ゲーム出身の一般アークスが、オラリオでダンジョンアタックするのは無理がある   作:柳沢紀雪

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私の話をしよう――Ep1

 退院して孤児院に入らずに全寮制のアークス訓練校に入校できたのは幸いだったとは今でも思う。

 

 衣食住が完全に保証されていて、しかも一般教養や技能講習まで無料で受けさせてもらえるなんて、元いた世界では考えられないことだ。

 

 といって、元の世界もそんなに悪いところではなかった。セクハラ上司がいた以外は悪くない職場だったし、繁忙期は終電まで残業せざるを得なかったが、その分残業代はそこそこのものはもらえたし、ボーナスにもちゃんと反映してもらえたし、閑散期は無理せず定時で帰る日もすこしはあったぐらいだ。

 

 小さい頃に両親を亡くして、親類の家を転々として何とか社会に出られたが、高卒にしてはよいところに潜り込めたと思う。まあ、くだんのセクハラ上司は高卒を馬鹿にするようなクソ野郎だったわけだが。

 

 元の世界に未練は無いかと言われれば、たぶん今でも未練はある。こっちの生活も充実しているので普段は感じないが、ふとしたきっかけで思い出せば、数日は思い悩むことはざらにあった。

 

 まあ、それはおいておくとして、それから十年ぐらいはあっという間に経過して、いよいよ一つの結論が出る時が来た。

 

 

◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇

 

 

 アークス入隊最終試験。ナベリウスで行われるそれは、私だけではない、多くの人の将来に大変な影響をもたらした。

 

 訓練校でアフィンという男の子がいることは知っていた。無理に知り合いにいくことはしなかったが、何度か訓練で一緒になることもあり、お互いに名前を知り合う程度には仲良くなったと思う。

 

 そして、試験にのためにナベリウスに向かう船で、対面に座っていた青年を見て私はようやく確証を得た。

 

 おそらく、私はこの青年――アッシュをサポートするためにこの世界に導かれたのだ、と。

 

 ゲームと違い、訓練はペアではなくチームで当たることになり、ゲームでは黒歴史として、存在自体が葬り去られた黒人ニキの姿も見えない。この時点でちょっといやな予感はしていたが、その後アッシュがなにかに警戒するように何もない空間に向けてソードをかざしたところで事件は起こる。

 

 

 それが私の生涯において絶対に忘れることのできない記憶であり、今でも大きな傷跡となった事件だった。

 

 

 何の前触れもなく突如出現したダーカーに、一瞬で包囲されて殲滅されていく仲間達。

必死になって体勢を立て直そうと指示を飛ばすオリベ教官も、背後に出現したダーカーの一撃で命をつぶされ、完全に恐慌状態になったチームはそのままダーカーの集団に蹂躙された。

 

 足下に転がる硬くて丸いものが何だったのか、脳が理解を拒否していた。

 

 無我夢中でテクニック――このときはまだフォイエしか憶えていなかった――を放つも、気がつけば孤立していて、死を覚悟したが、その命はアッシュとアフィンに助け出される。

 

 このとき、私にとって二人は仲間、友人を超えた命の恩人となった。

 

 その後、這々の体で逃げ出して、洞窟になっている岩のくぼみに逃げ込むも、飛行型のダーカーに見つかって、また逃げて、私はもう頭を抱えて泣き出したかったけどその余裕すらなかった。

 

 なんでフォースじゃなくてテクターを選んでおかなかったのか後悔もした。

 

 そして、ぎりぎりのところでゼノ先輩に助けられたのは、ゲーム通り。その後、マトイちゃんを救助して、【仮面】の襲撃を受けてゲッテムハルトに助けられたのか、因縁をつけられたのか分からない出会いをして、ようやくアークスシップに戻るとアークスに任命されていたと言うことだ。

 

 怒濤の一日過ぎて、それから二日ぐらいは放心状態でちょっと記憶が曖昧だ(一応、アークスとしての仕事はしていたらしい)。

 

 そして、なぜか知らないが私はアッシュとアフィンとチームのようなものを組まされて基本的にはその三人で動くことになった。

 

(イケメンの間に挟まる幼女……なんだかなぁ。同い年だけどね)

 

 この頃にはすこしは背は伸びたが、せいぜい10歳児程度で、アッシュとアフィンに比べると年の離れた妹にしか見えなかっただろう。

 

 しかし、胸とおしりはちゃんと成長して、お腹は引っ込んで腰のくびれも満点取れるぐらいの、背丈さえ無視すればナイスバディ(死語)の美少女に見えなくもない。

 

 それでも、アークスとしては割と平均的というのが恐ろしい。美形が多すぎるんだよ、オラクル船団は。

 

 そして、いくつかの任務を一緒にしたところで、いやな予感が現実になったことを目の当たりにした。クラリッサ(本体)の直接入手である。

 

 本来なら、クラリッサの部品をいくつかの重要なストーリーをこなすことで集めて、最後にジグ爺さんに直してもらうのがゲームの流れだが、それらをすっ飛ばして、機能不全に陥っているといえ、すでに完全な形状となっているクラリッサを、何の変哲も無い洞窟で突然発見したのだ。

 

(やばい、エピソード・オラクルだ、これ。アニメの……)

 

 エピソード・オラクルとは2019年から2020年にかけて放映されたPSO2のアニメ作品だ。

 

 全体的なデキは結構良くて、割と冗長的で難解だったゲームのストーリーを上手くまとめていて、ゲームファンの私でも十分楽しめたものだったが、それが現実のものとなると話は違う。

 

 その後もアッシュ達について回り、ついにはダークファルス【巨躯(エルダー)】の復活による第二次エルダー戦争から、暴走した造龍であるハドレッドとそれを殲滅する六芒の零であるクーナちゃんの戦いと別れを間近で経験し、一つの結論を下さざるを得なかった。

 

 

 

――この世界はグランドエンドにつながっていない――

 

 

 

 なぜなら、現在のオラクルは龍族との交流がない。それはつまり、コ・レラが仲間ではなく、ロ・カミツの助力を得られていないということ。

 

 つまり、終の艦隊戦でシャオの新たなコアとなるはずのカッシーナを得られず、終の艦隊に対して有効な反撃手段を得られない可能性が高い。

 

 そして、この先歴史がエピソード・オラクルと同じ道を歩むのなら、惑星ハルコタンのスクナヒメの助力を得ることも不可能だろうと言うこと。

 

 つまり、終の女神シバとの最終決戦においてスクナヒメの結灰陣と、灰による守護輝士(ガーディアン)の保護と、フォトンの一極集中が不可能となり、二人はシバに負ける……可能性が高くなる。

 

 

 ひょっとしたら何とかなるかも知れない。表立っていないだけで、シャオがロ・カミツと交流があるかも知れないし、結灰陣についてはシャオが似たようなものをエミュレートできるかもしれない。

 

 しかし、その可能性にかけるにはあまりにも頼りないし、コ・レラがいなければ高い確率でマリアとヒューイが犠牲になるだろう。あの二人は、PSO2では特にお気に入りのキャラだっただけではなく、この世界においてもそこそこお世話になっているので、見殺しには絶対にしたくない。

 

 私に何ができるのか。このときにはまだ分からなかった。

 

 

 

 

 

 






主人公は、それほど頭は良くないです。

惑星探査編以降で、各章の時短編(あらすじ)は必要ですか?

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