ゲーム出身の一般アークスが、オラリオでダンジョンアタックするのは無理がある   作:柳沢紀雪

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宴会

 

50階層は安全階層になっていて、だだっ広い森林の一部に盛り上がった台地があって、その側に51階層への入り口がある。

 

その台地のを利用してテントを立てて、簡易拠点を立てることになった。

一応、私達先行部隊が安全を確保してから、それまで48階層に待機してもらっていたスィデロさん達支援部隊にも入ってもらって、全員の50階層到達と相成ったのだ。

 

最初は皆、実感がなかったのか、粛々と作業をしていたが、そのうち自分たちは試練に打ち勝ったのだという感情が波のように広がっていき、ついには大歓声となってシャクティさんに叱られていた。別に今日ぐらいはゆるしてあげてもいいと思うんだけどね。

 

私とエルティナも支給された子供用テントをさっさと組み立てて、その日は疲れたのですぐに眠ってしまった。朝になって聞くところによると、殆どの人は倒れ込むように眠ってしまって、昨晩は静かなものだったとのこと。

 

まあ、それでも完全に安全というわけではなく、何人かは歩哨に立ってくれていたらしいけどね。本当にご苦労様でした。

 

 

その日はアミッドさんは相変わらず簡易診療所を建てようとしていたが、それはシャクティさんに止められて、とにかく一日休むように厳命されていた。当然だよね。

 

私は、炊飯係に交じって夜の宴会の仕込みを手伝っていたので、少しだけ忙しかったけど、久しぶりにがっつりお料理ができて充実していたね。私も休めと言われたけど、私の休暇の使い方がこれだと言ったら一応納得して貰えた。お料理は心を整える最高の儀式なのだ。

 

前世のOL時代でも、なにか嫌なことがあったときは、ちょっと高価な食材を使ってお料理をして心を癒やしていたのもある。

 

あと、ガネーシャファミリアの料理人のスパイス技術をちょとぐらい盗みたかったというのもあるよ。ちょっとだけね。

 

宴会は大きな焚き火の周りをみんなが取り囲む形になり、ござを敷いて床に座り、色とりどりの料理が運び込まれてくる。

 

宴会が始まる前に、飲み物が全員に配られ、シャクティさんの訓示と労いのスピーチと共に乾杯となり、そこからは無礼講ということになる。私だけ果物のジュースだったけど、美味しいからゆるしてあげた。(偉そう)

 

「アミッドさん、この鶏肉は私が焼いたんですよ」

 

 私は、隣に座ってもらったアミッドさんに鶏モモ肉のローストを切り分けた。ガネーシャ・ファミリアはスパイスをふんだんに使う料理が盛んなようなので、いろいろと挑戦させてもらったのだ。ヨーグルトに漬け込む「タンドリー」という手法を教えてもらい、初めて作ったけれど、それなりに美味しくできたと思う。

 

「これは素晴らしいですね。ダンジョンでこれほどの料理が口にできるとは思いませんでした」

 

「よかった」

 

 作った料理を「美味しい」と言ってくれる人がいるから、料理はやめられないんだ。自分のためだけじゃなく、誰かに食べてほしいからこそ、楽しいと思える。

 

「お嬢様、お野菜もどうぞ」

 

 エルティナが蒸し野菜のサラダを勧めてくれた。地上であらかじめ乾燥させた野菜を蒸気で戻したものなので、鮮度こそないが、その分味が凝縮されている感じがする。

 

「ありがとう。こっちも美味しいね」

 

「お肉の付け合わせには最適ですね」

 

 アミッドさんもエルティナからサラダをもらい、タンドリーチキンと一緒に食べている。主食はパンしかないけれど、これは絶対にご飯が欲しくなるところだ。

 

『ねえ、ワカヒルメ様。朝廷にお米ってありました?』

 

『米かぁ。銀シャリにはなかなかありつけなかったけど、玄米とか雑穀米はよく食べてたなぁ。懐かしい……』

 

『そうなんですね。オラリオでも流通するといいですね』

 

『それなぁ……まあ、高そうだけどね』

 

『稼ぎましょう』

 

『そうだね。頑張ろう』

 

そういえば、食事中に漏れ聞こえてきた話をまとめると、私がアムス・クヴァリスと戦っていた様子は、猛吹雪のせいでほとんど誰にも見られていなかったらしい。

 あの時は全員が混乱の極致にあり、誰が戦っているのか全く把握できていなかったようだ。せいぜい、私が最後に放った「エンハンスシュート」の光が視界をかすめた程度だったのだろう。

 その一撃も「強力な魔剣を隠し持っていた」と認識されていたようで、私についてはあまり話題にならずに済んで一安心だ。むしろ、アミッドさんの聖女のごとき活躍がすべてをいい感じに塗りつぶしてくれたおかげで、私は影に潜むことができたわけだね。

 

 なお、その「魔剣」をどこで手に入れたのかと聞かれもしたが、「両親の形見です」と適当に答えてお茶を濁しておいた。聞いた方がちょっと申し訳なさそうな顔をしていたけれど……まあ、おかげでこれ以上根掘り葉掘り聞かれることもないだろう。

 

 宴会が深夜の酒盛りへと移行しそうな頃、「子供はもう寝る時間だ」とシャクティさんとアミッドさんによってテントに強制送還されてしまってちょっと残念。私も徹夜で騒ぎたかったんだけどね。

 

「うーん。そろそろ、この子供扱いを何とかしたいね」

 

「諦めた方がよろしいかと思います」

 

 エルティナに即答されてしまった。まあ、仕方ないか。

 

「それよりもエルティナ、これ、どう思う? サンプルに一輪だけ摘んできたんだけど」

 

 私は、アミッドさんの魔法によって咲いた花をエルティナに見せた。

 

「――解析完了しました。フォトンと魔力が融合し、物質化したものと推測されます」

 

「だよね。もしこれが高純度で安定して保管できるなら、ひょっとしたらダーカーに対する切り札になるかもしれないね」

 

 私は、この花が『エフィメラ』に似ていると思った。エフィメラはゲームの知識でしか知らないし、アークスの公開情報にも詳細はないから検証はできないけれど。

 私の記憶が正しければ、エフィメラとはオメガ世界において『深遠なる闇』を活用したエネルギー媒体だ。だからこそ、その力を使えばダーカー因子に汚染されたように正気を失っていく。

 けれど、この花は『深遠なる闇』ではなく、アミッドさんの純粋な願いによって生じた正常なフォトンで発現している。だったら、これを媒体とした力は、逆にダーカー因子を浄化する力を持つかもしれないってわけだね。

 

「……うん、そろそろかなと思ったけど、やっぱり消えちゃったね」

 

 私の手の中で、光の花は粉雪のようにはかなく消え去った。この様子だと、49階層の花畑もすでに消えてしまっているだろう。一応スクショは撮っておいたけれど、もう少しポーズや画角を工夫したかったな。流石にそんな余裕はなかったけれど。

 

 翌朝、私たちはテント村の撤収を開始した。49階層のモンスター集団がリポップする前に、地上を目指して進んでいく。もちろん、階層主であるウダイオスが再出現するのはまだまだ先の話なので、道中は落ち着いたものだった。

 

 ともかく、私たちは無事に地上へと帰還した。ガネーシャ・ファミリアは誰一人として犠牲者を出すことなく、50階層到達という偉業を成し遂げたのだった。

 

 

 

 

 

ベルディナの今後の二つ名は?

  • 猛猫(キティホーク)
  • 九尾の猫(ナインライブズ)
  • 猛女(おうじょ)
  • 征女(アレクサンドラ
  • 雷霆(ハーキュリア)
  • 救世(セイヴィア)
  • 天姫命(アメノヒメノミコト)
  • 聖誕(キティラ)
  • 守護者(タロス)
  • 勝者(イルニナ)
  • 代行者(ディミオス)
  • 神越(ラグナロク)
  • 来生(タターガタ)
  • 黄金宮(ヴィンゴルヴ)
  • 戦乙女(ワルキューレ)
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