ゲーム出身の一般アークスが、オラリオでダンジョンアタックするのは無理がある   作:柳沢紀雪

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キャンプ回っぽい感じ。野外炊飯って、楽しいけど、ちょっともの悲しくなるときがありますよね。


次の目標

 狩りも終わり、「これでしばらくは持つ」と、リザさんも無表情(というか、私じゃ表情が分からない)ながらも安堵した様子でベース:リザに戻ってきた。

 

 あれから3回ほど似たような戦闘をして、出てきたエネミー(怪物:モンスター)は、リザさんとそっくりなリザードマン風のと、ファンタジー作品にありがちなゴブリン、オオカミの頭をかぶったような人型モンスターであるコボルトと、割とバリエーション豊かだった。

 

 最後はコボルトが10体徒党を組んで襲ってきたが、3人ならなんの苦労もしなかった。リザさん曰く、

 

「一人では多少苦戦はしたな」

 

 というらしいが、どう考えても余裕綽々なんじゃないかと思える程度の声色だったので、心配は無いだろう。

 

 リザさんは、帰ると一番新鮮な魔石を数個丸呑みすると、そのまま自分の家に引っ込んでいった。

 

「ご飯の準備しようか」

 

 私達は、せっかくなので広場にうち捨てられた鍋やたき火跡をかこう煉瓦の残骸を拾い集めて簡単な竈を作り、ゆっくりキャンプ飯としゃれ込もうと準備を始めた。

 

「マスター、燃料はどうしましょう?」

 

「燃料? 薪でも拾ってきたら……あ、そうか」

 

「まともな木が一本も生えていません」

 

「そうだった」

 

 ここは荒野の中を岩でかこった集落もどきの場所だ。せいぜいあるものは地衣類程度で、まともに資源活用できそうな木や水場などはまるで見つからない。

 

「がーんだな。出鼻をくじかれた」

 

 しかし、せっかく竈を再現したので、中にサバイバルキットのコンロを入れて、雰囲気だけでも味わうことにした。

 

「そういえば、エルティナって、あの魔石からエネルギーをとることはできないの?」

 

「さすがに無理ですね。フォトンとはまるで異なるエネルギーですので。変換器(コンバーター)を新たに設計しない限りは」

 

 捨てられていた鍋は、手持ちの水で丁寧に洗って、念のためエルティナにアンティ(状態異常テクニック)をかけて貰って、改めて水を入れて火にかけた。

 

「食べられるものがとれないのって、なんか寂しいね」

 

 小物入れにはなぜか鯖缶が入っていたので、とりあえずそれをお湯に入れて、あとはアイテムパックに余っていた野菜クズを適当に入れてから、中華系のスープの素を混ぜた。

 

「ご飯ほしいな。炊きたてのやつ」

 

 ぐつぐつ煮立ってきたお湯をしゃもじで適当にかき混ぜながら、何となく寂しくなって両膝を立てて縮こまる。

 

「もうよろしいのでは?」

 

「ん? そう? じゃあ、食べようか」

 

 二人分の器にあまりおいしそうに見えない適当キャンプご飯をついで、「いただきます」といって食べ始めた。中華系スープが優秀なお蔭か、味は結構良かった。

 

 

◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇

 

 

 最初の自炊は何とも寂しいものだったが、その後、何度かキャンプシップを行き来しQOLをあげて行くことができた。さすがにいきなり緑化することは無理だったが、本船から廃棄予定の木材を融通して貰って、薪をそれなりに確保することに成功した。

 

「うーん。やっぱり、炊きたてのご飯の香りはたまらないね」

 

 リザさんの狩りも順調のようで、私は調査がてら狩りを手伝うこともしばしばだった。

 

「お待たせしました、マスター」

 

「お疲れエルティナ。調査は順調?」

 

「少し難航しておりますが、想定通りではありますね」

 

 エルティナにはこの数日は別の調査をお願いしている。集落跡の外だけではなく、そろそろ中も調べてみようということで、朽ちた家屋跡をいろいろ回っていると、地下のある家をみつけ、そこには個人が集めたとは思えない量の書物が乱雑に保管されていたのだ。

 

 普通、そういうのは虫食いやカビなどでボロボロになりがちだが、どうも、この惑星には虫が繁殖する余地すらない(ゴキブリすらいない)ようで、カビも湿気が遮断されていたようでほとんど繁殖していないようできれいなものだったようだ。

 

 私はこういう文章を調べるのが大変苦手なので、ここの調査はエルティナに丸投げして今に至るわけだ。

 

「なにか分かった?」

 

「かつてこの星は緑豊かに水あふれる惑星であったようです。しかし、ある日塔が倒れて怪物が地上にあふれてから、この世の地獄と化したとありました」

 

「怪物っていうと、リザさんと狩ってるあれかなぁ?」

 

「おそらくは」

 

「塔って何だろう?」

 

「天にも届く巨大な塔と記載されていました。バベルと呼ばれていたようです」

 

「あー、そりゃ倒れるよね」

 

 古今東西、フィクションの世界ではバベルと名付けられた塔は倒れる運命になっているのだ。というか、バベルって、確か地球の地名だったか街の名前でしょ? こっちにも地球由来のなにかがあるってことかな? よく分からん。私はあまり頭が良くないので。

 

「食事中か?」

 

 と、エルティナと話しながら食事の準備をしていると、リザさんが家から顔を出した。最近は私達が食事をしているところにやってきていろいろ話をするようになった。リザさんも、エルティナが調べていることに興味があるようだった。

 

「いま、バベルという言葉が聞こえたが」

 

 リザさんはすっかりと定位置になった岩に座ってしっぽをゆっくりと地面に下ろした。

 

「はい、手記のようなものでしたが、著者が直接見聞きしたことをまとめているようです。かなりの冒険家だったようです。著者は……ヘルメスと書かれておりました」

 

「ヘルメスって言うと、地球の神様の名前だね。確か、ギリシャ神話だったかな?」

 

 ファンタジーにはまっていた中二時代にそれっぽいのはいろいろ調べた記憶がまだ残っている。ギリシャ神話は結構、中二心を刺激してくれるいい神話だったよ。

 

「バベルは、巨大な街の中心にそびえていたと、私に戦うすべを教えた者が言っていた」

 

 リザさんは少し懐かしそうに目を細めた。

 

「塔の街……オラリオと記されていましたね」

 

「オラリオか……なんだかオラクルと似てるね。まあ、関係ないだろうけど」

 

「オラリオ……それも聞いたことがある。巨大なダンジョンがあり、私のようなモンスターの生まれ故郷であると、私に戦うすべを教えた者が言っていた」

 

「そうなんですね。ダンジョンか……場所はどこなんだろう?」

 

「まだ分かりませんが、今後はそこを主に調べましょうか?」

 

「そうだね。お願い」

 

「承知しました」

 

 バベルにオラリオにダンジョン。そして、著者のヘルメスという地球由来の神の名称。これは、行くしかないでしょう。

 

「私も……」

 

 リザさんの小さなつぶやきを私は聞き逃さなかった。

 

「どうしました? リザさん」

 

「もしも、オラリオの場所が判明したら、私も共にさせてほしい。私のような者の生まれ故郷を一度は見ておきたいのだ」

 

「そうですね。リザさんがいいなら、是非とも一緒に行きましょう」

 

「そうなると、歩いて行くことになりますね」

 

 と、エルティナはちょっと言いにくそうだった。それは仕方が無い。私達だけならキャンプシップから一瞬でテレポートという手段も使えるが、さすがに現地民のリザさんをキャンプシップに入れるわけにはいかない(いろいろややこしい決まりがあるのだ)。

 

 そうなると、キャンプシップに詳細マップを作成させ、オラリオへの最適順路を策定してから徒歩で向かうしかないわけだ。

 

「いいね。空から見るよりも実際に歩いてみる方がいろいろ調査がはかどりそうだ」

 

「かたじけない」

 

「いえ、リザ様。共に行きましょう」

 

 見ると、リザさんのしっぽがちょっとだけふわふわしているように見えた。うれしいのかな?

 

 そして、それから一週間。エルティナは狩りには参加せずに、ずっと書庫にこもってオラリオについて調べて貰った。そして、ついに、オラリオはここより東に約600km離れた都市型巨大遺跡群ということが判明した。

 

「結構遠いね」

 

 600kmと言えば、だいたい東京から大阪ぐらいの距離だっけ? いや、もうちょっと遠いか……広島までは行かないと思うけど、とにかくそれなりの距離だ。

 

「歩くとどれぐらいになるんだろう?」

 

「途中に山や谷が多くありますので、一月ほどは見込んでおくべきと思います」

 

「うーん、冒険だ。だけど、楽しそう。リザさんはどうします?」

 

「魔石をありったけ持って行こう」

 

「そうですね。それがいいと思います」

 

 ある意味、それだけあれば活動できるのは便利なんじゃないかと思う。食料や水がいらないわけだから。

 

「私達は現地調達できないから……二人で2週間分ぐらい?」

 

「途中で1,2度はキャンプシップに補給に戻る必要がありそうですね」

 

「面倒な星だなぁ。まあ、だからこそリザさんに会えたんだけどね」

 

 この出会いは何よりもの宝だと思う。

 

「いつ出発する?」

 

「私はいつでも良い」

 

「明日からでも問題はありませんね。この集落にはすでにポータルを設定しておりますので、キャンプシップ経由ならいつでも戻ることができます」

 

 ポータルはテレパイプみたいに一時的なものではなく、機械が壊れない限り半永久的に転移できる装置だ。キャンプシップにも搭載されている数は限られているので、よっぽど重要な場所でも無い限り設置することはない。

 

 もちろん、ここは情報源となる書庫があるので、十分その条件は満たしている。この書物自体はこの星固有の資産、財産であるので、オラクル船団も勝手には持ち出すわけにはいかない。いずれ、この星にも知的生命体が復活した際、過去の歴史を知るための重要な情報源になるわけだからね。

 

 重要なところはすでにエルティナがコピーを取ってくれているから問題ない。

 

「じゃあ、三日後で。その間に忘れ物はないかチェックしよう」

 

「了解いたしました」

 

「承知した。できる限り魔石を蓄えておこう」

 

「よろしく!」

 

 と言うことで、話もそこそこに食事を終え、就寝までのんびりすることにした。

 

「あ、そうだ。長旅になるから、今のうちに包丁研いどこ」

 

 私はふと思い出して、アイテムパックから菜切り包丁といっしょに、同時に購入した1000番と3000番のコンビ砥石も取り出して、手洗い用にためてある水につけ込んで準備を開始した。

 

「やば、ちょっと錆びてる。しまったなぁ」

 

 

 

 




バベルは倒れ、オラリオは遺跡に。なにがあったのか。次回をお楽しみに!

惑星探査編以降で、各章の時短編(あらすじ)は必要ですか?

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