ゲーム出身の一般アークスが、オラリオでダンジョンアタックするのは無理がある   作:柳沢紀雪

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10,000UAありがとうございました!


話を聞こう

その場でいくつか話をしているうちに翻訳もこなれてきて、ずいぶんとなめらかに会話できるようになった。

 

「なるほど。元々この星にも私達みたいな種族がたくさん住んでいたんですね」

 

「遠い過去と聞いている」

 

「どれぐらいの過去なんだろう。1000年とか?」

 

「私が生まれる遙か昔であるとしかいえんな」

 

「なにか、記録とかあるんですか?」

 

「私に戦うすべを教えた者がいろいろそろえていたようだが、私には理解できなかった」

 

 立ち話は危険と言うことで、御仁が普段ねぐらにしている場所に案内してくれるらしい。

 

(安心したところを仲間全員で襲撃とか……ないな……敵意は感じないし)

 

 エルティナはまだ警戒しているようだが、私はすっかりと武器を納めて御仁の隣を歩く。

 

「そういえば、まだ名前を聞いていませんでした。教えていただけますか? 私はベルディナで、こっちはエルティナ。私のサポートをしてくれるパートナーです」

 

 パートナーといっても伴侶という意味じゃないからね、念のため。というか、私、こんななりで結婚できるんだろうか。前世のOLだった頃は彼氏無し歴=年齢という惨憺たる結果だったが(親戚の家を転々としていたので、恋愛する余裕がなかったのだ)、今世でも希望が持てずにいる。

 

まあ、そんなことはどうでもいい!

 

「名前……名前か。昔はあったような気がするが、今はないな」

 

「あー、そういうことですか」

 

 たぶん、この御仁は他人というのが、件の戦うすべを教えてくれた人(?)以外にいなかったから、名前を必要としない状況が長かったのだろう。一応、名前については理解しているみたいで助かった。それすら分からなかったら、教えられる自信なんて絶対にないぞ。サリバン先生をお連れしろ!

 

「じゃあ、今はなんて呼べばいいですか?」

 

「思いつかん。好きに呼べ」

 

「じゃあ、リザードマンだから……リザさんで」

 

「マスター、それはあまりにも……」

 

 エルティナ、うるさい。こういうのは分かりやすいのが一番なんだ。

 

「リザ……か、いいだろう」

 

「ほら、いいって」

 

「お二人がそれでよいのでしたら」

 

 エルティナも感情豊かになったね。私はうれしいよ。

 

 

◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇

 

 

 惑星に降りたって初めて出会ったのが、言葉を話すトカゲ人間のリザさんだったのは天の配剤のような、何らかの意思が働いたような気がするが、シオンとかルーサーとかに慣れてしまっている私には問題にはならない。たぶん、何かあるのだろう。

 

 あの荒野で立ち話も何なので、歩きながら話をしつつ、2時間ぐらい歩いたところでリザさんの言うねぐらにたどり着いた。

 

「ここは、ねぐらと言うよりはちょっとした集落だね」

 

「リザ様の仲間がおられるのですか」

 

「私一人だ」

 

「そうなんですね。じゃあ、この家っぽいのもリザさんが作ったんですか?」

 

「いや、私が意思を持つ頃にはここにあった。おそらく私に戦うすべを教えた者が作ったと思っている」

 

「一人で?」

 

「知らぬ」

 

「うーん」

 

 家っぽいと言っても、日本で言う竪穴式住居がちょっと立派になった感じのもので、たき火の炉の跡地も見えるから、あんまり文化的な生活はしていなかったんじゃないかなと思った。

 

「こういうところは他にあるんですか?」

 

「知らん。ここより動いたことがない」

 

「そうなんですね」

 

 私はお上りさんよろしく周りを見回しながら、エルティナに通信を開いた。

 

『どう? なにか動くものは確認できる?』

 

『周辺には存在しません』

 

『そう、ありがとう』

 

 どうやら、不意打ちはないようだ。まあ、別に疑っちゃいないけどさ、念のためというか。

 

「あそこが私が普段いる場所だ」

 

 と、他の住居よりも頑丈な金属の板が張ってある家があった。

 

「立派な場所ですね。リザさんが補強したんですか?」

 

「そうだ」

 

「やっぱり、ここも襲われるんですか?」

 

「このあたりは刈り尽くしてしまったのでな。最近は静かなものだ」

 

「おー、スゴい」

 

 やっぱり、外敵はいるんだなぁと思いつつ、私はリザさんに続いて家の中に入っていった。

 

「エルティナもおいで」

 

 と、少し離れたところでいろいろ様子を探っているエルティナをおいでおいでして呼び寄せて、割としっかりとしたちょうつがいの扉を閉めて閂状の内鍵をかけた。

 

「お邪魔します」

 

「??? お前はなんの邪魔をするのだ?」

 

「あー、そういう挨拶なんです」

 

「ふむ、そうか。よく分からん」

 

 家の中を見回すと、椅子があって机があって、剣とアーマーを置いておくラックがあった。結構コンパクトにまとまっていて、狭いながらも機能的にできているようだ。

 

「キレイな家ですね。その椅子に座ってもいいですか?」

 

「好きにしろ」

 

「ありがとうございます。エルティナもおいで、私の膝に座っていいから」

 

「……分かりました」

 

 エルティナは一瞬ちょっと考える仕草をして周りを見回すも、自分が座れそうな場所がないと把握したのか、私の前に来て向こうを向いた。

 

「それじゃ、持ち上げるね」

 

 といって、私はエルティナの小さな身体を持ち上げて優しく膝の上にのせてあげた。

 

「そういえば、キッチンとか無いんですね。食事はどうされてるんですか?」

 

「食事? ああ、補給のことか。これを飲めばよい」

 

 と、別の保管棚から一粒の結晶を取り出して見せてもらった。

 

「石……宝石……でもないのか」

 

 私は小さなそれを貸してもらって、四方八方から観察してみた。濃い青色の結晶で石のように硬く、光沢もあり、表面はつるつるしている。しかし、鉱石にしてはちょっと密度が変な感じもするのだ。

 

「どう? エルティナ、何か分かる?」

 

 サポートパートナーは鉱物の解析についてはエキスパート級なので、いったんそれをエルティナに渡すことにした。エルティナは小さな両手でそれを受け取り、自分の顔ほどもあるものをじっと見つめた。

 

「詳細は不明です。しかし、何らかのエネルギーが結晶化したものと思われますね。フォトンとは違うなにかです。フォトンドロップやフォトンクリスタルと組成が似ていると思われますが、中身は全くの別物といえるでしょう」

 

「私に戦うすべを教えた者は、それを魔石と呼んでいた」

 

「魔石、ですか。なんか、それっぽいですね」

 

 ファンタジーにありがちな換金アイテムだ。たいていは敵を倒したらドロップしたり、宝箱に入っていたりしそうなやつ。

 

「で、これを、食べるんですか?」

 

「うむ。それを飲み込めばまたしばらくは動くことができる」

 

「おー、便利? じゃあ、魚とか肉とか野菜とかは食べないんですね」

 

「なんだ、それは。魔石の一種か?」

 

「ダメだこりゃ」

 

 文化や習性が違いすぎるので、いったん諦めた。

 

 私達も、自分たちの食事をするためにアイテムパックから食料と水を取り出して、テーブルに並べ、これが私達の魔石みたいな者だと説明し、そのまま食事にした。

 

 今回は、作戦時用に作成された栄養価抜群の特殊レーションとミネラルたっぷりの経口補水液で済ますことにする。これがあれば半日ぐらいの活動エネルギーを補充できるが、お世辞にもおいしいとはいえないのでできれば使いたくないものだ。

 

 エルティナもキャンプシップなら専用の装置でフォトンを補充すれば良いが、それがえられない現地ではこういった普通(?)の食事でエネルギー補填ができるようになっている。どういう仕組みかは分からない。フォトンは不思議ですごいと言うことだたぶん。

 

「今日はお前達と戦ったため、狩りができなかった」

 

 と、小さな魔石を飲み込んだリザさんはそうつぶやいた。

 

「あー、それは申し訳ありませんでした」

 

「いい、良い経験になった。明日、狩りに付き合え。それで許す」

 

「じゃあ、そういうことで。リザさんは、睡眠は取られますか?」

 

「無駄な消費をしないよう、夜間は動かないようにしている」

 

「分かりました。私達も、朝までそういうのになるので、また明日ですね。どこか横になれる場所あります?」

 

「ここは狭い。隣の住居を使うといい。私に戦うすべを教えた者はそこをねぐらにしていた」

 

「分かりました、じゃあ、日が昇る頃にまた来ますね」

 

 といって、私はエルティナを膝の上からだっこして立ち上がり、そのまま一礼してリザさんの家を出て、ちょうどその隣の、ちょっとぼろい家に入った。

 

「ここなら横になれそうだね。あれは、ベッドみたいなものかな? キッチンっぽいのもあるね」

 

「ここには、私達と同じようなものが暮らしていたのでしょうか?」

 

「うーん。それだとリザさんにそういう知識が無いのが気になるなぁ」

 

「確かにそうですね」

 

「まあ、いいや。寝袋あったよね。それ敷いて寝よ。今日は一緒にね」

 

「仕方ありませんね。狭いですから」

 

 私はいったんエルティナを床に下ろして寝床の準備をして貰い、そのまま上着を脱いでスカートを下ろし、パジャマ代わりのアークジャージF影を着込み、用意して貰った寝袋に、エルティナをぬいぐるみみたいに抱いて潜り込んだ。

 

「それじゃ、お休み、エルティナ」

 

「はい、夜明け頃に起こしますので、ごゆっくりお休みください。私もスリープ状態に移行します」

 

「うん、明日もよろしくね」

 

 エルティナはすぐに目を閉じて、スリープモードに移行したのか、すぐに何も反応しなくなった。スリープ中に軽いシステムメンテをしているようなので、実際、サポパにとって睡眠は重要でもあるのだ。私もエルティナを押しつぶしてしまわないように注意しつつ目を閉じて、生命維持装置に睡眠状態のプリセットを設定し実行させた。

 

 明日は忙しくなるだろうが、新しい場所で新しい人に会って新しいことをする。これはとても楽しいことだ。

 

 

 




リザさんは、『共通語(コイネー)』をしゃべっているということにしています。なので、宇宙全体で見渡せば、割とありきたりな言語体系だったので、すぐに解析ができたという設定です。

この話をもってようやくタグに『異端児』を追加できました。

惑星探査編以降で、各章の時短編(あらすじ)は必要ですか?

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