ゲーム出身の一般アークスが、オラリオでダンジョンアタックするのは無理がある   作:柳沢紀雪

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いわゆるスコップ武器

 あれから3日後、エルティナと50万貯めるにはどうしたらいいかをみっちりと話し合って、現在の稼ぎでは数年はかかるという答えに至り、ちょっと頭痛がしたところで、安い方の武器の引き渡し日になった。

 

 といっても、階層を重ねていけばその分手取りは増えるだろうから、思いっきり甘く計算すれば1年ぐらいで何とかなるんじゃね? ってことで、いったんは楽観視することにした(現実逃避)。

 

「さてさて、いるかな? こんにちは、スィデロさん、いますか?」

 

 分厚い木の扉をげんこつで思いっきりたたいて、家主の名前を怒鳴る。

 

「うぉーい。ちょっとまってな!」

 

 私の何倍ぐらい彼の大声が中から響いて、しばらくすると、小柄で筋肉質なひげ面がヌッと扉から出てきた。

 

「おう、お嬢さんか。入りな、完璧に仕上げといたぜ」

 

 といって、早速工房に入らせて貰った。

 

「結構熱いですね」

 

「ああ、さっきまで打ってたからな」

 

「仕事熱心ですね」

 

 もともと来客用には作られていない工房なのだろう。煙とかは煙突から外に出るようになっているが、釜や炉から出される熱を遮断するような装置は見当たらない。扇風機ぐらいつければいいのに。

 

 私の場合は生命維持装置のお蔭で溶けた鉄につけ込まれても多少ダメージを食らう程度ですむから問題ないのだが。

 

 相変わらずお茶も出さずに、本人は水瓶から柄杓で直接水をがぶがぶやって一息ついたようだ。汗をかいたらちゃんと塩とかのミネラルも取った方がいいよ。いや、酒好きのドワーフのことだ、いつも塩辛いつまみばっかり食べてるから、むしろ汗で塩を抜いた方がむしろ健康にいいのかもしれない(ド偏見)。

 

 と、アホなことを考えていると、その間にスィデロさんが汗をぬぐいつつ奥の方から一降りの剣を持ってきて、目の前の作業台に置いた。

 

「これですか?」

 

 と言って、私は一応許可を貰って剣を取り上げ、鞘から刀身を抜いて天井にかざしてみた。装飾のたぐいは一切無いし、何らかの刻印もない、本当に無骨な、ある意味数打ちに近い剣だが、やっぱり丁寧に仕上げて貰ったような雰囲気は漂ってくる。

 

「うーん……素人並みの感想しか浮かびませんが、いいとおもいます」

 

 最後は小学生並みの感想になってしまったが、たった3000で作ってくれたものにしては上等な部類なのだろう、知らんけど。

 

「鞘はサービスだ。廃材で作ったやつだが、なかなかの出来になったと思う。こいつなら上層は問題なくいけるが、中層以下になると難しい。そんときはまた新しい武器を作った方がいいだろう」

 

「それまでにおっきい方を引き取れればいいんですけどね」

 

「はは、まあ、頑張れば何とかなるだろう。といっても、俺もあいつの修理にはそれなりに時間はかかるからな。早くても半年後だ」

 

 結構かかるのね。やっぱり、使われてる素材が特殊だからかな。

 

 それから、武器の日常的な手入れの仕方を教えて貰い、自分でどうにもならなくなったらメンテにもってこいということ。さらには、使わなくなった砥石をサービスまでしてくれた。大変ありがたい。

 

 特に問題も無かったので、鞘をコスチュームのマウント部分に接続して具合を確かめてからいったん拠点に戻ることにした。

 

「あ、そうだ。これは、別件なんですけど。包丁研ぎってやっておられます?」

 

 ずっと包丁を研ぎにだしたかったのが、時間が無くてやれていなったのを今思い出した。

 

「包丁? まあ、刃物なら大抵のものはやれるけどよ」

 

「よかった。ずっと研ぎに出そうって思って、忘れてたんですよ。えーっと、どこ行ったかな……」

 

 と、物入れを探る振りをしてアイテムパックを起動させる。

 

「おいおい。刃物をそんなところに入れてんのかよ。危ねぇな」

 

 それはその通り。ここが日本ならおまわりさんが来るだろう。だけど、ここはオラリオだから大丈夫だろう(暴論)。

 

「ちゃんと布には包んでますよ。あったあった」

 

 と言って、一応布に包んでおいた菊一文字の菜切り包丁を取り出して作業台において見せた。

 

「先がつぶれてるのか? いや、最初から平たいのか、変わった形だな」

 

 と、刃の部分をしげしげと見つつ、次第に真剣なまなざしをし始めた。

 

「どうですか?」

 

「うん? ああ、研ぐには問題ないが。これは、どこで手に入れた? 見慣れない銘も刻まれているな」

 

「それは、秘密です」

 

 さすがに地球から個人輸入したとは言えないよね。前世では高くて手が出なかったが、今世ではアークスの稼ぎにものを言わせて買った、高級品だ。大切にして扱ってほしい。

 

「まあ、大丈夫そうだ。今日の夕方までには仕上げとくよ」

 

「助かります。明日引き取りに来ますね。お代は?」

 

「ん? あー、そうだな。500でいいぜ」

 

 研ぎ直すにしては結構高いな。まあ、専門店に持っていってもそれぐらいはするのか? 地球では高くても数千円ですんでたような?

 

 まあ、いいや。専門の鍛冶屋さんだから、仕上げは段違いだろう。500ヴァリスは手持ちにあるので、今のうちに支払っておくことにした。

 

「じゃ、また明日来ます」

 

 これで、用事は終わったので店を出た。

 

 

◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇

 

 

 特に寄り道もせずに、まっすぐ拠点に帰り、エルティナに剣を見せる。ワカヒルメ様はバイトにいっているので不在だった。そういえば、バイト先を聞いておかなかったな、何かあったときに困るので、帰ってきたらちゃんと聞いておこう。

 

「武器の強度としては特に問題はありませんね。ただし、無理は出来ません」

 

「そうだよね。スィデロさんにも同じこと言われた」

 

「身体強化の出力を調整する必要がありますね」

 

「なんで?」

 

「出力を上げすぎると、打ち込んだ際に刀身が破損する可能性があります」

 

「あー、そっか、なるほど。そういうこともちゃんと考えないとダメか……じゃあ、訓練でもしようか」

 

 エルティナに相談しておいて良かった。フルクシオと同じ感覚で振ったら間違いなくコナゴナになってたね、これは。

 

「私が相手役になればよろしいですか?」

 

「お願い。まあ、エルティナの装備なら、これでダメージを受けることもないでしょう」

 

 エルティナは、私のお下がりといえども、エキスパート級の装備をしている(武器はリバレイト、ユニットはノヴェル)ので、ダークファルス級の攻撃を受けても2発は耐えられるはずだ。

 私? UH級のエルダーなら4発はいけると思うよ?

 

「そうですね」

 

「じゃあ、どうしよう。近くの広場にでも行こうか?」

 

 あいにく、この平屋には訓練の出来るような場所はないので、迷惑にならなさそうな場所を選ぶ必要がある。

 

「この時間帯ならあまり人はいないでしょうから、ちょうどいいと思われます」

 

 ということで、小一時間ほど打ち合いつつ調整して、何とか折り合いは付いた。その結果分かったのが、当然PAは放てない、イベイドシュートも無理、クラススキルもほとんど機能停止していることだ、まあ残念だが当然と言える。

 

「行動や生命維持に関することは一応動いてるのかな?」

 

 身体強化は問題なく、生命維持装置も通常モードを保っているので特に問題ないだろう。身体強化も、武器を破壊せず、かといって非力すぎないぎりぎりを設定できた。武器破壊を覚悟した全力攻撃も、やろうと思えば出来るが、やりたくはない。

 

 試しに身体強化を切った状態で剣を握ってみたが、正面に構えるだけで腕がプルプルし始めたので諦めた。何とも情けない。経験値を得てアビリティを上昇させれば、こういうのも緩和されるのだろうか?

 

「ウィルやステップ回避は停止しているようですね」

 

 無敵になれたり、一回死ねる系は軒並み停止してるということは、単純に安全性が低下していると言うことだから、割と切実ではある。

 

「うーん。一番大切なやつだ。あとは、空中に貼り付けないとかかなぁ」

 

 アークスなら、空中に浮いたまま攻撃やPAを放つことは当たり前だったが、通常武器だとそれは出来ないようになっている。

 

 基本的には地上で剣を振ることになるだろう。つい癖で飛び上がって、相手の弱点に張り付いて攻撃しそうになりそうだが、重力ですぐに落っこちるので、その隙に殴られたら割とやばい。

 

「要訓練だね、これは」

 

「どうしましょう? しばらくは地上で練習を続けますか?」

 

「うーん。いや、やっぱりヴァリスは必要だから、実地訓練にしよう。ゴブリン相手ぐらいなら十分行けるでしょ」

 

 とはいっても、上層の連中はイベイドシュートだけで蹴散らしていたので、最初のゴブリンがどの程度の戦力なのか実際よく分かっていないのだ。

 

「危険と判断されましたら介入しますので、安心して戦ってください」

 

「そうだね。エルティナがいれば、だいたいは安全か」

 

 エルティナは、レスタなどの回復もできて、攻撃テクニックも充実しているし、何なら、テクターとして近接戦もある程度可能な、ある意味で万能なクラスに設定しているのだ。本当は、サブクラスをファントムにしたかったが、サポートパートナーに後継職を設定できないのが残念だ。そのうち緩和されるのかな?

 

 といっても、本職のアークスにはやはり戦力的に劣るので過信は出来ない。

 

「これでちゃんと経験値を得られればいいんだけどね」

 

 せっかく50万貯めて武器を直して貰うのだ。これで経験値を得られなかったら、その分が丸損になってしまう。

 

 あと、フォトンの身体強化の度合いも、成人男性程度に抑えておいた。あまりにも強化しすぎたら、それだけで経験値が貰えなくなるかも知れないからだ。

 

「自ら弱体化してダンジョンに挑む冒険者は、おそらく私だけだろうね」

 

 幸いながら恐怖はそれほど感じていない。ちょっと緊張はしているがその程度だ。やっぱり、シバの直前でグラーブエクゼクルとソロで殴り合った時の方がずっと怖かったし、その後に出現した閃機種の大群を目にしたときの絶望感に比べるとまだまだピクニック(隠語)程度のものだ。

 

「うーん。私はちゃんと冒険が出来るのだろうか。分からないなぁ」

 

「それを確かめに行くのでしょう?」

 

「そうだね。じゃあ、行こうか」

 

「承知しました、お嬢様」

 

 昼も過ぎて、そろそろおやつ時というところでダンジョンに向かうのも変な感じだね。

 果たして私はちゃんと戦えるのだろうか?

 

 

 




スコップ武器とは、レア武器を掘るための武器という意味。

惑星探査編以降で、各章の時短編(あらすじ)は必要ですか?

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