ゲーム出身の一般アークスが、オラリオでダンジョンアタックするのは無理がある   作:柳沢紀雪

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堕落した休日をお送りします


後一歩なんだけどなぁ

 12階層を周回して、何度もインファントドラゴンと出会って戦い、今では一発はまだ無理だが、急所に数発攻撃をたたき込んで倒せる程度には戦い慣れてきた。

 

 やっかいなモンスターだが、こいつのお蔭でアビリティも稼げて、フォトン制御もどんどん上手くなってきた。今なら一秒程度なら空中静止出来るぐらいにはなった。空中で動きを急に止めると、相手の攻撃のタイミングをいい感じにずらせるので意外に便利なのだ。

 

「こいつが上層最強だったら、もう、こいつ以上の強敵はいないってことでしょう? もう、上層卒業ってことでいいんじゃないの?」

 

 つまり、さっさと中層に行かせろって意味だけど、それを理解してくれる人はいない。難しいことは言っていないはずなのだけどね。

 

「ルールですので」

 

「だけどさ。なんというか、頭打ち感ない?」

 

 そういって、最近ようやく買えたちっちゃいソファに寝転んで最新のステイタスシート(羊皮紙)を眺めた。このソファは、クッションはいいが、なにぶん小さいので足を完全に伸ばせず、常に膝を折った状態で寝転ぶ必要があるからあんまり安眠は出来そうにもない。もうちょっと広いところに引っ越さないとね。

 

 最新のステイタスシートと一つ前のステイタスシートともう一つ前のステイタスシートを順繰り見ながらため息をつく。

 

「えーっと、グラフは……こっちか」

 

 と、いったん羊皮紙をお腹の上に置いて、システムに蓄積させたデータをHUDに表示させた。今まで得られたアビリティ値を縦軸に、横軸には日時をプロットした棒グラフを作成し、一覧として表示させた。

 

「ここのところ、ずーっと横ばい。800後半からほとんど変化なし。悲しいね」

 

 この、900付近でサチってるグラフを眺める感覚はなかなか説明が付かない。ようは、才能の限界というやつなのだろうか。

 

「500を越えればランクアップ可能と聞いておりますが」

 

 私のHUDに表示させているが、このデータはエルティナと共有しているので、エルティナの目からも、私の頭上にデータが浮かんでいるように見えるだろう。

 

「なんかね、偉業を達成しないとダメらしいんだよね。偉業ってなんだ? 登録者数10万人達成すればいいんか?」

 

 銀色の板を貰ったらランクアップとか結構ハードル高いな。

 

「マスター。もう少し真面目に考えましょう」

 

「分かってるけどね」

 

 システムに記録させたのデータを眺めたところでそれ以上のことは分からないので消した。

 

「うーん。ちょっと散歩してくる」

 

「行ってらっしゃいませ」

 

 エルティナは今日は拠点の掃除をするということなので、むしろ私は邪魔になるのだ。

 

 さて、拠点を出て歩き始めるが、手持ちのお小遣いは200ヴァリス程度。あまり豪遊は出来ないが、屋台をはしごする程度なら十分すぎるほどだ。

 

「じゃが丸くん買ってこよ」

 

 今日はジャンキーな気分だ。これにストロング系チューハイかっくらって寝ればすっきり出来るのだが、残念なことに、この街でも私ぐらいの小さな子に酒を売らない程度のモラルはあるらしい(絶許)。

 

 ちなみに、一番のお気に入りは氷を詰めた系のグレープフルーツだ。強いゼロのやつはちょっと苦手。OL時代は鶏の唐揚げと一緒にグビグビやる瞬間が最高に生きてる感があって最高だった(真似しないように)。

 

 行きつけのじゃが丸くんの屋台に足を運んで、じゃが丸くんを一枚購入し、酒の代わりに炭酸入りの果実ジュースを買って、近くの噴水公園のベンチに座ってちびちび食べる。口が小さいのであんまり一気に食べられないのだ。

 

 じゃが丸くんの塩胡椒味はご飯代わりにもなるから結構いい。塩っ気がきいてのどが渇いたところに炭酸ジュースを流し込むと最高にいいのだ。

 

「ぷはぁ……このために生きてる……」

 

 ホントはチューハイの方がいいけど、仕方ない。アルコールがじんわりと意識に浸透し始めて、感覚が徐々に酩酊に向かい始める感触が何とも言えない幸せを感じさせていたのだ。私は果たして、あの感触を今後得ることが出来るのだろうか。

 

「じゃが丸くんもいいけど、やっぱりハンバーガー食べたいな。コンビニのレンチンするやつ」

 

 お高くとまった意識高い系のハンバーガーはどうも会わない。コスパしか考えてないようなジャンキーなやつこそ、私にはちょうどいいのだ。

 

「うーん。終わってんなぁ、私」

 

 まともに夜の飲み歩きも出来ない身体に成り下がってしまい、悔しくて仕方が無い。

 

 ベンチに座って足をぶらぶらさせながらじゃが丸くんをぱくつく私を、通行人はちらちら見ているが、特にネガティブな視線は感じない。肩の横に流れる長いツインテールに油が付かないように気をつけながら、最後のひとかけらを飲み込んで、残ったジュースを一気に呷って空にした。

 

「ふぅ、ごちそうさまでした」

 

 ゴミは持って帰ろうと思って、こっそりアイテムパックに収容して、ついでにハンカチを取り出して噴水で軽くぬらしてから手をぬぐった。

 

「次どこ行こうかな」

 

 食べるのに夢中で、次の行く先を決めていなかった。武器屋はやめとこう。仕事とプライベートは分けたい。じゃあ、服でも見に行こうかな。こっちのファッションとか、全然チェックしてなかったし。

 

「予算は……100ぐらいかなぁ。肌着程度は買えるかな?」

 

 しかし、私が着れるのはせいぜい子供服だろうけど、子供にしては胸とかお尻が大きいからぴったりのサイズがなさそうで困る。いちいちオーダーメイドとかしてたらすぐに破産してしまうよ。

 

 その点、オラクルの服は着る方にあわせてくれるからめちゃくちゃ便利だった。

 

 まあ、結局子供服では私の体格には合わず、仕方ないので大人用のちょっと大きめのシャツをワンピース代わりにして、部屋着にしようと思う。

 

「結局こうなるよね。まあ、いい感じのデザインがあって良かった」

 

 ちょっと予算オーバーだが、まあ、いいだろう。ポケットマネーだし。

 

 結局、休日でも良い考えは浮かばず、変わらず12階層を周回する以外に方法はないという結論しか得られなかった。

 

 まあ、だけど、こんなジャンキーな日があってもいいよね。

 

 

 

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