ゲーム出身の一般アークスが、オラリオでダンジョンアタックするのは無理がある   作:柳沢紀雪

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狩りの時間だ

 エルティナの声に応じて目を覚まし、すぐに頭に浮かんだのは、今日の服は何にしようかということだった。

 

「思ったよりこっちはファンタジーな感じの世界観だから、そっちにあわせた方がいいよね」

 

 普段着ならちょっとお洒落な町娘風にプリテールチェルカ一択だと思うが、戦闘中となるとコレが難しい。後方の法撃職なら、三角帽子が似合いそうなゆったりとしたローブ風のコスチュームにするが、今の私はばりばりの前線職だから、できる限りシンプルで無駄のない、ある程度防御力があるような見た目が適切だろうが、できれば露出は抑え気味にしておきたいというのもある。

 

「カトリさんのオウカテンコウは……生足丸出しはちょっとなぁ、タイツはくか……。イオちゃんのエーデルゼリンは……できればスカートスタイルの方がいいなぁ」

 

 腕と足の関節あたりに金属製のアーマーがあって、服は比較的軽装でちょっと短めのスカートスタイルが似合う感じで……。

 

「サラのハートブレイカーは……膝はいいけど、谷間と肩がむき出しだなぁ……かわいいけど。メイド服で戦うのはルコットだけでいいや。ウィオラマギカはかわいいけど、近接するには腰のアーマーがちょっと邪魔なんだよね」

 

 コンセプトがはっきりしていると逆に選択肢がないことの典型だなこれは。

 

「あー、ファントム向けのカレテラヴィントのベースは結構コンセプト通りだな。インナーはもうちょっとおとなしめにして……、アウターどうしよう。できれば谷間と肩を隠す方向で行きたいけど……マントもあんまり趣味じゃないんだよねぇ」

 

 すでにエルティナは起き出して、朝食の準備をしてくれているようだが、私は今日からこの世界での標準となる服装が決まらないため、なかなか寝袋から外に出られない。

 

「マスター、そろそろリザ様も行動を開始される頃と思われますが」

 

「ゴメン、もうちょっとだけ待って。あと少しでつかめそうなんだよ」

 

 問題はアウターだ。アウターさえ何とかなればいい。

 

「あ、ソフィスレーナルか……ラスターイメージの……。うーん、悪くないけど、短パンだし、おへそ丸出しなんだよなぁ。太もも結構見えちゃうし。インナーはベースで全部隠れちゃうから悩まなくていいけどさ。あ、そうだ、ボディペでおへそ隠しちゃえばいいんだ。えーっと、とりあえずオペラーテコルセットの黒いやつにしとこ」

 

 ようやく決まったので、いったんセットに登録して寝袋から起き上がり、ファッションを一括で変更した。髪型はNナイトメアヘアーのままで。

 

「どうかな? 変じゃない?」

 

 エルティナに正面と背中の両方を見せてチェックして貰う。

 

「いいと思います」

 

「よかった。それじゃ、お待たせ。ご飯にしようか」

 

 とりあえずおへそは隠せたから、太ももはまた何か適当なのを見繕おう。まあ別に太ももぐらいなら見せてもかまわないかもだけどね。

 問題はスカートスタイルじゃないことだ。しばらくはカレテラヴィントのベースを基本にしてボディペも含めていろいろ煮詰めていこう。

 

「色も、白系に染め直したいなぁ。どこかのタイミングでキャンプシップもどるか」

 

 長期任務なので、オラクル船団から新作のファッションを購入することはできないが、手持ちのカラー変更ぐらいならできるようになってよかった。長期任務中でもファッションを楽しむのがアークスのたしなみだからね。今後は、キャンプシップ経由でファッションの購入ができるようになってほしいものだ。

 

 

 

 朝食が済んで、家の外に出ると、リザさんはすでに活動開始していて、こっちを待っていた。

 

「ごめんなさい、遅れました」

 

「いや、いい。そろそろ出発しよう」

 

「分かりました。あと、どうです? 似合いますか?」

 

 と、リザさんの前であざと目にくるりと回ってファッションを見せびらかしてみた。回転とともにでっかいツインテールがふわっと身体の周りを踊る。

 

「何のことだ?」

 

「いや、いいです。行きましょう」

 

 まあ、種族が違うと美意識も違うのだろう。下手したら性別とかも認識できてないかもしれないし。まあ、あざといのは今回で最後にしよう、初対面だからちょっと調子に乗ったが、本来ならこういうのは好きではないからね(そういうことにしておいてあげよう)。

 

 

◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇

 

 

 リザさんがねぐらにしている集落跡地(ベース:リザと呼ぶ)から徒歩で2時間ぐらい歩いたところに山の間にできた深い谷間があった。

 

「昨日はここに向かう途中だった」

 

「その節は迷惑をかけました」

 

 リザさんの言葉に私は素直に頭を下げた。あのときは言葉が通じないから争いになったが、最終的には拳で殴り合った後に、夕日を背にして握手して笑い合う熱血マンガみたいなことになってしまった。拳がすべてを解決するとは思いたくないけど、私がリザさんを傷つけたくないと思っていたことは、剣を通じて分かってもらえたと思う。

 

「それで、狩りってどうやるんですか? 何もなさそうですけど」

 

 いや、マジで何もない。茂みも水もない。動物が活発に動いているわけではないというか、生体反応が全くないので狩りも何もない採取もできない訳だ。

 

「しばらく歩けば分かる。なるべく前だけを見ていろ」

 

 と言われたのでその通りにリザさんのしっぽを追いかけるようにゆっくりと前だけ(しっぽだけ)を見て歩く。歩くたびに左右に揺れるリザさんのしっぽは応にでっかいトカゲのしっぽで、危なくなったら切り離したりするのだろうかとかアホなことを考えていると、

 

『マスター、敵性反応です』

 

 と私の隣を歩くエルティナが前を向いたまま私に通信をかけてきた。

 

「来るぞ」

 

 リザさんは少し歩みを緩めつつ、ゆっくりと右手を腰の剣に近づけていき、そして砂埃とともに大きな音がして私達の前と後ろに突然何かが出現した。

 

「岩に張り付いていたのですか」

 

 エルティナは慌てずリバレイトウォンドを構え、私の背後にそれを向けた。

 

「発見、遅れちゃったね」

 

 HUDに表示された周辺マップには先ほどまでなかった敵性存在(エネミー)を示す光点が3つ……私達の前に2つと、後ろに1つ表示されていた。

 

「生体反応がなかったためと思われます」

 

「そっか、ややこしい連中だねぇ。しかも、一瞬で挟み撃ちにするなんてヤルじゃん」

 

 状況としては3対3なので、それほど焦る必要は無く、エネミーを示すマーカーは出現よりその場から動く様子はない。

 

「後ろは任せた」

 

 と、リザさんは短く言うとすぐに剣を引き抜いて前にたたずむエネミー2体に向かって突進を仕掛けた。あえて困難な方をすぐさま選ぶリザさんは根っからの武人なのだろう。

 

「分かりました。エルティナは、リザさんをサポートしてあげて」

 

 私はフェリシテエーデルをかぶせたフルクシオタラッサを取り出して構え、背後のそれに向き合った。

 

「分かりました」

 

 高いところから敵が降りてきたせいで、ずいぶん濃く舞い上がった砂煙も、渓谷をかける穏やかな風で徐々に薄まっていき、そこに出現したのは、リザさんそっくりなリザードマン風のエネミーだった。

 

「武器を持っていないから、リザさんみたいに知性はなさそうだけど。なんか、やりにくいなぁ」

 

 リザさんは全く迷うことなく斬りかかり、一体目の敵の急所に剣を突き刺していた。手慣れてるなぁ。

 

 ちらりとリザさんの方を見た私を油断ととらえたのか、敵性リザードマンは、言語的な意味を全く感じられない、けたたましい叫び声を上げて、しっぽで地面を蹴って高く飛び上がり、長く伸びた爪を私の頭上に振り下ろそうと向かってきていた。

 

「そんなんじゃ、アークスに攻撃を当てるのは、一生無理だよ」

 

 といって、私はタイミングを見計らい、PAフレシェットのステイアーツを、敵の攻撃に合わせて繰り出して、それによって発生したガードポイントによりダメージを強制的にキャンセルしつつ、高速で放った刺突を敵の急所と思われる箇所に躊躇無く打ち込んだ。

 

 あっさりしたもので、その一撃でエネミーは動きを止めてその場に崩れ落ちてしまった。私はしばらく油断せずにその様子を見ていたが、死んだふりによる奇襲をかける様子もなかったので、再度リザさんとエルティナの方に、目をやった。

 

「終わったか?」

 

 リザさんはとっくに2体目も倒していたようで、体液がこびりついたのであろう剣の刃を腰の布でぬぐっているところだった。

 

「狩りって、こいつらでいいんですか?」

 

「そうだ。今からやり方を教える」

 

 そういって、リザさんはいったん剣をさやに納めると、別の場所からちょっと長めのナイフを取り出して、倒したエネミーの心臓のあたりに突き刺し、手を体内に忍ばせて何かを引きずり出した。

 

「これは……」

 

 そばで見ていたエルティナはそこに握られている結晶をみて、つぶやく。

 

「魔石ですね。こうやって手に入れるんですか」

 

 なるほど、確かにリザさんにとっては自らの活動エネルギーとなる魔石を得るための狩りをしていると言うことだ。

 

 魔石を引きずり出された亡骸は、遺骸を残すことなく急速に風化を初めてただの灰となって風に舞い、あるいは大地に帰っていく。これが、生命反応がない理由だろう。

 

 灰を主原料として、魔石によって生物的な形に保っているだけであれば、むしろナノマシンで構成された機械に近い存在といえるのではないか。魔石を動力源としてナノマシンが稼働し、魔石が欠乏した場合はその結合が解かれ霧散するが、再び原動力を得れば、再度ボディを形成して活動を行う。魔石がどのように発生するかは不明だが、考えようによっては半永久機関のようなものかも知れない。

 

「やってみるといい」

 

 と、リザさんはエルティナにナイフを渡して、残ったエネミーの処理をさせようとしていた。エルティナはいったんは私に判断を仰ぎ、私は無言でうなずいてから、私も自分が倒した個体の処理をすることにした。一応、サバイバルキットの中に便利なナイフが入っているので、それをアイテムパックから取り出して、魔石を摘出する。

 

「これで、昨日の分の迷惑料になりますか?」

 

 と、摘出した魔石をリザさんに手渡し、査定をして貰った。

 

「ふむ。もう数体といったところだな」

 

 なかなかリザさんも勘定のできる方のようで安心した。

 

 

 




なんだか、アークスのガードポイントって反則くさいなと思いつつ書いていました。

相手からしたら、自分の攻撃を相殺されるのではなく、一方的にダメージをキャンセルされたあげく、自分だけダメージを受けてしまうとなれば、もう悪夢ですよ、これは。

惑星探査編以降で、各章の時短編(あらすじ)は必要ですか?

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