ゲーム出身の一般アークスが、オラリオでダンジョンアタックするのは無理がある   作:柳沢紀雪

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若いっていいなぁ(ロリBBA談 ← 誰がBBAじゃ!!)

 

 今日のお夕飯の献立は何にしようかと、市場の品揃えにワクワクしながらバベルから出ようと私はきびすを返した。

 

「君、ちょっと待ってくれ! そこの、えっと……ピンクの髪の女の子、君だよ」

 

 ピンク髪の女の子って結構珍しいよね。私以外となるとちょっと記憶にないなぁと思いながら振り向くと、そこにはダンジョンの帰り際に窮地を救ったばかりの少年冒険者が、肩を激しく上下させながら必死の表情で立っていた。

 

 ちなみに、女の子の方は息切れしすぎていてその場にしゃがみ込んじゃってるね。大丈夫かな?

 

「えーっと。さっきの子達だよね? ちゃんと帰ってこれたんだ。良かった」

 

 MMORPGの辻ヒーラーよろしく、特に声をかけることもなく足早に去ってしまったから、あの後別のピンチに遭遇していないかちょっと心配していたのだ。ちょっとだけね?

 

「うん、君のおかげだ。だから、これを受け取ってほしい」

 

 男の子はそう言って少しすすけた掌に、幾らかのヴァリスをのせて、私に差し出して見せた。

 

「これは、ヴァリス? 別にお礼なんていらないよ? 帰るついでだったし」

 

 最上層で不慣れな新米を手助けすること自体は珍しくもないが、こうしてわざわざ地上まで追いかけてきて対価を支払おうとする人なんて初めてで、私はちょっと混乱している。

 

「いや、これは君が討伐したゴブリンの分だ。俺たちが倒したんやつじゃないから」

 

 なるほどね、そういうことか。律儀な子だなぁ。

 

「うーん。でもそれは、私が横殴りしたやつの分だから、むしろ迷惑料として貰ってくれていいんだけど……そっちの方が面倒じゃないし」

 

 見たところ最近冒険者になったばかりの新人からヴァリスを貰ったとなるとちょっと風聞が良くないよね。先輩冒険者としてはちょっとぐらいはかっこつけたいところなんだけど、それでは納得してくれそうもない様子でちょっと困った。

 

 私は、引き下がる様子のない男の子の肩越しに、未だに激しい喘ぎを繰り返して蹲る女の子へと視線を向けた。

 

「それよりさ、彼女、大丈夫? なんか、呼吸困難になってそうに見えるけど?」

 

 私の言葉に、男の子は弾かれたように隣の少女へ向き直ると、私に向けていた腕を引っ込めて彼女の背を支えた。

 

「ごめん、メイヤ。大丈夫か?」

 

 ふむふむ、こっちの子はメイヤさんというんだね。

 

「だ、大丈夫よ、ジョン……ちょっと疲れただけ」

 

 そして、この男の子がジョンさんか。二人ともいい名前だね。

 

「えーっとね、ここだと目立ちすぎるからさ。あそこの隅にあるベンチで、少し落ち着いて話さない?」

 

 周囲の冒険者たちの視線が、困り顔の私と、疲弊しきった新米の二人に集まりつつあったので、私は場所を変えることを提案した。

 

 

◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇

 

 

 少し年上(に見える)少年少女を引き連れるピンク髪の幼女を、周りからは奇妙な物をみる視線ばかりだったが、隅っこのベンチに座って、メイヤさんが息を整える間、私はひとっ走り近くの売店で三人分の飲み物を買ってきて分けてあげた。

 

「重ね重ねすまない」

 

 ジョンさんはそう言ってまた深々と頭を下げるが、そんなに大げさにしなくていいよと言って、飲み物を無理矢理押しつけた。

 

 スッキリとした甘みのレモネードに炭酸が含まれていて、疲労回復にはもってこいのやつだ。おかげでメイヤさんもすっかりと落ち着いてくれたようで安心した。冷や汗みたいなのが滝のように落ちてたから、脱水症状も心配だったからね。

 

「うん、もう大丈夫。本当にありがとう」

 

「良かった。無理はしないようにね」

 

「うん。ごめんね」

 

 私はジョンさんを間に挟んでメイヤさんの手を取り、そのきめ細かいお肌にしっかりと暖かい血が巡っている事を確認し、ひとまず安心した。

 

「さっきの話しだけどさ、二人は助かったお礼を私に渡したいってことだよね?」

 

「簡単に言うとそうだな」

 

 ジョンさんは深く頷いた。

 

「じゃあさ、二人とも私に雇われてみない? 実はちょっと今困った状態になっててさ」

 

「どういうこと?」

 

 メイヤさんが小首をかしげる。かわいい。可愛い子好きのロキ様が黙ってないねこれは。守らないと。

 

「詳しくは話せないんだけど、仲間のサポーターが半年ぐらいダンジョンに潜れなくなっちゃってさ。仕方なく今はソロで潜ってるんだけど……とにかく魔石の回収が本当に大変なんだよ」

 

 私は、腰の小さなポーチに手をやった。すでに魔石は換金してしまったので空っぽだけど、これに入る魔石の量などたかがしれているということはすぐに理解して貰えるだろう。

 近接職だから大きな荷物を持つわけには行かないから、どうしても魔石を回収する量が減ってしまい、同時に魔石の回収に時間がかかってなかなか効率が上げられないと言うことだ。

 

「つまり、私達が魔石の回収のお手伝いをしたらいいの?」

 

「そういうことだね。もちろんタダじゃないよ、一応日当で5000ヴァリスは支払おうかなって思ってるけど、それでもいい? 二人会わせて5000だから、そんなに大したもんじゃないけどさ」

 

 確か、レベル1の平均的な日の稼ぎが4000ヴァリスらしいから、副業としてはまあまあなんじゃないかな?

 

「――――分かった、それでいい」

 

「ジョン、その言い方はどうなの? あ、私もそれで大丈夫よ。むしろ、助かるというか……」

 

「じゃあ、それで決まり。それじゃ、改めて自己紹介だね。私の名前はベルディナ。これからしばらくの間、よろしく。ジョンさんにメイヤさん」

 

 私は二人と握手を交わすと、明日の朝7時にギルドの受付前で待ち合わせることを告げた。だけど、二人は時計持っていないから時間を言われても分からない様子だった。当然だよね、まだまだ普及段階ですらないんだから。

 

 私は自分の腕時計を外してメイヤさんに手渡し、使い方を説明した。

 

「私は正確な時間が分かるから、しばらくこれを貸してあげる。……いい? 長い針が12を指して、短い針が7になる頃に、ここにいてねってこと」

 

 私の説明を、メイヤさんは本当に真剣な眼差しで聞き入り、カチカチという秒針の音に耳を傾けながら、何度もうなずいていた。。

 

 集合時間も定まったので、今日はこのまま解散となり、私はその足で市場へと足を向ける。

 

「そういえば、お互いにどこのファミリア所属か言わなかったな……まあ、いいか。そのうち分かるでしょ」

 

 まあ、ダンジョンで一緒に行動していたらどこかで話すこともあるだろうから、その時でいいか。

 

「あ、そうだ。メイヤさんに新しい時計を渡しておいた方がいいかな。試供品みたいなやつでもいいかな?」

 

 帰ってエルティナにお願いしないといけないね。最高級品は200万ヴァリスで、冒険者向けの普及品が20万に設定しているけど、さすがに駆け出しの冒険者には辛いお値段だろうし。軸受けに安いと、半年ぐらいで摩耗して使い物にならなくなるらしいから、それ以降使い続けたければ製品版を買ってねという事もできるし(体験版商法)。

 

 通信機は……流石に無理かな。こればかりはガネーシャファミリアとギルドが管理しているものだから、私が勝手なことをするわけにはいかないからね。アリシアさんと話した、モバイル通信機もまだどうなるか分からないし。

 

「そのうち、一家に一台ぐらいになったらいいけどね」

 

 私はポツポツそんな事を考えながら、市場を巡り、メレン直送の立派なセイゴ(スズキの子供)があったので衝動買いしてしまった。ちょっと高かったけど、これなら、最高のアクアパッツァが作れるなとウキウキしながら絹糸(けんし)の館に戻ったのだった。

 

 

◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇

 

 

「うん、今日も美味しかったよベルディナ」

 

「でしょ? なかなかここまでの魚は出ないですよ。高かったですけどね」

 

 最後に魚とトマト、アサリのうま味がたっぷり入ったスープを、固ゆでしたパスタとともにいただいて、深めのお皿は綺麗に空っぽになってしまった。

 

「本当に美味しかったです。団長は、お料理がすごく上手ですね」

 

 秋葉さんも最後まで丁寧にお箸を操って細かい骨を取りながら静かに口を動かしていた。その洗練された仕草を見ると、実は朝廷ではそれなりの家のお嬢様だったんじゃないかという邪推が生まれてしまうが、それをあえて聞くことはなかった。

 

「では、皿をお下げいたします」

 

 エルティナはそう言うと席を立って全員のお皿を集め始めた。

 

「あ、私が……」

 

 秋葉さんは慌てて自分のお皿を取り上げて、エルティナに手を伸ばしてそれを受け取ろうとした。エルティナは一瞬私に目を向けるが、私が頷くのを見ると落とさないように丁寧に残りのお皿を手渡す。

 

「洗い桶につけておくだけでいいですからね」

 

 秋葉さんの機織りのための大切な指を皿洗いで荒れさせるのも忍びないと思ったが、秋葉さんはそれにはうなずかずに足早にキッチンへと向かっていった。

 

「いやはや、秋葉さんは働き者ですね」

 

 手持ち無沙汰になった私は水屋に行ってポットに茶葉を入れ、お湯を注いだ。

 

「少し、強迫観念みたいなのもありそうだけどね」

 

 ワカヒルメ様は少し心配するようにキッチンへと向かうドアに目を向けている。

 

「仕方ないですよ。やっぱり、新しい環境は慣れないものですし」

 

 注いだお湯から湧き上がる湯気に蒸された茶葉の香りが立ち上がる。

 

「気長に見守るしかないか……ダンジョンの方はどうだった? まあ、君のことだから危なげはなかったとは思うけどね」

 

 ワカヒルメ様は私からお茶のカップを受け取り、一通り香りを楽しんだ後、一口だけ口に含んで「ほう……」とため息をついた。

 

「やっぱり、エルティナがいないと効率が悪いですね。魔石の回収に難儀してます。私、不器用なので」

 

 食後なのでクッキーは出さずに、エルティナにもお茶を差し出して席に着いた。秋葉さんの分はカップだけ用意して、こっちに戻ってきたら改めて入れてあげようと思う。

 

「なるほどね。そればかりはなぁ……」

 

「実は、たまたま助けた新米のパーティーがサポーターとして雇われてくれるみたいでして。明日から、その子達と一緒に潜ろうって話になったんですよ」

 

「なるほどね、いい縁を貰ったね」

 

 ワカヒルメ様は微笑んで揺れ動くカップの水面をジッと見つめている。

 

 それから私はエルティナに、試供品のような耐久度の低い簡易的な時計を二人に供与して、時間を共有したいと話した。エルティナは、一つで良いのなら明後日までには用意できるとのことだったので、お任せすることにした。半年の寿命とは言っても、少なくとも三ヶ月ほどは正確に動いてくれなくては困るので、むしろ調整が難しかったかもしれない。

 

 正確に壊れてくれる製品を作るのはやっぱり大変だね。

 

 誰かと一緒にダンジョンに潜るのも、実はアストレアファミリア救助作戦以来かな。新しい出会いが何をもたらすのか分からないけど、とにかく明日が楽しみだね。

 

 

 

 

 






またプロットにないキャラが二人も出てきてしまった。どうしようかな……



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