ゲーム出身の一般アークスが、オラリオでダンジョンアタックするのは無理がある   作:柳沢紀雪

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―VANISH―

 

 結局私の初撃(ファーストアタック)は骸骨兵に阻まれることでウダイオスには届かずに終わったが、少なくとも今の私の全力攻撃であれば驚異度レベル4の対象であっても十分効果的であることが分かったのが朗報と言えるだろうね。

 

「流石に深層のモンスターは生半可な事じゃ傷つけられないわけだ」

 

 私は次から次へと湧いて出てくる骸骨どもを攻守一体(ガードポイント)で弾き飛ばし、エルティナの安全を確保し続ける。

 

「レベル2でそれならよくやってる方よ」

 

 私の隣には同じくエルティナを守るように振る舞うパルヴァさんが、関節の隙間に上手いこと小剣を潜り込ませてバランスを崩し、そのまま魔石を一刺しという、芸術的とも言える鮮やかさで敵を排除していた。

 

 私の巨剣では流石に真似できないことだ。

 

「前方10時方向へ回復を提供します」

 

「おっけー。いつでもいいよ」

 

 私はエルティナの宣言に応じてその先にいる骸骨兵に全力ジャンプからのドロップキックを食らわせた。

 

「ハシャーナさん、一体行きました!」

 

 私のキックを食らった骸骨兵は、その先にいるハシャーナさんに向かって吹き飛んでいき、

 

「またかよ!」

 

 というハシャーナさんの振り向きざまの一閃によって上手いこと魔石が砕かれて灰の小山となる。いい連携と言えるのかどうかはよくわかんないけどね。

 

「レスタ!」

 

 その瞬間にエルティナの手から蒼いクナイが放たれ、空中で停止したところで回復の魔法(テクニック)が展開された。

 

「ありがとよ!」

 

 寸前で骸骨兵の集団に囲まれて四方八方から攻撃を受けてグロッキーだった犬耳の男の人がレスタの光を浴びて体勢を取り戻し、再び手斧を振り回して周辺の骨集団の処理を再開した。

 

「エルティナ。そろそろ支援もお願いね」

 

「承知いたしました。フォローをお願いいたします」

 

 エルティナの支援テクニックであるシフタとデバンドの効果時間は最長で180秒なので気をぬくとすぐに効果が切れてしまいがちだ。もちろん『集中』のテクニックカスタムを施しているのでチャージ時間が短縮されていてしかも効果範囲も2mほど拡張されているので、素早く広範囲に展開可能なのでそれほどの足かせにはならない。

 

 さらには冒険者アビリティである『魔導』が各強化率をさらに+5%、効果範囲も+5m広げてくれる上に、消費PPも1割ほど軽減してくれるというので言うことなしだ。

 

 エルティナの足下から輝く魔法円が出現し、針忍冬(リバレイトタリス)のクナイを四方に投げて順番にシフタとデバンドを展開させていく。

 

「そろそろ頃合いじゃないかな……」

 

 戦闘は殆ど膠着状態。無限湧きする骸骨兵に対して遊軍は殆ど被害を受けずに戦い続けている状態に見える。

 

 私のつぶやきに呼応するように後方から甲高い角笛の音が鳴り響いた。

 

「エルティナ!」

 

「了解」

 

 私はエルティナに短く指示を飛ばし、それに呼応してエルティナは後方から突撃してくる精鋭部隊の頭上にクナイを飛ばして支援のテクニックを展開した。

 

「恩に着るぜ!」「わりぃな」「後でクッキーあげるね」

 

 と次々と過ぎていく精鋭の皆さんからのお礼にいちいち頭を下げてエルティナは道を譲った。

 

 迷うことなく突き進む彼らに今まで戦闘を繰り広げていた中堅部隊の面々はその進路を譲るように、彼らの花道を切り開くように道を作り、精鋭部隊はなんの抵抗も受けることなくウダイオスへと至り着いた。

 

「エルティナ、攻撃隊にザンバースとメギバースを集中的にお願い」

 

「分かりました」

 

 ついに階層主にたどり着いた彼らは裂帛の気炎と共に次々と攻撃を開始した。中堅部隊でも魔剣を持っているものはその後方から積極的にそれをウダイオスに打ち込み、このわずかな間に持てる最大の火力を階層主へと集中させるのだ。

 

「行きます、ザンバース、メギバース」

 

 エルティナは立て続けに二度のテクニックチャージを行い、攻撃隊の頭上に展開されたクナイからは柔らかな風の結界と力強い闇の結界の二つが展開され、その戦力をサポートする。

 

「いいぞ、そのまま押し切れ!」

 

 攻撃隊に向かっていく骸骨兵を押しとどめ粉砕するハシャーナさんはエルティナの支援が途切れた状態であっても気勢を止めずにさらなる裂帛で周囲を奮い立たせる。

 

 風のテクニックの一つであるザンバースはその範囲内の味方が敵に与えたダメージの20%の追加ダメージを発生させ、闇のテクニックの一つであるメギバースを併用することで与えたダメージの25%を吸収し回復に転換することが出来るのだ。

 

 つまり、攻撃隊の火力はエルティナのシフタとザンバースによって爆発的に高められ、さらにデバンドにより防御力が、メギバースにより継戦能力が極限まで強化された状態ということだ。

 

 ぶっちゃけ、これだけやればみんな擬似的にランクアップしたといってもいいんじゃないかな?

 

「いやぁ、これは勝ちでしょ。お風呂入ってきていいですか?」(フラグ)

 

 見ればウダイオスの片腕が落ち、あばら骨の半数近くが崩れ落ちて、その中心に輝く魔石への道がようやく開かれた。後はそこに最後の一撃を加えれば終わる――はずだった。

 

「――――――!!!」

 

 誰もが勝利を確信したところに悪魔はささやく。「まだ、終わりではないよ」と。骸達の王はこの程度で倒れるほど甘い相手ではないと目を細める。

 

 ウダイオスは残された腕を振り上げ、鉄杭を打ち込がごとくそれを荒廃した大地へとたたきつけ存在しないはずの声帯を震わせるようにおぞましい咆吼を上げた。

 

「!!! 総員退避!! 退避だ!!!」

 

 それが誰の叫び声だったか分からない。声にならない咆吼の中で凜と響き渡った指示に多くはすぐに反応してすぐさまきびすを返して、散らされる蜘蛛の子のように、それでも秩序だって転進を開始した。

 

「地震? ダンジョンで?? なんか、こういうの前もあったなぁ」

 

 ウダイオスの叫びは未だに続き、大地の鳴動は収まるどころか勢いは増すばかり、

 

「闇が湧き上がってる」

 

 新たな骸骨兵はすでに生まれていない。無限に湧き上がるはずの兵隊の全てはすでに灰に帰った。

 

 大地に突き刺された骸王の腕からはまるで意思を持っているような、粘度のある闇に覆われ初めて、ついにはその身全てが漆黒に包まれてしまう。

 

「まさか、エルティナのフォトンに反応したってこと? こんなの、どうしろっていうのさ」

 

 前回は私のフォトンに鳴動するようにやつが現れた。だから、今回の私はできる限り力を使わずこの身のままで戦うことに決めていたのだ。

 

『マスター、奇妙です。コードDが発令されておりません』

 

 エルティナの声が脳裏に響き、私は眉をひそめた。

 

『確かにそうだ。じゃあ、あれはダーカーじゃない?』

 

『不明ですが、いつでも戦闘状況に移行できるよう準備をお願いいたします』

 

『分かった』

 

 私は巨剣を一旦腰のマウント部に繋止して武器スロットを起動しいつでもフルクシオタラッサ(アークス装備)を起動できるよう構えた。

 

 闇の塊はついにはウダイオスを完全に包み込み人の形を覆い隠して、あたかも巨大な黒の卵の様相を示し――まるで地中に潜るかのように姿を消した――。

 

「どういうこと? だれか説明して?」

 

 答えるものはいない。誰もが理解を拒んでいて言葉を発することがない。

 

 漆黒の卵が消えた後にはどこへつながっているとも分からないような坑が穿たれていた。

 

 

 

 

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