ゲーム出身の一般アークスが、オラリオでダンジョンアタックするのは無理がある   作:柳沢紀雪

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やっと原作オラリオです


迷宮都市オラリオ

 18階層を抜けて、階層主のいない17階層を登り、すっかりとなじみになった16階層より上を、ほとんどモンスターと出会わないようにしてすり抜けて約半日。その間もリザさんと交信テストを兼ねた安否確認をしつつ、もうそろそろ地上かと言ったところ。

 

 上に行けば行くほど人の気配が濃厚となり、時々モンスターに追い詰められては絶体絶命になっていそうな、明らかに初心者という感じのダンジョンアタッカー(仮称)を助けてみて、「ああ、やっぱり人いるんだ」と確認しつつ、ダンジョン入り口の螺旋階段までやってきた。

 

「人、多いね」

 

「どこから湧いて出てきたのでしょうか」

 

「もう、認めようよ。ここは、私達がいたところとは全く別の場所だ」

 

「時間移動をしたとでも言うのでしょうか?」

 

「それは、また後で考えよう」

 

 そして、ようやく螺旋階段を上り終えて、ダンジョンに入るまでは廃墟そのもので、所々灰色の空すら見えていた場所が、立派に整理された応にダンジョンアタッカー(仮称)のための施設に早変わりしていたのだった。

 

「うーん。ファンタジーだ」

 

 文字は、エルティナが解析してくれたお蔭でちゃんと読めるようになったし、周辺の人たちが話す言葉も分かる。

 

 でっかい剣を背負った筋肉だるまの男性に、胸や腰、肘に膝などの重要部分だけを守る軽アーマーを装備した長身のナイスバディな女性に、でっかいリュックを背負ったエルティナぐらいに背の低いおそらく小人族と呼ばれる人々。

 

 皆がダンジョンに入ってダンジョンで糧を得ている人々だと思っていいだろう。

 

「問題は、ダンジョンに入るのに元締めみたいなところがあるかどうかだね。できれば、現地のルールに従っておきたいし」

 

「念のため、周囲の会話から情報を収集しています」

 

 さすがエルティナ、抜け目ない。いろいろ重要なキーワードとしては、冒険者とギルドとファミリアと言ったところか。

 

『ダンジョンアタックする人を冒険者って言うみたいだね』

 

『ギルドはその元締めでしょうか?』

 

『だろうね。ファミリアは……家族? チームみたいなもんか』

 

『眷属と神様というワードも浮上してきています』

 

 神様か、信仰心の高い文化なのかな?

 

『後は、なんだ……【闇派閥(イヴィルス)】? なにか分かる?』

 

『古文書にちらっと出てきたことはありますが、詳細は不明でした』

 

 私達が今起動している情報収集ツールは、こうやって、雑踏をゆっくり歩きながら周辺の会話を収集するだけで、頻発するワードやそれに紐付けられるワードが、風船とそれらをつなぐ糸のようなデザインで表示されていくという仕組みになっている。

 

 聞き込みを行わなくてもある程度の情報収集ができるという便利な世の中になった(オラクル限定)。

 

 ダンジョンの入り口になっている雑踏を歩いているとじろじろと無遠慮な視線を感じるのがちょっといやだったが、まあ、こんなところにピンク髪のでかいツインテール幼女が歩いていたらそりゃ目立つわ。周辺は人種も様々で、エルフや獣人と思わしき人々もいるが、さすがに私みたいにちっちゃい身体の女性は、小人族を除けば存在しないように見える。

 

 それに、人がいるところだからということでフェリシテエーデルもいったんアイテムパックに格納してしまったし、防具(ユニット)もステルス状態で、どう考えてもダンジョンという戦場から戻ってきたようには見えない。

 

 場の雰囲気に合わないからって、ソフィスレーナルから、お洒落な町娘風のプリテールチェルカにコスチュームを変えたのもちょっと失敗だったか。

 

「うーん、服装って難しいね」

 

 OL時代なら、とりあえずスーツ着とけば良かったけど、制服のないオラクルでもいろいろ悩んだのに、今度は異文化の中で適した格好をしないといけないのは骨が折れる。だれか、冒険者用の制服を作ってくれ。

 

「この感じだと、ギルドってところで冒険者登録しないとダンジョンに潜れないってことになるのかな?」

 

「おおむねその通りと思います。おそらくバレないでしょうが、発覚した際のペナルティが予想できませんので」

 

「市外追放処分とかいやだしねぇ」

 

 ギルドの位置も、ダンジョン帰りの冒険者の後を流れに乗ってついて行けばだいたいの場所は分かった。だったら、さっさと冒険者登録したらいいじゃんって思うけど、まず、ちゃんと冒険者に見える格好をしないと履歴書ではじかれるかも知れない。

 

「あとは……身分証か……」

 

「そればかりはどうも……」

 

 この世界が地球やオラクル並みに整った戸籍制度があるのなら、おそらく私達は一般的なパートタイムの仕事すらつけないだろうが、もしもここが古代や中世のような世界観なら、ワンチャンある。

 

「とりあえず、夜まで待とうか」

 

「なにか、案がおありで?」

 

「まあ、結構力業だけどね」

 

 

◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇

 

 

 案があるといっても単純な話だ。人々が寝静まった深夜に夜陰に乗じて馬鹿みたいにでっかい街壁をフォトンパワーキンジラレタチカラを使って、2秒で駆け上り、壁上の通路を飛び越えるように三回転宙返りをして、そのまま市外に降下してヒーローがよくやる三点着地するだけ。どれだけ高所から落下しても大した衝撃を受けないアークスならではの力業だ。この間約5秒なので、たぶん誰にも見つかっていないはず。

 

『どう? 誰か気がついた人いる?』

 

『問題はありませんね。私も地上に降ります』

 

 と言って、エルティナはずっとしがみついていた私の腰からぴょんと飛び降りて、一応各所のチェックをしていた。

 

『各間接箇所に異常なし』

 

「さてと、それじゃ、朝までゆっくりしようか」

 

「直近の門はこちらですので、その近くがよろしいでしょう」

 

「そうだね。じゃ、行こうか」

 

 真夜中なので、HUDの視界を暗視モードに設定していて、真っ暗で何も見えないはずの夜道も昼間みたいな明るさで歩くことができてとても便利だ。

 

 もっとも、暗視モードといっても、地球で使われていた光を何万倍にも増幅させたり、赤外線を使うものとは違い、フォトンを全周に照射してその反射波を観測して画像化させているものなので、どちらかといえばレーダーとかソナーに近い。だから、全く光のないところでも視界が確保できるし、逆にシュアファイアのような目つぶしも意味が無いのだ。

 

「ちょっと人がいるね」

 

「入市待ちの方がたと言うことでしょうか」

 

「テント村になってないってことは、入市自体はそれほど難しくないのかな?」

 

 入市資格がないが、他に行く当てもなく、門外にテントを立ててすごす人が集まって、それがいつの間にかスラム街みたいになってしまうと言うのは、歴史小説やマンガでたまにある光景だ。

 

 あまり人のいないところに腰を下ろして一息つくことにした。

 

「うーん。コーヒー飲みたいけど、火はおこさないほうがいいかな」

 

 いちゃもんつけられても、一昨日おいでといって放り投げてやればいいが、それで門番に目をつけられたくもない。自分が悪くなくても騒ぎを起こしたということで心証はやはり悪くなってしまうのだ。

 

「とりあえず、毛布でも被ってよか。エルティナもおいで。一緒に暖まろう」

 

 別に寒くはないが、人の熱とは落ち着くものだ。エルティナは「仕方ありませんね」というふうに黙って私の毛布の中に入ってきて身を落ち着けた。

 

「そういえば、エルティナ。一つ確認だけど」

 

「なんですか?」

 

 真夜中だからひそひそ話をする。通信機でやりとりしてもいいが、何となく寂しいので声が聞きたくなった。

 

「こっちではさ、私よりもエルティナの方が大人扱いされてるよね?」

 

 周辺の会話を拾ってみると、私達はどうやら、小人族の女性であるエルティナが、ヒューマンの幼女を連れ歩いているように見えているらしい。

 

「客観的にはそのようになっておりますね」

 

 エルティナは、私が幼女扱いされるのを心底嫌っていることを知っているので、ずいぶん言葉を選ばせてしまったようだ。

 

「だから、私は本当に不本意なんだけど、これからはエルティナが私の保護者みたいに振る舞った方がいいんじゃないかなって思うんだけど、どうかな?」

 

 エルティナの意思を問うと言うよりは、サポートパートナーとしてのAIがそれを受け付けられるかどうかという問いかけだった。

 

「…………マスターがそう判断されるのなら、従いましょう」

 

 あ、これは、一瞬思考ループに陥りかけたのを強制終了して状況に流される判断をしたやつだ。これは、人工知能に結構負荷をかけてしまうからやりたくないんだよね。

 

「ゴメンね、辛いと思うけど」

 

「いえ、問題ありません」

 

 と言うことで、保護者が私をマスターと呼ぶのはアレなので、他に人がいないプライベートの時間以外の呼び方を決めることにした。

 

 普通に呼び捨てにするのはエルティナの人工知能的にアウトだったようで、いろいろ話し合って、何とか「お嬢様」と呼ぶことに決めた。これならまあ、いろいろ事情を抱えた幼女を保護する小人族の女性っぽい感じになりそうだと思った。

 

 どういう事情かと聞かれたら、「いろいろあったんです」としか答えられないけどね。

 

 なんやかんや相談をしているうちに夜明けを迎えて、門が開いて門番が詰め所に入った。

 開いた門をちらりと見ると、屈強な男が数名門の脇を固めていて、不法入市者絶対許さんマンみたいに、でっかい槍を構えて直立している。

 

「なんか、強そう」

 

「マスターには敵いませんよ」

 

「エルティナ、呼び方……」

 

「失礼……では、行きましょうかお嬢様」

 

「うん、よろしくね、エルティナ」

 

 私だってちょっとは幼い感じを演出しないと行けないので、ちょっとだけ声を高めにして答えた。いや、マジモンの幼女じゃんこれ(ガチへこみ)。

 

 と、精神的にダメージを食らいつつも、お昼頃には入市の長い列がようやくはけて、私達の番になった。

 

 入市自体はそれほど難し無く、理由を尋ねられたときに、ダンジョンに挑戦するためと馬鹿正直に答えてみたが、それが目的にオラリオに来る者は結構多いのだとか。

 

 後は、二人とも背中を見せて、「神の恩恵(ファルナ)」というものの有無を確認されたが、何のこっちゃよく分からなかった。しかし、周りを見ると結構常識的なことのようなのでいったんは黙っていた。

 

『会話抽出の最優先事行に、神の恩恵(ファルナ)のワードを追加します』

 

 と、すぐにエルティナが対応してくれてありがたい。

 

 後は、通行許可証がないので代わりに入市税を支払うことで許可証を発行して貰い、簡易的だか一応身分証としての機能もあると行って貰えて一安心だ。

 

 そこで、ダンジョンに入るにはギルド本部に冒険者登録をする必要があるらしく、本部の位置も教えて貰い、さらには団員募集しているファミリアもそこで教えてもらえるようだった。

 

「以上だ。ようこそオラリオへ」

 

「感謝いたします。では、行きましょう、お嬢様」

 

 私の代わりにいろいろ話を聞いてくれたエルティナに頷き。

 

「ありがとう、じゃあ、またね」

 

 と門番さんに手を振って、ようやく街に正式に入市することができた。やばい、幼女ムーブが自然にできてしまった、癖にならんように気をつけんと(手遅れです)。

 

 まあ、ええねん。こうしてると相手の警戒心下がって、上手くいったら飴ちゃん貰えるかもしれへんから(実家は兵庫県)。

 

 と言うことで、端から見れば奇妙な二人組のオラリオ生活がやっと始まったのであった。

 

 

 

 




本人は自覚していませんが、主人公は割と寂しがり屋です。

いちおう、これで正式にオラリオに入ることができました。やっと、物語が始まりそうですね!

惑星探査編以降で、各章の時短編(あらすじ)は必要ですか?

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