ゲーム出身の一般アークスが、オラリオでダンジョンアタックするのは無理がある   作:柳沢紀雪

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強敵との戦いは楽しい。それがアークス。
そして、レアドロが美味しい。それもアークス。
グッバイ物欲センサー。ラゲードは落ちない。


ドラゴンだ! 囲め!

「ふぅ。そろそろ頃合いかな?」

 

 12階層の周回もよいが、そろそろ時間もいい頃合いだと思う。

 

「そうですね。市場で買い物をする時間を考えると、ちょうど良いほどです」

 

 5階層に比べれば、早めに上がらないと間に合わないのがちょっとネックだけど、その分濃密な時間を過ごすことが出来る。

 

「それじゃ、地上へ……って、なに? 冒険者のパーティーっぽい人たちがスゴい勢いでこっちに来てるけど?」

 

 HUDの周辺マップに突然、10近い冒険者の反応が飛び込んでまっすぐとこっち(というか、上階からの入り口?)に向かってきているようだ。

 

「何かから逃げているのでしょうか?」

 

「大物か……おもしろそうだからちょっと行ってみる?」

 

「おもしろくはありませんよ」

 

 エルティナは頭が硬い。まだ逃げる余裕があるんだから何とかなるんだよ、きっと(暴論)。

 

 豆粒みたいな人たちが、表情が分かる程度までやってきたところで、その背後にでかくて赤い何かが地響きを立ててやってきているように見えた。

 

「あれは……うーん? 草食恐竜っぽい?」

 

 HUDの画面を最大望遠にして画像解析してみると、首はさほど長くはないが、見た目はちっこいブラキオサウルスみたいなやつだ。

 

「全長は……3,4メートルってところかな?」

 

 恐竜にしては小さいか。火とか吐くのかな?

 

「逃げろ! インファントドラゴンだ!」

 

 と、いつの間にか目前にやってきていた逃亡中の冒険者集団の一人が私にそう言葉を投げかけた。

 

「そっか、インファントドラゴンっていうんだね」

 

「ドラゴンと言うには、少し迫力に欠けるように思えますが」

 

「だよねー。ドラゴンって言ったら、見上げるぐらいでっかくて、コウモリみたいな羽で空を飛んで、もっと威厳たっぷりじゃないとね」

 

「顔つきはずいぶん凶悪に見えますが」

 

「うん。いいね。さてと、集団も捌けたし。やろうか」

 

「援護はお任せください。……デバンド!」

 

 エルティナから励起したフォトンが私の周りを優しく包み込み、私に鉄の守りを与えた。

 

「周辺湧きするモンスターの処理は任せるね」

 

「了解しました」

 

 戦い甲斐のある敵というのも久しぶりだ。ちょっとワクワクしてきた(野菜人並感)。

 

「じゃ、まずはご挨拶ね!」

 

 そういって、片足にフォトンを集中し、やつの頭上高く飛び上がり、まずは目標を認識させた。

 

「こっち向いたね。そう、私があなたの相手だよ」

 

 ドラゴンは長い首をこちらに向けて、明らかに凶悪そうなまなざしをこちらに向けていた。そして、おもむろに口を開き、その奥にある赤く輝く光を今にもこちらに向けて発しようとしている。

 

「あー、やっぱり、こいつ。火を噴くタイプか」

 

 すでに上昇は終わり、下降に入っているので、これ以上高度を上げることは難しい。だったら、着弾直前でよけて度肝を抜いてやろう。

 

「フォトンで感覚を加速させて……これでだいたい1.2倍速ぐらいか……」

 

 仕組みは、事故の瞬間にスローモーションに見える現象を、フォトンによって意図的に引き起こしている状態だ。脳に結構負担がかかるので、システムの補助なしでは推奨されないが、やろうと思えば割と出来るものだ。

 

「やばいな。後で頭痛に悩まされそう」

 

 長時間は御法度だな。ひとまず、ゆっくり迫り来る炎の塊が着弾する寸前にフォトンを横に吹かせて強制的に運動軸をシフトさせ、思考加速も解除した。

 突然視界から消えた私を探そうにも、火炎放射状態で上手く首を動かせないのか、完全に私を見失ったドラゴンの横っ面をすり抜ける寸前に、その片目に向かって思いっきり剣を振りかぶり、フォトンによって回転エネルギーを強制的に作り出して切り裂いた。空中でも踏み込みなしで剣が振れるのは、実にアークス的な戦い方だ。

 

「結構硬いな。さすが、大物。歯ごたえがあるってやつだ」

 

 片目の視力を失ってけたたましい叫びと共に火炎放射を中断するドラゴンの背骨あたりに上手く着地して、そのまま脊柱を断ち切るように背骨の間に剣を差し込んだ。

 

「ここは何とか刃が通ったね。よかった、これでダメなら撤退してた」

 

 上手いこと脊柱を断裂できたのか、ドラゴンは更に爆発的なうめき声を上げて下半身の力を失い、地面にひれ伏した。

 

「動ける? もう、無理?」

 

 あまりにも暴れまくるので、いったん背中から飛び降りて距離を取り、次の行動に備えるが、後ろ足の力を失ったドラゴンは前足だけで踏ん張ろうとするがどうにも動きが鈍い。首を振り回し、私を探し、見つけたところで再度口腔内に燃えさかる光を生み出し放とうとするが、もう無理だろう。

 

「ゴメンね。苦しめた。次は、一撃でやれるぐらい強くなってくるから。さよなら」

 

 そういって、私はもう一度その射線から逃れるように飛び上がって、次はその脳天に向かって、フォトンによる噴射の勢いも利用して剣先を脳殻に埋めた。

 

「インファントドラゴンの行動停止を確認しました。お疲れ様でしたお嬢様」

 

「ふぅ……結構疲れた。これだけフォトンを使わせるなんて、大したやつだったよ」

 

 お蔭で、制限状態のフォトン容量をほとんど使い果たした。もちろん、時間をおけば回復はするが、戦闘中に回復させるのが難しいぐらいの出力で戦わざるを得なかったのだ。

 

「システムの補助もありませんのに、無茶をされますね」

 

 今回は、システムの補助がなかったので、単純にフォトンを噴射して無理矢理姿勢を変更せざるを得なかった。

 もし、システムが万全なら、フォトンによって周辺の空間の物理法則を書き換えることで推進力や姿勢制御、位置制御を行うという、ちょっと何を言っているのか分からないやりかたで戦闘することが出来る。

 はっきり言って、人間の脳みそでは制御できる代物ではないが、フォトン効率はたぶん1000倍はいいはずだ。

 

「慣れれば行けると思うんだ。修行にもなるし」

 

 なんか、最近、思考がリザさんに似てきたのかも知れない。リザさんみたいにカッコイイ武人になれたら、それはそれでいいかもしれない。

 

「治療はいいから、先に魔石の回収をしてくれないかな? 私に外傷は全くないから」

 

 ちょっと戦いの熱を冷ましたいので、近くの大きめの岩に腰を下ろして、ふぅと一つ大きく息をついた。

 

「こういう場合、男の人なら街に出て女の人とよろしくやるんだろうけど、女の人はどうしてるんだろう? 甘いものでも食べるとか?」

 

 殺し合いは御免被る、だけど心躍る戦いはやはりいいものだと改めて思った。

 

 その後、さっさと地上に戻り、インファントドラゴンの魔石が結構いい値段になったのと、その夜のステイタス更新で、そこそこのアビリティが貰えてうれしかった。

 

「ランクアップまでもう一息ってところですかね?」

 

 この2,3ヶ月、集中してダンジョンアタックをしてきたので、トータルとしてはかなりの経験値を得られた。12階層に入ってから、アビリティの蓄積とそれに伴うフォトン強化のレベル低下により、更に経験値が入るようになってうはうは状態だ。魔石もいい感じにヴァリスになって、笑いが止まらんね。

 

「あまり調子に乗っちゃダメだよ。ランクアップにはまだまだ越えなきゃならない壁がいくつもあるからね」

 

「分かってますよ」

 

 エルティナも同じようにステイタス更新して貰い、私と同じだけのアビリティを得た。

 

「戦っていない私がアビリティを得るのは少し不公平のような気もしますね」

 

 と、エルティナは、今更なことを言い始めた。

 

「それは、お互い様でしょ? 私がのびのび戦えて、安全に立ち回れて、負傷を恐れなくて済むのは全部エルティナのお蔭なんだから。むしろ、エルティナの方がちょっと多めに貰ってもいいぐらいだと思うよ?」

 

 私はそう言って、エルティナを抱き上げて、横向きに膝に乗せて頭をなでなでした。

 

「いや、さすがにそれは無理があるよ」

 

 と、ワカヒルメ様は苦笑気味だ。

 

『リザさんもそう思いませんか?』

 

『知らぬ』

 

『でしょうね』

 

『すみません、マスターが……』

 

『いい。慣れた』

 

 ワカヒルメ様と話しながら、その裏でリザさんと和気藹々と語り合うというのは実に贅沢なものだ。早く会いに行きたい。早く会って、より強くなったリザさんと、冒険者の状態で稽古をつけて貰いたいものだ。

 

 

 





フォトン便利すぎて草
姿勢制御システムは、宇宙戦艦ヱルトリウムのイメージ・アルゴリズム機関を個人装備しているような感じと受け止めていただければ良いと思います。

現在の主人公は、インファントドラゴンといい戦いが出来るぐらいには弱いです。

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