ゲーム出身の一般アークスが、オラリオでダンジョンアタックするのは無理がある   作:柳沢紀雪

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冒険者は冒険してなんぼ(ごめんね、エイナさん:略してGE)




ちょっとだけゴライアスと遊んで帰ろう

「久しぶりの18階層は、相変わらず奇麗だね」

 

「水晶の光が落ちているのでしょうか。まるで夜のようですね」

 

 天井を見ると、水晶の輝きがまばらになっていて、その明滅がまるで星空の輝きのようだ。自然現象でこんなことが起こるはずがないので、明らかに何者かが作った環境に違いない。

 

「遺跡の時も同じだったのかな?」

 

「可能性は高いです」

 

「それだと、まるで、ダンジョン自体が巨大なタイムカプセルみたいだね。この星の環境をダンジョン内で再現して保存するための」

 

「その要素はあるかも知れませんが、考えにくいです」

 

「まあ、そうなんだけど……今日はどこ泊まろうか? 確かリヴィラの宿代は法外なんだっけ?」

 

 リヴィラで普通の宿代が地上では割と高級なホテルに泊まれるレベルって感じだろうか?

 

「さすがに私達では無理だろうとのことです。水場にテントを立てましょう」

 

「えーっと、西の方に湖畔があるんだっけ? そこの島にリヴィラがあると」

 

「北は荒野(こうや)で、東と南は森林地帯とのことです。森林地帯にはモンスターが跋扈しているとのこと」

 

「で、19階層への入り口は、中央のでっかい木の根元だっけ」

 

「その通りです」

 

 進出はしないけど、いずれは19階層以下にも行かなければならないだろう。

 

 今回は18階層で一泊する訓練みたいなものだ。一晩だけのキャンプを楽しもう。

 

「それじゃ、移動しようか」

 

「分かりました」

 

 アイテムパックにはパンがいくつかと、鶏のかたまり肉が二つに、付け合わせに豆を煮たやつを瓶詰めしたのをいくつか入れている。調味料は塩と胡椒だけだから、シンプルな味わいになるだろう。

 

「保存を考えるとベーコンの塊とかの方がいいんだろうけどね。焼いてパンに挟むとか。チーズもあるといいかも」

 

 ガヤガヤ言いながら水が確保できる湖畔のちょっと開けた砂地にテントを展開して、私はたき火を(おこ)してフライパンで肉を焼き始めた。拠点じゃないので、ちゃんとした下処理は出来ないが、ダンジョン内で新鮮な食材を使うのはそれだけで贅沢なものだろう。

 

「油をたっぷり買えたら、唐揚げとか作れるんだけどね」

 

「マスターの唐揚げは評判が良いですね」

 

「アッシュとかアフィンもたまに食べに来るからね」

 

 男の子は唐揚げ好きという印象があるが、女の子も唐揚げは好きだ。特にビールとよく合う。

 

「あとは、長ネギと一緒に串にさして焼くのが最高だよね。タレがなかなか難しいけど、とりあえずは塩振っておけばいいし」

 

 ねぎまは、最も完成度の高い焼き鳥だと個人的に思う。砂肝とかハツとかぽんじりも好きだけど、やっぱり、ねぎまが一番だと思う。食べたい。

 

「さてと、そろそろいいかな? 塩と胡椒だけで焼いただけだから、あんまり美味しくないかもしれないけどね」

 

 鉄板から焼き上がった鶏肉を取り出して、エルティナのためにちょっと細かめに切ってあげて、お皿に取って渡した。折りたたみ式の小さなテーブルに、パンに豆の煮込みを少し添えて、メインディッシュのチキンステーキを置いて、それなりのディナーになったと思う。

 

「ありがとうございます」

 

 エルティナは、小人族用のナイフとフォークを取り出して、私と一緒に手を合わせて、

 

「「いただきます」」

 

 と言って食事開始となった。この習慣自体はオラクルにもないのだけど、元日本人の私としてはやっぱりこれがないと始まらないということで、いつの間にかエルティナも一緒にしてくれるようになったんだ。

 

「うん。アイテムパックだと鮮度が落ちなくていいね」

 

「今度は調理済みのものを収納してはいかがでしょうか?」

 

「うーん。でも、お料理はしたいし……」

 

 出来れば、カレーの材料を入れてきたいのだけど、香辛料が高いのだ。やっぱりね、キャンプならレトルトを温めるんじゃなくて、ちゃんとフライパンやお鍋をつかって料理をしたいよね。

 

「マスターの意思を尊重しますが、ここはダンジョンであることを忘れませんように」

 

「分かってるよ」

 

 私はパンに豆の煮込みをのせて口に運んだ。硬いパンに豆の煮汁がしみこんで、歯ごたえとともに、かみしめるたびに柔らかくなっていく感触が楽しい。

 

 そこに皮をパリパリに焼いて肉はふんわり仕上げたチキンステーキを含むとすべてが調和して、一つの料理となるのだ。

 

「ふぅ……なんだか……幸せだな……」

 

 見上げれば、星空のような水晶の瞬きが美しく、その下で水のせせらぎを耳にしながら、時折はぜるたき火に身を委ね、自分で作った料理に舌鼓を打つのは一つの完成された世界だ。

 

 こんな時がいつまでも続いてほしいと、心から願う。

 

 

◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇

 

 

 そんなこんなで、割と贅沢なキャンプ飯を堪能していると、17階層からの入り口からでかい音がとどいた。

 

「ひょっとして、ゴライアスかな?」

 

「確認しましょうか?」

 

「そうだね。これだけ食べてから……うん、行こう!」

 

 夜中なので、リヴィラはまだ反応していないようだ。そりゃそうだ。ゴライアスが出現したところでリヴィラに襲いかかってくるわけじゃないし、朝になってゆっくり準備しても十分間に合う、何なら、数日かけて討伐隊を結成する余裕すらあるのだ。

 

「その間にゴライアスにちょっかいかけて素知らぬ顔して帰るっていうのは、まさにピンポンダッシュだよね」

 

「私はマスターが言っている意味が分かりません」

 

 考えるな、感じろ。

 

 

 夜陰に紛れて素早く移動し、エルティナを抱っこして、ネクストジャンプを活用して17階層への滑り台を逆走して、嘆きの大壁に出た。

 

 そこには案の定、ゴライアスが壁から出現して戦う時を今か今かと待っていた。まだ、やつの背後にいるので、発見されていないようだ。

 

「相変わらずでっかいねー。何食べたらあんなのになれるのかな? 私も、もうあと20センチぐらい身長ほしいけど」

 

 見た目幼女にキャラクリしてしまった自分の責任ではあるが、まさかあのときはこんなことになるとは思わなかったから仕方ないだろう。お蔭で、こっちでは子供あつかいだよ。

 

「あまり余裕はありませんよマスター。こちらに気がついたようです」

 

 ゴライアスは、何か理解のできない叫び声を上げて、ゆっくりこっちを向いた。ちょっと、場所を変えた方がいいかな。やつの攻撃で入り口が崩落したらことだし。

 

「それじゃ、軽く殴って、無理そうならすぐ逃げよう。退路の確保はお願いしてもいい?」

 

 まあ、他のモンスターが出現することはないだろうけど、念のためだ。

 

「了解しました。お気をつけください。あれは、例の強化種よりも何倍も強敵でしょう」

 

「分かってるよ。だって、戦闘力評定がレベル4クラスだって言うんでしょう? そりゃ、レベル2じゃ、傷もつけられないはずだよ」

 

 たとえ倒せなくても、戦うだけの価値はある。何よりも、でっかい敵と戦うのはアークスの娯楽みたいなものだ。ダーカーじゃないなら割と気楽だしね。

 

「それにね。極限の状態に自分を追い込むと、スキルが芽生えやすくなる気がするんだよ。それを確かめてみる」

 

 危険な行為だが、賭けてみる価値はある。

 

「まずは、足だね」

 

 今は、空中に張り付いて攻撃をすることが出来ないので、こっちに来るきっかけになったゴライアスとは同じ戦い方は無理ということだ。

 

 私は勢いよく地面を蹴って、更にネクストジャンプを空中で数回発動させて、一気に加速してゴライアスの白くてぶっとい足にとりついて、そのまま回転運動に変換して何回か切りつけた。

 

「ゴライアスって、こんなに硬かったんだ。やっぱり、私は武器に頼りきりだったんだなぁ」

 

 まあ、案の定、今の剣じゃキズ一つつけることは出来なかった。しかし、くすぐったかったのか、ゴライアスも足をもぞもぞさせてそのまま私を蹴飛ばそうとするが、そう上手くはいかない。

 

「ネクストジャンプって、ちょっと便利すぎない?」

 

 私は、地面に足をつけないまま空中を蹴り飛ばして、反対側の足にとりついて、もう一度何発か切りつけて、やっぱり傷つけられなかった。

 

「時間の無駄かな? まあ、倒すのが目的じゃないからね」

 

 いきなり別の足にとりついたのに驚いたのか、ゴライアスはちょっと体勢を崩しかけるが、私を蹴ろうとした側の足をそのまま地面を蹴っていったん跳躍して、私から距離を取った。

 

「結構冷静だね。突っ込んでくるだけのケダモノに比べるとやっぱり、さすがはモンスターレックスってことか」

 

 遺跡での戦いは、あまりにも一方的すぎて相手の動きとかパターンとかを見る余地もなかったからね。やっぱり、戦いは同じステージでしか成り立たないってことだ。

 

「それじゃ、次は、面の皮だよ」

 

 フォトンを足に集中して一気に跳躍して、それを見越してゴライアスはハエを振り払うように腕を振り回すが、ネクストジャンプで空中をジグザク軌道で、それこそ蜂みたいに舞いながら肩や後頭部を足蹴にして顔面にとりつき、頬、鼻、眼球に一発ずつ斬撃を打ち込んで、いったんゴライアスのはるか頭上に向かって跳躍した。

 

「眼球すら傷つけられないとか、どんだけーって感じだよね」

 

 若干重力にひかれて落下し始めるところで、剣の刃を見て、目立った損傷はないことを確認した。

 

「じゃあ、脳天いただき!」

 

 重力加速による落下に加え、ネクストジャンプの跳躍を連続して発動させて、まるで空中を走るように加速して、剣の切っ先をゴライアスの脳天に向かって突き立てようとした。

 

 しかし、その瞬間、ゴライアスの目がこちらに向けられた。まあ、つまり、ゴライアスが上を向いて、しかも顔の前に両手のひらを抱えたということだ。

 

「あ、やっば……」

 

 さすがに加速しすぎたので、ここから止まったり軌道をねじ曲げることも難しい。そのままなすすべなく、私の剣はゴライアスの手のひらにインパクトし、ちょっとギシギシいっているのを軽減するべく、剣を引いて衝撃を逃がそうとする。

 

「やっぱり、私、詰めが甘いわ」

 

 基本ナメプなのが良くないんだろうなぁ、エルティナがいるから安心しちゃうんだろうね。

 

 結局、ゴライアスはそのまま手のひらを閉じて私の身体をつかみ、そのまま天井に向かって全力で投擲された。野球ボールの気持ちがこれでよく分かるね(ヤケクソ)!

 

「さすがに、これは無理だ……」

 

 勢いが付きすぎてネクストジャンプでは速度を相殺しきれない。せめて、回転運動を加えて天井に脳天直撃(セガサターン)を避けて天井に足を向けて何とか致命傷を防ごうといろいろ工夫してみる。最後にチラリと見たエルティナはすでに行動を開始していて、普段は使わないタリスを私が落っこちるだろう場所に向かって射出しようとしているところだった。やっぱりエルティナは優秀だね。

 

 と思っていると、ゴライアスが更に追い打ちをかけるように私に向かって拳を突き出してきている。

 

「容赦ないなぁ」

 

 私は、ゴライアスの昇龍拳にせめて一矢報いようと剣に精一杯の力を込めて斬撃を打ち込もうとした。多分、砕けちゃうだろうと思う、ごめん、スィデロさん。

 

 しかし、私の予測は裏切られ剣は砕けず、それどころか一瞬光が明滅して(・・・・・・・・)ゴライアスの拳を弾き飛ばし、反動で私の飛行速度も若干増すことになった。

 

「うーん。まあ、まともに受けるよりはまし……と思いたいなぁ……(いったー)い!!!」

 

 私の足が天井に付いた瞬間に、ボキボキというあんまり聞きたくない音が響き、一瞬凄まじい痛みがやってきた瞬間にHUDに【痛覚遮断】と【思考制御】の表示が出され、全く踏ん張りもきかずにそのまま頭から地上に落っこちていった。ゴライアスは、拳をはじかれた反動で体勢が崩れて、今度ばかりは追撃は出来ないようだ。

 

「レスタ!!」

 

 地上に衝突する寸前にエルティナが放ったタリスから光が広がって私を包み込み、一瞬で足や腕や他の損傷もまとめて治療し、【思考制御】でむしろ冷静になった意識が身体を180度回転させて地上に降り立ち、そのまま衝撃を逃がすために前に向かって転がり続けた。

 

「ありがとう、エルティナ」

 

 転がっていった先にいたのはエルティナで。そのまま大の字で寝転がる私に、冷静な表情も若干呆れた様子を見せた。

 

「油断しましたね、マスター。これで何度目でしょうか」

 

「ゴメンって。だけど、エルティナがいるから大丈夫だから」

 

「私も万能ではありません。ですので、マスターの冒険(お遊び)はこれで終わりです」

 

「分かったよ、後はお願い」

 

 私はちょっといじけるフリをした。

 

 ゴライアスはようやく体勢を立て直して、再度こちらをにらみつけた。これは逃がすつもりはないな。事実、ゴライアスは18階層への入り口を塞ぐような位置取りでこちらに相対している。エルティナも、私を助けるために入り口から離れてしまったから仕方ない。全部私のせいだ。

 

「すぐに終わらせます……シフタ……フォトンフレア……」

 

 エルティナは、リバレイトウォンドに持ち直して、攻撃を向上させるシフタと、サブクラスのフォースのスキルの一つである【フォトンフレア】を発動し、法撃力(魔力)を爆発的に向上させ、光のフォトンをチャージし始めた。

 足下にフォトンとは異なる魔導円が展開し、更にその威力を向上させた。

 

「エルティナの本気の攻撃って、こっちに来て初めてかもね」

 

「行きます……イル・グランツ……」

 

 励起され、最大出力まで高められた光のフォトンは、その輝きに魔力すら織り交ぜて螺旋のごとく湧き上がり、10条の光の光線がゴライアスの頭部に殺到した。

 

 ゴライアスは驚いて腕でそれを振り払おうとするが、そんなことで何とかなるものではなく、一部は腕に風穴を開けつつ、そのほとんどが頭部に着弾し、かなりのダメージを与えた。

 

「続けます……イル・グランツ……イル・グランツ……イル・グランツ……」

 

 そうして、エルティナはフォトンフレアの効果時間すべてを使ってイル・グランツを連打した。暗い洞窟がまるで昼間のように輝き、まるで地上を駆け上る流星群のようだ。

 そして、その輝きが通り過ぎるごとにどんどんその身を減らしていくゴライアスはなすすべもない。これは、決まったね。

 

「うーん。問答無用だね。もうちょっと加減してあげた方がいいんじゃないの? あ、灰になった。魔石、でっか……」

 

 結局、ゴライアスは全身を全部削り取られるというえげつない倒されかたで、灰の山になってしまった。

 

「戦闘終了です」

 

「お疲れさま、エルティナ」

 

 今回は爆発しなかった魔石を、私はアイテムパックに回収し、エルティナは念のため山になった灰を風のテクニックで念入りに吹き飛ばして証拠隠滅を行った。慎重だね、エルティナは。

 

「それじゃ、キャンプに戻ろうか。明日朝一で上に戻るってことでよろしく」

 

「分かりました」

 

 と言うことで、人が来ないうちにすたこらさっさと18階層に戻って、テントにこもってグースカと寝落ちした。そういえば、明日の朝ご飯の仕込みをしてなかったな。まあ、パンと豆の煮込みだけでいいか。

 

 そして、翌日。出立前に軽くリヴィラでシステムを使って噂の収集をして、ゴライアスについては出現したらしい、また討伐隊を結成するという話が主で、倒されたという話は伝わっていないようだった。

 

「じゃ、さっさと帰ろう」

 

「はい。速やかに」

 

 私達みたいなちびっ子に皆、興味は無いらしく、特に注目されることもなく17階層に戻り、そのままの勢いで地上まで戻った。かなり急いで戻ったので、お昼頃には螺旋階段を上ることが出来、どこかでご飯を食べようということになった。

 

『かなり早かったですけど、地上に戻りましたよ、ワカヒルメ様』

 

『お、お帰り二人とも。いや、早かったね』

 

『いろいろありましてね。ワカヒルメ様はまだバイトですか?』

 

『そうだね。今日は結構忙しいから、ちょっと帰りが遅くなるかも』

 

『そうでしたか。じゃあ、ご飯作って待ってますね』

 

『ありがとうね。じゃあ、また夜にステイタス更新をしよう』

 

『よろしくお願いします』

 

 いろいろあったけど、実りのある冒険だったと思う。これで、なにかスキルなりが芽生えていたらいいんだけどね。

 

 

◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇

 

 

「ただいまー。二人とも、もう戻ってるね?」

 

「あ、ワカヒルメ様、お帰りなさい。もうちょっとでご飯出来ますよ」

 

 拠点に戻り、買ってきた食材をゆっくりと調理していると、扉が開く音がして、すぐにワカヒルメ様の声が中に響いてきた。ちなみに、拾得物はゴライアスの魔石以外は全部換金してそれなりの金額になった。さすがに中層になると上層と桁違いの稼ぎになるね。ゴライアスの魔石については、しばらく様子を見ようということになった。今売り飛ばすと、変な騒ぎになってしまいかねないからね。というのがエルティナの提案で、私はそれにうなずいただけだ。

 

 売り飛ばせたら、50万ぐらいすぐに稼げる気がするんだけど、もったいないなぁ。

 

「おお、いい匂いだね。今日は新作かい?」

 

 ワカヒルメ様は、ものかけに外出用の上着を掛けて、私の手元をのぞき込んできた。

 

「いろいろ面白いのが売っていたので。今日は麻婆豆腐ですよ」

 

 これも、OL時代の得意料理の一つだ。豆腐と挽肉と長ネギを、中華系調味料でいい感じに調理するだけで美味しい料理が作れる。中華料理は、素材の下処理には時間がかかるが、調理自体はそれほど時間が掛からないのがいいね。

 

「さて、最後に長ネギの刻んだやつを振りまいて……いったん火を止めて水溶き片栗粉をよーく混ぜて……最後に火をつけていい感じにとろみをつければ……できあがりです! うーん、美味しいそう!」

 

 いずれエビチリとか作ってみたいけど、ケチャップがないのがネックだ。ケチャップの自作はさすがに勘弁してほしい。

 

「あー、お米が食べたくなる匂いだ……」

 

 ワカヒルメ様は思わずお腹をさすった。そうだよね、日本由来の神様ならどうしても発症してしまうよね。

 

「お米って結構高いですよね」

 

 私も、こっちに来てから……というより、オラクル船団で目覚めて以来ずっとお米ほしい病が完治しないのだ。

 

「そういえば、ゴライアスを倒したって本当かい? よく、攻撃が通ったね」

 

「私の攻撃は全く通りませんでしたよ。かすり傷一つつきませんでした。エルティナが全部やってくれましたからね」

 

「緊急事態でしたので」

 

「エルティナも、強かったんだ」

 

「いや、強いですよ? だから私も無茶が出来るわけでして」

 

「そういうことか。君がいつも無鉄砲なのはエルティナがいるからっていうのは、そういうことだったんだね。てっきり回復が無限に出来るからだって思ってたよ」

 

「それもありますね。全身複雑骨折した程度なら一瞬で直して貰えますし」

 

「マスターは、最近怪我をしすぎです」

 

「ごめんね」

 

 そうして、少し多めに作っておいた麻婆豆腐も奇麗に食べきって、ネギのかけら一つ残らず鍋から消えた。

 

「「「ごちそうさまでした」」」

 

 私達は仲良く手を合わせて食事を終え、洗い物はワカヒルメ様がやってくれるというので、リビングで今回のダンジョンアタックの収支計算をエルティナと一緒にやって、今後の計画をダラダラと話し合った。

 

「二人ともお待たせ、それじゃ、ステイタス更新をしようか」

 

 洗い物も10分もかからず終わり、ワカヒルメ様はちょっとウキウキした様子で、濡れた手をエプロンの前掛けで拭った。

 

「分かりました。エルティナもいい?」

 

「いつでも結構です」

 

 今回はランクアップして、しかも中層に一晩泊まって戻ってきて初めてのステイタス更新だから、ワカヒルメ様も気合いを入れているのだろう。

 最後にゴライアスと戦ったから、どれぐらいアビリティが稼げたかちょっと楽しみだ。

 

 例のごとくワカヒルメ様の寝室に入り、そのままベッドにぺたんと座って、肌着を持ち上げてホックを外し、背中をワカヒルメ様に差し出した。

 

「それじゃ、行くね」

 

 と、ワカヒルメ様は裁縫針で指を指して血を垂らして私の背中に擦り付ける。

 

「それ、何とかなりませんかねぇ。毎回ワカヒルメ様に血を流させるのは心苦しいというか」

 

 言ってしまったら、仏身から血を流させる罪を冒したみたいな罪悪観が若干ある。

 

「君は優しいね。だけど、こればっかりは仕方ないなぁ」

 

 エルティナにすぐに傷をふさいで貰っているから、跡にもならないし、指の皮が分厚くなることもないが、やっぱりね、なんというか、そういうことだ(謎)。

 

「細かいことはいいんだよ。私は神だからね。さてと、終わった……えっと……スキルが芽生えてるんだけど、何やったの?」

 

「ゴライアスとタイマン張って、ボコボコに負けたんですよ~。どれどれ」

 

 私はワカヒルメ様がブルブルと握りつぶすぐらいの勢いで掴まれている羊皮紙をゆっくりと引き抜いて、アビリティの欄を通り越してスキルの欄に目を向けた。

 

「アビリティは……まあ、大体こんなもんですよね……スキルは……おー、なんかいいのでてますね」

 


スキル

 虚空跳躍(ネクストジャンプ)

 →任意発動型。精神力を消費することで、虚空を足場にして跳躍する。

 

 攻守一体(ガードポイント)new

 →タイミング良く攻撃を合わせることでダメージをキャンセルさせる。発動時に精神力を消費する。


 

「おー、ガードポイントがあると一気に安全性が上がりますね」

 

 これがあれば、こっちの攻撃を相手に通しつつ、相手の攻撃のダメージはきっちりキャンセルできるという、こっちではほとんどバグみたいな技だ。どうりで、最後の最後でゴライアスの昇龍拳をはじくことが出来たわけだよ。まあ、ひょっとしたらとは思ってたけどね。

 

「出来れば、ステップ回避もあればよろしいのですが」

 

「それはねぇ。確かにそうだけど、難しいと思うよ?」

 

 ステップ回避があれば、相手をすり抜けて簡単に背中をとれて便利だから、初見殺しにはもってこいだ。

 

「また、隠し事が増えたよ……。それと、ベルディナ! 女しかいないといっても、ちゃんと前は隠しなさい。はしたない!」

 

 ワカヒルメ様に怒られたので、ちゃんと下着を付け直して肌着を下ろして身だしなみを整えた。

 

 さてさて、どんどん冒険者として強くなっていくのはとても楽しいことだ。次は19階層を超えて24階層へ。いよいよリザさんと再会できるかもしれないので、気合い入れていこう。

 

 




これ書いた後に麻婆豆腐が食べたくなって自分で作りました。

エルティナの二つ名はどれがいい?

  • 賢者(セージ)ロキ
  • 巫女(ヴォルヴァ)フレイヤ
  • 小聖女(リトル・セント)ディアンケヒト
  • 慈愛(シーター)ガネーシャ
  • 星乙女(ヴィルゴ)アストレア
  • 一般小人族(リトル・ノーマル)本人
  • どれでもいい
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