ゲーム出身の一般アークスが、オラリオでダンジョンアタックするのは無理がある   作:柳沢紀雪

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やっと地表降下です。


いよいよ探索開始だ!

 昨日はトマトソースのパスタを作って食べて、秘蔵のワインをすこしだけ飲んでいい気分だった。

 

 割とがっつり眠って、起きてシャワーを浴びて歯を磨き、任務用のセットウェアに身を包み、再度装備品をエルティナとお互いに確認しあって、テレプールを起動しいよいよ地表降下とあいなる。

 

「サバイバルセットは、ちゃんと持ってるね?」

 

 私は本当の最後の確認をエルティナに行う。うっとうしいかも知れないが、大切なことだ。

 

「はい、簡易拠点セットを支給されています」

 

「おー、シェルター込みでキッチン、シャワー、ベッド付きの高級品だね。よくもらえたなぁ」

 

 普通の任務なら、せいぜい全天候型の寝袋とサバイバルセットが支給される程度だが、簡易拠点セットとなると、惑星に長期滞在を前提としたものなので、かなり頑丈なカプセル型のシェルターが展開でき、内装もワンルームマンションぐらいのグレードはある。

 

「テレパイプは?」

 

「最大数所持しています」

 

「メイト三種はOK?」

 

「完璧です」

 

「アトマイザーは問題なし?」

 

「正常稼働を確認しました」

 

「水、食料」

 

「一週間分を所持しています」

 

「OKだね。じゃ、行こうか」

 

 そう言って私はエルティナに先んじて、テレプールに向かってジャンプして、空中で縦回転と横回転をいい感じに組み合わせたスタイリッシュ入水(オープニングとエンディングでやってたあれ)を決めて、転移後はしっかりと三点着地を決めて大成功だ。

 

 

◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇

 

 

 私に続いてエルティナも転移完了して、キャンプシップとのリンクも問題なしのようだ。キャンプシップ自体は極軌道を取っているので、惑星の反対側にあると通信が途切れてしまいそうだが、フォトン通信は惑星程度の障害物なら余裕で透過するので、常時直接通信が可能である。

 

「念のためテレパイプ投げてみる?」

 

 そう提案してみたが、

 

「そこまでは必要ないでしょう」

 

 と言われた。エルティナがそう言うのなら、それでいいのだろう。

 

 まだ、地表データは完璧には取得できていないが、おおざっぱに自分たちがいる場所を確認することは可能だ。

 

「うーん、見事に何もないね。日差しはちょっと弱いか。空気がなんだかほこりっぽいのかな? あんまり居心地がいいとはいえないね」

 

 割と広めの荒野で、宇宙空間からはほとんどないもないように見えたが、地表に降りてみると雑草の塊みたいな背の低い茂みが点在しているようだ。動物の気配はない。

 

「大気に有害な物質は含まれていない、あるいは許容範囲内との結果が出ましたので、生命維持装置のレベルを通常モードに戻します」

 

アークスの生命維持装置は過酷な惑星環境下でも自由に行動できるよう、かなり強力なものとなっている。具体的には極寒の凍土でも水着で行動できたり、灼熱の火山地帯でも着ぐるみで行動できたり、溶岩につけ込まれてもちょっと痛い程度で活動自体は可能だったりする。

 

「ありがとエルティナ。それじゃ、どこからいこうか」

 

「まずは周辺の探索をいたしましょう。動く物が生物か非生物かを確認する程度で今月のノルマは終了と判断しても良いでしょう」

 

「なんか、緩いね」

 

「もとよりそのような任務ですので」

 

「そっか。じゃあ、始めようか」

 

 と、ガンスラを起動してから、いったんは腰にマウントして、動体反応のある場所を目指した。

 

 それが視界に多少映る程度まで接近し、いったん姿勢を低くして立ち止まった。周辺には隠れるところも少ないので、相手が警戒していたら見つかってしまうだろう。

 

「うーん。トカゲが二足歩行で歩いてるっていうのかな?」

 

 まだ相手の肉眼では確認できない程度の距離で、HUDに表示された対象を拡大して観察してみると、成人男性サイズのトカゲが二本足で立って歩行していて、しかも手には明らかに人工物と思える武器(剣)が握られていて、肩や腰には最低限身体を守るためなのか、金属製のアーマーらしきものまで見える。背丈は2mを越えているだろうか、ゲッテムハルトさんと比べても見劣りしないどころか、若干巨大に見えてしまうぐらいだ。

 

 知性を感じられはするが、友好的かどうかは分からない。

 

「龍族に近いのでしょうか?」

 

 龍族でも友好的な個体と攻撃的な個体の両方が存在しているので何ともいえない。

 

「いったん話してみる?」

 

 ともかく対話を試みなければ判断が付かない。攻撃を受けても、リバレイトシリーズのユニットなら、数発受けても無傷でいられるだろうという確証もある。

 

「いつでも攻撃できるようにしてください」

 

「それは大丈夫。エルティナもいつでも援護できる準備だけはしておいてね」

 

 といって、私はエルティナを自分の背後に隠すように接近し、まずは武器をしまった状態で相手に視認されるぐらいまでゆっくりと近づいた。

 

「――――!」

 

 足音も隠していないので、割とすぐに発見され、一度立ち止まる。歩くトカゲは手に持つ武器を明らかにこちらに向けてかなりの警戒をしているように思える。もう一歩私が歩み寄ると、後ずさるのではなく剣を持つ手の方にゆっくりと横移動しているようだ。

 何というか、戦い慣れている様子が見て取れて、それだけでも知性があるように思えた。

 

(どうやって緊張を解くかだけど……そもそも言葉が通じるのかな?)

 

 相手がダーカーなら容赦する必要は無いが、HUDに表示されるのはダーカー因子反応確認できずだったので、慎重にならざるを得ない。

 

「こんにちは、ちょっと話を聞いて貰いたいんですけど!!」

 

 と、解り合うにはまずは言葉だと私は思い、ちょっと大きめの声で、たぶん通じないだろうなと思いつつ挨拶を投げかけてみた。

 

「!!!」

 

 しまった。ちょっと声が大きすぎたか。どうも、威嚇されたと思ったらしい。歩くトカゲはいっそう警戒感を増して、今にも襲いかかってきそうだ。というか、襲いかかってきた。

 

「エルティナは手を出さないでね」

 

 私の背後で気配を消しているエルティナに一応そう言っておいて、私はすぐにガンスラ(フルクシオタラッサ)を腰から抜いて、頭上からかなりの速度で襲いかかってくる金属の刃に滑り込ませ、いったんははじき返した。

 

 自分に比べて圧倒的に矮小な相手に力負けするとは思わなかったのだろう。勢いに逆らわず後ずさった歩くトカゲ――リザードマンは、自分の剣と私の剣とを見比べて困惑したような様子だった。

 

(まあ、気持ちは分かるよ)

 

 たまに自分でも、客観視して引くことがあるからね。

 

「――――!!」

 

 相変わらずリザードマンの口からは威嚇のような音が漏れ聞こえる。あるいは何らかの言語のように思えたので、エルティナに言語の解説システムを最大で相手に向けておくよう伝え、そのまま戦闘続行と言うことにした。この星に来て初めての戦闘だし、ラスターについては丸一日訓練でならしてはいるが、まだまだ身体になじんでいない感があるので、ちょうどいい運動になりそうだ。

 

 それに、戦いながらも致命傷を負わないとなれば、こっちには危害を加える意思がないことを分かってもらえるかも知れない。

 

「うーん、あなた、強いね。というか、戦いながら強くなってる。チートかな?」

 

「――――、――――!」

 

 何となく声が言葉になりつつあるような気がするが、それが意味をなすには至っていないようだ。

 

「もうちょっとか、じゃあ、今度はこっちから行くよ?」

 

 と、PAフレシェットのムーブアーツで一気に接近し、数発の斬撃を放つ。ちなみに、途中でモードを訓練状態に切り替えたので、斬撃は相手に対してフォトンによる保護がかかり、多少の衝撃を感じる程度に緩和されている(とても便利)。

 

「?? ――!?」

 

「不思議でしょう? だけど、これで安心して戦えるから。もっと打ち合おうよ!」

 

 ああ、やっぱり私もアークスだと心から感じる。互いの命を奪う殺し合いは嫌いだが、純粋に力を競い合う戦闘は、心をクリアにさせてくれる。

 

 リザードマンは張り付いて斬撃を連発する私をうっとうしく思ったのか、少し大ぶりの攻撃を繰り出しつつ後退し、飛び上がって宙返りをしてそこそこの距離を取った。

 

「私も、ちょっとは近接できるようになったね」

 

 アークスになった当初は近接戦闘なってクソ雑魚ナメクジだったが、この数年で多少は度胸が付いて、今は並程度にはこなせるようになった。

 

「だけど、ラスターは遠距離もいけるんだよね、これが」

 

 と、相手に切っ先を向けてPAスラッグスキャッターのステイアーツを発動させ、散弾状のフォトンの塊を打ち込んで、反動を利用して私も少し距離を開く。

 

 クリーンヒットするかと思ったが、弾着寸前に手持ちの武器を盾代わりにしてさらに後方に飛び退くことで衝撃を逃がしたようだ。かなり、理性的で冷静な判断ができる御仁のようだ。

 

(強い……というよりは、訓練された動きだね、あれは。ナメプしてたら足下掬われるのはこっちか)

 

「……で……る、のか?」

 

「ん? 言葉が……あと一息かな?」

 

 私はエルティナを横目でちらりと見るが、エルティナはまだ首を横に振るばかりだ。会話するには至っていないと言うことか。

 

「んじゃ、もうちょっと続行って言うことで」

 

 リザードマンの御仁も私が遠距離攻撃ができることをしっかりと理解したようで、小刻みに左右にステップ行動をすることで射線を定めさせないようにしているらしい。賢い。

 

 感心していると、いきなりブースターをふかしたように私の方に突進してきた。足の動きに気を取られていて、しっぽで地面を蹴る予備動作を見過ごしていたようだ。

 

「龍族でもこう言うのあったな。懐かしい」

 

 と、まっすぐと刺突してくる切っ先に狙いをつけて、PAフレシェットのステイアーツを繰り出し、発動と同時に発生するガードポイントを利用して御仁の高速刺突攻撃のダメージをキャンセルしつつ、その肩口に剣先突き立てた。訓練モードなので、直接的な負傷は与えなかったが、それでも強烈な痛みが脳に直接たたき込まれたことだろう。

 

「アークスのダメージキャンセルは結構理不尽だと思うけど、これが私達の戦い方だからね」

 

 ぶっちゃけ、小惑星ぐらい簡単に壊してしまうような敵ばかりを相手にしてきたから、これぐらい理不尽なダメージキャンセルがないととうてい生き残ることはできなかったと言うことだ。

 

 防御を捨てて攻撃に全フリして、ステップ回避やジャストガードなどの、攻撃が当たってもダメージが入らない可能性を強制的に発生させるのがフォトンを扱う者のやることだ。

 

「ぐ……うぅ……」

 

 負傷していないにもかかわらず痛みだけが発生していることに思考が追いついていないのだろう。身体が動かずに膝をついているにもかかわらず武器を取り落とさない気概は、まさしく武人のそれに違いない。

 

「勝負ありですね。私達はあなたたちと戦うためにここに来たのじゃなくて、交流するために来ました。話をしませんか?」

 

 私はいったん武器を腰に納めて手を差し出した。本当なら頭上から手をさしのべるのがかっこいいのだが、なにぶん背丈が違いすぎるので、御仁がうずくまっているにもかかわらず、私の方が下から手を伸ばすようになってしまったのが悔しい。

 

「戦うだと? 遊んでいたのだろう?」

 

 今度ははっきりと言葉が理解できた。私はエルティナをちらりと見て、エルティナがしっかりとうなずいたことをはっきりと認識し、ようやく笑みを浮かべることができた。

 

「戦うなら楽しくです。殺し合いはゴメンですよ」

 

「次は負けぬ!」

 

 リザードマンの御仁はずいぶん負けず嫌いのようだった。

 

 

 

 

 





いきなり重要そうな人物と遭遇。

ご都合主義的ですが、なるべくストーリーを進めたいので、ちょっと強引に出会わせました。すみません。

エルティナは主人公が戦っている間はずっと言語解析をしていました。お疲れ様でした。

惑星探査編以降で、各章の時短編(あらすじ)は必要ですか?

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  • すでにある分も含めていらない
  • どちらでもいい
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