ゲーム出身の一般アークスが、オラリオでダンジョンアタックするのは無理がある   作:柳沢紀雪

131 / 185
番外編:デナトゥス

 

「はいみんな、明けましておめでとう。今年もよろしく」

 

 神会の会場である円形議場の中心で、ワカヒルメは抑揚なく新年の挨拶を述べる。

 

「なんだーワカヒルメ。テンション低いぜ!」

 

 野次が飛ぶが、ワカヒルメは無視。初めて神会の進行役を仰せつかったが、ぶっちゃけ早く終わらせたいのだ。

 

「はいはい、早速議題に入るよ。まずは、新たなランクアップを祝おう」

 

 ワカヒルメが手を叩くと、会場から割れんばかりの拍手が降り注ぐ。その渦中の三柱――ガネーシャ、ディアンケヒト、ヘファイストスは、神妙な様子で背筋を伸ばしていた。

 

「まずは、ガネーシャ・ファミリアの50階層到達を祝おう。一人の犠牲も払わず達成されたことは、素直に喜ばしいことだと思う」

 

 進行に慣れてきたのか、ワカヒルメの口調に少しずつ抑揚がついてきた。

 

「俺が! ガネーシャだ!! これもひとえにディアンケヒト、ヘファイストス、ワカヒルメの助力のおかげであーる!!! 感謝に堪えない!!!! ありがとーーーー!!!!」

 

「ガネーシャうるせー!!」

 

 他の神々に総ツッコミを入れられ、「すまん!」と騒がしく詫びてから、ようやく席に座るガネーシャ。

 

「ふぅ……まだ耳鳴りがするよ、ガネーシャ。まあ、うちの子を無事に返してくれてありがとう、とここで言っておくよ」

 

 ワカヒルメは騒がしい議場をなだめ、本題に入った。

 

「それじゃ、ランクアップした面々の二つ名を考えよう。まずはシャクティ・ヴァルマだ。今回、レベル6にランクアップおめでとう。ガネーシャ・ファミリアでは初めてのレベル6かな? アマテラス様に奏上したくなるほどの偉業だ。では、新たな異名の候補はあるかな?」

 

「シャクティちゃんってアレでしょ? なんか『鉄の女』って感じがするわよね」

 

「じゃあ、『アイアンレディ』か?」

 

「ダッサ!! ありえん。そこは『アイアンメイデン』だろうが!」

 

「俺が、ガネーシャだ!! 秩序たる者に処刑具の名をつけるのはどうかと思う!!」

 

「だからうるせーって。じゃあ、『鉄人』で」

 

「職人じゃないんだからさ、鉄人は無いでしょ」

 

「じゃあ、象印(ハヴァーシャ)でどうだ?」

 

「やめろ!」

 

「危ないのは却下だ」

 

 カオス極まる意見が乱立した結果、結局は元の象神の杖(アンクーシャ)で落ち着いた。

 

「じゃあ、シャクティ・ヴァルマの二つ名は、変わらず象神の杖(アンクーシャ)ということでいいかな?」

 

「「「しゃーなし」」」

 

 本当に俗物しかいない、とワカヒルメは内心で毒づく。

 

「それじゃ、次はディアンケヒト・ファミリアのアミッド・テアサナーレだ。ランクアップおめでとう。オラリオ最大の治療師(ヒーラー)がランクアップしたことに、私は最上位の祝福を送るよ」

 

「ふん! 遅すぎたぐらいだ!!」

 

 ディアンケヒトは相変わらず不遜な態度で返す。

 

「新たな二つ名を送りたいところだけど……ぶっちゃけ、戦場の聖女(デア・セイント)以上の名を私は思いつかないよ」

 

 むしろ、『聖女』という名がさらに重みを増したと思わずにはいられない。

 

「じゃあ、『大聖女』……とか?」

「それじゃ、今後ランクアップしたときに困らね?」

「それもそっかー」

 

大樹の聖女(デア・セイント)を希望する!!」

 

 ディアンケヒトが直々に述べた。

 

「なぜに大樹?」

「あー、あれじゃね? 新しく手に入れた杖がなんか、大樹っぽいっていうか」

「安直すぎ。杖が変わったらどうすんのさ」

 

「愚か者、あれ以上の杖があり得るか!」

 

「えー、それって職人に喧嘩売ってる?」

「いや、喧嘩売られたから」

 

 結局、こちらも戦場の聖女(デア・セイント)で保留となった。二回連続の保留は珍しいとロキが呟く。

 

「これ以上にないぐらい二人にはぴったりな名だってことだよ」

 

 ワカヒルメはいったん場を収め、次の「本命」に移る。

 

「はい、それじゃお待たせ。今回初めてランクアップしたヘファイストス・ファミリアのスィデロ・フィラカスだ。レベル1の鍛冶師なのによく深層から戻ってこれたと思う。その上、五年越しのランクアップ。素晴らしい功績と言わざるを得ないね」

 

「おー。なんか、あいついろいろ運が良い奴って聞いてるぜ。幸運鉱(ラッキーアイアン)でどうだ?」

「「いいじゃん!」」

 

「イントネーションが悪すぎるわよ!」

 

「じゃあ、徹鋼鉄鉱(スティフ・スチール・アイアン)ってのは?」

「「いいんじゃね?」」

「意味不明だよ」

 

 なんやかんやあって、スィデロの二つ名は【徹甲(スティフ・アイアン)】に決まった。ヘファイストスは「とりあえず無難で良かった」と胸をなで下ろしている。

 

「さて、本題はこれで終了。次の議題だ。皆の耳に入っているとは思うけど、オラリオの闇黒時代の終わりが告げられた。今回の遠征成功によって、オラリオには明るい知らせが届き、皆が夜明けを祝福している」

 

 ワカヒルメは各神(かくじん)を見回した。多くは誇り高く頷き、あるいは多くの犠牲に哀悼の意を示すように黙祷を捧げている。

 

「なので、ここでオラリオを非常事態から平常に戻そうという案が上がっている。どうかな?」

 

「「「「賛成!!」」」」

 

 満場一致の拍手が議場を支配した。

 

「それじゃ、ここに宣言するよ。オラリオはついに闇黒期を脱した。これからは常のように互いに手を取り合って――」

 

「一つ、良いかしら?」

 

 ワカヒルメが平和の誓いを掲げようとしたその時、それを遮るように手が上がった。

 

「…………いいよ、イシュタル。発言を許可する」

 

 出鼻をくじかれ気分を害しながらも、ワカヒルメは応じた。

 

「オラリオが『普段』に戻るということは――それは、戦争遊戯(ウォーゲーム)も解禁と捉えていいのかしら?」

 

 不敵に微笑むイシュタルは、まさに悪女の如くだった。

 

「…………自重はしてほしい。だけど、それを止める権利は誰にもない。そうだよね?」

 

 ワカヒルメが形式上の答えを述べると、全ての神が無言で肯定するほかなかった。

 

「分かったわ。ありがとう」

 

 イシュタルは手を下ろし、対角に座する女神――アストレアへ、射抜くような鋭い視線を送った。







次回、新章突入です



ベルディナの今後の二つ名は?

  • 猛猫(キティホーク)
  • 九尾の猫(ナインライブズ)
  • 猛女(おうじょ)
  • 征女(アレクサンドラ
  • 雷霆(ハーキュリア)
  • 救世(セイヴィア)
  • 天姫命(アメノヒメノミコト)
  • 聖誕(キティラ)
  • 守護者(タロス)
  • 勝者(イルニナ)
  • 代行者(ディミオス)
  • 神越(ラグナロク)
  • 来生(タターガタ)
  • 黄金宮(ヴィンゴルヴ)
  • 戦乙女(ワルキューレ)
  • おまかせ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。