ゲーム出身の一般アークスが、オラリオでダンジョンアタックするのは無理がある 作:柳沢紀雪
朝起きて、隣に黒髪美人が眠っているのを見てちょっと驚いた。そして、すぐに、昨晩神様と契約を結ぶことができたことを思い出し、安堵した。
私はエルティナとともにワカヒルメ様を起こさないようにテントから出て、最後の朝食をいただくことにした。
「これが最後の食料です。ヴァリスも底をつきましたので、本当の最後です」
「今日、ダンジョンに潜ってヴァリスを稼げるかどうかが生死の分かれ目ってことだ」
「ワカヒルメ様もおそらくは無一文でしょうから。私達が頑張りましょう」
「そうだね。そろそろ煮えたかな?」
小鍋の蓋を開けて、いいにおいが漂い始めたところでワカヒルメ様が起き出してきた。
「キミ達は……ああ、よかった。夢じゃなかったんだね」
「おはようございます、ワカヒルメ様。お食事を用意しますね」
「ほんとうに申し訳ない」
「いいですよ、ファミリアですから」
と言うことで、わずかな食料を三人で分けて、すぐに朝食は終了した。
「それじゃ、いよいよだね。
「はい、ギルドで一通りは。神様から血を貰って、なんかスゴい力を得るんですよね」
「まあ、だいたいあってる」
私達は一応確認の意味も込めて
「なるほど。定期的にワカヒルメ様からステイタス更新を受けないとアビリティというものが上昇しないのですね」
「少し面倒だけどね。だけど、それは神と子供達の大切な交流の一環だからね」
「それで、背中を見せればよろしいですか?」
「頼むよ。できれば横になった方が楽だけど」
「じゃあ、テントにいきますか」
「準備をします」
といって、エルティナが先にテントに向かって毛布を整えてくれた。私は上着を脱いで肌着と共にホックを外してうつぶせになり、ワカヒルメ様がそれにまたがるように乗っかってきた。
「重かったら言ってくれよ」
「大丈夫ですよ」
「ありがとう。それじゃ、いくよ」
ワカヒルメ様は、エルティナから小さなナイフを借りて指に小さな傷をつけて血を私の背中に垂らした。
何かが私の背中に描かれていく感触とそこから徐々に広がっていく熱がまるで身体の奥深くに浸透していくように思え、それがさらに自分では認識できない領域まで深く根を下ろしていく。
魂に恩恵を刻みつけているというのだろうか、あるいは私のフォトンそのものに神様の力がなじまされていくような感触すら覚えた。
――そして、次の瞬間、目の前に宇宙が広がっていた――
『あなたには、とても申し訳ないことをしてしまいました』
その声はどこか懐かしくも初めて聞く声だった。
『シオン……ではないね。誰? 私が知ってる人?』
『私は人ではありませんが、意識のある一つの個体でもあり、すべてを包み込む全でもあります。あなたを、このような状況に追いやった原因ともいえる存在』
不思議な存在がいきなり謝ってくるのならそれはシオンだろうとつい思ってしまったが、そもそもシオンはすでにこの世界から向こう側に旅立ってしまったし、クラリッサに残っていた残留思念もまた、ペルソナと共に原初の宇宙に融合してしまっているはずだ。
それに、何というか、存在そのものが圧倒的に違うように思えた。
『しかし、どうか、覚えておいてください。私にはもう、こうするしかなかった。あなたが経験した滅びを免れるために私はこうするしかできない。あなたには大変な苦労と苦痛、悲しみを与えることになってしまうでしょう』
『まあ、そういうのは慣れてるからいいけどさ。もうちょっと具体的に教えてくれない? 私は何をすればいいの?』
とりあえずゲームクリアの条件が知りたいのだ。
『あなたはあなたの思うままに行動し、そしていずれ登ってくる闇を再び大地に眠らせてほしい。ただそれだけです』
『うーん、ダーカーとかダークファルスのにおいがプンプンするなぁ。まあ、だけど、いいよ。それが私達の使命みたいなものだからね』
『ありがとう。あなたにはできる限りの祝福を与えましょう。今の私には微々たる力しかありませんが、必ずあなたを助けてくれるはずです』
徐々に宇宙に光が差し込んできた。目覚めの時は近いのかも知れない。
◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇
「ベルディナ! 大丈夫かい?」
ぽんぽんと肩をたたかれる感触に私は沈み込んでいた意識をすくい上げられていく。
「うーん……」
何というか、白昼夢というか、疲れたときに見るマジで訳ワカメな夢に似ている感触だ。目が覚めたらちょっと頭痛にも似た感触がとてつもなく不快なやつ。
「なんだか、意識を失ってたみたいだけど。大丈夫かい?」
「むむ……、大丈夫です。ちょっとうとうとしてただけみたいですね」
たぶん夢を見ていた。結構、重要そうな夢だったけど、忘れた。だけど、私はちゃんと見守って貰えていると思える程度には感触は残っている。
「ふぅ……恩恵は刻めましたか?」
「つつがなくだ。次はエルティナの番だね」
「だってさ、準備は大丈夫?」
「いつでも行けます」
すでにエルティナは上着を脱いで背中を出して待機していた。
「エルティナって、キレイな肌だよね」
普段はお風呂とか一緒に入ってくれないので、割とエルティナの肌を見るのは貴重なのだ。
「早くお願いします」
「じゃあ、早速……ん? 君は……なんだか……まあいいや」
と、ワカヒルメ様は、正座をして、エルティナをその上に寝かせてから、手早く血を垂らして印を描いていく。途中で少し怪訝な目をしていたが、二回目ともなれば手慣れたもので、すぐにそれはエルティナの肌になじんで消えた。
「ん~、一応刻めはしたけど……君は、本当に人間なのかい? 魂は宿っているようだけど、なんだかちょっと構造が違うような……」
うーん。これは、エルティナの特殊性がバレちゃったかな?
「マスター。正直に話した方がよいと思います」
「そうだよね。神様に隠し事はしたくないからね」
エルティナがそう言うのなら隠すことはないだろう。
ということで、私はエルティナがサポートパートナーというロボットであることをワカヒルメ様に説明した。人工的に作られた機械、ロボットという言葉はこの世界ではなじみがないはずだが、なぜかワカヒルメ様はある程度納得できた様子だった。
その流れで、実は自分たちはこの星の人間ではなく、オラクル船団という宇宙を旅する集団の一員で、ここにいるのは時空間のゆがみに巻き込まれて漂着してしまった(嘘ではないが本当ではない)ということを説明した。その辺は、いろいろ説明が難しいのでエルティナに丸投げすることになってしまったが、上手いこと説明できているだろう。
「なるほど……いや、全然理解できていないけど。少なくとも嘘をついていないことは確かだ」
神様は人間の嘘を見抜くことができるらしいので、説明がかなり難しかった。まあ、別に全部話してもいいんだけどね。
「そうか。だからか……エルティナなんだけど、ちょっと特殊なことになっていてね。感覚的なことで申し訳ないんだけど、ベルディナとつながっているというか……ひっついているというか……とにかく妙なことになってるからちょっと気をつけておいてほしい」
「なんか、よく分からないですね」
「ゴメンね、私もよく分かってない」
「私はどういたしましょうか?」
「すぐさま命に関わる物ではなさそうだから。とにかく様子見でお願い。少しでも妙なことがあったら包み隠さず知らせるんだよ。神に嘘は通用しないからね?」
「承知いたしました」
エルティナと私達の来歴についていろいろあったが、まあ、何とか受け入れて貰えたようだ。もちろん、他の神々には絶対に秘密にするよう厳命されたけどね。下手したら追放……と言うことではなく、俗物な神々のおもちゃにされかねないということだ。ルーサーかよ。
「まあ、なんにせよ、コレで二人とも私の眷属になってくれたってことだ。本当にありがとう、これから私も頑張るから、よろしくお願いするよ」
ワカヒルメ様は、改めてテントの床に正座して三つ指ついて頭を下げた。
「私も、よろしくお願いします。本当に助かりました」
「感謝いたします」
神様ばかりに頭を下げさせては眷属の名がすたるので、私も深々と頭を下げて答える。
いろいろややこしいことはあったが、ようやく私も冒険者としての一歩を踏み出せたわけだ。
――私達は、ようやく登り始めたばかりだからね。この、はてしなく遠いダンジョン坂を――
その後、早速ギルドに冒険者登録をしようということで、意気揚々と三人で教会を出発したのだった。
ベルディナ Lv1
力 I 0
耐久 I 0
器用 I 0
敏捷 I 0
魔力 I 0
≪魔法≫
【】
【】
【】
≪スキル≫
エルティナ Lv1
力 I 0
耐久 I 0
器用 I 0
敏捷 I 0
魔力 I 0
≪魔法≫
【】
【】
【】
≪スキル≫
まだ、魔法もスキルも発現していない真っ白な状態です。
惑星探査編以降で、各章の時短編(あらすじ)は必要ですか?
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いる
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いらない
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すでにある分も含めていらない
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どちらでもいい