ゲーム出身の一般アークスが、オラリオでダンジョンアタックするのは無理がある   作:柳沢紀雪

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武器を探して

「うわっ……私の装備、強すぎ……?」

 

 と、口を両手で覆って目を見開くお姉さんのCMチックなネタを披露しつつ、さて、本当にどうしようかと真剣に考える。

 

 OL時代は、悩んだときはとりあえずガチャを回して心を落ち着かせたものだが(ソシャゲ依存症)、こっちではそうはいかない。せめて街をぐるぐる散歩して回る程度だ。PSO2は遊びじゃないので、常に真剣に向き合う必要がある(意味不明)。

 

 街を散歩するだけじゃ銭は稼げないので、5階層あたりで人の来なさそうな場所をぐるぐる巡回することにした(いつも通り)。エルティナは拠点の掃除をしていると思う。

 

「うーん。いっそのこと、サンプルとして提出予定だった拾いものの剣を使うかなぁ」

 

 ちょっと周りを見渡して、私以外に人がいないことを確認してから、アイテムパックを起動して、過去のオラリオ遺跡で見つけたでっかい剣を取り出して片手で何度か素振りをしてみた。

 

 アッシュが愛用しているコートエッジと長さやバランスがとてもよく似ているそれは、ダンジョンの明かりを反射して鈍く輝き、宝石や唐草模様などが一切施されていない無骨な作りだが、それがかえって芸術的な美しさを感じられる一品となっている。

 

 現地調査で発見した遺物は、基本的にオラクルの所有物となるが、調査が終わり安全性が確認されれば、申請の後、定められた金額を支払えば自分の者に出来るから、これは是非手に入れたいと思っていた。

 

「本当はアッシュにプレゼントしたかったけど、仕方ないよね。本格的に使うならメンテは必要か……そういえば、武器屋とか行ったことなかったね」

 

 まあ、このときちょっと考えれば気づけていたはずなのだけど、遙か昔(推定で1000年ぐらい)に滅びた文明の遺跡でここまで美しいまま残された刀剣が、ただの一般的な武器であるはずがないというのは当然といえるわけで……それほど大きなトラブルにはならなかったのは幸いだったよ。

 

 

◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇

 

 

 そんなこんなで、ダンジョンから帰還して、魔石の換金ついでに、武器のメンテをしてくれるような武器屋はないかと受付の担当に聞いてみると、ちょっとした有名どころを紹介してもらえた。

 

 見せた武器は結構業物に見えたので、初心者向きの安い武器屋では荷が重いだろうとのことだった。

 

「えーっと、ゴブニュ・ファミリアは……あ、ここだ。意外に小さい?」

 

 見た目は、ぎりぎり中堅どころに見えるが、主神様が結構頑固な職人さんらしいので、第一級冒険者も顧客として多く抱えているようらしい。すごい。

 

「そんなところが、零細もいいところの私なんて相手にしてくれるかなぁ」

 

 心配になりつつもとりあえず店の扉をたたいた。

 

「こんにちは-、すみません、剣の修理をお願いしたいんですけど……、あ、ここで買った物じゃないです。拾いもので…………だれが作ったのかはちょっと分からなくて……あ、これです、はい……」

 

 さすがに店頭でアイテムパックから出すわけにはいかなかったので、念のために布でぐるぐる巻きにして、なるべく邪魔にならないように背負ってもってきた。

 

 小さい私との対比でやたら大きく見えただろうが、実際にこの剣は成人男性の身長並に大きいのだ。ダブルセイバーじゃないからコレでもまだマシな部類なんだけどね。

 

「それ、剣だったのか」

 

 と、受付のお兄さんもちょっと面食らったようだ。

 こっちでも、これぐらい大きな武器を使う人は珍しいってことなのかな? まあ、確かに、狭いダンジョンででっかい武器は邪魔になるか。

 

 受付のお兄さんは、私が片手で軽々と持ち上げるものだから、無警戒に受け取ってしまい、ちょっと腰をやってしまったようだ。大丈夫? レスタする? 今日はエルティナを連れてきていないので、また後日になるけど。

 

 何とか他の人も呼んで貰って、二人がかりで運んで安定したところに置いたところで布をはがして、職人と思わしきお兄さんがちょっと息飲んだ雰囲気を感じた。

 

「こいつはまた……職人泣かせな……」

 

「ああ、ここまでメンテしてねぇ剣も久しぶりに見たぜ」

 

「俺、涙出てきた」

 

「あ、そっち?」

 

 メンテについては仕方が無い、推定でも数百年は土に埋もれてたんだから、さびだらけになってないだけマシだろう、などとはいえないので黙ってた。

 

「騒がしいぞ。何があった」

 

 騒いでいるのをとがめるように奥から老師みたいなおじいちゃんが出てきた。出で立ちから言うとこの人がゴブニュ様なのだろうか?

 

「ゴブニュ様、この剣なんですが」

 

「ふん。久しぶりにひどいものを見るな。数十年……いや、数百年ぐらいか。誰のだ?」

 

「あ、私です」

 

 私は、思わず手を上げた。ゴブニュ様は、しばらく周りを見回して、ようやく視線を下げて私と目を合わせてくれた。悪かったね、背が低くて。だけど、ゴブニュ様のまなざしは、厳しくもあり誠実で、職人としての頑固さのなかにも確かな純粋さもあり、なんというか、お腹の奥がちょっとゾクッとした。

 

「どこで手に入れた?」

 

「えーっと、とある遺跡に埋まってました」

 

 神様相手なので、できる限り嘘をつかないように注意して説明し、何とか納得して貰えた。

 

「まあ、そういうことにしておこう。それで、これを使えるようにするのか?」

 

「できれば、はい、そうです」

 

「ふむ……おい、ここを見てみろ」

 

「なんですか? え? これ、ヘファイストス様の?」

 

「そういうことだ、うちでは扱えんな」

 

「えっと、話が見えないんですけど」

 

 詳しく聞くと、剣のわかりにくいところに『ヘファイストス』という刻印がうっすら刻まれているらしい。

 

「ほんとだ、気づかなかった」

 

「さすがに、よそのファミリアの武器を扱うのはちょっとなぁ」

 

 うーん。あれか、HONDAの車の修理をTOYOTAの修理工場が請け負えない感じか(たぶん)。じゃあ、そのヘファイストス様のファミリアにいかないとダメってことだ。二度手間だなぁ。また説明しないといけないのか、めんどい。

 

「ふむ……おい、紹介状書いてやれ」

 

 するとゴブニュ様が私があからさまに顔をしかめたのを慮ってか、紹介状というのを書いてくださるようだ。

 

「はい!」

 

 とりあえず、受付でヘファイストスファミリアについて説明を受け、紹介状まで書いて貰った。一応、紹介料としてわずかなヴァリスを包んで、紹介されたヘファイストスファミリアの工房へと向かっていく。ちなみにでっかい剣は職人さんが丁寧にまき直してくれた。優しい。

 

「さてと、鬼が出るか蛇が出るか」

 

 出来れば、手持ちのヴァリスだけですめばいいんだけどね。

惑星探査編以降で、各章の時短編(あらすじ)は必要ですか?

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