ゲーム出身の一般アークスが、オラリオでダンジョンアタックするのは無理がある 作:柳沢紀雪
女神ワカヒルメの要請により、急遽招集された緊急
バベルの最上層に位置する円形議場には、かつてないほどの緊張感が漂っていた。闇黒期の終焉からわずか数ヶ月、復興の兆しに沸くオラリオにおいて、現在最も注目を集めているのは、歓楽街の女王イシュタルによる、新興のワカヒルメファミリアに対する苛烈な経済封鎖だ。
「それで? お前のところの団長を引き渡す準備はできたってことかい?」
議場の上座、椅子に深く腰掛けたイシュタルが、取り巻きの神々の中で冷笑を浮かべる。彼女は扇で口元を隠しながら、議場の中心にぽつんと立つワカヒルメを、まるで路傍の石ころでも見るかのように見下ろした。
「女神イシュタル。我が方の要求は一つだ。この件から直ちに手を引け」
ワカヒルメは静かに、けれど揺るぎない足取りで一歩前へ踏み出した。その背中は、零細派閥の主神とは思えないほどの威厳に満ちている。
「今、君は猛猫の片尾を踏んでしまった。今はまだ、私の命によってその爪は収められている。しかし、これ以上の狼藉は、すでに神威すら凌駕して、その牙を必ずお前の喉笛に突き立てるだろう。……これが最後通牒だ」
イシュタルを射抜くワカヒルメ様の眼差しには、慈愛の裏に隠された鋭い
「最後通牒だって? 馬鹿馬鹿しい。それじゃなにかい? 私たちイシュタルファミリアに、たかだかレベル2のメス2匹しかいない弱小派閥が抗争を仕掛けようってのかい?」
イシュタルはすぐに体勢を立て直し、ねっとりとした笑みを浮かべて議場に響き渡る高笑いを上げた。周囲の取り巻きの神々もそれに合わせ、嘲笑の渦がワカヒルメを包み込む。しかし、ワカヒルメはただ静かに、机の上に置かれた一台の「機械」に手を置いた。
「イシュタルの声は聞こえていたかい? ベルディナ」
ワカヒルメが通信機のスイッチを入れる。この場に集まった一部を除く神々にとって、それは未知の魔法具にしか見えなかっただろう。しかし、そこから流れてきた「声」は、議場の空気を一変させるに十分な衝撃を持っていた。
『はい、筒抜けですよ、ワカヒルメ様。……この声は、そちらの方々に届いていますか?』
通信機から響くベルディナの声に、議場がにわかに騒がしくなる。神のみが立ち入りを許される聖域――
「やりおったなぁ、ワカヒルメ――」
状況を眺める神ロキのささやきは、誰の耳にも届くことはなかった。
「いいよ。皆、揃っている。好きに言うがいい」
『ありがとうございます。……女神イシュタル、そして神々の皆様。私からは一つだけです。オラリオが、いえ、この世界が一つにならなければ、いずれ
ベルディナはあえて「それ」が何であるかは口にしなかった。ダーカー、あるいは
「……くだらないね。愛はぶつかり合いだ。雌雄のせめぎ合い、混じり合いこそが命の輝きを生む。それはこの世で最も尊ばれるべきものさ」
イシュタルは吐き捨てるように言い放った。それは美の神、そして弱肉強食を是とする歓楽街の女達を束ねる女王に相応しい言葉だった。
「ならば、イシュタル――美の女神・愛欲の象徴・夕暮れの惑い星――よく聞くがいい」
ワカヒルメは深く息を吸い込み、議場の中心で天を仰ぐように胸を張った。
「我、天佑の一柱、大いなる太陽の頂より下りし、
その力強い宣言が、バベルの最上層を震わせた。
ここに、オラリオの闇黒期終了後、初となる公式な