ゲーム出身の一般アークスが、オラリオでダンジョンアタックするのは無理がある 作:柳沢紀雪
ワカヒルメファミリアの釈明会見の混乱がようやく収まったところで執務室に戻ってきたフィンは、ちょっと高い茶葉の紅茶を入れて一息ついたところだった。
「怒濤の一日だったなフィン」
同じくカップを傾けるリヴェリアは、そんなフィンの様子に肩をすくめるばかりだ。
「ああ、そうだね。ようやく肩の荷が下りた思いだよ」
今日までの針のむしろ(主に女性陣)を思い出すと、いろいろ酬われたのか酬われていないのか分からないというが正直なところだった。
「しかし、これでお主も名誉挽回ということだ。ようやく明日から大手を振って街を歩けるな!」
ガレスは豪快に笑いながらどこから持ち込んだのか、ドワーフの火酒をロックグラスに注いで一気に煽っていた。
「いろいろ、シャクティと話すことができた。ギルドともかな? 今後の
「ああ、彼女たちは……やり過ぎた。もしも、私達があれをやられたらと思うと背筋が凍る思いだよフィン」
リヴェリアはカップをソーサーに置いてつぶやく。
「勝てればよいとも言い切れんからのう、
ドワーフの火酒の二杯目をグラスに注ぎながらガレスがしみじみとつぶやいた。一見すれば無法者の集まりに見えるオラリオであっても、そこには冒険者としての鉄の掟が張り巡らされている。それから外れて秩序をいたずらに乱す者達を
「彼女たちのもたらすものは、オラリオには劇薬だ。処方を間違えればオラリオを殺す毒にもなるが、同時に百薬の長にもなりうる。誰かが手綱を握る必要があるね」
フィンは執務机から立ち上がり、背後の窓から外を眺めた。いよいよ夕日が山の端にさしかかろうとして、最後の輝きを放っている頃だ。
「私達がその手綱になれるというのか?」
「おそらく無理だろうね。それだけ彼女たちは自由奔放だ。レベル2でこれだから、さらにランクアップされたら、それこそ手がつけられなくなる」
「しかも、最後の攻撃じゃ。あれは、ワシでもまともに受けて立っていられるかどうかじゃのう」
ベルディナの証言が本当なら、彼女は高度30キロルという想像もできないような場所に自らの力のみで到達し、そして落下という当たり前の現象だけであの破壊を生み出した。
そこにはレベル差などというものは存在しない、単純にして避けることのできない力そのものだ。
「攻撃力だけなら、私の魔法にも匹敵するのかあれは……」
鏡からもたらされた情報は、勝利を確信し、鬨の声を上げるアマゾネス達が一瞬で衝撃波と共に吹き飛ばされ、次の瞬間には一帯が更地に変貌していたというショッキングなものだ。
それはロキファミリアの若い冒険者であっても、一種のトラウマを抱くような衝撃的な映像だったようで、事実、今日の会見でも最後まで彼女の顔を見られなかった団員もちらほら見受けられた。
「だからこそ、味方にするにはこれ以上にない存在だ。手綱を握ることができないのなら、せめて共に走るものとなろう。彼女たちは、通信機という革命をオラリオにもたらした。そして、今度は僕たちにコンパスという新たな概念を提供してくれるとの約束も取り付けた」
フィンは一旦言葉を切って瞑目し天井を見上げた。そのまぶたの裏側に移るのは、何でもないものを何でも無いように語る彼女の姿。その手に持つのは、まるでオラリオの未来そのものと思える品々だった。それは光に包まれていていまだ形をなしていないが、おそらくそれは、今の自分たちでは想像できない何かであるに違いないとフィンは確信する。
「……共にあろう、彼女たちと。その先に僕たちの夢見る世界があるのなら――僕も、彼女達と共にありたいと願うよ」
ロキファミリアの意は決せられた。後は、ただ向かうのみだ。
まるで演説のごとく団長の言葉に、リヴェリアとガレスも静かにうなずいて、自然と三人は立ち上がり、各々が手に持つカップとグラスを掲げ――そして、無言で飲み干した。
不義抗争編、これにて終了となります。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
この後は短編をいくつか挟む予定です。
次のメインストーリーは、現在構想中ですので、よろしくお願いします。
また、このたびは1件の最高評価と、3件の高評価、1件の通常評価をいただきました。
なかなか進みが遅く、読むのにストレスのかかる(ととある方に指摘されました。確かにそうだと思います)作品に向き合っていただき大変感謝しております。
重ねて、これからもよろしくお願いいたします。