ゲーム出身の一般アークスが、オラリオでダンジョンアタックするのは無理がある   作:柳沢紀雪

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ようやくスタートラインだ

 料理ともいえないようなクズ野菜のスープに石よりは多少柔らかいぐらいの黒パンを浸して食べて、人心地付いたところで女神様が訥々と語り始めた。

 

 聞けば、「朝廷」という極東の国家ファミリアでの政争に巻き込まれて国を追放されてしまい、一念発起してオラリオに流れてきたとのことだ。オラリオは懐の深い街だ。だから、自分みたいな都落ちでも何とか這い上がることができるのではないかと希望を持ってきたはいいが、結局落ちるところまで落ちてしまったと言うことだ。

 

「全然眷属も集まらなくて、何とかバイトで食いつないでたんだけど、とんでもないへまをやっちゃって、借金こさえて……それまでの蓄えも全部なくなって、宿にもいられなくなって……うぅぅ……」

 

 話しているうちにまた悲しみというか情けなさが込み上がってきたようで、まぶたに涙が浮き上がってきているようだ。

 

「大変でしたね。でも、泣けるだけの水分がまだありますから」(イミフ)

 

「意味が分かりませんよマスター」

 

 仕方ないじゃん、こんなガチの困窮者になんて声をかければいいんだっての。

 

「まあ、ここはまだ人がいないので落ち着くまでいていいですよ……っていっても、私の土地じゃないんで偉そうなこといえませんけどね。境遇も似たようなものですし」

 

「ありがとう、二人とも」

 

 一応借金は全部蓄えから返し終えたとのことなので、それだけは幸いだった。

 

「女神様は、どのようなファミリアをお作りになる予定ですか?」

 

 エルティナが女神様に問いかけた。それは、重要なことだ。

 

「そうだね。その前に……私はワカヒルメっていうんだ。極東のアマテラス様の率いる国家ファミリア『朝廷』に使えていた諸々の神の一柱にして、神衣の服織女はたおりめさ。まあ、政争に巻き込まれて追放されちゃったんだけどね」

 

「ワカヒルメ様ですか」

 

 どうしよう、私の知らない神様だ。天照大神に仕える女神といったらアメノウズメぐらいしか知らんぞ、私。

 

「そう、それが私の名前さ。私の目標は、オラリオ屈指の機織り職人のファミリアを作ること……だった、今ははかない夢になりつつあるけどね」

 

「そうですか。職人系だと、やっぱり探索系の冒険者は入りにくいですね」

 

「今となってはそんな贅沢の言ってられないけどね。だけど、やっぱり職人がほしい。織機がほしいんだ」

 

「うーん。では、どうでしょう? ここは持ちつ持たれつといきませんか?」

 

「どういうことだい?」

 

 ワカヒルメ様は、エルティナが自主的に入れてくれたお茶を一口飲んでおいしそうにほほを緩ませた。いいぞ、これで話を通しやすくできたかも知れない。

 

「ワカヒルメ様は職人がほしいけど、お金もなければ住む家もない。私はダンジョンに入りたいけど神様がいなくて、お金もなければ住む家もない。なんか、境遇似てませんか?」

 

「つまり……君がダンジョンに潜ってヴァリスを稼いで、それを資本にして私のファミリアを作るってことかい? それじゃ、君が損をしすぎだろう。第一、私は、たとえ君とファミリアを作ったとしても、君以外に探索系の冒険者を入れることは無いと思うよ」

 

「私はあくまでダンジョンに潜ることが目的なので、日々の生活ができればそれでいいっちゃいいんですよ。まあ、装備を調えるためのヴァリスは必要になるかもですけど」

 

 まあ、装備はアークス製品があるから必要ないとは思うが、今はそう言っておこう。

 

「神さえいればダンジョンに潜れる……か。君もいろいろ事情を抱えてるんだね」

 

「どうでしょう? 悪い話では無いと思いますけど……どちらにせよ、この先はもう何の当てもないんでしょう?」

 

「痛いところ突くなぁ。その通りだよ。じゃあ、君の慈悲にすがることにするよ。どうか、私を助けてほしい」

 

 そう言って、ワカヒルメ様は私に手をさしのべてくれた。

 

「よろしく願いします。あ、エルティナもね」

 

 私はその手を握り、そしてエルティナもそばに呼んだ。

 

「よろしくお願いいたします」

 

 エルティナも小さな手をワカヒルメ様に差し出し手を握り合った。

 

「しかし、キミ達はどういう関係なんだ? ヒューマンの子供に小人族の女性が付いてるなんて、ちょっと普通じゃないよ」

 

「まあ、表向きはエルティナに保護者をして貰ってるんですけど……実はですね、私、こう見えて20歳をこえてるんですよ。証明できないですけどね」

 

「そうなんだ……嘘はついてないね。それだとずいぶん苦労したろうに」

 

「そうか、神様に証明して貰えば良かったんだ……。まあ、いろいろありましたよ。あ、それとエルティナは身内以外のところでは私のことを「お嬢様」って呼ぶので、びっくりしないでくださいね」

 

「お嬢様か、なかなかいいんじゃない? 似合ってるよ」

 

「私の神様の目は節穴でしたね」

 

 とりあえず、細かいことは明日にして今日は寝ることにした。ともかくぎりぎりのところで先がつながってホッとした。ワカヒルメ様もようやく一歩が踏み出せただろうから、これからどうしていくのかはゆっくり決めていけばいい。ともかく、この廃墟から一刻も早く抜け出すことだけを今は考えよう。

 

『リザさん、聞こえますか? ようやくめどが付きそうですよ』

 

 寝る直前にリザさんに通信を送っておいた。

 

『そうか、無理はするな。私はいくらでも待つことができるからな』

 

 ふむ……、リザさんにとってダンジョンは快適な場所なのだろうか。リザさんの言葉には強がりとか無理しているような感じがないので、ちょっとそう思った。

 

 

 




まだ、神の恩恵は受けていません。

※ワカヒルメ様について活動報告で簡単に説明していますので、よろしければどうぞ。

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