ゲーム出身の一般アークスが、オラリオでダンジョンアタックするのは無理がある 作:柳沢紀雪
※割と重要な説明が含まれているので、早めに投稿します。
アッシュは走っていた。理由はシャオからの緊急召集で、ようやく祝勝に関わる一連のイベントが一段落して、かなり遅い長期休暇に入ったばかりのことだ。明日はマトイと一緒に地球のヒツギやエンガ達にも報告に行こうと話していたのだが、その予定はキャンセルせざるを得ない。
「シャオ! ベルディナがどうかしたのか!?」
艦橋に飛び込んだアッシュは、挨拶もせずに叫んだ。
「落ち着いてアッシュ。私もまだよく分からなくて」
先に到着していたマトイがアッシュに近づいて、どうか落ち着くようにとアッシュの手を取って胸に抱いた。
「ああ、すまないマトイ。後、手を離してほしい」
マトイの心臓の感触に、別の意味で戸惑いつつ、気がついたマトイはちょっとほほを染めて、
「ご、ごめんね?」
といって、アッシュの手を解放した。
「いちゃいちゃするんだったら、よそでやってくれない? みんなそろったみたいだね。じゃ、シエラ、説明よろしく」
中心にたつシャオはそんな二人の様子に肩をすくめつつも、すぐに視線を鋭くしてシエラに説明を求めた。
『あんたが説明するんじゃないのか』
モニター越しにマリアがあきれたように言うが、
『適材適所。黙って聞こうよ』
同じく総司令のウルクもモニター越しに発言し、そのほかの参加者、レギアス、カスラ、ゼノ、ヒューイ、クラリスクレイスと、元六芒均衡がそろい踏みのようだ。
この状況をベルディナが見たら、「みんな、大げさだなぁもう……」と言うだろうとアッシュは想像する。
「この会議は最高度の防諜がしかれています。なので、ここでの発言はあらゆる記録に残らないことをあらかじめお伝えしておきますね」
シエラは極力明るい声でそう伝え、その映像をモニターに投影した。
「これは今から数時間前、ベルディナさんが調査をしている惑星の外観です。これといった特徴の無い、荒れ果てた惑星に見えますが……こちらがその現在の姿です」
シエラはその映像の隣にもう一つの映像を表示させ、それが起こる過程をスローでループ再生される。
『まるで、星が突如ブラックホールになったようにも見えるな』
レギアスは重々しい声で現実を伝えた。
『なあ、ヒューイ。ブラックホールって、あんな急にできるものなのか?』
『分からん! しかし、滅多にないだろう。というか、そんなことがあったら危なっかしくて惑星なんて降りられんだろう!!』
ヒューイとクラリスクレイスは相変わらずだ。
『ふぅ……お二人とも、もう少し静かにしていただけませんか。それで、シエラ。具体的に何が起こっているのです?』
カスラは毒舌だが冷静で理知的で、わかりにくいが心配性の一面がある。
「不明です。なぜなら、あれは完全黒体となっているようでして、光波を含めたあらゆる電磁波、粒子、フォトンなどなど、すべて吸収してしまい、内部から情報が一切返ってこない状態です。その点においてはブラックホールに近いですが、重力崩壊が発生した形跡がないので、内部には特異点が存在しないといえそうですね」
少なくとも無限収縮していないのであれば、まだ命の希望はあると言うことだ。
「ねえ、シエラちゃん。ベルディナは、大丈夫なの?」
マトイはおそるおそると言った風に問いかける。
「それも不明です。少なくとも、キャンプシップを初め一切のリンクが遮断されました」
シエラは極力冷静を装っているが、心なしか声が震えているようにもアッシュには感じられた。
「オメガ世界のようなものか、シャオ?」
アッシュはシャオに確認する。ほとんど確信のようなものがあった。経験者であるからこそそう感じられるのだ。
「当たらずとも遠からずといったところかな。ただし、深遠なる闇とは無関係であることは断言できるよ」
「あえて言えば、”夢”というべきでしょうか」
シエラは可能な限りの考察を述べた。
ベルディナの調査報告と、現地惑星の解析データを、シャオとシエラシリーズが集中して解析して出した答えがそれ。
惑星にはかつて高度な文明があり、それは突然にして滅びた。ダーカーの存在があったのかは分からないが、その片鱗となるものは観測できた。
ダーカーによって滅びたのかはまだ分からない。しかし、全球壊滅に至る何かが発生したことは確かだ。
「そして、現在、惑星が時空的に閉鎖されているのは、惑星そのものの意思が関わっているのではないかということです。自らの滅びを逃れ、回避するため、その力を持つベルディナさんに最後の希望を託そうとした。その呼び水になったものが何かは分かりません。あくまでこれは、私達シエラシリーズが出した想像に過ぎません。荒唐無稽と言われても反論の余地はないです」
星の見る夢として、星の持つ記憶がすべて詰まっていて、それは時間と空間を超越して、一つの物語を内部に現している。
まさにオメガ世界がアカシックレコードの記憶を一つの物語として具現化し、そしてハリエットの救いを現実化させたように、星は自ら夢を見ることで自らの存亡――生存の希望をベルディナに託したのかも知れないということ。
あの惑星も、惑星シオンのように何らかの意思をもつ惑星の一つだったかもしれないのだ。
「それは、ベルディナに星が、自身の歴史を改変させようとしているということか」
アッシュは自分が今までやってきたことを思い出す。過去改変は生半可ことではない、自分はシオンやシャオの完璧な演算の元に安全にこなせていたが、それがないベルディナに果たしてそれが可能なのか。
「おそらくはね。全く彼女は、本当に巻き込まれ体質だよね」
シャオは肩をすくめる。何か重要なことがあればだいたいそこには彼女がいるのだ。なぜか分からない。たまたまそこにいる。シオンによる介入があった形跡も確認できない。
『自分で巻き込まれに行ったのも多々あるけどね、あのバカ娘は』
本人はひょうひょうとしていたが、かなり危ない橋を渡っていることも多く、マリアもそれを懸念した。こっちにいれば、いくらでも助けに行けるが、それが無理ならどうすればいいのか。
「それで、俺はどうすればいい?」
アッシュは焦る心を何とか押さえつけ、声だけは冷静さを装った。
「いま、なんとかあれの内部に安全に侵入する方法がないか検討中だ。僕の演算とシエラシリーズの半分を使うから、船団の演算がちょっと手薄になる、その分はマリア達総務部に人材の確保してもらっているところだ」
『だいたいはサラに丸投げしてるけどね。アタシに細かい仕事をさせるんじゃないよ』
「そして、ヒューイ達戦闘部にはいつでも部隊を動かせるようローテーションを組んで貰っている」
『ふははは! 任せろ、俺ならいつでも行ける!』
『おー、私もいつでも行くぞ!』
『あなたたちが行ってどうするんですか。立場をわきまえなさい』
「そして、カスラ達情報部には情報漏洩の対策をお願いしている」
『すでにクーナさんに動いて貰っています。ベルディナさんの失踪がオラクル全体にどのような影響を与えるのか、未知数でありますからね』
『ははは、人気者だなぁあいつは。俺、ちょっと嫉妬!』
『うん? ヒューイは人気者になりたかったのか?』
『俺たちは何をすればいい?』
ゼノは重々しく口を開いた。
「教導部には今はなにも頼むことはないよ。とにかく冷静に、混乱が広がらないよう注意を巡らしてほしい。特にベルディナは訓練生には人気があるから」
『そうか。できることがあったらなんでも言ってくれ』
「シャオ君、私達もいつでも行けるからね」
「ああ、あいつを助けるためならどこにでも行く」
「もちろん、その時が来たら二人には最前線で対処して貰うから。それまでしっかりと英気を養っていてほしい。それと、これはお願いだけど、できる限り船団から離れないか、離れてもすぐに戻ってこれる場所にいてほしい」
「分かった」
『じゃあみんな、言いたいことはもうない? よろしい。私もベルディナにはずいぶん助けられた。本人は「私何もしてませんよ」みたいなことばっかり言ってるけど、そんなことはないよね。だから、絶対に助けよう』
総司令のウルクによって会議はしめられ、船団は新たな状況に対処していく。一人を助けるためにすべてが動く。オラクルはずっとそうしてきた、これからもきっとそうなるだろう。
「星の見る夢」というワードはオメガ世界と言うよりも、クロノトリガーやクロノクロスからの影響の方が強いです。
惑星探査編以降で、各章の時短編(あらすじ)は必要ですか?
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いる
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いらない
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すでにある分も含めていらない
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どちらでもいい