ゲーム出身の一般アークスが、オラリオでダンジョンアタックするのは無理がある   作:柳沢紀雪

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素材収集の旅へ!

 

 

 結局その後エルティナにも来てもらい、スィデロさんマッチョマンの人を伴ってシャクティさんのところでいろいろ説明をしてもらうことになった。

 

 ちなみに、マッチョマンのヒューマンの(かた)の名前はキズィア・ポノスとの事だった。

 

「なるほど。アビリティ強化魔法の弊害ということか。根深い問題になりそうだな」

 

 中央の一番大きなテントで遠征に関するであろう情報をまとめていたシャクティさんは、本当に頭が痛そうにこめかみを指先でさすっている。後で目薬を差し入れたほうが良さそうだね。

 

「今まではこういう問題は起こってなかったんですか? アビリティを強化する魔法なんてそんなに珍しくもないって思ってましたけど」

 

 能力強化魔法なんて、RPGでは基本的な支援魔法だし、こっちでもそうだろうとかってに思ってたけど、違うのかな?

 

「そうだな。ありきたりとは言えないが、第一級冒険者と呼ばれる者の多くは自己のアビリティを強化するスキルなり魔法を習得していることはよくあるだろう」

 

「ですよね?」

 

 シャクティさんの答えに私は小首をかしげた。だからこそ、対策なんていくらでもあるだろうから、それほど根深いか? って思うんだけど。

 

「お嬢様、自己を強化することと他者から強化を受けることとでは根本的に異なると思われます」

 

「ん? どういうこと?」

 

 エルティナが私を見上げてそう伝えてくるが、私はいまいち把握し切れていない。私はあまり頭が良くないから、ちゃんと説明してくれないと理解できないのだ。

 

一般小人族(リトル・ノーマル)の言うとおりだ。自分自身の能力なら自己解決できるが、他者から与えられる能力を事前に対策することは困難と言える」

 

「うーん。つまり……自分の料理なら味の調整は自由に出来るけど、他人の料理になると味の調整がすっごい難しいってことですかね?」(説明下手)

 

「概ねその通りと思われます」

 

 なんとなく分かった気がする。

 

「その問題については一旦持ち帰って検討しよう。それで、鍛冶師としては早急に資材の確保が必要ということだな?」

 

「ああ、今の分だけなら……最速記録の片割れ(ベターハーフ)の分を除けばだな……ギリギリ何とかなるみたいだが。次はねぇ」

 

「でも、深層に入ってからが本番なんですよね? やばくないですか?」

 

「ああ、ヤバイ」

 

「地上へ補給要員を向かわせることが最も確実と思われます」

 

 エルティナの言うことが一番確実なんだろうけど、そうなるとかなりの足止めを喰らうことになるだろうから、ちょっと効率的ではない気がするね。

 

『ワカヒルメ様経由で必要物資を用意してもらって、同時にダンジョンを降りてもらったらかなり効率いいのかな?』

 

 今のままだと地上に人をやって、必要な物資を集めてもう一度戻ってきてもらう必要があるけど、同時に地上でも作業をして貰って可能な限りこっちに来てもらえたのなら、上手くいけば半分ぐらいの時間ですむんじゃないかなと思う。

 

『それは、推奨しかねます』

 

『私もそれは承服しかねるかな』

 

 話しをお聞きになっていたワカヒルメ様も間髪入れずに通信で答えを返してくる。

 

『分かってますけど……なんか、申し訳なくないですか?』

 

 エルティナが反対するのはよく分かるし、ワカヒルメ様も「ダメ」とおっしゃることは理解できる。それでもやっぱり何か出来ることを探さないとと思う。

 

「いや、研磨剤とアダマンタイトならダンジョン内で手に入れられるはずだ」

 

「ああ。問題は採集にどの程度の人員を割けるかだな」

 

 キズィアさんとシャクティさんはそう言って難しい顔をするばかりだ。

 

「うーん? つまり、足りないものは拾ってくればいいってことですか? じゃあ、私行きますよ? エルティナもいいよね?」

 

「お嬢様に従います」

 

「ちなみに、場所は分かりますか?」

 

「ああ。俺は知らねぇが……キズィア(お前)なら分かるんじゃねぇか?」

 

「団長に連れてこられたときに何度かな。確か、この階層にも少しはあるはずだ」

 

 お二人の団長と言えば、椿さんのことかな? こんな深いところまで来られるってすごいな。

 

ガネーシャファミリア(うち)からも手空きの者を何人か回そう。そうだな。昼食後にもう一度このテントに集合して貰えるか?」

 

「分かりました」

 

 状況はあまり良くないんだろうけど、こうして未知の世界を探索する機会を得られたわけだから、できる限り楽しんでいこう。

 

 

◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇

 

 

 さてさて、ガネーシャファミリアの食事班の皆様方の素晴らしいお料理に舌鼓を打ち、大満足で膨らんだお腹をさすっていると、早めに終わらせていたスィデロさんがキズィアさんと一緒に中央テントに入っていく様子をうかがうことが出来た。

 

「さてと、私達も行こうか、エルティナ」

 

「承知いたしました」

 

 食器の片付けはガネーシャファミリアの人にお願いして、私は一応そばに突き刺していた巨剣を引っこ抜いて腰のマウント部に繋止すると小走りでシャクティさんのテントに入っていった。

 

「お疲れ様です、シャクティさん」

 

 そう声をかけながらテントに入るとすでにシャクティさんとスィデロさんとキズィアさんがすでに打ち合わせのようなものをしているようだった。

 

「ああ、来たか……これで全員だな」

 

 シャクティさんはそう言ってキズィアさんから受け取った剣を腰の鞘に刺して背筋を伸ばした。

 

「よろしくお願いいたします」

 

 エルティナは集まった全員に頭を下げて挨拶した。そんなに改まる必要はないと思うんだけどね。仲間なんだし。

 

「さて、今回の目的を確認する」

 

 そう言ってシャクティさんは机に地図を広げて全員に目配りをした。

 

 私とエルティナも地図を見ようとしたが、少し机が高いところにあったので足場になりそうなものをキョロキョロと探していると、シャクティさんが「ああ、すまない」と言って、地図を床のカーペットの上に移動してくれた。ありがたい。

 

「最優先は研磨剤の採取、第二優先はアダマンタイトの採掘で問題ないか?」

 

 みんな、何事もなかったかのように床に座ってミーティングを始めた。

 

「ちなみに、シャクティさんも一緒ってことでいいんですか?」

 

 話の腰を折るようで申し訳なかったが、ガネーシャファミリアからの参加者がシャクティさんしかいないのがちょっと気になった。

 

「ああ、候補地点は何カ所かあったのでな。私以外も2チームほど編成している」

 

「そういうことですか。じゃあ、安心ですね」

 

 ちゃんと保険は打っているということだ。堅実なガネーシャファミリアらしい、いい作戦だと思う(偉そう)。

 

「エルティナ、地図はちゃんと覚えられた?」

 

「すでに完了しております、お嬢様」

 

 エルティナに任せておけば、手書きと思われる地図をデータベースとして記録して、それと実際の行程で作成されたマップと照らし合わせ、なんなら修正も可能だからね。道中の案内は基本的にエルティナに任せておけばいいのだ。

 

「うん、ありがとうエルティナ。それじゃ、早速出発しますか?」

 

「おう、こっちはいつもでも行けるぜ」

 

 スィデロさんはそう言って、ディオクレスディガーを肩において鼻を鳴らした。

 

「あまり調子に乗るなよスィデロ。テメェがまだレベル1だって事を忘れるな」

 

「うるせぇんだよ、お前は」

 

 威勢のいいスィデロさんをギズィアさんはいさめるように上から頭を押さえ込むみたいにしている。スィデロさんは私よりは背が高いけど、ドワーフらしく成人男性としては背が低い方で、それに対してキズィアさんは身長2mを超える大男だから、まるで子供みたいに扱われていてちょっと面白い。

 

「そういえば、キズィアさんはレベルはどれぐらいなんですか?」」

 

 一応、同行者の戦力は把握しておきたいので聞いておくことにした。スィデロさんはレベル1なので、正直戦力として数えるのは難しいだろう。エルティナの支援魔法で防御を固めてもらう形になるかなってところだ。

 

「俺か? おれはレベル3だ。お前らは確かレベル2だったな?」

 

「そうですね。レベル、負けちゃってますね」

 

 つい最近レベル2になったばかりとは言え、アリーゼさん達と大変な冒険をしたにもかかわらずまともに経験値を貰えなかったポンコツ幼女の私だ。レベルの壁を越えることがどれほど難しいのかを最近になってようやく分かってきたところなので、鍛冶師さんでありながら二回もランクアップしたことは手放しで賞賛すべき事だろう。

 

「まあ、気にすんな。戦闘畑のお前らにならすぐにでも追い抜かされるだろうさ」

 

「そうだといいんですけどね。スィデロさんも頑張りましょうね」

 

「お、おう……」

 

 見た目に寄らず、ギズィアさんは結構気遣いの出来るいい人みたいだ。やっぱり、筋肉は心を豊かにするってことだね(意味不明)。

 

「話しはすんだか? なら出発しよう。ここは安全階層と言っても油断は禁物だ。いいな?」

 

「了解です。フォーメーションはエルティナが真ん中で私がその側に居るとして、シャクティさんが前でいいですか?」

 

「問題ない」

 

「じゃあ、俺とスィデロが後ろだな」

 

 一応、二人は鍛冶師で非戦闘員だから後方に待機してもらうのは正しいけど、この少数だとむしろ殿になって危険度は高い気もする。

 

「あまり無理はするなよ」

 

 シャクティさんもそれを承知しているのだろう。ここはレベル3のキズィアさんを信じることにしよう。

 

「私はなるべくシャクティさんとエルティナの間にいるようにしますね」

 

 もしも前後を挟まれたら、エルティナに殿のサポートをして貰って、私とシャクティさんで前方を素早く処理して援護に向かうって感じになるか。

 頑張れ、スィデロさん。ランクアップのチャンスだよ。

 

「あ、そうだ、シャクティさん。エルティナはこう見えて素材の探索とか収集がすごく得意なので、いろいろ任せてくださいね。お願いね、エルティナ」

 

「そうなのか。意外に万能なのだな」

 

「できうる限りのサポートをいたします」

 

 サポートパートナーにとって素材収集は大切な仕事の一つだ。ゲームでは素材収集系のクライアントオーダーでお世話になったが、リアルではオーダーによらずいろいろな素材の収集を独自に依頼することも出来て、大変助けてもらった。

 

 ひょっとしたら、私がエルティナに勝てる分野って戦闘ぐらいしかないんじゃないかって時々不安になったりもするのだ(概ね真実)。

 

「私も採掘ぐらいは出来るかな。ギャザリング用のピッケルとかあるし」

 

 私はフォトンで構成されたピッケルを取り出してちょっと素振りをして見せた。こいつはアークス御用達の素材採取用具で、なんなら東京のアスファルト叩くだけでワサビとか大豆を掘り出すことができるというちょっと意味不明な優れものだ。

 

 多分だけど、そこから掘り出せる可能性のある物をフォトンで具現化しているんじゃないかって思う。だから、研磨剤とかアダマンタイトが採集出来る場所なら、叩いただけでそれを掘り出せるんじゃないかって思う。

 

「そんなちっちぇーのでまともに掘れるのかよ」

 

 スィデロさんは子供()サイズのピッケルを見て笑うが、その瞳を驚愕に染めて見せようじゃないか。

 

 ついでにギャザリング用の釣り竿なら流砂や溶岩から魚や貝がとれるのでそれもいっぺん見せてやりたいと思う。きっと、目ん玉ひんむくに違いないね!

 

 

 

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