ゲーム出身の一般アークスが、オラリオでダンジョンアタックするのは無理がある   作:柳沢紀雪

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結構ゆるいです。緊張感がないといえる。




ダンジョン初挑戦です

あれから三日ほどかけて街の廃墟遺跡を調べてみたが、リザさんのベースに残された情報以上のものは確認できなかった。

 

「せめて、なぜ塔が倒れ、街が滅びたかの記録が得られれば良かったのですが」

 

「みんな、逃げるときに記録を持ち出したんじゃないかな。だから、世界各地に散らばって、いろんな口伝が中途半端に残ることになったとか」

 

「マスターは時々核心を突くことを言われますね」

 

「褒めてる?」

 

「もちろん」

 

 エルティナは、この数年間でずいぶん感情豊かになってくれて実はうれしい。というか、私実際友達少ないんじゃないかと思うようになった。リザさんと友達になれたのは本当に良かったと思う。

 

 初期のスターウォーズ(Ep4~6ぐらい)の映画で一番衝撃的だったのは、明らかに人間とはいえないような異星人と主人公達が当たり前のように共存して交流して親交を深め、あるいは憎しみ合うという、究極的で汎宇宙主義的な多様性だった。

 

 PSO2の世界でも、龍族やリリーパ族、ハルコタンの巨人達など、人外でありながら知性と理性を持ち合わせた人たちに敬意をもって交流できるオラクル船団のあり方が好きだと心から思える。

 

 だからこそ、本来ならモンスターとして討伐していたはずのリザさんと友達といえるぐらい関係を深められたのではないかと思うのだ。

 

「やっぱり宇宙はすごいな。信じられないぐらい広い。それに比べたら私なんてちっぽけだ」

 

 だからこそ、守れて良かったと思う。守ったのはアッシュ達だが、私も一般アークスとしてその助けになれたことがとてもうれしい。

 

 塔の残骸の調査もそれほど大した物は出てこなかった。記録は持ち出されたか、ほとんど風化して読めなくなっていた。武器屋の出納帳らしきものが見つかったけど、それって重要なものなのかな?

 

 あとは、武器庫らしいところですごく品質のいい大剣(コートエッジぐらいの大きさ)を見つけたので、調査サンプルとして回収しておいた。これは、本船に戻ったら研究機関に提出して、調査して貰い、それが終了して安全性が確認されたら、有料で払い下げて貰えるのだ。さすがにアークス武器として使用することはできないが、美術品として部屋に飾っておくとかすればいいと思う。

 

 アッシュにプレゼントしたらきっと喜んで貰えるだろう。

 

 ついでにマトイちゃんへのお土産もどこかに落ちていればいいなと思う。花をあしらった魔法の杖とか。

 

 リザさんの街壁の調査も、巨大な力で内側から同時に倒壊したぐらいしか分からず、その原因までは突き止めることはできなかった。

 

「やっぱり、遺跡内ではモンスターの活動はそれほど活発じゃないですね。どこかに巣があるわけじゃないし、ダンジョンからちょっと偵察に来てるぐらいですか」

 

「ほとんどはダンジョンにこもっているのだろう。わざわざ地上に出るまでもないのであろう」

 

 倒壊した塔の根元あたりで、内装がわりと奇麗に残っていたところを軽く掃除して、今では簡易的な拠点として活用している。廃材でテーブルを作ったり、転がっていた表面のキレイな石を竈にしてみたりと、結構楽しめたと思う。

 

「地上の調査は、いったんはこれぐらいでいいかな」

 

「そうですね、そろそろダンジョンの調査に入ってもよろしいかと思われます」

 

 個人単位でこれ以上調査してもそれほど大した物はでてこないだろうとエルティナも判断したようだ。後は、本船から調査チームが派遣されてきてからということだ。調査が先か、全球浄化が先かは分からないが、少なくとも今やることではない。

 

「じゃあ、明日からいよいよ本格的にダンジョンを攻略しよう。入り口がすんなり見つかって良かったよ」

 

 エルティナが調べた古文書によると、ダンジョンの入り口は塔によって蓋がされていて、中心には巨大な螺旋階段が地下に伸びていると言うらしい。それらしい場所を発掘して、慎重にがれきを取り除いたところ、確かに大きな螺旋階段を発見できたので、間違いないだろう。

 

「地下に行けば行くほど広くなってるんだっけ?」

 

「はい、40階層ほどでかつての街と同じ広さだと推測されていましたね」

 

「それで、何階層まであるの?」

 

「それは、少なくとも60階層以上としか分かりませんでした」

 

「すべての踏破には数年かかりそうだな」

 

 リザさんの言うとおり、それも大がかりなチームを編成する必要がありそうに思える。

 

「どこまで行こうかな」

 

「マスターが満足するまで、でよろしいかと」

 

「そうだね。そうしよう」

 

 宇宙存続の危機がかかっているわけでもない、本当に純粋な好奇心と冒険心を満たすための探索だ。もちろん、命の危険も考慮しなければならないし、仲間の安全を最優先にすることは当然だが、ダンジョンに何が待っているのか、リザさんと出会ったときのように、新たな出会いがあるのか、今から楽しみだ。

 

 

◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇

 

 

 食後はなにもやることもないし、モンスターの活動も若干ながら活発化するのでさっさと寝てしまおうということで寝袋に入って朝を迎えた。日が山から顔を出して、ほこりっぽい風が遺跡を駆け抜ける頃には身支度を済ませてダンジョンへと突入となった。

 

「昔は、こういうところにダンジョンへの受付とかあったのかな?」

 

 柱が数本立っているだけで後はほとんど天井が抜けてしまっている大広間を眺めて私はつぶやいた。足下には大小様々な石や岩、建物の残骸などが転がっていて、とりわけ大きな石壁が絶妙なバランスで地面に突き刺さっているのは、すでに何らかのモニュメントにすら見えてくる。

 

「そういう細かい記述はありませんでしたね。バベルの塔には様々な施設があり、武器屋もあったと書かれてはいましたが」

 

「武器屋か。私が拾った剣もそこの商品だったのかな?」

 

「可能性はありますね。リザ様はなにか良いものは手に入れられましたか?」

 

「うむ。手になじむ剣を一振り拝借した。見事な作りだ」

 

 リザさんは新しく手に入れた片手剣を鞘から抜いて天井にかざしてみせる。

 

「奇麗ですね。リザさんにとってもよく似合ってると思います」

 

「狭い場所で使うにはちょうど良さそうですね」

 

 手に入れた当初はわずかながらに刃こぼれもしていたが、近くにあった鍛冶道具を拝借して研ぎ直し、今はぴかぴかの刀身がまぶしく美しい。

 

 ついでに私も愛用の包丁を研ぎ直せてご満悦だ。探せば精錬とか鍛造ができる設備もありそうだったが、専門家ではないので後回しだ。

 

「お、螺旋階段だ。でっかいねぇ」

 

 さて、いよいよダンジョンの入り口に来た。

 

「じゃあ、二人とも、準備はいい? リザさんは念のため、魔石はちゃんともっておいてくださいね」

 

「愚問だ」

 

「食料、水も一週間分は所持しています」

 

「寝袋とかテントとか、あと簡単な調理器具は私が持ってるからOKだね。じゃあ、行こう!」

 

 まさに意気揚々と長い階段を降りていって、ダンジョンの第一階層と呼ばれる場所に足を踏み込んだ。記念すべき第一歩だ。

 

「そして、おなじみのモンスター、これは、ゴブリンでいいのかな? が、出現しましたよ」

 

 ダンジョンには行って数歩も行かないうちにダンジョンの壁にひびが入って、「やべ、崩落するの?」と思っていたら、その隙間からひょっこりと二足歩行のちっちゃい鬼みたいなやつが顔をのぞかせて、威嚇を始めたのだった。

 

「ダンジョンは突然モンスターが出現し、気を抜くことは許されないとありましたが、まさに突然発生しましたね」

 

「うーん。ちょっと予想外」

 

「私がやってもよいか?」

 

「いいですよ」

 

 最初の一撃はリザさんに任せ、私とエルティナは二歩ほど後ろに下がった。

 PSO2でいえば、Lv1ウーダンみたいなやつだから、苦戦する訳もなく、一撃で頭部が宙を舞い、流れるような作業で魔石が摘出され、灰になって消えていった。

 

「あっけな。まあ、最初の敵なんてこんなもんか」

 

「期待外れではあるが……魔石はかなり濃厚だ」

 

 リザさんは味見がてら摘出した魔石をぺろりと飲み込んで、なんだかグルメなことを言い始めた。

 

「それにしても、通路とか壁とか天井とか、人工的に作られた感が強いね。崩落とか全然しないのかな」

 

「ダンジョン自体に自己修復作用があるのかも知れませんね。先ほど出現したヒビがもう見えなくなっていますし」

 

「ほんとだ。あとで、映像記録見直しとこ」

 

 自己修復機能や異物を排除するためのモンスターとか考えると、ここはダンジョンと言うよりは生物の体内であるというほうが近いのかも知れないな。

 

「うーん。挑戦者を食べて成長するダンジョンか……ありきたりだけど王道ともいえるんだよね」

 

「そろそろ先に進むぞ」

 

 リザさんが奥に行きたがっているのでさっさと進行することにした。

 

 いろいろ考察しがいのある場所だが、とにかく今は前に進もう。

 

 

◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇

 

 

「もう5階層か。ちょっと走りすぎたかな?」

 

 敵はほとんどリザさんが倒してしまって、

 

「天井です、マスター。グランツ!」

 

 と、時々天井に張り付いてこちらを狙っているリザさんそっくりのリザードマンは、すぐにエルティナがテクニックで排除してしまう。

 

「うーん、こういうのって姫プっていうんだっけ?」

 

 一応、私もときどきイベイドシュート(武器アクのあれ)で、集団で出現したコボルトの群れとかの掃除はしているが、まだまともに近接戦闘を行ったことがない。リザさんはちょっと物足りなさそうで、どんどん下に行こうとしっぽをブンブン振っている。落ち着きたまえ。

 

「ねえ、そろそろお昼にしない?」

 

 少し広めのフロアを制圧し、一段落したような感じがあったので、二人にそう提案してみた。

 

「そうですね。一度討伐すれば、しばらくは出現しないようですし、休むにはうってつけでしょうか」

 

「私は少し周りを偵察してこようか」

 

 リザさんはまだまだ動きたいようだが、「いやいや、みんな一緒に行動しましょうよ」と日本人らしい集団行動の原理を持ち出して押しとどめた。

 

 敵はまだ大したことは無いが、何が起こるか分からないのがダンジョンだ(と思う)。できる限り単独行動は避けた方がいいだろう、迷子になるかも知れないからね。

 

 というわけで、エルティナに預けていたお弁当を、私が広げたレジャーシートの上に広げて、飲み物はちゃんとポータブルコンロで湧かしたお湯で入れるコーヒーだ。リザさんはこのコーヒーを結構気に入ったらしく、私が小さいミルで豆を挽き始めると、ちょっと鼻をひくひくし始めるのがかわいい。

 

「今日はサンドイッチですね」

 

「昨日の夜に、私が作りました」

 

 やっぱり、ピクニックにはサンドイッチが鉄板だよ。ゲッテムハルトさんも、ナベリウスの遺跡で「ピ・ク・ニッ・ク、だよ?」といっていたので、これもピクニックなのだ(暴論)。

 

「リザさんも一口どうですか?」

 

 今日は、ふわふわタマゴサンドと、スライストマトとレタスとハムのミックスサンドの二種類だ。私はやっぱり、トマトが入っているのが好きだ。さっぱりした酸味と、プチプチした種の食感が楽しい。

 

「うむ。そちらの黄色い方をいただこう」

 

 逆にリザさんはふわふわタマゴサンドの方を選んだようだ。まだ、おいしいという感覚は分からないらしいが、かみしめる感触が悪くないという感覚は芽生えつつあるようだ。コーヒーは……カフェインじゃないかな? 頭がすっきりするし。

 

「そういえば、モンスターの再生産のサイクルってどれぐらいなんだろ。完全ランダム?」

 

「ランダム性が強いと思われます」

 

「出現の直前に若干の殺意を感じるが、それ以外は分からんな。予兆をつかむのは難しかろう」

 

「殺意とか私にはちょっと分からないですね」

 

「何らかの特殊な波動を観測はしていますが、必ず発生するわけでもないようです」

 

「そうなんだ。不思議だね」(分かってない)

 

 私は頭が良くないので、そういうことはエルティナに任せてしまうのが一番良い。

 

「あ、お湯沸いた。コーヒーいれるね」

 

 ちょっと面倒だが、コーヒーはひいた豆をフィルターに入れてドリップするのが一番だ。熱湯を少しずつフィルターに注ぎながら、ゆっくり落ちてくる黒い液体を眺めながら、つかの間の長閑を楽しんだ。

 

 

 

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