ゲーム出身の一般アークスが、オラリオでダンジョンアタックするのは無理がある   作:柳沢紀雪

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私達の冒険はこれからだ!

 

 エルティナと新しい武器の慣熟訓練をして、何とか形になったところでダンジョンで実地訓練に移行しようと、螺旋階段にやってきた。

 

「さてさて、まずは慣らし運転だね」

 

 初めてザウーダン討伐任務を受けたときぐらいの緊張感を持って螺旋階段を下っていった。

 

 あのときは、アッシュとアフィンの三人でチームみたいなのを組まされていた頃だから、実質的にはそれほど心配はしていなかったけどね。

 といっても、今回はフル装備のエルティナがいるからむしろ安全性は今の方が上かもね。

 

「念のため、デバンドをかけておきましょうか?」

 

「うーん。そうだね、それだけならいいと思う。よろしく!」

 

「分かりました。……デバンド」

 

 エルティナが周りを見て特に問題ないと判断してフォトンをチャージして、テクニックを解放する。何度か光が身体を覆い、フォトンが細胞の一つ一つに深く浸透していく感覚がどこか心地よい。だけど、コレでダメージが減るのってなんか不思議だよね。

 

「うん、いいね。じゃ、行こうか」

 

 新しいことにチャレンジするときはいつでも緊張するものだ。敵と戦うことに恐れや躊躇はない。そんなものは、初めてナベリウスの地に降り立ったときに捨てた。

 

「まあ、何というか……壊れちゃったんだよね、いろんなものがさ」

 

 主には人生観とか、死生観とか……まあ、そういうやつだ。

 

「お嬢様」

 

「うん、ゴメン。ちょっと走ろうか」

 

 いろんなものを払拭するように私は先んじてダンジョンへかけだした。暗い場所へ入るときに一瞬視界を覆う闇が、私の意識を切り替える。

 

 さあ、戦いをしよう。

 

 

◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇

 

 

「とりあえず人の少ないところ行こうか」

 

 あんまり順路上で戦うと、人目がちょっと気になるだけのことだ。本来なら、あんまり人がいないところを目指すと、いざというときに助けて貰ったり、連携できないから気をつけよう。

 

 イベイドシュートで殺戮しているときは、なぜかめちゃくちゃ視線を集めてしまっていたので、なるべく人目に付かないところで周回する癖が付いたわけだ。確かに、見た目幼女がモンスターを掃除するみたいに虐殺していたら思わず見てしまう気持ちは分かる。

 

「さてと、このあたりでいいかな……と言ったところで早速湧いたね。じゃ、エルティナも打ち合わせ通りでよろしく」

 

「わかりました。後ろから来るものは私が担当いたします」

 

「よろしく!」

 

 先ほどからこちらを威嚇しているゴブリンに狙いを定め、フォトン強化された跳躍力を遺憾なく発揮し、剣は正面にまっすぐ突進し、心臓あたりを一撃で貫き通した。

 

「どうかな? いけてる?」

 

 倒れたゴブリンの魔石抽出はエルティナに任せて、刺突した剣の刀身を割と念入りにチェックした。

 

「特に問題は無いようですね」

 

「よし、じゃあ、どんどん行こうか」

 

 早速追加のゴブリンが背後の壁のひび割れから数体まとめて出現した。

 

「こんにちは、そして、さようなら。あなたたちも次はリザさんみたいになれればいいね」

 

 と、振り向きざまに剣を一閃させ、2体まとめて頭部を切り飛ばした。残った数体は、そのまま戦慄したままむちゃくちゃに腕を振り回して襲いかかってくる。

 

「そんなのをアークスに当てられると思わないでよね」

 

「あ、マスター、それは……」

 

 と、いつもの癖でステップ回避で攻撃を無効化しつつ敵の背後に回り込んで勝負を決めようとするが、さすがにそれは失敗した。

 

「「みぎゃ!」」

 

 ちなみに、これは私とゴブリンが同時に発した鳴き声だ。まあ、つまり、フォトン処理された武器ならいざ知らず、普通の武器であるこの剣で、いつものステップ回避など出来るはずもなく。簡単に言えば、ゴブリンと正面衝突してしまった。

 

「マスター!」

 

「あー、大丈夫。鼻打っただけだから、鼻血もでてないし……」

 

 ゴブリンも私と衝突してもんどり打って倒れ伏しているようだ、かわいそう……あ、灰になった。私って、結構石頭?

 

 残った数体のゴブリンも、いきなり私が突進して来たのが訳が分からなさすぎてフリーズしている様子だ。

 

「これは、職業病みたいなもんだね。気を取り直して……てい!!」

 

 と、我ながら気の抜けたかけ声でゴブリンとの距離を一気に詰めて、一体ずつ丁寧に殲滅していった。

 

「刃こぼれ無し。いいね」

 

 さすがに初っぱなから壊れたらスィデロさんに申し訳ないし、私の懐もブリザードだ、お財布持ってるエルティナの目も怖い。

 

「身体強化の度合いはちょうどいい具合でしょうか?」

 

「どうかな? もうちょっと強くしてもいいかもだけど。しばらくはこれでいこう」

 

 ちょっといろいろ確認しているところに、天井からダンジョンリザードが降ってきたので、そのまま切っ先を天井に向けて、落ちる勢いに任せて串刺しにしてやった。

 

「空中に貼り付けもしないのに、なんで下手に空中戦をしようって思うのかねぇ」

 

「考えなしだからではありませんか?」

 

 あら、エルティナも辛辣ね。

 

「アークス相手に奇襲なんて、基本的に不可能なのにね」

 

 システム自体は正常で、HUDにも『一部機能制限中』のアラームがつきっぱなしだが、フォトンレーダーやエネミーセンサーと言った基本機能は問題ない。まあ、それに頼り切ると、閃機種の時みたいなしっぺ返しが来るわけだから、危ないんだけどね。

 

「さてと、じゃあ、いつも通り周回しようか。今日は1階層だけでね」

 

「了解しました」

 

 少し行ったところの、ちょっとしたフロアにモンスター十数体が集合しつつあるようだ。あれを問題なく排除できれば、この剣は十分使えると証明できるだろう。

 

「なんか、楽しくなってきた」

 

 こういう感覚は実にアークス的だと思う。ダーカーを憎むも、戦いそのものを楽しむものはアークスにはそれなりにいたし、ここにもいる。

 

「決して油断しませんように」

 

 そういうアークスをサポートするのが基本的に感情を持たないサポートパートナーというやつだ。実に心強い。

 

 と言うことで、その日は夕暮れまで1階層を周回してモンスターどもを何十体と殲滅して、それでもびくともしなかった剣を素直に賞賛して、明日包丁を受け取るついでに状態を見て貰うことにした。

 

「何というか、ようやく私の冒険が始まった感じ……これでちゃんと経験値が入ったら言うことないんだけどね」

 

「しばらくは様子見をいたしましょう」

 

「そうだね。まあ、予行演習は終わったから、明日から本番だね」

 

 地上階への出入り口をくぐりながら、剣を腰の鞘に収めて、帰宅途中の多くの冒険者に混じって螺旋階段を上る。

 

 

 

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