ゲーム出身の一般アークスが、オラリオでダンジョンアタックするのは無理がある   作:柳沢紀雪

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今回はアンケートがありますので、是非とも投票をお願いします。





番外編:神会(デナトゥス)

 

 戦争遊戯(ウォーゲーム)の熱狂がようやく落ち着きを見せ始めた頃、バベルの最上層にて開催された今回の神会(デナトゥス)は、かつてないほどの期待と緊張に包まれ、神々の喧騒が議場の高い天井へと吸い込まれていった。

 

「ほな、そろそろ神会(デナトゥス)をはじめよか」

 

 進行役を務めるロキが、薄い笑いを浮かべながらパンパンと乾いた音を立てて柏手を打つと、騒がしかった神々の囁きが潮が引くように止み、全員の視線が議場の中心へと集まった。

 

「イシュタルいねーじゃん」

 

 誰かが放った無遠慮な一言が、静まり返った議場に波紋のように広がる。

 敗者となったイシュタルは、今日の集いには姿を見せることもなく、彼女の不在が逆に勝者であるワカヒルメ様の存在感を、より鮮烈に際立たせていた。

 

「あんな負け方をしたんじゃ、流石に出てこれないよねぇ」

 

 隣に座る神友のスクルドがわざとらしく肩をすくめて煽るように囁くと、ワカヒルメは困ったような苦笑を浮かべた。

 

「ほんなら、改めて戦争遊戯(ウォーゲーム)の総括をしたいと思う」

 

 ロキはそう言うと、ギルドから提供されたパピルスを取り上げ、イシュタル・ファミリアの莫大な戦後賠償の概要を読み上げ始めた。

 

 神々の関心は、事業を「株式」として再編するという未知の試みに集中し、特に歓楽街の支配権が霧散していく奇妙な条項に対し、知恵者であるヘルメスが鋭い眼光を向けて問いを発した。

 

「つまりこれは、歓楽街の経営権のほぼ全てをギルドが握ったと言う認識で間違いないのかい?」

 

「せやで、ヘルメス。よう、こんな得体の知れん仕組みを考えたもんやな。なあワカヒルメ、一体誰の入れ知恵や?」

 

 ロキがパピルスから目を上げ、ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべてワカヒルメを問い詰めると、周囲の神々もまた「答えろ」と言わんばかりに身を乗り出してきた。

 

「ん? ウチのエルティナだけど?」

 

 ワカヒルメが事も無げに、まるで明日の天気を語るような軽さで答えた瞬間、議場を支配していた空気は一変し、神々は「マジか」と驚愕の声を漏らして一斉に沈黙した。

 

「あ、ちなみにウチの事業もすでに株式化しているからね。もしその権利が欲しかったら、団長のベルディナに直接話すといいよ」

 

「なるほどな。ウチのフィンが1000株ほど購入するとか言うとったんはそのことか。それやったら、ロキファミリアもあんたんとこの経営権を一部握っとるいうことやな?」

 

 ロキは細められた瞳の奥に知性的な光を滲ませ、ニヤリと口角を吊り上げると、手元のパピルスを指先で弾きながらワカヒルメへ問いかけた。

 

「まあ、そうだね。と言っても、発行済みの15万株のうちの1000株程度、微々たる権利に過ぎないけれどさ」

 

 ワカヒルメは事も無げに応じ、ロキの視線を真っ向から受け流すと、「残念でした」と言わんばかりに肩をすくめた。

 

「つまり……どういうことだ?」

 

 商業系のファミリアを統べる一柱の男神が、横から問いを投げかけた。

 

「要するに、その株を多く持っているほど事業への発言権が強まる、という理屈だね」

 

 ワカヒルメを代弁するようにヘルメスが不敵な笑みを浮かべて解説を加えると、議場の神々は「また新しいおもちゃができた」と言わんばかりに好奇心に目をらんらんとさせ始める。

 

「そういうこと。全部で15万株発行して、そのうちの14万9000株をベルディナが保有し、残りの1000株をロキファミリアの勇者(ブレイバー)に譲渡したってわけだ」

 

 ワカヒルメが現在の株主構成を告げると、議場には波紋のようなどよめきが走り、所有権を分割して売買するという概念に神々は色めき立った。一部には目がヴァリスの輝きになっている神もいるようだった。

 

「なるほど、上手いこと考えたもんやなぁ。つまり、ワカヒルメんとこの事業を乗っ取りたかったら、ベルディナたんから半分以上買うたらええいう訳や」

 

 ロキが獲物を見定めた獣のように瞳をギラつかせると、周囲の商業神たちもまた、利権を求める鋭い光をその眼に宿した。

 

「今のところは大々的に売り出す予定はないけれど、単純に言えばそういうことになるね」

 

「だったら、イシュタルの歓楽街の経営権も、ギルドから株を買えば奪い取れるということか?」

 

「いやいや、ギルドがそんな金脈を手放すはずがないだろう。……それより『配当金』だ。何もしなくても毎年ヴァリスが舞い込むなんて、まさに夢のようじゃないか」

 

 神々からは矢継ぎ早に欲望に満ちた質問が上がるが、ギルドの資料に詳細な規定がないことを悟ったロキは、面倒くさそうに手を振ってそれを遮った。

 

「個別詳細の質問は直接ギルドに聞いてや。ここではこれ以上のことは分からんわ」

 

 しばらくの間、株式取引や配当金についての質問や意見などが議場の空気を支配していたが、進行役のロキがパンパンと乾いた音を立てて柏手を打ち、強引に話題を打ち切った。

 

「ほな、そろそろ次の議題に移らせてもらうで。……次は、今まさにオラリオの噂を独占しとるワカヒルメファミリアの二人、ベルディナとエルティナの位階昇華(ランクアップ)の件やな」

 

 ロキの薄く開かれたまぶたの奥にどこか狡猾そうな瞳を光らせてつつ告げると、議場の神々は一斉に顔を見合わせ、その異例すぎる成長速度を再確認するようにざわめき始めた。

 

「前回からどれぐらいだっけ?」

 

「一年も経ってねぇだろ」

 

「レベル2のランクアップが4ヶ月で、今回は……8ヶ月も経ってないのね。早すぎない?」

 

 とある女神が驚きを滲ませて問いかけると、周囲の神々も「あの戦争を見れば納得だが……」と頷きつつも、どこか割り切れぬ表情で議事の推移を見守った。

 

 二人同時の非常識とも思えるほどの速度によるランクアップという、およそ神々の常識すらも過去にするほどの快挙を前にして、ワカヒルメは周囲の熱視線から逃れるように手で口元を覆った。

 

(実は、すでにレベル6の偉業まで達成しちゃってるんだよなぁ)

 

 ベルディナにとっての真の壁は、強敵を倒すことではなく、その器に見合うだけの経験値を積み上げることそのものにある。

 

 もしその制約さえなければ、わずか2ヶ月に一度のペースでランクアップしてしまいかねないという事実に、ワカヒルメは肩を微かに震わせ、自らの子供(眷属)たちの底知れなさに、背筋を冷たいものが走り抜けるのを感じた。

 

「ってなわけで、二人の二つ名を決めようと思う。なんか意見はあるか?」

 

 ロキの言葉が言い終わるか否かの刹那、バベルの議場を揺るがさんばかりの喝采(どよめき)が爆発し、あまりの勢いに思わず身を竦めたワカヒルメは思わず「ひぇっ」と情けない声を上げてしまい、隣のスクルドにクスリと笑われてしまった。

 

「一つ、質問いいかしら?」

 

 喧騒を切り裂くように凛とした声を響かせ、腕を組みながら鋭い視線を投げたヘファイストスが手を上げた。

 

「なんや? ヘファイストス、珍しいな」

 

「あの子……ベルディナが最後に放った攻撃はなんだったのかしら? 私の目にはいきなり要塞の建物が爆発して、あの子が突然その中心に現れたように見えたのだけど?」

 

 ヘファイストスは、自分の眷属であるスィデロが「最終兵器」の名目で何か作っていたのは知っていたが、それがどのように使うのかを知らず、それをスィデロに問いかけても本人も良く分からないと答えられていた。

 

 仮にもランクアップした鍛冶師が顧客の用途を知らずに武器を打つなどあり得ないと頭を抱えたが、結局それが使われたかどうかも良く分からないという状況だったのだ。

 

「せやなぁ、ワカヒルメ、ウチから説明してもええか?」

 

「いいよ」

 

「さよか……ほな説明するわ」

 

 ワカヒルメからあっさりと許可を取り付けたロキが少し納得がいかないような表情を浮かべつつも、先日の釈明会見で語られた『物理法則』を、割と淡々と神々へと説明を行った。

 

「上空 3万メドルだと……? 正気か、そんな高みでは呼吸すらままならず、常人であれば身体が内側から弾け飛んでしまうだろうに」

 

「なるほど、アレを砲弾したのね。理にかなっているとは言えるけど――普通じゃないわね」

 

「秒速750メドルって、そりゃ、見えねぇわけだぜ」

 

 神々が驚愕に声を震わせ、秒速750メドルという音の壁を突き破る断罪の流星の真実に、議場はかつてないほどの戦慄と、それを成し遂げたベルディナの矮躯に宿る底知れぬ勇気への称賛に包まれた。

 

 流石は超越存在(デウスデア)と言うべきか、オラリオの冒険者ではなかなか納得できないであろう理屈を、神々は素直に受け入れ、それをランクアップに相応しい偉業だったと褒め称えたのだった。

 

「なら私からは、§迅雷(じんらい)§の名を贈らせてもらおうかな」

 

 どこから取り出したのか、葡萄酒の杯を優雅に揺らし、芝居がかった手付きで卓を叩いたディオニュソスが、装飾過多な記号の混じった二つ名を自信満々に提示した。

 

「会議中に酒飲むなや。ウチにもよこさんかい」

 

 ロキはため息をつきつつ、彼の発言になにか異論は無いかと議場を見回した。

 

「§って必要か?」という至極真っ当な疑問が飛ぶも、「そりゃ、必要だろJK」と斜め上の返答が重なり、議場はいつものように本筋を逸れた不毛な議論の渦に呑み込まれていった。

 

「始まったか……」

 

 普段から不真面目な超越存在(デウスデア)たちが、悪乗りという名の熱狂に浮かされる様を目の当たりにし、ワカヒルメは逃げ場のない疲労感に襲われながら、深々と椅子に沈み込んでこめかみを指先で強く押さえられた。

 

 初めての位階昇華に際して徹底的に弄り倒されるレベル2の時とは異なり、レベル3ともなれば多少は尊厳の守られた名が与えられる傾向にあるというが、目の前の喧騒を見る限り、その淡い期待すらも脆く崩れ去りそうだった。

 

「なあ、先にエルティナの方を決めんか? 今までは一般小人族(リトル・ノーマル)やったけど、小人族の聖女(リトル・セイント)って呼んでる子もかなり増えてきたし、もうこっちを正式にしてええとおもうんやけど?」

 

 進行役のロキが、眷属のアリシアから借り受けたばかりの腕時計にチラリと目をやりつつ議場を見渡すと、ざわめく神々へ向かって新たな二つ名を提示した。

 

「まあ、いいんじゃね?」

 

 誰かが投げ槍に応じると、周囲の神々もまた、一様に首を縦に振った。

 

 前回は流石にふざけすぎたという反省が神々の中に若干あるのだろう。どうせ、賢者(セージ)とか、星乙女(リーブラ)とかになるだろうと思って、自分ぐらいふざけてもいいかと一般小人族(リトル・ノーマル)に投票したら、むしろそれが多数派になってしまった訳だ。

 

「流石にあれで一般人はないよね。あの通信機とか、ロキがしてる時計とかもあの子が作ったって噂もあるわよ? いっそのこと、【小人族の匠(リトル・クラフター)】っていう方が妥当じゃないかしらね」

 

 かつての神会(デナトゥス)での騒動を受け、会議の規約に「通信機持ち込み禁止」の項目が追加されたのは記憶に新しく、実際に時計を用いて議事時間を調整するロキの姿は、この技術が今後のオラリオのスタンダードになるであろう現実を神々に突きつけていた。

 

「なんか、小人族の万能者(リトル・ペルセウス)のほうがよくね?」

 

 一柱の男神が思いつきで口にするも、「流石にそれはないだろう」と即座に否定の合唱が沸き起こった。

 

 アスフィ・アル・アンドロメダが保有する万能者(ペルセウス)はオラリオにおいて特別な称号だから、おいそれと増やすことはできない。

 

 それに、エルティナは神秘を使わずにあくまで素材の物理法則を組み合わせた機械製作がメインなのだから、アスフィとは全く逆の存在と言えるだろう。

 

「むしろ、あの戦場を制御しきったのだから、【小人族の司令官(リトル・コマンダー)】と呼ぶ方がよいと俺は思うけどね」

 

 その様子を側で見ていたヘルメスが肩をすくめながらそうつぶやいた。

 

「時計って注文したら売ってくれるものなのか?」

 

 誰もが聞きたがる純粋な問いかけに対して、ワカヒルメは少し申し訳なさをにじませつつ、「すまないが、今は受注を一時停止にさせてもらってるよ。今入ってる分だけでも手一杯だからね」と答え、巻き起こるブーイングをロキが乾いた柏手一つで強引に鎮めた。

 

「んで? 小人族の聖女(リトル・セイント)で文句はないな?」

 

 ロキの最終確認に「異議なし!」という一斉の唱和が返ると、ワカヒルメは張り詰めていた肩の力を抜いて安堵の吐息を深く漏らした。

 

 しかしその脳裏では、真面目すぎるが故に「私には分不相応です」と無表情に辞退しようとするエルティナの姿が鮮明に浮かび、少しだけ苦笑いを浮かべるのだった。

 

「じゃあ、次はベルディナか。んで? 【§迅雷§】以外になにかあるか?」

 

 ロキが、いよいよ本日の真打ちであるベルディナへの新たな二つ名について神々へ意見を求めた。

 

「【§迅雷§】よりも、【☆ミ流星☆彡】のほうが可愛いと思うけど?」

 

「いやいや、せっかくだから【流星☆幼女(メテオアタッカー)】にしようぜ! 力強いだろ」

 

「いやいや、力強いってなら【★着弾★(ビッグバン・インパクト)】一択だろ」

 

「猫の要素は残したいわよね。猛猫(キティホーク)はどう? 以前ワカヒルメがそんなこと言ってなかった?」

 

 女神が提案すれば、周囲の神々からも「あー、確かにそんなことを宣戦布告の時に言っていた記憶があるね」と同調する囁きが波紋のように広がっていく。

 

「いや、あの命を投げ打つような質量攻撃(メテオ・ストライク)を完遂したのだからな。不死身(ナインライブズ)という不敵な響きこそが相応しいだろう」

 

 一柱の男神が腕を組んで力説すると、そこから『猫に九生あり』という諺を交えた議論が白熱し、ついには【九尾の猫】という、可愛らしさと不気味さが同居する二つ名が有力候補として壇上へ押し上げられた。

 

「それって、狐の間違いじゃねーの?」という野次が飛ぶも、「いや、不屈の執念を象徴するなら猫で正解だろ」と斜め上の理屈が通り、議論はいつしか可愛い【☆ミ流星☆彡】を推す一派と、実利を取る武闘派との一騎打ちへと発展した。

 

 やんややんやと収拾のつかない言い合いを経て、最終的に民主主義という名の連帯責任――投票へともつれ込むと、議長のロキは集計用紙をひらひらと弄びながら、その順位を読み上げ始めた。

 

「まあ、順当っちゃ順当な結果やな。……最下位は【§迅雷§】や。残念やったな、ディオニュソス」

 

「残念だよ、ロキ」

 

 提案者の落胆を他所に、ロキは淡々と【不死身(ナインライブズ)】、【猛猫(キティホーク)】と脱落した案を切り捨てていき、最後に残った二つの二つ名を前に、わざとらしく溜めを作ってから高らかに宣言した。

 

「ほな、栄えある一位の発表や! …………ベルディナの二つ名は、【九尾の猫(ナインライブズ)】に決定や!」

 

 その瞬間、議場には納得と祝福を込めた拍手が自然と湧き上がり、オラリオの新たな物語(ミィス)を彩る名が刻まれたことで、本日最大級の議題はようやくその幕を閉じたのだった。

 

 

 







これにて諸事始末編は終了です。
感想欄にていろいろな候補をいただきありがとうございました。
次のランクアップをお楽しみに。


また、今回は1件の評価の取り下げがございました。高評価を入れていただいていた方でしたので、よっぽどの事があったのだと推察します。未熟者ではありますが今後もできる限りがんばって更新していこうと思いますので、どうか見守ってやってください。ありがとうございました。



  ↓↓以下アンケート↓↓

本来プロットになかった秋葉さんが登場して、今後どう動かしていくか全く決まっていません。
ので、アンケートを取ります。

今後の秋葉さんの今後について投票をお願いします。


秋葉さんの方向性

  • 機織り職人専業
  • お蚕の栽培の技術を持っていた
  • レアスキルで戦闘衣の作成ができる
  • サポーターとしてダンジョンアタック
  • まさか、フォトン適性が?
  • 傾国の美女で、男性トラブル多発
  • アイシャと関係が深い
  • 早熟系のスキルが芽生えた
  • 朝廷が取り戻そうとしている
  • 実は、長刀の達人(タケミカヅチ級)
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