ゲーム出身の一般アークスが、オラリオでダンジョンアタックするのは無理がある   作:柳沢紀雪

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高評価ありがとうございます。やる気をいただき、何とか書くことが出来ました。






初撃はいただきだね

 

 骨達の宴会(スケルトン・フィーバー)が終わり、いろいろ服にくっついたホコリを払って一息ついたところで、先ほどのエルフのお姉さんから若干小言をもらいつつ、魔石を拾いつつ、ドロップアイテムの回収をしてからようやく本格的に深層の探索に相成った。

 

「ふぅ……ここまで消耗の少ない宴も初めてだな。流石だな、一般小人族(リトル・ノーマル)

 

 全体の状況を見回っていたシャクティさんが、エルティナの元に現れて短く賛辞を送っている。

 

「いえ、私の役割を全うしたに過ぎません、象神の杖(アンクーシャ)様」

 

「そうか、この調子で頼む」

 

「承知いたしました」

 

 もとより寡黙なシャクティさんと真面目なエルティナは割と相性がいいのではないかと、未だに続くエルフのお姉さんのお小言を右から左に聞き流しながら私は思った。

 

「いい? 小さい頃から慎みを持つことで、より洗練された淑女に……」

 

 私はすでに成人した女性(レディ)なので関係ない話しをされても困るのだ(なお見た目)。

 

「それぐらいにしておけミスティ。そろそろ出発だ」

 

 なるほど、このエルフのお姉さんはミスティさんと言うんだね。シャクティさんにたしなめられたミスティさんは、「分かりました」と背筋を伸ばして答え、すれ違いざまに「まだ終わってないからね」と耳打ちして後方部隊に下がって行ってしまった。

 

「回収は終わったようだな。よし、全員隊をまとめろ、進軍を再開する!」

 

 シャクティさんのよく通るキレイな声に応じて皆が作業を中断し、再びダンジョンを進み始めた。

 

「私達も行こうか、エルティナ」

 

「承知いたしました、お嬢様」

 

 とりあえず私達はシャクティさんの後ろをトコトコと着いて歩き、二人一チーム(ツーマンセル)として前線部隊をうろつくことにした。

 

 

◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇

 

 

 37階層はこれぞまさに迷宮(ダンジョン)と言うべき場所だった。

 

「どう? マッピングは順調かな?」

 

 私は隣を歩くエルティナにそっと耳打ちした。

 

「最短距離での進行のようですので、作成率は全体の0.1%未満と予測されます」

 

 エルティはそう言ってここまでの経路を平面図と立体図の両方をHUDに表示してくれた。

 

「この階層はオラリオの街よりもちょっとだけ狭い程度なんだっけ?」

 

「そのように聞いております」

 

「早く私達だけで回れるようなりたいね」

 

 ここに来るまでも結構段差を登ったり降りたりして頭が混乱しているが、幸いなことに通路がそこまで複雑に立体交差している様子はないみたいなのでそれだけは朗報だね。

 

「全体進軍停止! 各班、最終確認を行え!」

 

 前方からよく通る男性の声が響き、それを中継する声が後方へと伸びていき、全員が美しい連携でその場に待機となった。

 

「さて、ここからが本番だぞ、二人とも。最終確認をしておけ」

 

「承知いたしました」

 

 隣を歩くシャクティさんが私達にそう伝えてくれて、エルティナは頷いて腰のポーチの中を確認し始めた。今回は虎の子のエリクサーはエルティナに持ってもらっているので、それがちゃんとあるかどうか私もちらっとのぞき込んでおいた。

 

「いよいよ階層主ですか?」

 

 私が確認するべきなのは巨剣だけなので、一旦腰のマウント部から剣を取り外してヒビや欠けがないかチェックしておく。

 

「そうだ。お前達はとにかく敵の攻撃を回避することを考えればいい」

 

「えーっと、主には無限湧きする骸骨兵と、地面から生えてくるトゲに気をつける……でしたっけ?」

 

 ウダイオスは本体の戦闘力以上にきわめて高い物量戦を仕掛けてくる反則モンスターで、しかも無限湧きする骸骨兵も単独でレベル4相当の戦闘力を持つというのだから救いがないといえるだろう。はっきり言って、ガネーシャファミリアみたいな集団戦等が出来ないファミリアだと挑むことすら出来ない相手というわけだ。

 

 アークスとしては”無限湧き”という言葉を聞くと、「金策レベリングし放題じゃん、ラッキー」ぐらいにしか思えないけど、消耗が死につながる冒険者としては一番やり合いたくない相手と言えるのではないだろうか。

 

「せめてレアドロップがあれば、もうちょっとモチベも上がるんだろうけどね」

 

「ん? 何か言ったか?」

 

「いえ、なにも。私達は準備完了です、いつでもいいですよ」

 

「了解だ」

 

 そうして、各部隊からの報告がシャクティさんに入って、いよいよメインディッシュの時間と相成った。

 

 

 作戦は非常に単純だ。まずは一番数の多い中堅部隊が戦端を切って、骸骨兵やウダイオス自体のトゲ攻撃を受ける。そうして徐々に敵の攻撃を分散させて安定したところで精鋭部隊を一気に進行させてウダイオス本体へ攻撃を加え、最初から最大火力を当てることで短期決戦に持ち込むということらしい。

 

 一度で勝負が決まらなかった場合は精鋭を下げて回復させ、それを何度も何度も倒れるまで波状攻撃するという、ある意味分かりやすい戦法ということみたいだね。

 

 私達はその中堅部隊の真ん中に入って最前線で回復と支援を行うことが主たる仕事だ。

 

「せめて、ウダイオスに一撃ぐらいは入れてみたいけどなぁ」

 

 将来的に私も越えるべき壁がどれほど高く分厚いのか、それをこの手に感じてみたいと思うのはアークスとしては普通の感覚だろうと思う。

 

「くれぐれも突出しすぎませんように」

 

 ちなみに、エルティナはサポートパートナーなので私みたいな脳筋(アークス)を冷静にさせるのも大切な仕事なのだ。

 

「うん、ありがとね、エルティナ。じゃあ、行こうか」

 

 私は巨剣を高く掲げてから、全身に力を込めるように背後に引いて両足を前後に広げて後ろ足にはいつでも爆発させられるほどのフォトンを込めた。

 

 ウダイオスをたたけないのなら、せめて連中への最初の一撃ぐらいもらっても許してもらえるだろう(絶許)。

 

「よし、中堅部隊進軍。戦闘開始だ!」

 

 シャクティさんの号令と同時私は後ろ足に込めたフォトンを爆発させた。一瞬でたたきつけられるほどの風圧を感じつつも、二つ目の足に虚空跳躍(ネクストジャンプ)を込めてその壁を置き去りにし、ようやく気がついたウダイオスとなぜか目が合ってしまってちょっと気まずい思いをしながらも、まるで墓場から起き上がるゾンビのように次々と出現し始めた骸骨兵の数体に舌打ちして、フォトンを利用して直進運動を回転運動に変換することで超高速の巨剣で一気になぎ払った。

 

「これだけ加速してやっと切れるぐらいか。結構しんどいね――おっと、危ない」

 

 灰になった骸骨兵の残骸から真っ黒なトゲが生えて来たので、私は慌てて虚空跳躍(ネクストジャンプ)を発動して一旦上空へ逃れた。

 

「バカヤロウ! 勝手に突っ込むんじゃねぇ!」

 

 私の着地地点に沸き始めた骸骨兵を、怒りのハシャーナさんがなぎ払って、着地した私の脳天にげんこつを落としてきた。

 

「うーん。最初のダメージが味方からもらうなんて思ってなかったなぁ」

 

「今のはお嬢様が悪いです。反省してください」

 

 ハシャーナさんと一緒にやってきたエルティナからも小言をもらってようやく戦闘開始と相成った。

 

 

 

 








ウダイオス戦はメインではないので軽めに流すつもりです。
よろしくお願いします。



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