ゲーム出身の一般アークスが、オラリオでダンジョンアタックするのは無理がある 作:柳沢紀雪
ようやく納得のいく蕎麦を打てたのは、晦日(みそか)のことだった。
年越しの大晦日。この世界に除夜の鐘はないが、オラリオでも年越しは家族で静かに過ごすという風習があるらしい。
せっかくなのでアミッドさんにもお裾分けを持って行ったところ、ディアンケヒト様から、年越し蕎麦とは珍しいと言って、アミッドさんも私達と夕食を一緒することになってしまった。ちなみに、ディアンケヒト様は来なかった。なんでや……。
「申し訳ありません。私どもの主神が無理を申しまして……」
「いいですよ。アミッドさんが一緒で、私たちも嬉しいですから」
「それにしても、ここももう少しで引越しか。少し寂しい気もするね」
ワカヒルメ様が、愛着の湧いた借家の天井を見上げて呟く。年明けからはアストレア様から譲り受けた新しい拠点へ移ることが決まっている。こうして今の家も、そろそろ見納めも近いと思えば感慨深いね。住めば都とはよく言ったものだよ。
「最後はしっかり掃除して出ていきましょうね」
オラリオの年越しは、驚くほど穏やかで静かだ。今日ばかりはほとんどの冒険者がダンジョンへ潜るのを控え、地上で家族やファミリアの仲間たちと過ごすのだという。
「結局、お餅は間に合いませんでしたね」
「仕方ないよ。餅米なんて朝廷でも珍しいものだったからさ」
「餅つき器もねぇ、難しいよね」
前世の地球では電動の餅つき機が主流だったけれど、こちらでやるなら精米用の杵や臼が必要だろう。まあ、そこはアークスと冒険者の身体強化があれば、力技でなんとでもなりそうだけれど。
「いろいろな文化があるのですね。私の知らないことばかりです」
お箸を器用に使い、お蕎麦をすするアミッドさんが感心したように目を細めた。
「お雑煮はいいですよー。あれを食べると、本当に新年が始まったんだなって実感します」
「ぜんざいもいい。お餅をね、甘い小豆の汁に浮かべて食べるんだ。寒い日には最高の贅沢だったなぁ……」
「飯テロですよ、ワカヒルメ様。――あ、アミッドさん。天ぷらの追加はいかがですか?」
実家の定番だったニシンの甘露煮は手に入らなかったので、今夜は無難に揚げたての天ぷらを用意したのだ。
「あ、いえ。これで十分、お腹いっぱいです」
「そうですか? じゃあ、私がもらいますね」
大葉とニラの天ぷらを丼に放り込み、刻みネギをたっぷり乗せて、つゆと一緒に一気にすする。出汁の旨味が五臓六腑に染み渡る。
「……慌ただしい一年だったね」
ワカヒルメ様が、ふと漏らした。
「そうですね。本当に、色々ありました。ワカヒルメ・ファミリアとして過ごした最初の一年、どうでしたか?」
「そうだね。……家族がいるのは温かい。私は、ずっとこれに憧れていたのかもしれないな」
ワカヒルメ様はお茶をズズッとすすり、過去の記憶を慈しむようにそっと目を閉じた。
「明日は『書き初め』でもしてみますか? 新年の抱負や目標を書くんです」
「なるほど。私の場合は……まずは起業、それから引越しかな」
「それは、まあ、避けて通れませんからね」
アミッドさんは静かに出汁を飲み干すと、「ありがとうございました」と食後の祈りを捧げていた。
ワカヒルメ・ファミリアは、来年からいよいよ本格的な活動を開始する。その先にどんな出会いや試練が待っているのか。今はただ、楽しみで仕方がなかった。
ベルディナの今後の二つ名は?
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猛猫(キティホーク)
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九尾の猫(ナインライブズ)
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猛女(おうじょ)
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征女(アレクサンドラ
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雷霆(ハーキュリア)
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救世(セイヴィア)
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天姫命(アメノヒメノミコト)
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聖誕(キティラ)
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守護者(タロス)
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勝者(イルニナ)
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代行者(ディミオス)
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神越(ラグナロク)
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来生(タターガタ)
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黄金宮(ヴィンゴルヴ)
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戦乙女(ワルキューレ)
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おまかせ