 そんなお姉さんの足下の床にヒビが入ったと思ったらそこから人間の腕と思われる骨がにょきっと生えてきてお姉さんの足首をつかもうとして居るのが見えた。

 

 私はすぐに巨剣を地面から振り上げるようにしてその手首を砕き、続いて出現した本体にはその勢いのままで蹴りをお見舞いして、ちょうどハシャーナさんの背中に向かって吹き飛ばしてやった。ちょっと大げさに足を上げてしまったので、めくれ上がったスカートからピンク色のインナー(N-幻創聖母礼装[In])が派手に見えてしまっただろうけど、戦闘中に気にするようなことではない。

 

「危ねぇぞ、最速記録の片割れ(ベターハーフ)!」

 

 ハシャーナさんはまるで背中に目でも付いているのかと思えるぐらいのナイスタイミングで振り向いてそのまま大剣を横薙ぎに骸骨兵を粉砕し事なきを得た。

 

「ハシャーナさん、後ろ、後ろ」

 

 私はハシャーナさんの背後から今にも接近しつつある羊型を指さして見せた。

 

「分かってる!」

 

 ハシャーナさんはもう一度振り向きざまに剣を振って羊型も真っ二つにしてしまった。よしよし、上手い具合にごまかせたようだ。

 

「ありがと、助かったわ」

 

 足を掴まれそうになっていた魔法使いのお姉さんは、そのまま詠唱を続けて魔法を放ち、一息つくように私へお礼をくれた。

 

「私が守りますから、安心して詠唱してくださいね」

 

「頼りにしてるわよ。だけどね、スカートの中にもう一枚何か穿いたほうがいいわよ。下着がまる見えだったわ」

 

「そこまで気になりますか?」

 

 短めのスカートを穿いている人もちょこちょこいるし、シャクティさんも一見すれば長そうだけど、深めのスリットがいくつか入っていてセクシーに見えるし、なんならアマゾネスの人達などは殆ど下着姿で歩いてる痴女集団だし、今更じゃないかなと思うんだけどね。アークスだって似たようなものだ(例:ジェネ)。

 

 もっとも、このお姉さんはよく見ると耳がとがっているようなので、貞淑なエルフなら特別に気になるところなのかもしれない(偏見)。

 

「まあ、少しは考えておきますね」

 

「そうしなさい。次の詠唱行くわ。お願いね」

 

「エルティナは大丈夫?」

 

「問題ありません――レスタ!」

 

 少し離れた集団のタンク役が骸骨兵の槍に肩を貫かれていたのを確認して、すぐさまエルティナはクナイを放って遠隔で回復のテクニックを展開させた。

 こうすることで少しでも回復アイテムの消費を抑えるのが私達の仕事なのだから、遠慮せずにどんどんやろう。

 

「天井からも何体か降ってきそうですね。少し離れます」

 

 私はそう言って虚空跳躍(ネクストジャンプ)を展開してしばらく空の人になった。

 

 エルフのお姉さんはそんな私を見上げて、「はしたないわねぇ」とため息交じりにつぶやくと、さらなる詠唱を開始した。

 

『ちょっと気にしすぎじゃないかなぁ? エルフの人ってこういうものなのかな?』

 

 私はエルティナに通信で話しかけた。

 

『マスター、戦闘に集中してください』

 

『ゴメン、また後で話そうね』

 

 まあ、ともかくいろいろ考えるのは場が落ち着いてからだ。エルフのお姉さん以外にもいろいろと意見を聞いて回るのもいいだろうと私は思い、天井から降ってくる青い鱗のリザードマンをできる限り後衛の人達から遠ざけるように吹き飛ばしていった。

 

 

 

 

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